ごめんなさい。ごめんなさい。まず最初に思いっきり謝っておきます。本当にごめんなさい。ついでに例によって警告も制限もかけてなくて心からごめんなさい。

黄金伝説
by JUNKMAN

黄金伝説である。
あの素潜りしてモリで魚を一突きして「獲ったどー!」と叫ぶあれである。
いや、だから何だということもないのだが、この無人島サバイバルは志都美&杏奈の女子高生二人組の得意技であった。
取って付けたようだと批判されるかもしれないが、実際に取って付けたわけだからその批判は甘んじて受け容れるとして、それにしてもワイルドな志都美がぶいぶいと素潜りし獲ってきた獲物を女子力無双の杏奈がきちんとしたお料理に仕立て上げるのだから、このコンビはなかなかどうして優秀なサバイバーだった。
そんなわけで今度のお休みも志都美&杏奈の女子高生二人組はここ南の海の名も無い無人島にサバイバルを楽しみにやってきたのである。
強引すぎるイントロダクションであるがそこは何とかお見逃しいただきたい。

*****

「ふううううう」

例のシベール星製アーマーを着用した志都美が肩で息をしながら海から戻ってくる。
まあアーマーといっても実質ビキニみたいなものだから海女さん仕事に使っても特に違和感もない。
志都美にいわせれば「物理攻撃に対して無敵の防御力なので海でも安心」なのだそうだ。
そんな志都美が手にした魚籠の中には本日の獲物が・・・

「えーと、イシダイが1匹、ブダイが1匹、よくわからないイカが1杯、ウツボが1匹、サザエが5つ、ウニが3つ、あとはアオサを適当に・・・」

「大漁じゃない!」

「うーん」

いまいち浮かない表情の志都美を後目に、これを受け取った杏奈は手作り厨房に籠って制限時間内に以下のメニューを仕立て上げて見せた。
1)イシダイの骨でじっくりお出汁をとったアオサのお吸いもの
2)さっと茹でたサザエとアオサのサラダバルサミコビネガー風味
3)ウニ醤油でいただくイカそうめんとイシダイのお造り一部には炙りを入れて
4)ウツボのカリビアンステーキ焦がしウニ味噌ソースを添えて
5)天然ハーブを効かせたブダイの松葉蒸し付け合わせは地中海風サザエのロースト

「・・・ふうう、どうよ?」

全品揃えた杏奈は額の汗をぬぐおうともせずドヤ顔で胸を張る。
日ごろ一緒に行動しているはずの志都美も流石にこれには驚いた。

「あ、杏奈ちゃん・・・無人島でこのお料理って・・・」

「ちょっとマジで戦っちゃった」

「凄いわ!さっそくいただきましょ!」

というわけで嬉々として無人島でのワイルドなディナーを楽しむ二人
・・・
しかし
・・・
・・・

「杏奈ちゃん・・・」

「?」

「すっごく美味しいんだけど・・・」

「だけど?」

「やっぱり海産物だけだとちょっと単調よね」

「・・・」

それは杏奈も感じていた。
確かにメニューが豊富なようで似たような食材の使い回しだからいまいち斬新感がない。
足りないものは・・・

「山の幸ね」

「うん。じゃ、明日はあの森の方で食材探してみるわ」

というわけで次の日は鬱蒼と茂った森の奥に食材探しの探検に行くことにして、二人はそそくさと寝袋に入ったのである。

*****

翌朝
早々に朝食を済ませると、志都美は例のアーマーを着込んで無人島の森林地帯に踏み込んだ。
アーマーに付帯しているシルバーメタルのブーツは軽量柔軟でありながら全ての物理攻撃を跳ね返す頑丈さなので、こうした山歩きにはもってこいである。

