※ なお妹不在の模様。



登校中。

 シュウ 「ハックシュン!!」

俺は盛大にくしゃみをした。

 アスカ 「どしたの? 風邪?」

横を歩いていたアスカが俺の顔を覗き込んでくる。

 シュウ 「昨日ハルに全裸でオナニーの道具にされてそのまま寝落ちされた…」
 アスカ 「あはは。ハルちゃんお盛んだね~」

ケラケラと笑うアスカ。
ちなみにハルはいない。日直とかで先に家を出た。

俺はそんなアスカをジロリとにらみつける。

 シュウ 「つーか俺が縮められるのもハルが俺をオナニーの道具にするのも全部お前が原因なんだけど」
 アスカ 「まーまーそう言いなさんなって。あ、そーだ」

制服のポケットをゴソゴソとあさったアスカはその手に飴玉のようなものを取り出して差し出してきた。

 アスカ 「ほい。前に作った風邪薬」
 シュウ 「……。んなこと言って変な副作用とかあるんじゃないのか? 突然体が縮んだりとか」 

疑いの目を向ける俺。

 アスカ 「あはっ。大丈夫大丈夫、これはホントに風邪を治すためだけの薬だから」
 シュウ 「…」

しばしジーッとアスカを睨む俺だったが、アスカはニコニコ笑って手を差し出したままだった。
俺は疑いの目を向けたままその飴玉を受け取り、しばし考えた末に口に放り込んだ。
瞬間、体のダルさや息苦しさなどは一気に吹っ飛んだ。

 シュウ 「お、治った…」
 アスカ 「ほらね、言ったとおりでしょ?」

俺の前に回ったアスカが「にぃっ」と笑いながら俺の顔を覗き込んできた。

 シュウ 「…」

いつもこうやってまともなモノを作ってくれたら…。
俺はそう思わずにはいられなかった。


   *
   *
   *


学校へと着いた俺たちは自分の教室へと入る。

 アスカ 「おハロー」
 シュウ 「おーす」

テキトーな朝の挨拶をすればテキトーな返事が返ってくる。

 男子 「うーす」
 女子 「おはー」

教室にいるクラスメイトの何人かが振り返った。
俺とアスカはそれぞれ自分の席へと向かう。
その途中、

 女子 「おはよ~! 待ってたよぉ~…」

クラスメイトの女子の一人がアスカに泣きついた。

 アスカ 「あはは。また宿題終わってないの?」
 女子 「そうなんです…。教えてください…」
 アスカ 「はいはい」

自分の席にカバンを置いたアスカが腰にしがみついた女子を引きずりながらその女子の席へと向かう。

そんなアスカを見ていた俺に、窓際の席にたむろしていた男子たちが話しかけてきた。

 男子 「よっ、今日も一緒に登校か? 彼女持ちはうらやましいね~」
 男子 「よせよ。むなしくなるだけだぜ」
 シュウ 「だから彼女じゃねーっての」

毎日のように繰り返されるヤジに、俺はテキトーに答える。


   *
   *
   *


授業中。

カツカツと、先生が黒板にチョークを走らせる音が響き渡る。
この静かな空間というのはどうにも眠くなるのだが、午前中の授業から寝ていてはあまりに不甲斐なさ過ぎる。
しかし今の授業は数学。関数は苦手だ。眠たい頭では、先生が走らせるチョークで書かれる文字が呪文に見えてくる。喋る言葉も呪文だ。

そんな風に俺が船をこいでいた時だ。

 先生 「えー…ではこの問題を、十六夜さん」
 アスカ 「はーい」

指名されたアスカが立ち上がり黒板に寄って行った。
チョークを手に取り問題を答える。

カツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツカツ

 先生 「い、十六夜さん、もういいから」
 アスカ 「あ。すいません、つい」

あははーとアスカが苦笑する。
黒板には謎の数式がびっしりと書き込まれていた。教育レベルの二次関数問題の解答に、何故学会レベルの数式がいるのか。
先生は黒板に書き込まれた数式を見て唖然としてしまっている。クラスメイト達は「あらら、またやってるよ」みたいに笑っていた。

席へと戻ってくるアスカ。

 アスカ 「いやー失敗失敗」
 シュウ 「バカ」

眉をハの字にして頭を掻くアスカを一言で一蹴した。
天才とバカは紙一重。わかりやすい例だった。


   *
   *
   *


昼休み。

男子たちと昼を食べる俺。
その最中、

 男子 「しかしよー、なんでホントにお前と十六夜って付き合ってねーの?」
 シュウ 「はぁ?」

パンをかじりながら、俺はゲンナリとした表情で返した。

 男子 「ていうかうらやましい奴だよなー。あんなかわいい女の子に慕われて」
 男子 「そーそー。かわいいし気さくだし、しかもあの胸!」

男子たちがくぅぅ~! と歯噛みをする。

 シュウ 「…」

俺は冷めた顔をしていた。
たしかにミテクレはいいかも知れないが中身はマッドサイエンティストだ。俺を使って様々な非人道的な実験を繰り返して来た。
こないだの休日は首筋に打たれた注射のせいで俺は液体にされていた。俺の体が水になって崩れ落ちていく様をケラケラ笑いながら見ているアイツの顔はかなりウザかった。
毎日がコレの繰り返しだ。
事あるごとに俺をモルモット代わりにするような奴に、最早ウンザリ以外の感情はわいてこない。

 男子 「でも十六夜は絶対お前に気があると思うぞ」
 シュウ 「ただの幼馴染だっつの」
 男子 「いやいや、こないだのアレを見る限りかなり優先度が高いと思いますけどね」
 男子 「アレってなんだ?」
 シュウ 「ああ、あの移動教室の時のか…」

俺たちはその時のことを思い出していた。


  *


俺たちが移動教室のために渡り廊下を歩いていた時の事。

 男子 「お? あれ十六夜じゃね?」
 シュウ 「ん?」

見てみれば中庭の校舎の影に確かにアスカがいた。
そしてその横には男子が一人。

 男子 「サッカー部エースの先輩だぜ。ていうか十六夜告白されてる?」
 女子 「あ、ホントだ! これは見届けないと!」
 シュウ 「…」


 先輩 「い、十六夜さん! 俺と付き合ってくれ!」
 アスカ 「無理」

開戦から決着まで2秒。

 先輩 「な、なんで!?」
 アスカ 「興味ないし」

真顔で手を振るアスカ。
先輩は真っ白になって固まってしまった。

 女子 「うわ、アスカばっさりいった~」
 男子 「これは死ねる…」
 シュウ 「お前らな…」

デバガメたちが好き勝手に言う。

 先輩 「ど、どうしてもダメですか…?」
 アスカ 「うん。ダメ、絶対。あ、シュウ~!」

覗いていた俺たちを見つけたアスカが先輩を放り出して手を振りながら駆け寄ってくる。
ぐふっ。先輩は倒れた。

 アスカ 「ねね、新しいアプリ作ったんだけど試してみない?」
 シュウ 「いや…お前なぁ…」


  *


 男子 「……だぜ? あの先輩、女子からモテまくりなんだぞ。それなのに十六夜に告って、なのに十六夜はコイツを取ったと来たもんだ」
 男子 「マジか。本当にうらやましすぎる奴だなコイツ」

