終わりそうでなかなか終わらない王女様シリーズの続き、のようなものなのですが、今回は必ずしも小学生にも安心してお出しできるような内容になっておりません。相変わらずタグ付けは省略しております。覚悟して読み進んでください。念のために再確認しておきますと、1ブロブディンナグ・メートル=50メートル=2500リリパット・メートル、1ブロブディンナグ・グラム=125キログラム=15625リリパット・トン、という換算式になっています。

もう一度、逢いたい
by JUNKMAN

マーナちゃんがブロブディンナグに帰ってはや2年
ハイスクールのシニアに進級したケントくんはリリパットで淡々と日々の生活を送っていた
いや
淡々とではない
得意のサッカーに打ち込んで益々その実力に磨きをかけていたのだ
身体も大きく成長した
細身ながら身長200リリパット・センチメートル近い堂々たる体格
それでいて瞬発力や跳躍力などは小柄な選手も顔負けのスーパー身体能力だ
しかも相変わらず戦術眼やチームの統率力も抜群
GKとして次代のリリパット・ナショナルチームを牽引する逸材と目される存在になった
長身でイケメンでしかもリリパット国内屈指のアスリート
それでいて在籍するのはそこそこ進学校である王立ミレンドウハイスクール
もちろん一流大学への推薦進学も引く手あまただ
これがもてないはずがない
毎日のように女の子から告白され続けている
・・・
ところが
・・・
ケントくんはその全てをきっぱりお断りし続けてきた

「硬派だから・・・じゃ、ないわよねえ」

ハイスクールに進学してもまだ同級生であるピピちゃんは推し量る
進学校である王立ミレンドウハイスクールでもトップを独走する学力のピピちゃんは、メガネがよく似合う理知的な美少女に成長していた
でもそんなピピちゃんは幼馴染のケントくんに告白しようなんて思わない
それ以上にケントくんのことを熟知していたからだ

「・・・忘れられないんでしょ?マーナちゃんのことが」

「んなわけあるかよ!あんなデカ女っ!」

ケントくんは即座に否定する
でもその必死ぶりが全てを物語っていた
・・・
一途なんだな
・・・
・・・
ピピちゃんは微笑む
それはマーナちゃんを一生の親友と考えるピピちゃんにとって、決して悲しいことばかりでもなかった

*****

最高学年を迎え、ケントくんは当然のようにチームのキャプテンになった
その類まれなキャプテンシーで、ケントくん率いる王立ミレンドウハイスクールチームは並みいる強豪チームを下しつつ勝ち進む
そして決勝では宿命のライバルであるポートリリパット・ハイスクールチームと死闘を繰り広げ、ついにこれを制してリリパット選手権を手中に収めた
まさに我が世の春
しかもハイスクールチャンピオンになってみたら、意外なご褒美がもらえることになった

「・・・ブロブディンナグ遠征?」

もちろん、遠征といってもブロブディンナグ人のチームとサッカーをするわけではない
そんなことは不可能である
ブロブディンナグでリリパット人のプロチームと試合を行うのだ
それは連邦を成すこの二か国の連帯感を深めるための定例行事だった
とはいってもブロブディンナグのスポーツチームがリリパットで試合を行うことは無理である
だからいつもリリパット人たちがブロブディンナグに赴くのだ
その様子はリリパットはもちろんブロブディンナグでも全国放送される
ハイスクールチャンピオンとはいえプロに比べたら実力差は歴然なのだが、それをものともせず敢然と立ち向かう姿が判官びいきの聴衆の心をがっちり掴み、リリパットでもブロブディンナグでも人気のイベントとなっていた
連邦を形成する二か国の連帯感を深める、という企画側の目論見はまさに大成功だったのである
しかし、もちろんケントくんの心を捉えたのは「二か国間の連帯を深める」などという建前ではない

「・・・ブロブディンナグには、マーナがいる」

今もマーナちゃんからは時々メールがくる
わざとつっけんどんな返事しかしてないけど、でも本当はメールが届いた日には両足が浮き立つほど嬉しい
マーナ、元気かな?
ちょっとは女の子らしくなったかな?
もっとでっかくなったのかな?
もしかしたら
綺麗になってたりしてね
・・・
・・・
ブロブディンナグに行ったら
逢えるかなあ?
・・・
・・・
悔しいけど、居ても立ってもいられなくなった
仕方ないので、初めて自分からマーナちゃんにメールを送ることにした

(よお、今度ブロブディンナグに行くことになった。どうしても、っていうなら、逢ってやってもいいぞ。ケント)

意外な返事がすぐに返ってきた

(ケントくんがブロブディンナグに来ることは知ってたよ。来たらびっくりさせちゃうから。楽しみ♡マーナ)

知ってた?
それにびっくりさせちゃうって、どういうことかな?
・・・
・・・
まあいいや
マーナが遠征のことを知ってたのなら、きっと試合を見に来てくれるだろう
・・・
・・・
逢えるな
・・・
ケントくんは、注意深く周囲を見渡して誰もいない(自室なのだから当たり前なのだが)ことを確認すると、マーナちゃんからの返信を伝えるモニターを眺めて満足そうに微笑んだ

*****

一週間前

「・・・発表します。今年度のミス・ブロブディンナグハイスクール・グランプリは・・・マーナ・ダシア・トゥヌガートさんっ!!!」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
・・・
え?
えええ?
不意に名前を呼ばれたマーナちゃんは壇上で棒立ちになったまま目をぱちくりさせた
わ、わたしなの?