*****

小一時間も歩き回っただろうか
残念ながら美味しそうな山菜も木の実もキノコもまるで見つからない。
あーあ、この島、なーんにも魅力的なものがないわね。
それにしばらく森歩きしたらもう喉が渇いてたいへん!
諦めてそろそろ帰ろうかな?
・・・
なんて愚痴っていたら急に森が開けて平地に出た。
しかもただの平地ではない。
よく区間整備された耕地が広がり、そこで農作業をしている人たちがいる。
耕地の間にはぽつんぽつんと作業小屋のような建物が
更に視線を遠くに向けると、住居らしき小屋が密集した中心部も見える。
ごく普通にのどかな田舎の集落だ。
普通じゃないのは

「・・・小っさ」

耕地も、建物も、もちろん人も、みんな1/100程度のミニミニサイズ
ここは無人島に隠されたこびとの里だったのだ。

「・・・まあ、驚きもしないけどね」

志都美は淡々と呟く。

「つーか、きっとこういう展開になると思ってたわよ。どーせ読者もそれしか期待していないんだし・・・」

*****

「長老!!!」

こびとの里では、物見役をしていた若者のこびとが血相を変えて長老の小屋に飛び込んできた。

「きょ、巨人が現れました!」

「なに?」

鋭い眼光の長老は、ゆっくり腰を上げると物見櫓に登って若者の指差す彼方を見た。

「あれです!すっごい巨人です!見たこともない巨大さです!しかも若い女だ。あんな可愛らしい顔をして、この物見櫓の何十倍も大きいなんて・・・我々の弓矢ではとうてい太刀打ちできません!」

「・・・慌てるな」

「へ?」

「見ろ、巨人のあの乳を」

いわれて若者は銀色のメタリックなブラで申しわけ程度に覆われた巨人の乳をしげしげと観察した。

「で・・・でかいですねえ」

「そうじゃろ?儂らの100倍サイズの巨人としても、あの乳は不自然にでかい」

「と、いうことは?」

「『乳がでかい=下品=バカ』じゃ。あの巨人はバカに決まっておる」

「!」

「ふふふ、普通に知略でねじ伏せてくれるわ」

長老はふてぶてしくうそぶいた。

*****

志都美はずしんずしんと地響きを立てながらこびとの里の中心部に歩み寄った。
いるいる
大勢いる
1/100サイズのこびと
小っさ!
しかも見たところ弓矢程度の遅れた軍事力しか持っていない。
いや、どれだけ相手の軍事力が発達していたとしても、そもそもシベール星製アーマーを着込んだ志都美には歯が立たないはずだ。
ならば無敵の大巨人志都美さまの無双タイムね。

「こびとのみなさーん、おっはよー!」

志都美は仁王立ちすると、それでなくても巨大な胸を思いっきり前に突き出すようにして偉そうにふんぞり返った。

「どう?わたし巨大でしょ?んふふ、キミたちなんかみんなアリさんも同然だね。抵抗しても無駄よ。降参する?じゃ、今すぐ大巨人のわたしに美味しそうな食材を持っていらっしゃい。大人しくいうことを聞けば踏みつぶさないであげるかもしれないわよ♡」

志都美は腰をくの字に曲げると満面の笑みで足元の集落を見下ろしながらウインクしてみせた。

「・・・それとも、キミたち自身が食材になってみる?」

足元のこびとたちはキーキーと悲鳴を上げながら右往左往している。
んふふふふふ
そりゃ驚くわよね。
だって平和に暮らしていたのに、いきなり高層ビルみたいに巨大な女の子に襲われちゃったんだものね。
優越感でついつい志都美はどんぐり眼の目尻をたらしてしまった。