グリグリと俺の頬に菓子パンが押し付けられる。

 シュウ 「…」

  バク

 男子 「あぁ! 俺の昼飯が!」

男子が悲鳴を上げた。


   *
   *
   *


放課後。

 シュウ 「…だってよ」
 アスカ 「あはは、あたしとシュウがねー。物心つく前からの付き合いなんだからもう家族みたいなものなんだけどね」

廊下を並んで歩く俺とアスカ。

 アスカ 「いっそのこと付き合ってみる?」
 シュウ 「出来れば赤の他人になりたい」
 アスカ 「他人でも実験するのはやめないけど」
 シュウ 「鬼か」

ジロリと睨んだ先ではアスカが「えへへー」と笑った。

 シュウ 「…で、用事ってなんだ?」

帰る途中でアスカに引き留められた俺は部室へと向かっていた。
悪の組織・GTS研究部の部室へと。

 アスカ 「新しいアイテムを作ったんだけどちょっと行き詰っちゃっててね。協力してもらおうと思って」
 シュウ 「どうせまた変な道具作ったんだろ…」
 アスカ 「そんなことないよー。画期的なアイテムだし」
 シュウ 「…」

俺はげんなりとした顔でため息をついた。


   *


GTS研究部・部室。
ただの部活動の部室だが、中は異様に広い。
部室の出入り口のある大部屋は教室くらいの広さがあるしそこから更にいくつもの個室・給湯室・トイレへと繋がる道がある。

 シュウ 「いったいなんなんだこの部活は…」
 アスカ 「そりゃもちろんGTSの研究よ」
 シュウ 「それがわからんて言ってるんだよ」

などと言うやり取りをしながら個室の一つへ向かう。
ちなみに他の部員はいないらしい。

そして個室の中に入った。個室の中もそれなりに広い。どんだけ広いんだこの部室。
んで、そんな広い部屋の中には、部屋の床の半分ほどを埋め尽くして、ミニチュア世界が広がっていた。

 シュウ 「だろうと思ったよ…」
 アスカ 「まーまー」
 シュウ 「…それで、俺は何をすればいい?」
 アスカ 「ほい、コレ」
 シュウ 「ん?」

手渡されたそれを見る。

 シュウ 「ヘッドギア?」

ヘッドホンやらなにやらいろいろくっついたヘルメットみたいなアイテムだった。

 アスカ 「そ。そこの椅子に椅子に座ってそれつけてみて」
 シュウ 「はぁ…はいよ」

やれやれ。俺は椅子に腰かけて、そのヘッドギアを装備した。
するとその瞬間、目の前がぐにゃりと動いて頭がクラっと来た。まるで立ちくらみのように。
しかしそれはすぐに収まった。なんだったのかと思い頭を振って目を開けてみる。

だが、ようやく焦点があったとき、そこに見える景色はまるで別の世界だった。
行き交う大勢の人々。立ち並ぶ高層ビル群。
俺は、大都会の交差点の真ん中に立っていた。

 シュウ 「あれ…部室の中にいたはずじゃ…」

しかしここはどう見ても部屋の中ではない。
しかもヘッドギアをつけていたはずなのに、それもなくなっている。
まったく…。今度は何を作ったんだ…?
などと俺が思っていた時だった。

 アスカ 「シュウ、聞こえるか~い?」

凄まじい爆音で、アスカの声が轟いた。
あまりの大きさに、俺は両耳をふさいでうずくまり悲鳴を上げた。周囲にいた人々も同じである。
周囲のビルの窓ガラスが軒並み砕け散り、俺の周囲でうずくまっている人々に降り注いだ。

 アスカ 「あらら、ちょっと調節が甘かったか。ごめんごめん」

先ほどよりは控えめな、しかしそれでも街をビリビリ震わすほどの巨大な声が聞こえてくる。

 シュウ 「あ、アスカ! どこにいるんだ!!」
 アスカ 「ここ、ここ。シュウの真上」
 シュウ 「な…」

俺は上を見た。ビル群の中の、広い交差点の中央からは、街の上の空を見上げることができる。
しかし今そこにあるのは空ではなく、アスカの巨大な顔だった。
ニッコリと笑う巨大な笑顔が、雲よりも高い位置から見下ろしてきていた。
アスカが「やっほー」と手を振ると周囲の雲が散らされた。

 シュウ 「どういうことだ! いつの間に巨大に…」
 アスカ 「いやいや、あたしが巨大化したわけじゃないよ。いや、シュウが小さくなったわけでもないけど」
 シュウ 「なに?」
 アスカ 「今シュウがいるのは部屋の中にあったミニチュア。シュウが着けたヘッドギアでミニチュアのアバターと五感をリンクさせてるの。つまり、小さくなったわけではないけど小さくなった状態を体感してるって感じかな」

雲より高い位置にある巨大アスカが喋るとやはり街中が震える。
地面が地震のようにグラグラと揺れた。空が雷鳴のようにゴゴゴゴ…と唸る。
アスカが何かしてくれたようで俺、というか俺のアバターはさほど苦痛ではなかったが、俺の周囲では人々がアスカの声の大きさに耐えきれずのたうち回っている。

 アスカ 「あ。心配しなくてもいいよ。それもアバターだから。NPCって言えばいいかな」
 シュウ 「だ、だからって…」

上空の巨大アスカの顔はのほほんとした感じに言ったが、今の俺にとっては彼らは等身大の人間だ。どうしても、気にならないわけがない。


今、俺のいるこのミニチュアは1万分の1サイズらしい。
俺はそのミニチュアの端にある都市にいた。
そしてアスカは、そんな俺のいる都市をミニチュアの外にしゃがんで見下ろしてきているようだ。真下から見上げれば、あの巨大な顔の左右には巨大な膝が見える。しゃがみこむために折り曲げられた脚は前方に大きくせり出し、このミニチュアの上空に進入していた。

アスカは今 しゃみこんだ脚をわずかに開いて、左右の膝の上にそれぞれの手を乗せ、俺を見下ろしてきている。
しかしその恰好は、このミニチュアからだとスカートの中が見えてしまうのだ。あのパンツの高さは上空1000mを超える位置だ。街のどこからでも十分に見上げられる高さと巨大さだった。
何故だろう。普段ハルのむき出しの股間を見せつけられているせいか、アスカが無意識のうちに開放してしまっているスカートの中のパンツを見て逆に背徳的な気分になる。
思わず顔をそらしてしまう俺だった。

 アスカ 「なになに? あたしのパンツ見て顔赤くしてるの?」
 シュウ 「ぶほっ! ……って、気づいたんなら隠せよ」
 アスカ 「いやいやいや~、そんなこと言って本当は見たいんじゃないんですか~? お兄さん~?」

ニシシシと笑うアスカがスカートの中のパンツの前の部分に指をかけると、それを横に引っ張り始めた。
柔らかな布はあっさりと動き始めて、やがてそこに隠れていたアスカの割れ目を―――。

 シュウ 「ば、バカ! やめろ!」
 アスカ 「もうシュウったら真面目なんだから。あたしのだってハルちゃんのだって見たことあるでしょ」
 シュウ 「そういう問題じゃないだろ! だいたいお前はもっとこう………っていうか俺が見えてるのか?」

俺は疑問に思った。
俺とアスカは普通に会話している。ミニチュアの住民である1万分の1サイズの俺と、そんなミニチュアを見下ろすアスカとで。
声はヘッドギアを介せば届くかも知れないが、俺の体を見つけることは不可能なはずだ。
何故なら1万分の1サイズならば、俺の身長は0.17mmmというシャープペンの芯にも劣る大きさだからだ。砂粒以下だ。それもあくまで一番値の大きい「身長」で、である。体の幅はさらに値が小さい。
人間が、顕微鏡などの道具を使わずに、顔も近づけていないこの距離で見つけられる大きさではない。ましてや表情を読み取るなどありえない話だ。
が、

 アスカ 「あーコレ? 前に作った薬で視力を上げてあるの。シュウの瞬きだって見逃さないんだから」
 シュウ 「…」

にぃっと笑うアスカに、俺は唖然としていた。
視認すら難しい今の俺を、その瞬きまで見分けるとは…とんでもない視力だ。
まさに千里眼…いや、神の目か。

俺は頭が痛かった。
人の五感をミニチュアの分身とリンクさせる道具を作ったかと思えば、それを視認するために超視力を発揮できる薬まで持ち出して。
いずれも特定の分野では世紀の大発明を謳うことができるだろうに、こんなところでこんなことに使用して…いったい何がしたいのやら。