「マーナちゃん、おめでとう。ほらほら、ミス・ブロブディンナグハイスクール・グランプリなんだから、もっとにこやかに笑わなくちゃ!」

隣に立つ同級生のテレサちゃんが優しく声をかけてくれた
テレサちゃんもさっき準グランプリを獲得したと発表されたばかり
マーナちゃんは我に返ると、ぎこちなく微笑みながら大観衆に手を振った

*****

ブロブディンナグのハイスクールに入学すると、マーナちゃんはチアリーディング部に入部した
リリパットでサッカー観戦をしてから、球技の応援が大好きになったからだ
一緒に入部したのが同級生のテレサちゃん
いかにもネイティブなブロブディンナグ人、という感じのウェイヴかかった黒髪に褐色の大きな瞳が輝く日焼けした肌のぴちぴち美少女だ
マーナちゃんに比べれば小柄だけれど、きびきびと動ける運動神経の良さはいかにもチアリーダー向きである
その美貌とキレの良いパフォーマンスで入学直後からみんなに注目され、マーナちゃんも同級生ながら尊敬の眼差しで見ていたのだ
でもテレサちゃんは天狗になることもなく、みんなと気持ち良く接してくれる
明朗だけど、控えめで、とても思いやりのある優しい女の子
マーナちゃんとも大の仲良しだ
そのマーナちゃんも運動神経は悪くないし、手足がすらりと長いので動きはダイナミックである
振付に慣れてくるにつれ、見ごたえのあるパフォーマンスが周囲に評価されるようになってきた
そして最高学年に進級した今年、マーナちゃんとテレサちゃんはチアリーディング部の二枚看板となっていたのである
そのチアリーディング部は、最高学年になったらミス・ブロブディンナグハイスクールに応募することになっていた
もちろんブロブディンナグの津々浦々から選りすぐりの美少女たちが参加するのだから、簡単にグランプリなんか取れるものではない
マーナちゃんも恒例だから応募してみたというだけで、別に本気で上位入賞を狙っていたわけではなかったのだ
ところが今年のチアリーディング部の二枚看板は容姿も抜群で、あれよあれよという間に予選を通過していく
そして二人そろって全国から選び抜かれたファイナルの8人に残ったと思ったら、テレサちゃんは準グランプリ、マーナちゃんはなんと驚きのグランプリに選ばれてしまったのである
呆気にとられたのも無理はなかった

*****

場面は再びミス・ブロブディンナグハイスクールの発表会場に戻る
司会の男が軽薄な笑みを浮かべながらグランプリの紹介を始めた

「マーナさんはロールブルルグルッド第七ハイスクールのシニアに在籍中の女子高生です。身長181ブロブディンナグ・センチメートル、背が高いですねえ、脚も長い長い、体重67ブロブディンナグ・キログラム、スリーサイズは87-62-85、うーん、抜群のバディです、趣味はチアリーディングですってね・・・」

紹介されながらマーナちゃんは顔が真っ赤になった
こんな公衆の面前で身長はおろか体重やスリーサイズまでバラされてしまった
ブロブディンナグに帰国してからも身長はにょきにょき伸び続け、まあそれだけならいいんだけど、むっちりと体重も増えちゃったのは気にしていたのだ
それを堂々と公表しちゃうなんてデリカシーなさすぎよ!
膨れっ面になるマーナちゃんにはお構いなしに、司会の男はへらへらと話を続ける

「マーナさん、ミス・ブロブディンナグハイスクール・グランプリはけっこう忙しいですよ、まず来週には早速ブロブディンナグのハイスクール生を代表してリリパットからやってくるハイスクールサッカーのチャンピオンチームをお出迎えしてもらいます。今年のリリパットのチャンピオンチームは、えーと・・・王立ミレンドウハイスクール、ですね」

「!」

マーナちゃんは目が点になった
王立ミレンドウハイスクール?
それって
・・・
・・・
ケントくんのハイスクールだ
そのサッカーチームなら
・・・
間違いなくケントくんがいる
・・・
・・・
・・・
ケントくんが来る!
ケントくんが来る!
わたしはそのお出迎え係に抜擢されたのだ!
さっきまでの膨れっ面はどこへやら、マーナちゃんは胸がどきどきと高鳴りながらも、満面の笑みを浮かべるのであった

*****

「・・・え?マーナちゃんはリリパットから来るハイスクールサッカーチームのメンバーを知ってるの?」

「うん、だってわたし、中学生までリリパットで暮らしていたし」

控室に戻ると、リラックスしたマーナちゃんはいつものように打ち解けてテレサちゃんとおしゃべりを始めた

「リリパットかあ・・・ねえ、リリパットって、どうだったの?」

「どうって?」

「暮らしやすかったの?」

「うん。慣れてくれば建物とかもあまり踏みつぶさなくなるし、山や街を跨いで近道することも覚えたし、パンツとかみんなにまる見えだったと思うけど、これも慣れてくると気にならなくなるし」