*****

「ちょ、長老、巨人の娘がいきなり恫喝してきましたよ」

「凄い迫力です!あの巨大な足で踏みつぶされたらひとたまりもありませんっ!」

「でも要求に応じて食料を提供することにしたら、あの巨体ですから、我々が必死になって貯蔵した食料をどれだけ食べてしまうことか・・・」

「かといって要求を拒絶したらこんどはわれわれが食材にされてしまう!」

「うわあああ、八方塞がりだ!」

「・・・慌てるな」

狼狽しまくるこびとたちの中で、長老だけはあくまでも冷静だった

「慌てず、冷静に、例の作戦を遂行しろ」

*****

騒然としている群衆たちをかき分けるようにして、こびとの一団が巨大な樽のようなものを台車に乗せて運び出してきた。
いや、巨大な樽というのはあくまでもこびと目線のスケールで、志都美にしてみればショットグラス程度の大きさである。
中には薄いピンク色の液体がなみなみと満たされている。
キー、キー、キー
その巨大な樽を志都美の足元に運ぶと、代表者とおぼしき一人が真上に向かって叫びかけてきた。
志都美はアーマーのヘッドホン部分をちょっと調節してみる。
おーおー聴こえるわ
こびとの話し声が明瞭に聴こえる
何語なのかわからないけど、その話してる意味もちゃんと理解できるわ
このアーマーセットって、いろいろと優れものよね。

「・・・偉大なる大巨人娘さま、降参です。降参するのでどうかお赦しください。われわれの里を踏みつぶさないでください。我々を食材にしちゃうのもやめてください。」

代表者はその場で地面にひれ伏した。
その周囲のこびとたちもこれに習って全員が志都美に向かって土下座しはじめる。
全面降伏だ。
ううう、気分いい

「ふん、そこまでいうなら赦してあげないこともないけど、そのかわりちゃんと食材は提供するのよね?」

「もちろんでございますとも。まずはこれをどうぞ。」

こびとは巨大な樽を指差す。

「なにそれ?」

「ウェルカムドリンクでございます。さあ、ご遠慮なくどうぞ」

ウェルカムドリンクか
気が利くわねえ
確かに喉はカラカラだし、一杯いただいてみようかしら?
・・・
・・・
って
怪しすぎでしょこれ?
痺れ薬とかじゃないの?
首を捻りながら樽を摘まみ上げて匂いを嗅いでみる
・・・
すんすんすん
・・・
あれ?
甘くて美味しそうな良い匂いじゃない
・・・
・・・
一杯だけ
なら大丈夫よね?
・・・
えいっ!
ごくり
・・・
ぷはああああ
・・・

「!」

何これ?
甘くて爽やかですっごく美味しい♡

「・・・美味しいジュースねえ」

「お気に召していただけましたなら幸いでございます」

「お、おかわりはないの?」

だってショットグラス程度の樽では全然こののどの渇きは癒えない
代表のこびとは待ってましたとばかりに志都美の背後を指差した

「あちらの池に大量に用意してございます。いま、汲みにいって参りましょうか?」

「いいわ。自分で行くから!」

ずしんずしんずしん
志都美は地響きを立てながら集落の裏手にある巨大な一枚岩の祭壇みたいなところに歩み寄ると、その傍らのピンク色の池から樽でジュースを汲み取って飲んだ
ごくり
・・・
ふうううう
美味しいなあ
ほんとに美味しいなあ
一杯
また一杯
またまた一杯
・・・
飲み続けているうちに、いつか志都美の意識は遠のいていった。

*****

「は!」

仰向けの姿勢で目覚めた時、既にお日様は空の真上に差し掛かっていた
ということは、正午近くだ
海辺のベースキャンプを出たのが朝8時
こびとの里についたのが9時すぎころ
なら2〜3時間もここでお昼寝していたのか
いかんいかん、寝過ごしちゃった
そんなこと考えて身を起こそうとしたら

「!」

身体が動かない
・・・
いや、痺れているとかそんなことではない
ちゃんと身体に力は入るし、感覚もある
それでも身動きが取れない
・・・
・・・
縛り付けられているのだ!