はぁ…。最早アスカへのリアクションとしては定番となったため息をつく俺。
そして、ふと思う。

 シュウ 「…で? そんなものまで持ち出して、結局 俺に何をさせたいんだ?」
 アスカ 「そりゃあ決まってるじゃない」

そう言って立ち上がるアスカ。
この街の上空を埋め尽くしていた巨大な顔が一瞬で空の彼方へと飛び去って行く。もう俺からはアスカの顔はほとんど見えず、見えるのは天に向かって伸びる2本の巨大な脚だけだった。 

 アスカ 「こうするの」

空の彼方からアスカの声が轟いた。
直後、ミニチュアの外におろされていた右足が持ち上がり、このミニチュア都市の上空に掲げられた。
俺からは、突如空に現れた、超巨大な上履きの靴底を見上げることができていた。靴底が赤いゴムの、女子用の上履きのそれである。
24cmの足を入れて、普段から床を踏みしめていて黒く薄汚れている上履きの靴底が、街の空を埋め尽くしたのだ。
今や全長2400mもの値となった上履きは、容易に周囲を直下に収めている。

 シュウ 「な…」

あまりにもあっさりと一瞬で上空を覆ったその巨大な上履きの存在に俺は呆気にとられる。
そしてその上履きは、当たり前のようにおりてきた。


  ずっしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!


直下にあったビル群が一瞬で踏み潰される。俺がいた街から数km離れた場所だった。
しかしその凄まじすぎる衝撃は俺のいた街にも壊滅的な破壊をもたらす。

 シュウ 「うわあああああ!!」

俺は悲鳴を上げてうずくまった。
足元の道路が一瞬でひび割れアスファルトが砕け飛び上がった。
周囲のビルが崩れ落ち、ビルの谷間にいた人々に降りかかる。
あっという間に、俺の周囲は瓦礫の山が連なる地獄と化した。

しかしそれで終わりではなく、ミニチュアの外にあった左足も持ち上がってこの世界に踏み込んできた。
再び凄まじい揺れが街を襲う。

アスカがミニチュア世界の上に立った。それだけで周囲の街は壊滅してしまった。
アスカの足の直撃を受けた付近ではすべての建築物が倒壊し瓦礫に変わってしまっている。
俺の転がる付近も似たような状況ではあったが、崩れかけながらもまだ原形を保っているビルがあるだけ、衝撃は多少はマシだったのだろう。

俺の体は激しく打ちのめされていたが、手足を踏ん張って何とか体を起こす。
そしてなんとか開いた目に飛び込んできた景色は一変していた。
俺がいた場所はビル群の大きな交差点の真ん中で、周囲には高いビルが取り囲むように乱立していたはずだが、今はそのすべてがボロボロになりつつもギリギリのところで倒壊を免れているか、すでに瓦礫に変わってしまっているかの二択だった。
綺麗に舗装されていた道路は滅茶苦茶にひっくり返り地割れなどに車を呑み込んでいる場所まである。

俺の周囲には俺と同じくボロボロになって動けない人がいた。広い交差点の中央に近い位置だったからだろうか、崩れ落ちたビルの瓦礫などもそこまでは飛んできてはいないようだ。
しかしそれはほんの一握りの幸運な人々。残りのほとんどの人は倒れたまま動かなかった。そしてそんな姿の見える人の何百倍もの数が、周囲の瓦礫の下敷きになっているだろう。
まさに地獄だ。阿鼻叫喚がそこにあった。
俺は体が震えあがり、腹の底から恐怖が悲鳴という形で飛び出そうだった。

しかしそんな悲鳴さえも、直後に上空から降ってきた凄まじい爆音の声によって押し潰されてしまう。

 アスカ 「おーい、だいじょぶか~い?」

アスカの呑気だがとてつもなく巨大な声が街を激しく揺るがした。
見上げれば街の上空、はるか彼方、やあ前かがみになってこちらを見下ろしてくるアスカの巨大な顔が見えた。
雲より高い位置である。巻き上がる土煙で隠れてしまう。

そうやってアスカの顔を見上げたことで俺は街の頭上をアスカのスカートが覆っていることに気づいた。
そこから地上に伸びてくる巨大な脚の一本は俺のいる街の右向こうへ、もう一本は左向こうへとおろされている。
つまり今、アスカは俺のいる街を跨いでいる。
腰に手を当て、軽く前かがみになり、両足の間にある俺のいる街を見おろしてきているのだ。

街を挟んでおろされている二本の脚はまさに超巨大な塔。
途中までは白のハイソックスに包まれているがそこから先はむき出しの肌が続き、やがてはミニスカートの中で合わさる。
超巨大な肉の塔。それは日本がようやく完成させたあのスカイツリーよりも高い。程よい肉付きの脚はスカイツリーよりもはるかに重いだろう。

ヘラヘラと笑いながら見下ろしてくるアスカ。
そのアスカの顔と、俺の周囲の地獄とのギャップに、俺は吐き気がしてきた。

 シュウ 「なんだよこれ! なんのつもりだ!!」
 アスカ 「よくぞ聞いてくれました! これぞ『巨大娘に蹂躙される世界にいる小人を体感できちゃうゾ! 君』です!」
 シュウ 「は?」

アスカの能天気さが、俺の頭から思考を欠如させる。

 アスカ 「まぁその名の通り「ミニチュア都市」と「アバターとリンクできるヘッドギア」を使って、あたかも自分が巨大娘の蹂躙する世界にいるかのような体感をするだけなんだけどね。ただリンクの度合いがいまいち把握できなくてね、シュウに手伝ってもらおうと思って」
 シュウ 「……。手伝うってのはまさか…」
 アスカ 「そ。今からあたしがこのミニチュアの中を歩き回るから、シュウにはそれをしっかり体感してもらいたいわけですよ」
 シュウ 「…」
 アスカ 「まぁシュウを追っかけまわしたりはしないからそこは安心して。この大きさ設定じゃ逃げるのなんて無理だしね。んじゃ始めるよー」

言って、前かがみだった体を起こしたアスカはミニチュアの中を歩きだした。
直後から、ミニチュア世界全土を凄まじい揺れが襲い始める。


  ずっしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!


     ずっしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!


アスカの履く上履きが踏みおろされるたびに周囲の地面が吹き飛ぶ。
小さな町などはアスカの何気ない一歩だけで消滅してしまった。大きな町ともなれば流石に一歩で消し飛ばされてしまうということはないが、壊滅してしまうことに変わりはない。
全長2400m幅900m。とてつもなく巨大な足がとてつもなく巨大なアスカのとてつもない体重のすべてを受け止めて踏み下ろされるのだからその破壊力はとてつもないものになる。
このミニチュア世界のどこにも、あの巨大な足に抵抗できるものは存在しない。
しかも今は上履きまで装着しているのだ。画鋲を踏みつけても大丈夫なように作られている上履きである。たとえこの世界に大巨人の足に傷をつけられるほど凶悪な突起があったとしても、今のアスカはそれさえも平然と踏み潰してしまえるのだ。
ただでさえ無敵なものが、無敵の上履きを装備して最強になった。
防御において最強になると、攻撃ではさらに最強になる。