「そ、そういうもの?・・・でもリリパットの人って、すっごく小さいんでしょ?お友達なんかできなかったでしょ?」

「そんなことないわ。とっても大勢と仲良くなったわよ」

「男子はどう?そんなに小っちゃいんじゃ・・・カッコいい男の子なんかいるわけないわよね?」

「!」

マーナちゃんの目が急に泳いだ

「そ・・・そうね、カッコいい男子は・・・さすがにいなかったわね」

泳ぎまくりのマーナちゃんの目をテレサちゃんはいぶかし気に横目で覗きあげる

「・・・じゃあ、今度やってくるサッカーチームにいる知り合いの男子って・・・」

「カ、カッコイイわけないでしょ!知り合い、ってだけよ!ただの知り合い!」

いよいよ狼狽するマーナちゃんの前で、テレサちゃんは小首を傾げるのであった

*****

・・・
・・・
・・・

「・・・あんたの飼ってる鳥、あれ、なんだったっけ?」

「チャッピーのことか?頭のいい鷲だぜ」

「そう、頭がいいんだ・・・じゃあ飛んでる小さなものを捕まえることってできる?」

「馬鹿にするなよ。チャッピーは鷲だぞ。ハンティングのプロなんだぞ。」

「そりゃハンティングくらいはできるだろうけど、でもあんたが言いつけたものをちゃんと捕まえて来れるの?」

「当たり前だろ。チャッピーはもともと頭がいいし、それに俺がみっちり仕込んだからな。」

「ふうん・・・」

「そんなことよりさ、早くセックスの続きをしようぜ」

「あんたってば、そればっかりね。他に考えることはないの?」

「お前だってセックスがしたいから俺の部屋に来たんだろ?ほらほら、つべこべ言わず脱げよ」

「・・・」

*****

ついにケントくんたちがブロブディンナグを訪問する日がやってきた
お出迎えの大任を与えられたマーナちゃんは、既に首都の王宮前広場で待ち構えている
帰国してからも女官の仕事を兼務しているマーナちゃんにとって、王宮前広場は文字通り自分の家の庭のようなもの
傍らに立つマーカス皇太子さまも顔なじみである
ただ、いつもと違うのは、通常の女官のドレスよりも一層キラキラと輝く白いドレスを着てティアラを被っていること、そして「ミス・ブロブディンナグハイスクール・グランプリ」と書かれた襷をかけていることだ
そんなお姫様のような恰好なのに、まるで駅弁の売り子さんのように首からひもをかけて胸の下あたりに一枚の板を抱えている
40 x 100ブロブディンナグ・センチメートルほどの薄っぺらい板
ブロブディンナグ人の女の子なら難なく持ち運びできるサイズである
だが、これは滑走路なのだ
40 x 100ブロブディンナグ・センチメートルは1000 x 2500リリパット・メートルに相当するので、リリパットの小型ジェット機くらいなら十分離着陸できる
そして実際ここにリリパット航空のチャーター便が着陸する予定なのだ
そう、それが「ミス・ブロブディンナグハイスクール・グランプリによるお出迎え」というマーナちゃんのお仕事だったのである

「・・・着陸してみて、そこにいきなりわたしがいたら、ケントくんどう思うかしら?」

マーナちゃんは目を瞑って妄想する
タラップから降り立ったケントくんが見上げると、そこには上空から胸越しに見おろすわたしの顔が
「ど、どうしてそんなところにいるんだ?」って、驚くだろうな
「へーんだ、お仕事だから来ただけですよ!」って、言い返してやろう
待って
その前に胸に近すぎて引かれちゃうかな?
このところバストがぐんぐん大きくなってきたからなあ
男の子に直近で見せつけるのは刺激強すぎかしら?
ましてやケントくんだから「乳がでかくなるとは、ますます下品でお馬鹿になったんだな」なーんて悪態つかれちゃいそう
「お、おっぱいが大きくなって何が悪いのよ?女の子らしくなった、って素直に言えばいいじゃない!」とかって反論しても、うーん、反論にはならないかしら?
困ったなあ
などと妄想しながらにやにや笑ってしまうマーナちゃんなのであった

「機影をレーダーで確認!」

管制官の声でぱっと目を開いた
妄想モードもこれでお終い
さあ、ケントくんがやってくるわよ!
マーナちゃんは大きく息を吸い込んで上空の一点を凝視した
・・・
うん
視認した
機影だ
目を凝らして初めて認識できる程度の小さな小さな機影だ
それもそのはず、リリパット航空のチャーター機のサイズは全長約50リリパット・メートル
それってわずか2ブロブディンナグ・センチメートルということだ
ブロブディンナグの赤トンボよりまだ一回り小さい
そんな小さな物体を上空で視認できるマーナちゃんの鬼視力は相変わらず驚異的なのだが、それにしたってもうそんなに遠くにいるわけではない
ケントくんがいる
あそこにケントくんがいる
もうすぐやってくる
もうすぐここにやってくる
このところ特に大きくなってきた胸を更に希望で膨らませ、マーナちゃんは機影を見つめた
・・・
・・・
そのとき

「・・・なんだあれは?」

素っ頓狂な声が上がった

*****

「・・・当機は間もなく着陸態勢に入ります。座席のリクライニングを戻して、シートベルトを着用してください」

CAが落ち着いた声でアナウンスした
そうか、いよいよブロブディンナグか
居眠りしていたケントくんは眠い目をこすりながら一応シートベルトを締め直す
そんなのんびりした雰囲気をぶち壊すように、機内に機長のけたたましい声が響き渡った

「緊急事態発生!緊急事態発生!全員シートベルトを固く締めたうえで、ショックポジションをとってください!繰り返します!全員シートベルトを固く締めたうえ、ショックポジションをとって衝撃に備えてください!」

*****

「なんだあれは?」

指差す方を見る
彼方から、黒い影が風を切って飛んでくる
まるでリリパットからのチャーター機を目指すかのように

「鳥か?」

「鳥だな」

「ああ、あれは鷲だと思う」

鷲とはいってもブロブディンナグの鷲である
翼を広げれば2ブロブディンナグ・メートル近くある
そんなブロブディンナグの鷲にしてみれば、赤トンボより小さなリリパット航空の小型ジェット機なんてただの餌だ
脚で掴むまでもなく、その鋭く尖った嘴で簡単にくわえてしまうことができるだろう
そして実際にこの巨鳥はまるで獲物を狙うかのようにリリパット航空チャーター機に迫っているのだ
そんな馬鹿な!
見つめる人々の背筋に冷たいものが走る中、鷲は大きな翼を広げて滑空の速度をさらに速める
狙いを定めてリリパット航空チャーター機に迫る
・・・

「・・・うそ・・・でしょ?」

チャーター機は間もなく着陸する
でもあのスピード差ではその前に鷲に追いつかれてしまう
このまま待っているわけにはいかない
マーナちゃんは意を決すると、抱えていた滑走路を傍らに放り投げ、着陸態勢に入った小型ジェットに向かって駆けだした
全力で走る
走る
走る
そして跳ぶんだ
鷲に捕まえられる前に、跳び上がってわたしがあのジェット機をキャッチするんだ!
一方、そうはさせじと鷲も一層スピードを上げてジェット機を猛追する
もはや一刻の猶予もない
十分に助走のスピードが乗ったところで、長身のマーナちゃんは上空に思いっきり手を伸ばしながら気合一発、ジャンプした
えいっ!
・・・
・・・
・・・
パクッ
・・・
さし伸ばしたマーナちゃんの手が虚しく空を切る
・・・
一瞬
ほんの一瞬だけ早く
鷲がケントくんたちを乗せたリリパット航空チャーター機をくわえて上空に飛び去ってしまったのだ
・・・
・・・
・・・

「きゃああああああああああああ!!!」

マーナちゃんの悲鳴が轟きわたる
目の前が真っ暗になり、その場に崩れ落ちた

*****

王宮前広場は蜂の巣を突いたような騒ぎになった
しかし、上空に飛び去った鷲を追いかける手段など誰も思いつかない
みな、地団太を踏みながら空を見上げるばかりである
そんな人々を嘲笑うかのように鷲は広場の上を二度三度と旋回すると、やがて西の方角へ飛び去ってしまった
もはやこうなっては手掛かりすらつかめない
日が暮れても、翌日になっても、リリパット航空チャーター便とその乗客たちの行方は杳として知れなかった