「・・・かーはっはっは、やっと眼が覚めたようじゃな」

志都美の顔の前に渡された移動式の釣り回廊みたいなものの上に、声の主の老人が現れた。
白い髭をたくわえ、少し猫背で、でも眼光は妙に鋭い。
文字通り目と鼻の先の位置なんだけど、がっちり縛り付けられている志都美は手を伸ばすことも首を挙げることもできない。

「ふん、でかいだけのバカ女め。わが里を侵略しようとは片腹痛いわ。」

「だ、騙したのね!」

「騙されるのはお前がバカだからじゃろ?かーっはっはっは」

「く・・・許せない!・・・こんな鎖なんか」

と全身に力を入れてみたけれど、思いのほか鎖は頑丈でびくともしない。
それにそもそも繋がれている場所が悪い。
ガリバーさんが縛り付けられていた砂地とかだったら志都美でも簡単に杭を引っこ抜くことができただろう。
ところが、あの一枚岩の祭壇みたいなものが今は志都美用の巨大なベッドになっていて、そこに直接ぐるぐる巻きなのだ。
いくら志都美が怪力でも自分より大きな巨岩をぶち壊すことなんて無理
そこにいくら細いとはいえ一応は鋼鉄製の鎖で幾重にも丁寧に縛られてしまったのだから引きちぎることは不可能だった。
もう一つの問題は志都美の体型である。
床に縛り付ける際、首、手首、足首は定番だが、意外と体幹の自由を奪うのは難しい。
ところが志都美の場合は、ウエストだけでなく、バストの上下で括り付けると胸の突起が邪魔で上体が全く動かせなくなってしまうのだ。

「かっはっは、乳がでかいというのはハンディじゃのう」

「く・・・わ、わたしをどうする気?」

「生意気な侵略者にはそれ相応の報いを受けてもらおう。それ皆のもの、この乳デカ巨大娘を陵辱するのじゃ!」

おおおおおおおおおおおおおおおお!
この小さな里のどこにこれだけ大勢いたの?と訊きたくなるほどのこびとの大群衆が志都美の巨体をわらわらと取り囲む。

「ちょ、ちょっと、やめてよ!」

「やめません」

妙にキッパリと断ったこびとたちがまず向かったのはなんといってもあの乳である。
それでなくても16歳現役女子高生としてはできすぎなB94.2cmの志都美の乳
それがこびと視点では100倍に巨大化である
おおおおおおおおおお
思わず畏敬の声を上げてしまうのも無理はない。
触ったり匂いを嗅いだりするのはまだ序の口で、登ったり、全身をこすりつけたり、あるいは体当たりして弾力を確かめてみたり、滑り降りてその高度差を実感してみたりなど、楽しみ方は十人十色
十人十色といえば、お好みのポイントだって十人十色である。
特に貧乳至上主義を貫く理性派の方々にとって志都美の無駄にでかい乳など慨嘆の対象にしか過ぎない。
そういう上品な嗜みを持つ方々は、耳の後ろとか、唇とか、腋の下とか、おへそとか、太腿とか、ふくらはぎとか、あるいは勇気ある方々はブーツに潜り込んで足を目指すとか、まあともかく全身くまなくお楽しみ対象となさったわけだ。
なにしろ志都美は16歳現役女子高生なので、全身どのパーツもお客様にお出しできるクオリティを誇っている。
もちろん女の子の大切なものも含む股間の三穴物語も十分にお客様に提供できる。
ということでパンツをかいくぐってデリケートゾーンに侵入する勇者たちも続出した。
もぞもぞもぞ