次々と町を踏み潰していくアスカ。
足が踏み下ろされた場所には、巨大な足跡が残される。
上履きの靴底の模様が刻印された、超巨大な足跡が。


 *

アスカが離れていくと揺れはだんだんと小さくなっていったが、それでも通常の地震とは比べ物にならないくらい激しいものだった。
ところどころでギリギリ無事だった建物が崩れ落ちていた。崩れ落ちてしまったあとの瓦礫の山が揺れで土石流のように更に崩れ落ちるところもある。
とても立っていることの出来ないような揺れの中、俺は地面の上を転がされ続けていた。
激痛にのたうつこともできない。
ただただ地面の上で放られ続けるしかなかった。

周辺の人々も同じような状況だが助けることなどできない。
自分の身を守ることで精いっぱいだからだ。
目の前の人間がこうして遠いアスカの一歩で揺れる地面の上で跳ね飛ばされ、再び地面に落下したときに息絶える。
そんな光景からは文字通り目をつぶって逃げていた。

しかしそうやって目を閉じ暗黒の世界を見つめていた時だ。
不意にその暗黒に映像が映る。目を開いたわけではない。
瞼の裏に、まるでテレビの映像のような別の場面が映し出された。

どこかの街。高層ビルなどがいくつもニョキニョキと建っていてそこそこ発展した場所だとわかる。
そして、その場面を見ている俺(?)とは街を挟んで反対側に巨大なアスカが立っていた。
ビル群の向こうに、地面におろされている上履きが見える。上履きの方が高いという証拠だ。
そこから上を見上げて見上げて見上げて、ようやく顔が見えてくる。長く巨大な脚を上に見上げ、オーロラのようなスカートを通過して、制服を着ている上半身のおなかあたりを雲が通過し、そしてようやく顔に至った。
街と見比べることができた。やはりとんでもない巨大さだ。

と、そんなアスカが、その場面を見ている俺(?)の方を向くとニシシと笑って手を振った。
俺(?)のことがわかっているのか?
そしてその振っていた手の指でちょいちょいと下を刺す。
何かと思いそちらを見るとまたあのビル群のある街が見えてきた。

そしてアスカが右足を持ち上げた。ビル群の向こうにあった巨大な上履きが、ぐわっと宙に浮かび上がる。
そんな巨大な上履きのかかとが、ビル群の向こうに着地した。俺(?)からは、巨大すぎるアスカの上履きの底がはっきりと見えた。上履きの底の模様には土が詰まっている。ところどころは白い砂っぽいものが詰まっているが、それは踏みつけたビル群の残骸だろうか。

俺が、そんな巨大で広大な上履きの底を見上げ恐々としていると、その上履きの底が、ゆっくりと降りてきた。
かかとを軸に、つま先を地面に着けようと足が動き始めた。直下にある街が、上履きの作り出す巨大な影に包まれ始める。
ゆっくりゆっくりと影が街を覆っていく。足が傾けられるほどに影は広く、濃くなっていく。
どんな超高層ビルさえも、天辺から陰に包まれていた。
まだこれだけ建物が無事で残っている街なのだから多くの人々が残っているのだろう。彼らは上空から迫る超巨大な上履きの靴底を見て逃げ回っているのだろうか。その様子は、俺(?)には見えなかった。

やがて、傾いて下りてきた上履きの靴底が、街のビルの一つの天辺に触れた。強大な力で上からのしかかる凄まじい圧力に、靴底に触れたビルはガラガラと崩れ落ちてしまった。
同じように靴底に触れたビルが次々と崩れ始める。迫る上履きの底を、いくつものビルが集まっても一瞬も止めることができない。上履きの迫る速度のすべては、アスカのさじ加減で自由自在である。
ほとんどの超高層ビルが靴底に触れ始める頃には、すでに上履きのつま先は地面に着く直前だった。俺(?)からは、ほんの少しだけ持ち上げられている超巨大な上履きのつま先を正面から見ることができている。
靴底の下の街は夜のように暗い。そんな街には今、上から押し潰され崩れ落ちるビルの瓦礫や、靴底の模様に詰まっていた土などが降り注ぎ、逃げ回る人々に襲い掛かっていることだろう。

しかしそんな人々も、その1秒後には、ぴったりと地面を踏みしめた上履きの下敷きになって一人残らず踏み潰されていた。
俺(?)の視界には、ビル群の真ん中にそれらを踏み潰して鎮座する超巨大な上履きがあった。ゆっくりと下ろしたせいか周囲への被害は少なく、上履きの側にあるほとんどのビルが無傷でそのまま建っていた。
だが直後、アスカがつま先を支点に上履きをグリグリと動かしたせいで周囲のビルはことごとく踏みにじられ、結局その街は全滅した。

街を踏みにじった足を元の位置に戻したアスカが俺(?)を見下ろしてくる。

 アスカ 『どう? ちゃんと見えてた?』
 シュウ 「み、見えてたけど…。どうなってんだ…? 俺はあの街にいたはずなのに…」
 アスカ 『それはカメラモード。リンクさせたアバターの目から見るんじゃなくて、ミニチュアの中を、まるでカメラでも仕掛けてあってその映像を見てるかのように見ることができるモードなの』
 シュウ 「見てるかのように見ることができる…。つまりこの景色が見えてるこの場所に、俺のアバターがいるわけじゃないんだな?」
 アスカ 『そ。そこにあるのは映像を見るためのカメラとしての機能だけ。立脚点て言うの。MMDやメタセコとかの画面を見てる感じ? まぁそんなものよ』
 シュウ 「……よくわからんが、とりあえず今の俺(?)は、そこに設置されたカメラみたいなものなのか」
 アスカ 『そそそ。そこに居るかのように見えるけどそこには居ないってことね。ほら、揺れは全然感じないでしょ?』

言うとアスカは俺の目の前でぴょんぴょんと飛び跳ねて見せた。
周辺を凄まじい大地震が襲い周囲のすべての町が消し飛んでしまったが、それを間近で見てるはずの俺はなんの揺れも体感できなかった。

 シュウ 「…確かに、なんの揺れも感じない」
 アスカ 『今のシュウにあるのは物を見る『視点』だけだからね。なんならアバターじゃなくてその状態でいる? 高さや位置も自由に変えられるし、見るだけならそっちの方がいいかも』

再び歩き始めるアスカ。
あの巨大な上履きが、また別の街を踏み潰す。

俺という視点は高度3000m付近まで上昇した。
ここからだと周囲をそれと認識できるレベルで見ることができる。これ以上上昇すると高すぎてものものを判別できない。
3000mと言ってもアスカの膝にも届かない高さなのだが。

そしてその高さに位置した俺からは、超巨大なアスカが上履きを履いた足で極小の町を次々と踏み潰していく様が見えた。
超高層ビルとてアスカと比べれば小石程度の大きさだ。しかしアスカのあまりにも巨大すぎる体の前に脆すぎるその構造は、上履きに包まれたアスカの足にはほとんど感触も感じられない。
アスカの上履きは、あっさりと街を蹴散らしていく。

 シュウ 「……お前はなんか普通だな…」
 アスカ 「そう? まぁハルちゃんたちみたいに快感や優越感を感じたりはしないよ。別にそんな属性ないし」

言いながらアスカは足元の町を、踏み下ろした上履きを横にガーと動かすことですり潰していた。
町の痕跡の一切が抹消された。

あまりに淡々と、町を潰して見せるアスカ。
表情には特に快感を感じた様子は見られない。
アスカにとってはこれが快感を得るための遊びではなく、作ったアイテムの調整だからなのか。

 アスカ 「よっ。ほいっ」

まるで作業のように、なんの感動もなく街を消し去っていく。

 アスカ 「どう、小人になった気分は? 興奮する?」
 シュウ 「するか! むしろドン引きだわ! それにこの『カメラモード』だと体感が『視界』だけになって妙に実感ないしな…こうして疑似的に空も飛べるわけだし」
 アスカ 「まーそうだよね。100%を体感するならアバターを使用して、『見て』楽しむだけならカメラモードのがいいかー」

ふーむ。と腕を組む。
踏み尽くされ、滅茶苦茶になった世界に聳え立つ超巨大な考える風な女子というのは奇妙なシュールさがある。

 アスカ 「ま。今度もっと色々な機能つけたいし、もうちょっとデータ集めておきましょうかね。んじゃシュウ、もうちょい付き合ってね」

アスカは片足を持ち上げそれに手を伸ばすと、上履きを脱いだ。
もう片方の足も同じように脱ぐ。
手に持った上履きはポイ、ポイと投げ捨てられた。


  ずっどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!