*****

・・・
・・・
・・・

「・・・ううん・・・は!」

目覚めた時、ケントくんはまだ飛行機の中にいた
ただし、その飛行機は斜めにひっくり返って座席上の棚からこぼれ落ちた手荷物が周囲に散乱している
チームメイトたちはシートベルトで縛られているので座席に着いたままだが、まだ気を失っている
なんだかよくわからないけど、この飛行機は事故にあったようだ
ショックポジションをとるように、という機長さんの指示があってからほどなくして、機は大きな衝撃に襲われた
そこから先は意識がない
でも、みんな気を失っているだけで、奇跡的に無事だったようだ
良かった
そのうち誰かが救助に来てくれるだろう
・・・
いや
そんな受け身の姿勢ではダメだ
気が付いた自分がまず救助を求めるべきだろう
ケントくんはシートベルトを外すと、這いつくばりながらごそごそと窓に向かった
・・・
そのとき

「キミたち、いつまで寝ているつもり?もうそろそろ目を覚ましてよ。寝たままじゃ・・・面白くないでしょ?くすくす」

甲高い女の子の大音声が響き渡った
ぎょっ、として飛行機の窓から外を覗き込むと、巨大な褐色の瞳が覗き込んでいた

*****

「くすくす、キミたちがリリパットのハイスクールサッカーのチャンピオン?チャンピオンになるくらいのアスリートならさぞかし立派な体格なのかと思ったら・・・小っさ!ゴミくず同然のおチビね、くすくす」

気を失っていたメンバーたちも突然の大音声に目を覚まし、ごそごそと機体から外に這い出してきた
彼らの乗ってきたリリパット航空の飛行機は、肌色の平地にちょこんと駐機している
上空からのぞき込む巨大な褐色の瞳の持ち主、あのブロブディンナグ人少女の掌だ

「あたし、リリパット人って見るの初めて。ほんっとに小さいのね。」

褐色の瞳の巨大なブロブディンナグ人少女は、自分の掌に片目を思いっきり近づけて、至近距離からリリパットのサッカー選手たちを覗き込んだ。

「くすくす、みんな揃って女の子の掌に載せられちゃうって、どんな気持ち?あたしもキミたちと同じくハイスクールの生徒なんだよ。でもキミたちとは身体の大きさが全然違うからね。うーん、優越感!気分いいな。てか、キミたち、そんなに小さくて恥ずかしくない?」

ケントくんたちは茫然としていた
ブロブディンナグ人を見ることは初めてではない
いや、リリパットの暮らしでは毎日のようにブロブディンナグ人女官の巨大な姿を目にしている
至近距離で見ることだって珍しいことではなかった
そんなことで呆然としているのではない
・・・
僕たちはジェット機に乗ってブロブディンナグを目指していた
そして着陸直前に、機は事故に遭った
その細かな状況はわからない
わかっているはずの機長さんやCAさんたちはまだあの機内で気を失ったままだ
ただ、事実としてジェット機は空港に着陸せず、いま、この巨大なブロブディンナグ人少女の掌の中にある
なぜだ?
どうしてだ?
いったい何が起こったのだ?
・・・
・・・
でもそれはいま考えることではない
喫緊の問題はこの自分たちを虜にした目の前のブロブディンナグ人少女だ
彼女はいままでに彼らが目にしてきたブロブディンナグ人女官たちとは明らかに異質だった
容姿が優れている、という点では同じである
ブロブディンナグ国内から選抜されてきた美女たちであるはずの女官と比べてもその造作は全く見劣りしない
それどころか、少女ならではのぴちぴちと漲る健康的な肌の張りは明らかに多くの女官を上回る
見とれてしまうほどの美しさだ
・・・
ただ
欠けているものがある
リリパット在住のブロブディンナグ女官たちがリリパット人たちに示す敬意や遠慮のようなものが気配すら感じられないのだ
見下している
彼女は自分がハイスクールの生徒だと名乗った
確かにハイスクールの制服風のブレザーにチェックのミニスカートという格好だ
でも
同じハイスクールの生徒、などという仲間感は一切感じない
大きな自分が、上に立つものとして、小さな自分たちを見下している
今までに経験したことのなかった感覚だ
自分たちは人間として扱われていない
この少女はリリパット人なんか人間とも、ましてや男とも、思っていないのだ

「・・・そうだ、ねえねえ、キミたちブロブディンナグを訪問したんだから、あれ、持ってきたんでしょ?COMシステム」

COMシステムとはリリパット人とブロブディンナグ人のコミュニケーションツールとして開発された独特の映像システムである
すなわちリリパット人でも扱える超小型のCCDのようなカメラで、しかもそこで撮影した映像情報は一般のブロブディンナグ人家庭にあるTVなどのモニターにすぐリアルタイムで転送できる
つまりリリパット人の視点から見た映像をブロブディンナグ人がモニター上で体験できるという優れものなのだ
ブロブディンナグを訪問するリリパット人には必携のアイテムであり、実際にこの小型ジェット機の中にももちろん搭載してあった

「うわあああ、すっごい!」

起動されたCOMシステムを介して部屋のモニターに映し出された画像を見て、褐色の瞳のブロブディンナグ少女は歓声を上げた

「キミたちにはあたしがこんな風に見えるんだ、超大巨人なんだね、あたし♡くすくす・・・そうだ!」

褐色の瞳の巨大少女は、急にしゃがみ込むと手のひらの上のケントくんたちリリパット人高校生たちを小型ジェット機ともどもフローリングの床に払い落とした

*****

どさどさどさ
床の上で巨大少女が掌を返すと、リリパット人の高校生たちはその厚さの分ざっと50リリパット・メートルほどの高さを滑り落ちて床に叩きつけられた

「・・・いてて」

みんな打ち付けられた肩や腰などをさすってはいるが、大きなけがはない
自由落下ではなく手のひらの上を滑落したから、もともとリリパット人は質量が軽いので落下によるダメージが少ないから、そして何よりも彼らが選りすぐりのアスリートであり身体能力が抜群であったからだろう
それにしても高低差50リリパット・メートルはリリパット人にしては奈落の底に墜ちた感覚だ
そのままフローリングの床の上に無様に転がり落ちた姿勢で、彼らはふと視線を上げた