「きゃああああああああああああああああああ!」

「おおお、感じてるみたいだね」

「ふうう、臭い臭い、女子高生でもやっぱ臭うところは臭うんだ」

「きゃああああああああああああああああああ、やめて!やめて!」

「ん、ここは窮屈だな」

「いやいや、そこをくじけずもっと奥まで行ってみようよ」

「きゃああああああああああああああああああ!やめて、やめて、ホントにやめてええええ!!」

「あれれ、なんだか湿ってきたぞ」

「なあんだ、嫌がってるふりして本人も気持ちよくなってるんじゃないか」

「じゃあ、俺たちももっと頑張ろうぜ」

「おう!」

「きゃああああああああああああああああああ!!!」

東九条志都美16歳現役女子高生、出演のたび毎度おなじみ乙女のピンチである。

*****

「・・・いくらなんでも遅すぎるわねえ」

もうお昼も近いというのに、志都美はまだ帰って来ない
浜辺のベースキャンプで待っていた杏奈もさすがに痺れが切れた

「おっちょこちょいの志都美ちゃんだから、道に迷ったという可能性は十分に考えられるわ」

こりゃダメだとばかりに小刻みに首を振りながら、杏奈は志都美の捜索に行くことにした。

*****

若手たちに混じって自らも志都美のボディで好き放題に遊んでいた長老のもとに、また別の見張り役の若者が駆けつけた。

「長老!」

「どうした?」

「もう一人巨人が現れました!」

「?」

「今度の巨人はさっきの巨人ほど乳がでかくありません!」

「・・・ふーむ、それはまずいな」

ずうううううううん
そのとき一際重々しい足音がして、こびとたちの目の前にまた巨人の姿が現れた。
杏奈である。

「し、志都美ちゃん!」

冷静な杏奈も流石に驚いた。
どーせ道に迷っておろおろしてるだけでしょ?と思ってた志都美が、なんと岩のベッドみたいなところに仰向けに横たわって、しかも身体中しっかりと細い鎖のようなもので縛り付けられている。
よく見ればその周囲には1/100サイズくらいのこびとがうじゃうじゃ
これって、まんまガリバーさんのシチュエーションだ。
もっともガリバーさんはリリパットのこびとたちに陵辱されたわけではないが。

「杏奈ちゃーん、助けてええ」

縛られたままの志都美は情けない声を出す。
杏奈は急いで駆け寄った。

「どうしたのこれ?」

「どうしたもこうしたもないわよ。このこびとたちにやられちゃったの」

「抜け出せないの?」

「とても無理。この鎖は頑丈なのよ」

「ふーん」

実に珍しいパターンである。
はっきりいって、GTSが油断して眠っている間にこびとたちにガリバーさんみたいな感じで縛り付けられてしまって身動き取れなくなる、って、この界隈では思いっきり使い古されたシチュエーションだ。
でもそんな場合でもGTSが目覚めると「何よこんな紐」みたいな感じでこびとが折角苦労して縛りつけていた縄をあっさりぷちぷちと引きちぎり、そして何事もなかったように立ち上がってお約束の仕返しタイムになだれ込む、というのが定石というか王道というか予定調和の世界なのだ。
ところが今日の志都美は目覚めた後も情けなくその場で起き上がることができない。
実に珍しい。
などと感心している場合でもないので、仕方なく杏奈はその鎖を解こうと頑張ってみた。

カチャ
カチャ
カチャ
・・・
・・・
しばらく鎖を弄っていた杏奈だったが、とても外れそうな感じはない。
さっぱりした表情で志都美の方へ向き直ると、笑みを浮かべながら首を横に振った。

「・・・ちょっと無理ね」

「!」

「この鎖、こびとが作ったわりには結構しっかりした造りなのよ。で、足元の岩盤に直接くくり付けられていてご丁寧に鍵なんかもかけてあるから、か弱い乙女の私には手も足もでないわ」

「えええ!」

口をへの字に曲げて小首を捻る杏奈の足元に、あの例のこびとの里の長老が憎々しげな笑みを浮かべながら歩み寄った。

「・・・巨人の娘よ、この人質の娘は我々の隠し持った鍵がなければ永久に解き放たれることがない。おっと手荒なマネは無駄じゃぞ。鍵はもうすでにここにはない。その隠し場所を知っているのは儂だけじゃ。儂に狼藉を働くと、この人質の娘はこのまま一生鎖に繋がれて干涸びるぞ、かーっはっはっはっは」