上空から落下してきた2400mにもなる巨大な上履きの直撃を受けて、二つの町が消し飛んだ。
更には靴下も脱いで、同じようにミニチュアの上に投げ捨てる。


  ずずうううううううううううううううううううん!!!


   ずずうううううううううううううううううううううううん!!!


それぞれが町ひとつを覆うこともできる超巨大な靴下がいくつかの町を下敷きにした。
バフッ!! それが落下したことにより周辺にはビルさえも吹き飛ばせそうな爆風が発生し、まだ生き残っていた人々や車はもちろん、家なども住宅地まるごと吹っ飛んだ。

 ずしん! ずしん!

素足になったアスカの両足が瓦礫となった町々を踏みしめる。



の瞬間、俺の意識が途切れ、ハッと気づいた時には、またどこかの町にいた。
立ったまま気絶していたかのような感覚だ。周囲に全く見覚えがない。どこから来たのかもわからない。
しかし俺の周囲が悲鳴を上げて逃げ惑う人々によって大パニックになっていることを考えると、ミニチュアの中のどこかであることは確からしい。

などと思っていると、

 アスカ 「ちゃんと接続できた?」

突如、アスカの凄まじい爆音の声が轟いて、俺を周囲人々もろとも地に這い蹲らせた。
なんとか見上げれば、上空に続く周囲の高層ビルの建物の頂点の、更に先へと延びる巨大な二本の脚があった。更に更にその上にはあの1万倍サイズのアスカの体があった。

 シュウ 「な、なにを…!?」
 アスカ 「シュウの意識を、別のアバターに再接続させたの。丁度足元にあった町でね」
 シュウ 「………なんで?」
 アスカ 「そりゃあやっぱりこれが『巨大娘に蹂躙される世界にいる小人を体感できちゃうゾ! 君』であるからには、しっかりと体感してもらわないとね」

言うとアスカは右足を持ち上げ、俺のいる町の上空に掲げて見せた。
俺の見上げていた空は、一瞬でアスカの巨大な足の裏に占領された。地面を踏んでいたためにわずかに汚れた足の裏が、町の上空を覆い陽の光をさえぎる。
空を埋め尽くすほどに巨大で広大な足の裏。それが、俺から見ることができるアスカのすべてだった。

 アスカ 「じゃあいくよー。もちろん、逃げてもいいからね」

アスカが足を下ろし始めた。
それはアスカのとんでもない巨大さを抜きにしても逃げられる速さではなかった。
素足は、すぐに町を踏み潰した。
悲鳴を上げる間もなく、俺は踏み潰された。



と、思ったらまた意識が回復した。
また別の町にいた。
この町でも、同じように人々が逃げ回っている。


  ずっしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!


     ずっしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!


凄まじい揺れが町を襲い、俺や周囲の人々が崩れゆく道路の上を跳ね回る。
歩いてきたアスカが、再び俺のいる町を見下ろしてきた。

 アスカ 「どうだった? 踏み潰される気分は」
 シュウ 「お、お前なぁ…」

へらへらと笑いながら訊いてくるアスカに、俺は何も言うことができなかった。
女の子に踏み潰されて息絶えるなど、ありえないことだ。なんか2話でもあった気がするが、まったく覚えていない。

再び地面が激しく揺れ始める。
しかしアスカが歩き出したわけではなさそうだ。
何が起きたのか、と思っていると、ビル群の向こうから、そんなビルたちよりもはるかに巨大な足の指たちが現れた。
アスカは左足の足の指だけをちょいと上げて、左足を俺のいる町のほうへと滑らせてきたのだ。


  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!


岩石どころではない。山や岩盤が砕ける凄まじい音が響き渡った。
今のアスカの足の指は普通に地面におろされているだけでも高さ100mを優に超える。
しかし今、持ち上げられている指の高さ400m近い高さになっていた。超高層ビルよりの長く、太く、巨大な足指たちがガバッと持ち上がったまま町に迫ってくる。

左足はすぐに町に到達した。
足の指を持ち上げたまま前進してきた左足はそこにあった町並みをまるで津波のように呑み込んでつま先の下ですり潰していく。
超高層ビルでさえも、あの持ち上げられた足指の高さ以下の大きさしかない。
この町に、あのつま先の津波に耐えられる建物は存在しない。
前進してくるつま先に触れたビルは一瞬で粉砕され、その瓦礫さえものしかかってきた超巨大なつまさきの途方もない重量の下で粉々にされた。
ビルでさえあっさりと呑み込んでしまう巨大なつま先を前に、人間など逃げられようはずもない。
ビル群ごと、町ごと、無数の人々がアスカのつま先の下に呑み込まれていった。
明らかな意思をもって発生している津波は人々を一人も逃さなかった。

すでに俺の目の前にアスカのつま先が迫っていた。
あとビルいくつか分 先にまで来ていた。
凄まじい速度で迫る巨大なつま先に、俺の思考は停止していた。
直後、つま先は俺がいた部分をあっさりと通過し、俺はそのつま先の下敷きになって見えなくなった。



と、思ったらまた意識が回復した。
しかしまたすぐに途切れそうだ。
復活した直後から、上空からアスカが笑いながら見下ろしていたからだ

アスカの巨大な右足が持ち上げられて俺のいる町の上にかざされた。
その足が地上めがけておりてくる。
しかし今度は、どうやら町ごと足で踏み潰してしまうのではなく、足の指だけで潰すつもりのようだ。
右足の、巨大な足の親指の腹が、俺の上空を埋め尽くした。足の親指だけでもその幅は200~300mはあるだろう。俺のいる、大きな交差点の上空を埋め尽くすには十分すぎる大きさだった。
親指が交差点の周囲のビルの天辺を押し潰しながら下りてくる。それら瓦礫が逃げ回る周囲の人々の上に降り注いだが、それはなんかもう、どうでもよかった。
今 目の前に、そんな瓦礫などどうでもよく思えるくらいに巨大な足の指の腹が迫っていたからだ。
ズシン。俺の小さな体はアスカの巨大な足の指の下敷きとなって潰れた。


またすぐに意識が回復した。
しかし今度はどこかの町の交差点ではなく、どこか建物の中のようだった。
オフィスか。周囲には机や椅子、書棚があり、そしてそれらが激しく倒れまくっている。
ビル自体が激しく傾いている。俺同様、このビルの中にいるサラリーマンやらOLが揺れまくるビルの中で転がりまわっている。中にはその勢いのまま窓から飛び出てしまう者たちもいた。

何が起きているのか、俺にはすぐに理解できた。
アスカが調節か何かしてくれたのだろう。俺は俺の頭の中の一部に、あの『カメラモード』の時のような映像が流れていることに気づいた。
そこには左足で片足立ちになり、右足のつま先でビル群をぐしゃぐしゃと掻きまわしているアスカの姿が映っていた。
ビルたちはアスカの指が触れただけで粉砕され崩れ落ちてしまっている。