「!!!」

褐色の瞳の巨大少女が立ち上がっている
両手を腰に当て、膝を伸ばしたままヒップを後ろつんと突き出すような姿勢で前屈みになり真下の自分たちを見下ろしている
口元に嘲笑を浮かべ、遥かの高みから見下ろしている

「・・・キミたち、あたしのパンツが丸見えだね。ラッキーだね♡」

褐色の瞳のブロブディンナグ少女はCOMシステムを介してモニターに映し出される自分の姿を横目で眺めながら悦に入っていた

「くすくす、どう?あたし、大きいでしょ?大巨人でしょ?くすくす」

モニター画面は確かにリリパット人から見た彼女の姿を忠実に再現している
雲を突くような大巨人の美少女
遥か上空のパンツに収束されていく二本の脚はおろか、その下の白いソックスで覆われた足趾ですら遥かに見上げなければならないほどの巨大さ
なのだが
・・・
・・・
意外なことに、彼らはブロブディンナグ少女が期待しているほどには彼女を巨大であると認識していなかった
彼らはリリパットの街に現れるブロブディンナグ人の女官たちをしばしば目撃していた
ありえないほどの巨大さだった
美しい姿で、地響きたてながら、山を跨ぎ越え、川を跨ぎ越え、時には街を跨ぎ越して、リリパットの国土を悠々と歩いていた
同級生だったマーナちゃんに至っては、学校をそのまま掌に載せたりした
ケントくんをはじめ、実際にその掌に乗った経験のある者も多数いる
ブロブディンナグ人たちは本当に巨大だった
縮尺が狂っているかのように、周囲の光景からはみ出して巨大だった
その巨大なブロブディンナグ人たちの足元で、自分たちは普通の生活を送っていたのだ
・・・
いまは違う
この褐色の瞳の少女は決して巨大ではない
周囲の光景に、この部屋の中の光景に、きちんと馴染んで溶け込んでいる
ここに至って、彼らはその場で呆然とした理由であるもう一つの違和感の正体に気が付いた
・・・
彼女が大きいのではない
自分たちが小さいのだ
・・・
・・・
今までに認識していなかった衝撃だ
自分たちリリパット人は小さいのだ
こびとなのだ
この巨大なブロブディンナグ人にしてみたら、ごみのように小さく惨めで哀れなこびとなのだ
・・・
・・・
打ちひしがれている彼らの視界が急に薄暗くなり、生暖かく酸っぱ臭い空気に覆われた

「ほらほらこびとくん、大巨人さまの足の裏でも拝みなさい。頑張って拝んだら、踏みつぶさないであげるかもしれないわよ、くすくす」

ケントくんたちリリパット人サッカーチームの上空が、うっすら汚れた白い天井に置換されていた
縦600リリパット・メートル、横250リリパット・メートルほどにも及ぶ巨大な天井
それが上空100リリパット・メートルほどの高さにある
足裏だ
白いソックスを穿いた足裏だ
おそらく靴を脱いでからさほど時間がたっていないのだろう、生暖かく湿った酸っぱくさい臭気がもわんもわんと降り注いでくる
広い
上空が見渡す限りこの足裏だ
いま、この足裏が振り下ろされたら、それから慌てて駆け出したところで逃げ切れない
恐怖のあまり、彼らはへなへなとその場で腰砕けになった

「・・・どうしたの?ほらほら、この可愛い可愛い超大巨人さまを拝まないの?ねえ、拝まないと、このまま踏みつぶしちゃうわよ、くすくす」

足裏の上空から上機嫌な少女の声が轟きわたる
みんな呆けたように座り込んでいる中で、ケントくんがついにブチ切れた

「い、いい加減にしろおおおお!!!」

ゆらゆら揺れていた頭上の巨大な足裏が、ぴたり、と動きを止め、そして視界から消え去っていった
代わりに現れた巨大な褐色の瞳は明らかに困惑の色を浮かべていた

「?」

まあ、それはそうだろう
こんなに小さなリリパット人の中に、ケントのように破格の大声を出せる者がいるとは普通思わない
よし
意表を突かれている今が攻め時だ
ケントくんは大声でさらにたたみかけた

「僕たちはブロブディンナグから正式に招待された来賓だぞ!失礼なマネはやめろ!いますぐ僕たちを王宮前広場に戻せ!」

ちょっと落ち着きを取り戻した褐色の瞳のブロブディンナグ美少女は、不思議そうに小首を傾げる

「・・・キミ、あたしが怖くないの?」

「怖くなんかないぞ!お前だって、僕たちと同年代の、ハイスクールの生徒だろ?」

「くすくす、そうよ」

褐色の瞳の巨大少女は薄笑いを浮かべながら背を丸めてケントくんを真下に見下ろした

「でもね、わたしはブロブディンナグ人の女子高生。だから、こんなに身体が大きいのよ。リリパット人みたいな哀れなちびと一緒にしないでね♡キミが生意気なこといえば、小指一本で、ぷち、っと潰しちゃうこともできるんだから。くすくす、どう?怖いでしょ?男子なのに、女の子の指一本にもかなわないって、悔しいでしょ?くすくす」

頭上にかざされた小さな塔ほどもある華奢な小指に気おされながらも、ケントくんはひるまなかった

「そ、そんなこと、できるはずがないだろ!」

周囲のチームメイトが見かねてケントくんを制した

「やめろ、ケント、危ないぞ」

「ああ、あの女子は思いっきりやばい。ほんとに潰されるぞ」

「ありがとう、みんな。でも気を使ってくれなくてもいい。あの女子にそんなことができるはずはない。多少身体がでかいからって、そんなことは大した問題じゃないんだ」

真上から見下ろすブロブディンナグ少女は、褐色の瞳を意地悪そうに細めた

「くすくすくす、何を強がってるの?キミとあたしの大きさの違いは一目瞭然なのに♡」

「だからそういう問題じゃない!そんなことしてはいけないんだ!ブロブディンナグ人ならわかっているはずだ!」

褐色の瞳のブロブディンナグ少女の口元から、笑みが、すっと・・・消えた

「・・・どうしてそんなことが言えるの?キミ、もしかして・・・ブロブディンナグ人に知り合いでもいるの?」

ケントくんは、一呼吸おいて、すうっと息を吸い込んでから、大声で答えた

「ああ、いるとも。中学校まで同級生だった知り合いの女子がいる。そいつも身体は大きかったが、でも同級生のリリパット人たちに乱暴なふるまいをすることは決してなかったぞ!」