「取引をしよう・・・ってこと?」

「うむ、さすがにお前はバカではないな。」

「条件は?」

「何もいわずにここから立ち去れ。そうすれば、この人質の娘にはこれからずっと水と食物くらい恵んでやろう。鎖を解いてやるつもりはないがな、かーっはっはっは」

「・・・」

志都美は背筋がつーっと冷たくなった。
いや、この長老の言葉に自分の将来を憂いて背筋が冷たくなったのではない。
この長老の言葉に対して、杏奈が、静かに、表情を変えず、でもめらめらと怒りの炎を燃やし始めたのがわかったからである。
あーあ
このこびとたちわかっているのかしら?
杏奈ちゃん怒らせると怖いのよ
・・・

「・・・その取引には、応じられないわ」

「ほう、それではお前はあの人質を見殺しにする、と」

「そんなつもりもない」

「かっはっは、強がりをいったところで、鍵がなければ鎖は解けまい」

「解けなければ引きちぎるまで」

「そんなことができるとでも?」

「わたしにはできない。いまの志都美ちゃんにもできない・・・でも」

「?」

「・・・これから志都美ちゃんはできるようになるから」

それだけ言い放つと杏奈は懐から光線銃を取り出して岩盤の上に横たわる志都美に照準を合わせた。
これもご存知シベール星製の物質拡大縮小銃である。
無人島では何があるかわからないので一応持参しておいたのだ。
レバーを拡大の方に合わせて
・・・
ぴかっ
・・・
・・・
むくむくむくむくむくむく
・・・
その前からこびとたちの100倍サイズという圧倒的存在感を示していた志都美の巨躯が、更に大きくなり始めた。

*****

「やったー!杏奈ちゃん、ありがとう!」

巨大化完了時、志都美はオリジナルの10倍の大きさになっていた。
身長16.4メートル
わりと控えめな巨大化である。
実際にこの大きさなら島の外からその姿を見られることはないだろう。
でも控えめといってもこの島のこびとたちに比べたら1000倍の超大巨人である。
しかも頼みの綱であった鎖はその巨大化過程であっけなくぶちぶちに引きちぎられてしまった。
自由の身になった志都美は、その場にすっくと立ち上がると、両手を腰にあてがってこびとの里の上空に聳え立った。

「・・・じゃ、わたし、これで帰るから」

杏奈は興味なさそうにくるりと背を向けると、すたすたと浜辺のベースキャンプに向けて帰っていった。
志都美は去っていく杏奈を目で追うと、今度は真下のこびとたちをきっと睨みつけた

「・・・あとはゆっくり、わたしがあんたたちに仕返しさせてもらうわ」

*****

こびとたちはまたしても大パニックである
100倍サイズの巨大娘もすごい威圧感だった。
ところがこの巨大娘を騙し討ちにして、縛り付けて、さんざん弄んで、そこまでは良かったんだけど、その巨大娘があろうことか更に巨大化して超巨大娘になり、鎖を引きちぎって自由な身になってしまったのだ。
こんどは1000倍である。
1000倍だぞ!
ありえない巨大さだ!
まるで空全体がこの超巨大娘の身体で置き換えられたようだ
こんな相手に弓矢だけでどうやって戦えというのだ?
勝てない
どうやっても勝てない
我々が力を合わせて全力で立ち向かっても、あの聳え立つ銀色のブーツ一つにも勝てない
・・・
でも
今更謝ったところで赦してももらえないだろう
だって
我々はさっきこの超巨大娘を騙し討ちにしたのだ
そしてその自由を奪い
さんざん嬲りものにしたのだ
今更謝ったって、もう赦してもらえるはずがない
・・・
・・・
絶望だ
・・・
・・・
・・・
超巨大娘は、こびとの里を悠々と跨ぎながら、足元でうちひしがれるこびとたちを嘲り嗤うかのように見下ろしていた。