そうやって町を滅茶苦茶にしたアスカが町からつま先を引き抜くと、その足の親指と人差し指の間には小さなビルが挟まっていた。
同時に、この映像を頭の隅に見ている俺自身に、強烈なGがかかる。
足の動きに連動した揺れ。
つまり今 俺やサラリーマンたちのいるビルは持ち上げられたアスカの足の指に挟まれているのだ。
クスクスと笑うアスカがビルを挟んだ右足をぶんぶん振る。
俺の体に潰れそうなほどの圧力がかかる。また、ビルに残っていた大勢の人々が超音速でビルの外に投げ出された。
やがて映像の中のアスカが足の指をくねらせると、俺やわずかな生き残りのいるこのビルはあっさりと捻り潰された。


次にビルの中に復活したときはビルごと指先で押し潰された。
その次にビルの中に復活したときはデコピンでビルごと吹っ飛ばされた。
そのまた次に復活したときはビルごと摘まみ上げられ立っているアスカの目の高さにまで運ばれた。
窓の外のアスカのこのビルよりも巨大な目が、小さな小さなビルのその小さな小さな窓の向こうにいる小さな小さな俺を捉える。
視力の強化されているアスカだからこそできること。
窓の向こうの巨大なアスカの顔がくすっと笑った。
直後、ビルを摘まんでいた指がパッと離され、俺の他に数百人と入っているビルは、1万5千mあまりの高さから落下していった。
途中で雲を貫いて、凄まじい速度で落下していったビルは、地面に激突してクシャッと砕け散った。

その後も何度も何度も何度も復活しては潰されるが繰り返され、なんだか死ぬのが怖くなくなってきた。


次に復活したのはどこかの町の超高層ビルの屋上だった。
周囲の町並みが一望できる。
そうやって周りを見渡せば、あのアスカの巨体はすぐに見つけられた。30km以上離れた距離ではあるが、すぐ目の前にいるような感覚だった。

 アスカ 「お疲れ。小人気分は堪能できた?」

遠方のアスカが笑いながら言う。

 シュウ 「堪能なんてできるか。むしろ死ぬことの方を体感しまくってたぞ。死の体感だったぞ」
 アスカ 「まーまーそう言わないで。結構面白かったでしょ」

笑いながら近づいてくるアスカ。
ズシンズシンと地面が揺れる。
てか死ぬのが面白いわけあるか! いや、死んでも死んでも復活するのが未知の体験だったのは確かだけど。いや普通ありえないけど。

ふと、歩いて近づいてきていたアスカがまだ距離があるのに足を止めた。
するとその場に両膝を着き、両手も地面に着いたあと、地面の上にうつ伏せになった。丁度、アスカの顔が俺のいる町の手前に来るような距離である。
地面にうつ伏せに寝転んだあと、アスカは両手で頬杖をつきながら手前にある俺のいる町を見下ろした。
寝転んだアスカはそれでも凄まじい巨大さではあるが、立っていた時と比べればその高さは全然違うせいか、すごく小さくなったかのような錯覚に陥った。

 アスカ 「ふふ、やっぱり寝転がって見ても小さいものは小さいね」
 シュウ 「そりゃ当たり前だろ。ていうかまぁ…よくもここまで壊したもんだな…」

俺のいるビルは300mほどの高さがある。
町の周囲はもちろん、遠方までも見渡せる。
しかしここから見える町があったであろう場所は、みんなアスカに滅茶苦茶に踏み尽くされて原形すら保ってはいない。
火の手も上がっていなければ瓦礫一つ残っていない。完全に抹殺されたのだろう。
まだいくつかは生き残っている町もあるのだろうが、それはここからでは見えなかった。

アスカはまるで自分の部屋でベッドか床にでも寝転がるかのように普通な体勢でうつ伏せに横になっている。
そのまま顔の前に雑誌を広げてお菓子を食べている様などが容易に想像できる。
上半身にはブレザー。下半身にはミニスカート。靴下を脱いでしまった脚には何も着けていない。まさに学校から帰った直後とでも言う格好だ。
しかし今そこに敷かれているのは布団でもカーペットでもない。街だ。いくつもの町が寝転がるアスカの巨体の下敷きになっている。

つい先ほどまで無事だった町が二つほどあったのはわかっているのだが、それは今、地面に寝転がるアスカの胸の下敷きになっている。
今、目の前で両手で頬杖をついているアスカの、その腕の間の先にその場所が見える。
制服に包まれていながらも十分すぎるほどに膨らんだ胸だ。まさに山サイズとなった今のアスカの胸は、町を押し潰すのに十分な大きさだった。
右の胸と左の胸。それぞれの胸の下で町を一つずつ押し潰している。上から重圧をかけられた胸は制服の中でもむにっと広がり、ハミ乳になってさらに広範囲をその下敷きにしていた。
ビルの上からよく見れば、アスカの胸の下敷きになっている部分に向かって道が続いているのがわかる。そこに町があった証拠だ。
しかしアスカの胸は町一つで受け止めるには大きすぎた。結果、二つの町が凶悪な重量を持つ肉塊の下で押し潰されてしまった。
山にも匹敵するアスカの胸は町のすべてを地中深くにまで圧縮している。ビルや住宅地なども含め、数万人がその下敷きになったことだろう。
だが彼らのいた痕跡を見つけることはもう不可能だ。アスカの胸は、こうしている間にものしかかる上半身の重量を受けて地面にぐいぐいと押し付けられている。
そうされることで彼らの痕跡はさらにさらに押し潰され圧縮され、地の底にうずめられる。
アスカ的には地面にちょっと胸を押し付けている程度の感覚なのかも知れないが、そこでは自然現象顔負けの超圧縮現象が起きているのだ。
もしここでアスカが立ち上がれば、そこにはアスカが他の町の上に足跡を残してきたのと同じように、二つの巨大なクレーターを残してしまっているのに気付くだろう。
それぞれが町ひとつがすっぽりと入る大きさだ。水をためれば、湖にだってできてしまう。

 アスカ 「どったの? そんなあたしの胸元ばかり見て。あ、もしかしてムラムラしてきちゃった? やだもうシュウったら」
 シュウ 「ち、違…」

アスカが「しょうがないなー」という風に笑う。
俺としてはムラムラというよりビクビクとかソワソワとか、恐怖に駆られる衝動の方が強いんだが。

 アスカ 「でもハルちゃんもいつもこうやってシュウと遊んでるんだよね。ハルちゃんがハマる気持ちもわかるなー」

言いながらアスカが両手で頬杖をしていた手の内の片方、右手を俺のいる町に伸ばしてきた。
人差し指の指先で町をツンツンとつつく。
無事だった町の一角が、突如飛来した直径150mにもなる超巨大な指先に掻き回されて壊滅した。

 シュウ 「このドSどもが…」
 アスカ 「いやいや、ハルちゃんには負けるって」

クスクスと笑うアスカ。しかしその間にも人差し指は動かし続けられ、この町は、俺のいるビルを残して全滅した。

その後も俺のいるビルを壊れない程度にツンツンとつついて遊ぶアスカ。
寝転んで背後に投げ出され足はバタ足のようにパタパタと動かされ、周囲にあったまだ無事な町を殲滅している。

そして俺の眼前は、超巨大なアスカの笑顔で埋め尽くされていた。
ニコニコと笑うその顔の屈託のなさはシュウの知る限り昔のままだった。
異常なほどに超絶的な天才で、バカで、アホで、無邪気で、子供っぽい。

一言で言うならタチが悪い。
だがそれらをまるっとひっくるめてため息一つで許せてしまうのは、やはり幼馴染だからなのだろう。

 シュウ 「やれやれ…」

幼かりし頃を思い起こさせる奇妙なまどろみの中、俺は 超巨大な指先につつかれてグラングランと揺れ今にも崩れ落ちてしまいそうなビルの屋上で、その超巨大な笑顔を見上げて苦笑しながらため息をついた。





























 コノハ 「ぶちょーっ! いまっすかー!?」∠(>▽<)


 アスカ 「にょっ!」

  ガチャッ!