「・・・ふうん」

意地悪巨大少女は、ちょっと小首を傾げて考えてから、小指の先をぺろりと嘗め、その指を真下におろしてきた

「うわああ、何をする!」

本当に潰す気なのか?
慌ててかわそうとするケントくんであったが、大きさもスピードも全然かなわない
あっという間に搦めとられると、唾液の粘性で貼り付けられたまま、小指とともに巨大少女の褐色の瞳の真ん前にまで持ち上げられた

「こら!何をする!よせ!」

「・・・」

「よせったらよせ!早く下に降ろすんだ!」

「・・・キミ、気に入らないわ」

「!」

「脱いで」

「?」

「そこで脱いで。パンツまで脱いで、まっぱになって」

「ど、どういうことだ?」

「キミだけじゃないわ、ちゃんとあたしも脱ぐから」

「・・・い、い、言ってる意味がわからないが」

「だから言ったでしょ、あたし、キミのことが気に入らないって。だから・・・」

小指に貼り付けられたケントの視界に、巨大な褐色の瞳が至近距離まで迫ってくる
そこにはさっきまでの余裕綽々な笑みは見られず、その代わりにらんらんと輝く挑戦的な光が宿っていた

「・・・勃たせてやる」

「?」

「その目に見えないほど小さなマイクロちんちんを、あたしの身体で勃起させてやるわ」

「!!!」

「我慢できるものなら我慢してもいいのよ・・・できるなら、ね」

*****

床に残されたケントくんのチームメイトたちは、上空を見上げ、息をのんでいた
見上げる先は神々しいほどの裸体
約束した通り、あのブロブディンナグ美少女が制服を脱ぎ、ソックスを脱ぎ、そして下着まで脱ぎ去って、一糸まとわぬ姿になったのだ
下界のリリパット人たちに見せつける奇跡のように芸術的な肉体
眩しい
ティーンエイジャー独特のぴちぴちと張りつめた肌が目映い輝きを放っている
その美しさが、圧倒的な巨大さで増幅される
ありえないほど増幅される
美しく、愛おしく、可愛らしく、華奢なのに、同時に超巨大で、無敵の力強さを誇る
この矛盾した形容が同時に目の前で繰り広げられているという事実が、彼女が明らかに自分たちの手に届く存在ではないことの証であった
この少女は、自らの裸体の美しさと巨大さだけで、リリパット人たちの心をずたずたに打ち砕いてみせたのである
・・・
・・・
ところがその女神のように美しい巨体を見上げるリリパット人たちの輪の中に、ケントくんだけがいなかった
彼は遥か遥か上空
あのつんと突き出た形のよいバストの上で、囚われの身となっていたのだ

*****

「・・・いい眺めでしょ?」

僕は全裸になって標高3300リリパット・メートルの地点に一人ぼっちで立たされていた
いや、一人のようで一人ではない
実は二人で立っている
僕がいま立っているこのリリパット島の最高峰よりもさらに高い地点は、実はあの意地悪少女のつんと突き出た右乳首の上だったからだ
乳首とはいってもブロブディンナグ少女の乳首は直径が24リリパット・メートル、勃起しているわけではないこの状態でも周囲の乳輪からはざっと15リリパット・メートルほども突き出ている
これでも身体つきからすればかなり小ぶりな乳首なのだ
しかし身長が2リリパット・メートルもない僕にしてみれば、彼女の乳首のサイズは家一軒分くらいの感覚である
更にこの家サイズの乳首の土台となっている乳房に至っては、もう誇張抜きで山としか形容できない
・・・
では、そんなに高いところにいるから僕は「いい眺めでしょ?」と訊ねられたのか?
違う
実はこの標高3300リリパット・メートルの地点からは、真下はもちろん、周囲の景色を見ることもできない
見えるのは一面の超巨大な姿見ばかりだ
このブロブディンナグ人の意地悪少女は、全裸になって、右の乳首の上に僕を載せて、いま姿見の前で仁王立ちのポーズをとっているのだ

「あたしたちのツーショット、イケてるでしょ?くすくす」

いい眺め、とは、この鏡の中の二人の体格の比較のことだった
認めたくない
でも目を逸らすこともできない
そこには完璧なプロポーションのぴちぴち美少女が晴れやかな笑顔で仁王立ちしていた
その素晴らしい身体を、胸を張って、これ見よがしに見せつける
どう?文句のつけようがないでしょ?といわんばかりに見せつける
蠱惑的な光景だ
・・・
ところが、実は彼女は一人ではない
その自慢そうにつんと突き出した胸の先の小さなサクランボ色の乳首の上をよく観察すると、そこには目を凝らさないと見えない小さな小さな点がある
乳首の表面の小さな凹凸にも隠れてしまうほどの小さな小さな小さな点だ
それが僕なのだ
・・・
この残酷な比較
・・・
・・・
改めて自分の周囲を見渡す
家一軒分くらいのごつごつした固い薄紅色のテラス
その上に僕は立たされている
いや、正確に言えば側面に立っているのだ
だっていま立位になっているこのブロブディンナグ少女の胸壁から、乳房は真横にせり出しているのだから
そのせり出した乳房のそのまた先にちょんと乗っているのがこの乳首
何度も言うが、家一軒分のサイズがある
家一軒分といえば、乗っていてもまるでスリルを感じないほどの安定感だ
その土台の乳房に至っては、片方だけでも少なく見積もって10リリパット・メガトンはあるだろう
メガトンだ
単位はメガトンだぞ
僕たちリリパット人が何百人、何千人でかかってもびくともしない重量だ
そんな想像を絶する超重量の肉塊が真横になっているというのに、姿見を見る限り少しも垂れていない
物理学が根本から狂っている
リリパット人の僕とブロブディンナグ人の彼女とでは、同じ物理法則を共有できないほどに大きさや力が違うのだ