「あんたたち、絶対に赦さないわよ・・・最大の屈辱を与えてやるんだからね」

里を跨いでいた超巨大な銀色のブーツの片方が、ふいにするすると上空に舞い上がり、そこで一瞬静止した後、元の位置にうなりをあげて振り下ろされた。
・・・
ずがあああああああああああああああああん

「ぐわあああああああああああああ」

マグニチュード9クラスを超える大地震
あの超巨大娘はその場で足踏みしただけなのに、それでこの破壊力
ダメだ
抵抗できない
俺たちはみんなあの巨大なブーツで踏みつぶされてしまうのか?
こびとたちは這いつくばって、天にも届くかという超巨大なブーツを呆然と見上げた。

「長老!」

「長老どうしましょう?」

「うむむむむ」

どうしましょうといわれてももうどうにもならず腰を抜かしている長老の周囲がさあっと暗くなった。

「!」

指だ!
超巨大娘が長老を摘まみ上げようと腰を屈めて地面に指を伸ばしてきたのだ!
拇指と人差し指
太さだけで15メートル以上(こびと換算)もある。
人差し指の長さに至っては100メートル(こびと換算)だ。
本当は白くてほっそりした女の子の可愛い手指なんだろうけど、このサイズではそれだけで怪獣も同然である。
そんな怪獣がマッハの速さで襲ってくる。
とても逃げる時間などない
長老は取り巻きのこびとたち十数人もろともこの超巨大女の子の手指に摘まれて、遥か上空の顔の前まで引き上げられた。
摘まみ上げられた先では、怒りに満ちた超巨大どんぐり眼が至近距離から長老たちを睨みつける。

「・・・さっきは、よくもやってくれたわね」

「いや、ちょっと待って、ちょっと待って、おねーさん」

「なに8.6秒バズーカーみたいなつまらないこと言ってるの?」

「いや違う、違うんじゃ、あれはちょっとした手違いじゃ、話せばわかる、話せば・・・」

「話すことなんかないっ!!!」

超巨大娘は語気荒く会話をぶち切った。

「あんたたちなんかこの場でぷちっと潰してやってもいいんだけど、それではわたしの気持ちが収まらないわっ!」

そう言い放つと超巨大娘は再びしゃがみ込んで、空いていた方の手指でちょいちょいと地面に穴を掘り、そこに摘んでいた長老たちを放り込んだ。
手指でちょいちょいと掘っただけの穴とはいえ、こびとたちの体感的には直径30メートル×深さ20メートルくらいの大穴である。
とても這い出せるレベルではない。
そこから見上げる上空は、あの超巨大娘の姿が全視野を覆い尽くしていた。
・・・
逃げられない
この逃げられない環境で、俺たちは天空から降臨してくるあの超巨大ブーツに踏み潰されてしまうのか
・・・

「!」

違う
ブーツではない
ふいにその天空自体が墜ちてきた。
・・・
尻だ
超巨大な尻だ!
尻が、この穴めがけて墜ちてくる!
誰もが頭を抱えてしゃがみ込んだ。
とんでもなく巨大な尻だ
穴どころではない
俺たちはこの里ごと怒り狂った超巨大娘の尻の下敷きにされてしまうのか
・・・
・・・
ところが
・・・
いつまでたっても潰れない。
・・・
・・・
どうしたんだろう?
こびとたちはおそるおそる目を開いて上空を見上げる。
そして驚愕した。

「!!!」

天が、全て尻に置き換えられていた。
この里を余裕で跨いでいたあの超巨大娘は、その場で膝を曲げ、腰を落とし、まるで便器に跨がるかのようにこの里に臀部を近づけていた

「・・・ひと思いに踏み潰したりなんかしないわよ」

便器に跨がるかのような姿勢になった超巨大娘の重々しい声が轟きわたる。
そう
まるで便器に跨がるかのように
そして本当に便器に跨がるときのようにするするとパンツを下ろして、剥き出しの菊門を曝け出した。
超巨大な可愛い女の子が里の上に豪快に跨がって見上げる人々に至近距離から堂々と肛門を見せつけている。
もの凄い光景だ。
恐ろしいことに、その菊門は、この里の中心部に掘られた穴、すなわち長老たち数十人を閉じ込めたあの穴に、照準をぴたりと合わせていた。