突然 個室のドアが開けられ、寝転んでいたアスカはビクッと飛び上がってミニチュア都市の上にズズンと正座する。
開け放ったドアからコノハが敬礼しながら顔を出した。

 コノハ 「あ! みっけ! 何やってるんです?」
 アスカ 「い、いやーあはは、ちょっと『小人体感君』の調節をしてて…」

珍しく歯切れの悪いアスカ。
などとやってると他のメンバーもぞくぞくとやってくる。

 ヤマト 「あら部長、こちらにいらっしゃいましたの」
 ミナミ 「こんにちはー」
 ヒメ 「おやおや? こちらに座ってるのはシュウ先輩ですか? ヘッドギアを着けてるということは、今はミニチュアの中に?」
 アスカ 「う、うん。調整を手伝ってもらってて…」


「「ほほう…」」


コノハとヒメの目がキラーンと光った。

 ヒメ 「ということは今シュウ先輩はミニチュアの中で小人になっているということですね!」
 コノハ 「マジで!? よっし! わたしが見つけるー!」
 ヒメ 「アバターなのですからついうっかり潰してしまっても大丈夫ですよね。行きますよ、ミナミ」
 ミナミ 「えぇぇ!? わ、わたしもなの!?」
 
まずはコノハが、ついでヒメと、ヒメに手を引かれたミナミがミニチュアに飛び込む。
1万倍級の巨大な上履きが、今度は6つもミニチュア世界に現れた。


  ずっしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!


     ずっしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!


 コノハ 「センパ~イ。どこですか~?」

すでにアスカによって踏み尽くされている場所をさらに踏み固めながら歩き回るコノハ。

 ヒメ 「先輩のことですからきっとまだ比較的無事な町に逃げ込んでいるのでしょう? この町は違いますか?」

ニヤニヤと笑いながら、被害の少ない町を狙って踏み潰していくヒメ。

 ミナミ 「せ、先輩! ふ、踏んじゃうかもしれないんで、わたしには近づかないでください!」

そして恥ずかしそうに顔を真っ赤にし、ミニチュア都市の中に踏み込んだまま一歩もその場を動かずにじっとしているミナミ。

ミニチュア都市に君臨する、三者三様の巨人たち。
その様子をミニチュアの外からあきれ顔で見ているヤマト。

 ヤマト 「あなたたち…、もう少し自制というものはできませんの…?」
 アスカ 「ま、まぁいつも通りってことでいいんじゃないかな」

三人がミニチュアに飛び込んでくる前に外に出ていたアスカがヤマトの隣で苦笑しながら言う。

その右手の指先には1cmほどの大きさの超高層ビルが摘ままれていた。その屋上には、当然シュウのアバターがいる。

 シュウ 「あいつら…。俺がいるかも知れない町を平気で踏み荒らして…」
 アスカ 「あはは。これも一応懐かれてる証ってことで。それよりも、シュウ」
 シュウ 「ん?」

俺は背後にあるアスカの顔を振り返った。
直後、俺をいるビルを摘まむ右手がアスカの口元に移動し、俺の視界は、アスカの巨大な唇によって埋め尽くされた。
さらにアスカは左手を口元に添え、同時に俺のいるビルを周りから隠した。いわゆる、ナイショ話をするときのポーズだ。

 アスカ 「…続きはまた今度ね…」

巨大な唇が動いて、ポソッと呟いた。

続き!? と俺が驚愕していると俺のいるビルを摘まむ右手がまた移動し、今度はアスカの顔の前に来た。
俺のいるビルを見下ろしながら、アスカがパチンとウィンクをする。

瞬間、俺の顔は真っ赤になってしまった。
バッと前を向き直る。

顔が赤いのが自分でもわかる。体が熱かった。
何がどうなっているのか。
続き!? さきほどまでの行為は大破壊に次ぐ大破壊で、決して心ときめくようなものではなかった。
しかし最後は、互いをよく知っているからこそ包まれる、二人だけの世界に入りかけてしまったかもしれない。
俺とアスカはただの幼馴染で、こんな顔が赤くなるほどに意識などしたことはなかったのに。

だがあのまま二人だけの世界が続いていたら、もしも二人が同じ大きさだったのなら、いったいどうなっていたのだろうか。

 シュウ 「………!? ……!? …ッ!!??」

アスカの摘まむ小さな小さなビルの屋上の上、俺は小さな小さな頭を抱えながら、その難問に頭を悩まされていた。



  *** おわり ***

















































  *** おまけ *** 


帰ってきたアスカはカバンをおろすと制服の胸ポケットから100分の1サイズの俺を取り出して低めのテーブルの上に置いた。

 シュウ 「え? まだ話 終わらないのか? せっかく微妙なオチつけたのに」
 アスカ 「まーこの話はただのおまけよ。↑までの話とはほとんど関係ないわ」
 シュウ 「てかなんで俺はお前の部屋に連れてこられてるんだ?」
 アスカ 「ほら、シュウ、今日の数学の時間眠そうにしてたじゃない? だからあたしが教えてあげようと思って」
 シュウ 「なんで俺は100分の1に?」
 アスカ 「テーブルの上に置いとけるんだから邪魔にならないでしょ」

などと言うやり取りをしている間にアスカは着替え始めていた。

 シュウ 「って俺がいるのにフツーに服脱ぐな!」
 アスカ 「今更なに言ってんの。裸だって見せ合った仲でしょーが。しかも最近」
 シュウ 「いやそうだけどそういう問題じゃなくてだな…」

などと言うやり取りをしている間にアスカは着替えを済ませていた。
説明シーンはこれでおわり。



アスカの家。
アスカの部屋。

低めのテーブルに下ろされた俺は俺サイズの低めのテーブルとイス、そして筆記用具を持って勉学にいそしんでいた。
俺の前方には100倍サイズの巨大ノートが広げられている。アスカのノートだ。
B5のノート。寸法は縦25.7cm横18.2cm。しかし今 俺からしたら100倍なので縦25.7m横18.2m。ページを開いてあるから縦25.7m横36.4m。体育館の床面積くらいの広さか。
そんなノートには授業の内容がきれいにまとめてある。
案外とんでもない理論なんかがビッシリと書き込まれてるのを想像してた人もいるかも知れないが、そう言った発明は大体思い付きでやってしまうので、こういうノートに書き込まれることはあまりない。

俺には巨大すぎるノート。
かとも思ったが意外とそうでもない。
この巨大なノートも、勉強の補佐でしかないからだ。
真に勉強を教えてくれるのは…。

 アスカ 「ほい、つまりこーいうことよ」

アスカの声が頭上から轟くと、俺の横から巨大な手がぬぅっと現れて、その巨大な指に持った巨大なシャーペンで巨大ノートの空いてるスペースに俺でも見やすいように小さめの文字で解説を書いてくれた。

 シュウ 「おー。なるほどな」

カリカリ。俺は自分のノートの問題を解く。
頭上からクスクスという笑い声が聞こえてきた。

100分の1サイズの俺は、アスカの目の前に置かれている。
前方のアスカがテーブルの上に広げたノートと、後方のアスカの体に挟まれて。
右側には巨大な右腕が。左側には巨大な左腕が。そして頭上には巨大な頭が。
ノートのある前方以外すべてが、100倍サイズのアスカの巨体で囲まれていた。

 シュウ 「はぁ…すっごい捗る。お前って頭いいだけじゃなくて教え方もうまいよな」
 アスカ 「そう? まぁ昔からハルちゃんに勉強教えてたりしたからじゃない?」
 シュウ 「の割に俺は全然ダメなのはなぜだ…」
 アスカ 「シュウは勉強しなかったからなー」