「くすくす、キミも男の子なんだから、こんなに可愛い女の子とまっぱでツーショットなんかしたら・・・ちんちん勃っちゃうでしょ?くすくす、どう?・・・もう勃起した?」

姿見を介して褐色の瞳のブロブディンナグ少女が話しかけてくる
僕の様子は小さすぎて確認できないのだろう
しかし、痛いところをついてきた
少女の乳首の上に立たされてツーショットを強要される、というこの上ない屈辱を味わいながら、しかし僕は股間に抑えきれない熱さを感じ始めていたのだ
このキュートな少女との現実離れした体格差を見せつけられ、それを自分の目に焼き付けるという屈辱を味わって、それでいて股間がうずくのだ
くそ
こんな状況で勃起してたまるか
必死になって自分の心を落ち着かせようと試みる
でも
目を閉じることはできない
このちょっとラテン入ったコケティッシュな美少女の姿から視線を切ることができない
その媚薬のような裸体から目を背けることができない
そうすると、その乳首にちょこんと乗っている自分の小さな小さな姿も目に飛び込んでくる
そして自分が立っているこの甘ったるい体臭がほのかに漂う薄紅色の巨大なテラスが、実は彼女の右の乳首にしかすぎないという現実に行き当たるのだ
この巨大なテラスが乳首なのか?
あの全身から見たら小ぶりな乳首なのか?
その小ぶりな乳首の上に悠々と僕は立っているのか?
そんなに僕は小さいのか?
僕は小さい
僕は小さい
僕はありえないほど小さい
否定しようのない現実が、僕の頭の中で呪縛のように鳴り響き続けた

「・・・ただ突っ立ってるだけじゃ退屈?サービスしてほしい?くすくす」

既に彼女の乳首の上でパニックになる僕に向かって、巨大少女が話しかけてきた
僕には返答する余裕もない
ただ茫然とそこに立ち尽くしていると、差し渡し500リリパット・メートルになる大怪獣が視野いっぱいに迫ってきた
手だ
彼女の手だ
リリパットの街なら数ブロックまとめて掴めてしまうであろうその巨大な手は、僕の立つ乳首の土台となっている巨大乳房をがっしりと鷲掴みにした

「うわああああああ」

足元の薄紅色のテラスが大きく揺れる
振り落とされそうになって僕はその場に這いつくばった
揺れるのは当たり前だ
その土台となる乳房がぐにゅぐにゅと揉まれているからだ
揉まれている?
あの10リリパット・メガトンの巨大肉塊が?
10リリパット・メガトンもの重量がありながら、自重では全く変形しなかったあの強固な肉塊が?
リリパット人なら何千人集まってもびくともしないであろうあの頑丈な肉塊が?
いったいどれだけの力があればそんなことが可能になるのか?
いや、実際にそんなことは可能なのか?
その最後の疑問には、姿見に映る像が雄弁に答えていた
褐色の瞳のブロブディンナグ少女は、得意そうに笑みを浮かべながら、両手でそれぞれの乳房をぷにぷにと揉んでみせているのだ
ちょうど手の中に納まるほどの乳房は、ぷにぷにと柔らかく弾かれながら変形していく
特に力を入れているわけでもないのに、ぷにぷにと柔らかく弾かれながら変形していく
その先端の乳首の上に立っている僕がぐらんぐらんに揺れる乳首から振り落とされないよう必死に耐えているのに、ぷにぷにと柔らかく弾かれながら変形していく
僕が涙目になって乳臭い乳首に貼り付いていることなどお構いなしに、ぷにぷにと柔らかく弾かれながら変形していく
圧倒的な力の差を見せつけられた
僕には想像することもできないようなパワーを、このブロブディンナグ少女は持っている
それをいま、見せつけられている
・・・
いや、違う
僕が、このブロブディンナグ少女に比べたら想像を絶するほどに弱いのだ
指一本どころか、乳首や、おそらく髪の毛一本にも及ばないほど弱いのだ
自分はありえないほど小さく、無力だ
その事実を思い知らされて、我慢できず、僕の股間は更に熱くなった
その様子を知ってか知らずか、ブロブディンナグ人の意地悪少女は褐色の瞳をゆがめて愉快そうに高笑いしたのだった

*****

僕の試練はそれで終わりではなかった
いま、僕はロープにしがみついている
振り落とされないように全力でしがみついている
そして虚空にぶら下がって揺れているのだ
足場はない
手を放せば奈落の底へと墜ちてしまう
だから必死になってこのロープにしがみついている
・・・
太さ15リリパット・センチメートルくらいの緩いウェイヴがかかった固いロープ
そのロープは、陰毛だった

「くすくすくす、ねえキミ、今度こそ絶景でしょ?」

僕は陰毛にぶら下がっている
だからもちろんぶら下がっているのは彼女の股間だ
目を背けると、浅く腰を落として両脚をがに股に開くブロブディンナグ少女の全身像が姿見に映し出されていた
年頃の美少女とは思えない下品なポーズだ

「・・・くすくすくす」

頭上から、可笑しくてたまらないとばかりに、忍び笑いが漏れてくる
なんだろう?
いぶかしむ間に、姿見の中の巨大少女が、ゆっくりと腰をくねらし始めた
笑いをかみ殺して
両手をそれぞれの膝に乗せ
がに股の姿勢のまま
下品に腰をくねらせる
前後に
左右に
ゆっくり
ゆっくり
ゆっくり
だがこの彼女のゆっくりした動きは、その股間の陰毛を嵐の海の小舟のように激しく揺すぶったのだ