「言ったわよね・・・最大の屈辱を与えてやるって」

・・・
・・・
ぶぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
・・・
汽笛のような、雷鳴のような、間の抜けた地獄のトロンボーンが轟きわたる
音源はもちろん里の上空に鎮座するあの超巨大肛門だ
そのおどろおどろしい重低音に引き続いて、それは突然やってきた
・・・
ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ
噴出された生暖かい大暴風が全ての存在を吹き飛ばす。
こびとたちの小屋はなぎ倒され、粉砕され、空中に巻き上げられた。
もちろん、それはこびとたち自身も同様である。
そしてその恐ろしさは風圧だけではなかった。
空中に舞うこびとたちは喉を掻きむしる
あるいは両手で顔面を覆う
あるいはのたうちまわって絶叫を挙げる
あるいは白目を剥いて痙攣する
この恐るべき暴風の正体は、たっぷりと猛毒のメタンを含有した有機ガスだったのだ。
それでもなお超巨大娘は、いや超巨大娘の超巨大肛門は、一切容赦しない。
無力なこびとたちの頭上で、超巨大娘のいきむ声が轟き渡った。

「・・・ふんぬっ!」

・・・
・・・
おお
・・・
ついにご本尊のお出ましだ。
ばっくりと最大径まで開かれた菊門から、直径30メートル(こびと換算)の茶色くて強烈な悪臭を放つソフトクリーム状の最終兵器が顔を出したのだ。
もちろん、その目指す先はあの長老たちが放り込まれた穴である。
穴の径と最終兵器の径がぴったり一致していたので、彼らがその直撃を免れる可能性は限りなく0だった。

*****

・・・
・・・
むり
・・・
むり
・・・
むり
むり
むり
むり
むり
むり
・・・
・・・
ずどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん
・・・
・・・
・・・
ほわわわわわわわわ

*****

・・・
・・・
・・・

*****

・・・
・・・
午後3時
・・・
元の大きさに戻った志都美は、杏奈と一緒にベースキャンプ近くの浜辺でのんびり寝転がっていた。

「・・・ねえねえ志都美ちゃん?」

杏奈がちょっと額に縦じわ寄せて志都美に問いかける

「なあに?」

「ちゃんと・・・手は洗った?」

「どうして?」

「だって・・・しちゃったんでしょ?」

「しちゃったって、何を?」

「うんちよ。けっこう遠くまで臭ったわよ。」

「んふふ、どうかしらね?」

志都美はほくそ笑みながら話をはぐらかす

「ま、ここは無人島だからおトイレはないし、どこかで用を足す必要はあるわね」

「ふうう、確かに酷い人たちではあったけど、でもこびとでしょ?巨大化した志都美ちゃんの1/1000しかないんでしょ?」

「そうね」

「ってことは1000倍の大きさのうんちをお見舞いしたってこと?それってあの人たちにしてみたら高層ビルより大きいんでしょ?うんちの下敷きになって潰された人もいたんじゃない?」

「いいのいいの」

志都美は相変わらず上機嫌である

「あの生意気なこびとたちも思い知ったでしょ。生き残った連中もこの戒めをいつまでも語り継ぐといいわ。」

「・・・」

「これがホントの『黄金伝説』なーんちゃってね」

・・・
・・・
え?
・・・

まさか
・・・
これが言いたいためだけのお話だったの?
・・・
・・・

「さ、お腹もすっきりしたし、そろそろ海で泳がない?」

「そうね♡」

きゃぴきゃぴきゃぴきゃぴ
二人の女子高生は呆気にとられる読者たちなどお構いなしに喜び勇んで海に向かうのだった。

黄金伝説・終