「わああああああああああああ」

僕は振り落とされないよう、前にもまして必死に陰毛にしがみついた
そんな僕の身体を容赦なく激烈な揺れが襲う
姿見の中の彼女は、もう爆笑しながら腰をくねらせていた
前後に
左右に
前後に
左右に
ゆっくり
ゆっくり
ゆっくり
ゆっくり
でも彼女のそんなたわいもない悪戯で、僕はぐらんぐらんと揺さぶられている
命を落としそうな危機に陥っている
当然だ
僕は彼女の股間に生えた陰毛にぶら下げられているのだ
その彼女が腰をくねらせれば陰毛はゆらゆら揺れる
そのわずかなゆらゆらが、僕には天地をひっくり返すほどの激震なのだ
涙目になってしがみつく僕の必死さなどこの意地悪少女には理解できまい
姿見の中では、はしたなく大股広げた美少女が自分の股間を見下ろしてげらげら笑っていた
その視線の先の陰毛に涙目になってぶら下がっているのが僕だ
いたたまれなくなって、僕は姿見から視線を切り、そして反対方向に目を向けた
・・・
!!!
・・・
・・・
・・・
そこにはピンク色の裂け目がばっくりと口を開けていた
長径100リリパット・メートルにも及ぶ底なしの大渓谷
・・・
女性器だ
僕は彼女の女性器の真ん前にぶら下げられていたのだ

「ほらほら、どう?あたしのまんこ?女の子のまんこをかぶりつきで見られるなんて、キミはラッキーだね、くすくす」

考えてみれば当たり前のことだった
だって僕は彼女の股間に生えた陰毛の一本にしがみついているのだ
陰毛の後方下部に膣口があることくらい男子高校生の僕でも知っている
振り向けばそこに女性器があることは当然だったのだ
だが
その女性器がこんなにもグロテスクであったとは
・・・
・・・
二重の襞で覆われ
生暖かくピンク色に火照って
ぬめぬめと湿り
淫猥なオーラを放散している
・・・
この下品な意地悪巨大少女は、悔しいけれど、そのビジュアルだけで判断すればとびきりレベルの美少女だ
そんな美少女が、股間にこれほど醜悪なものを隠し持っていたのか
・・・
更にその醜悪さを際立たせているのは
・・・
・・・
臭いだ

「・・・ごめんね、あたしのまんこ、臭いかもね♡・・・あ、ちゃんと洗ってはいるのよ。でも、キミはちょー小さいから敏感だよね、くすくす」

またしても僕の気持ちを見透かしたかのように、頭上からブロブディンナグ少女の声が轟いてきた
その通りだ
僕はいま、彼女の女性器から猛烈な臭気を浴びせかけられていた
腐敗したチーズをベースとしてアンモニアと柑橘系の酸が加わりそれでいてほのかに甘いミルクも入り混じった鼻が曲がるほどの悪臭
それが僕のすぐ目の前で長径100リリパット・メートルにわたってばっくりと開いた大渓谷からもわもわと湧き出してくる
目が回るほどの激臭
だというのに
だというのに
・・・
僕はこの吐き気を催すほどの臭気を、自ら進んで胸いっぱいに吸い込んでは吐き、吸い込んでは吐き、吸い込んでは吐き続けていた

「くすくす、キミ、童貞でしょ?童貞くんに女の子のまんこの臭いは刺激強すぎかな?」

ぐぐぐ
歯を食いしばっても、衝動が止まらない
呼吸が止まらない
あの激臭を吸い込みたくてたまらない
鼻が曲がり、頭が割れ、胸がかきむしられても、あの臭いを嗅がずにはいられない
僕が狂ったように荒い呼吸を続けていると、やおら目の前に二本の巨大な指が現れて、そして長径100リリパット・メートルの膣口にずぶりと突き刺さった
・・・
ぐっぱあああああ!
・・・
二本の指が巨大な膣口を豪快にこじ開ける
その向こうには、本当の漆黒の闇が広がっていた
今までにも増して濃厚な淫臭が暴力的に噴き出してくる
もわわわわわわわわわ
ううう
臭い
臭い
臭い
あの中に、身を投じたい
僕は我を忘れて巨大な陰毛から右手を放し、自分の股間にあてがった

「・・・さすがに勃ったでしょ?キミのちんちん、小っさすぎてあたしには見えないけど」

・・・
・・・
・・・
図星を指されて反論もできない
僕はこのブロブディンナグ少女の股間の陰毛にぶら下げられて
至近距離から巨大な女性器を見せつけられて
その悪臭をさんざんに嗅がされて
・・・
そして、いま、びんびんに勃起していた
・・・
・・・
完全な敗北を喫した僕に、巨大な意地悪美少女は追い打ちをかける

「くすくす、ブロブディンナグ人の女の子のまんこって、でっかいでしょ?キミから見たらものすごくでっかいでしょ?くすくす、せっかくキミがそのカワイイちんちんを勃てても、このでっかいまんこ相手にできることなんかないわよね?」

・・・

「あたしだけじゃないわよ。ブロブディンナグ人の女の子のまんこはみんなこんなにでっかいの・・・マーナのまんこもね」

!!!
マーナ?
なぜこのタイミングでマーナ?
意表を突かれた僕が思考を立て直す間もなく、この巨大な意地悪美少女の背後から別の人物の声が轟いた

「・・・おいおい、いつまで待たせるんだよ?」

若い男の声だ
初めて気が付いた
巨人はもう一人いたのだ
彼女と同年代の男の巨人だ

「・・・ったくしようがないなあ。文字通り全裸待機させてさ」

ぬっ
ブロブディンナグ人の男がその全貌を現す
褐色の瞳の少女と同じくらいの年恰好だが、体格は二回りくらい大きく、筋肉質の超大巨人だ
その股間では巨大な男根がびくんびくんと脈管を波打たせながらいきり立っている

「もう待ちくたびれたぜ。さあ、さあ、早くセックスを始めようぜ」

「ボブ・・・あんたったらいつも頭の中にはセックスしかないのね」

巨大少女がやれやれという表情で首を振る
ボブと呼ばれた巨大な少年は、そっぽを向く彼女の肩を両手で荒々しく掴んで引き寄せると、薄笑いを浮かべながら耳元で囁いた

「・・・そんなこと言ってるけど、お前だってセックスは大好きだろ?」

「・・・まあね・・・それに、実はそろそろ仕上げに入るためにもあんたが必要かな?って、思ってたところなの」

肩越しにボブの顔を横目で見ながら、褐色の瞳の少女は、にやり、と、笑う
ボブは満足そうに頷いた

「じゃ、始めようか・・・テレサ」

もう一度、逢いたい・続く