俺の頭上の、アスカの巨大な顔がクスクスと笑う。

ちなみに今のアスカは制服から着替え私服のセーターを着ている。
しかもただのセーターじゃない。裸セーターだ。

 シュウ 「一応訊くけど、なんで裸セーター?」
 アスカ 「十六夜さんが好きだから。丈の長いセーターって股間あたりまで隠れるでしょ? 一見穿いてないように見えるでしょ? 穿いてないのよ」
 シュウ 「すまん、どっちの十六夜?」
 アスカ 「筆者の十六夜。セーターって柔らかく伸び縮みするから、巨乳な子が着ると胸のラインがくっきり見えるのよね。その柔らかなふくらみがGJ。あとセーターの縦模様の変化が、巨乳っぽさをいい具合に表現してくれるとか」
 シュウ 「なるほど。巨乳な子が着ると巨乳が強調されると。………だからこうなるわけか」

俺は恐る恐る後ろを振り返った。
そこにはセーターに包まれた柔らかなふくらみがずっしりと鎮座していた。
アスカの巨大なおっぱいが、アスカがややテーブルによりかかるように前のめりな姿勢なために、テーブルの上にズンと乗っかっている。
もともとの巨大さも相まって山のような存在感である。
背後から、常に凄まじいプレッシャーを感じる。
威圧感だ。
巨大すぎる存在が、巨大感が、そのまま威圧感となってのしかかってくる。

 シュウ 「ヘタに体を動かされたらこの胸の下に巻き込まれて挽き潰されるな…」
 アスカ 「あはは。寺田さんのイラストみたいにね」
 シュウ 「アスカちゃんの殺人おっぱい。実際にそのシチュになってみるとビビッて寒気がしてくる…」
 アスカ 「ま、もし潰しちゃってもすぐに生き返らせてあげるから」
 シュウ 「潰さないでください。お願いします」

俺は天を仰いで頭上のアスカの顔に祈りをささげた。

などというやりながらも勉強は続けられる。
自分のノートとにらめっこしながら首をひねる俺。

 シュウ 「ふむ…わからん」
 アスカ 「んーどれどれ? どこがわらからないんだい?」

上空の巨大なアスカの顔が、俺のノートを覗き込もうと寄せられてきた。
やや下を向いたために顔の前にかかった髪を耳の後ろにかき上げながら巨大な顔が迫る。ちょっとした恐怖だった。

 アスカ 「あーここね。ここはあーしてこーしてこーするのよ」

俺のノートを覗いて問題を理解したアスカがまた自分のノートに解説を書き込んで教えてくれる。
ただ、アスカがそうやって顔を寄せるとそのかすかな鼻息で俺のノートがパラパラとめくられた。
アスカがしゃべると、至近距離に来ていた巨大な唇が艶めかしく動いてドキドキする。
テーブルの上の俺はアスカという存在の中にすっぽりと納まってしまっているのだと実感した。



勉強はすぐに終わった。
アスカの教え方がうまい。
なんだかんだと人に懐かれる奴ではあるし、教師とか向いてるんじゃないか?

さて、勉強も終わると頭にも余裕が出てくる。
久しぶりにこいつの部屋に入ったが、昔とあまり変わっていない。
テーブルの上から見渡してみる巨大な部屋の中はなかなかに女の子をしている。
部屋の壁などは薄い桃色で棚には小物などが置いてあったり勉強机には小さな鉢植えまで置いてある。
低いタンスの上に置かれた年季の入ったクマのぬいぐるみは、俺たちが子供の頃からあるものだ。
まだ持ってたのか。物持ちのいい奴だ。

昔から知るぬいぐるみを見て俺の心はなつかしさに包まれつつあったが、そのクマの横に置かれている反物質製造機を見て感動は冷え切った。

 シュウ 「…」

よくよく見てみれば部屋のそこかしこしには超空間ゴミ箱であったり四次元粘菌育成キットであったり、アスカがこれまで発明したアイテムたちが置かれている。
女の子らしい部屋の内装とは相容れないゴツゴツとした機械たちの存在は、部屋の情緒を著しく乱している。
違和感たっぷりの機械たちを見て、やはりアスカはアスカなのだと再認識した。

 アスカ 「ちょっと遅くなっちゃったね。ご飯食べてく?」
 シュウ 「ああスマン。じゃあハルに連絡入れるよ」
 アスカ 「ほいほい。あたしはご飯作ってきちゃうね」

シュウは携帯を取り出してハルに電話を掛け始めた。
それを見届けたアスカも夕食を作るために席を立つ。
低めのテーブルに女の子座りで着いていたアスカはそこから一度 足をお尻の下に滑り込ませつま先を立ててお尻を支える。
その状態から両手をテーブルの上に着いて上半身を支えお尻を持ち上げて立ち上がろうとしたのだが、そうやって立ち上がろうと少し前かがみになったとき、セーターに包まれた胸に何かが触れるのを感じた。

 アスカ 「あれ?」

体をずらして確認してみると、ずらす前の胸があった場所から今の胸がある場所まで赤いスジが引かれた。
胸を持ち上げてみると、胸が押し付けられていた場所とセーターに包まれた胸の下乳部分に、少量のミンチがへばりついていた。


   *


 シュウ 「ったく……言ったそばから…」
 アスカ 「いやーゴメンゴメン」

腕を組んで文句を言う俺に、アスカが苦笑しながら謝ってくる。

俺の体は即座に再生された。
最近なんか吹っ切れたのか躊躇無く死亡描写が入るから油断できない。



そんな俺は今 アスカの胸の前に浮いている。
魂だからではない。水面に浮いているのだ。
俺とアスカは、今 風呂に入っていた。

 アスカ 「シュウとのお風呂も久しぶりだねー」
 シュウ 「……3話で入ったろ…」

つい最近のことである。
とは言え今はハルもおらず、俺の大きさも100分の1サイズなので、前とは若干シチュが違う。

 シュウ 「…」

湯に浮く俺は、眼前の光景に言葉を失っていた。
水面の高さはアスカの胸くらいの高さなので、水面に浮く俺の位置はアスカの胸と同じ高さになる。
つまり俺の目の前にはアスカの胸があった。
胸板からドン! と飛び出ているとんでもないサイズの乳房は内包する途方もない量の脂肪のせいで湯に揺蕩っている。
小島のような大きさの乳房がたぷたぷと浮いているのだ。
乳房だけで圧倒的な威圧感を放っている。
あまりに巨大な乳房の迫力に気圧されて、俺はこれ以上アスカに近づけなかった。

 アスカ 「ニシシ、そんなビビることないのに」
 シュウ 「う、うるさい! つかお前はもう少し恥じらえ」
 アスカ 「シュウももう慣れちゃったら? いつもハルちゃんとHしてるんでしょ」
 シュウ 「うぐ…」

それを言われると何も言えない。
さすがにアスカに隠し通すことはできないし、変にシラを切れば常時モニターされかねない。

などとどうでもいいことを考えていると、

  ザバアアアアア!

突然、水中から巨大な手が現れた。
アスカの右手だ。俺はそんな右手の人差し指の先にまたがる様に乗せられ、指はそのまま上空に持ち上がっていく。
なんのことはない。アスカが右手の指で俺を掬い取ったに過ぎない。

そしてアスカは俺を湯船に浮く乳房の上に落とした。
ボヨン。バウンドして落下する俺。

 シュウ 「お前なぁ…」
 アスカ 「のぼせそうだったからね。それにシュウの大きさなら歩いたりできるんじゃない?」

頭上の巨大なアスカの顔がニシシシと笑う。

しかし確かに、アスカの胸の上は十分に歩いて歩けるだけの広さがあった。
今の俺はアスカの右の胸の上に尻もちを着いている格好だが、この場所なら滑り落ちることはなさそうである。
もとより巨大なアスカの乳房は湯に浮くことで乳房の上半球の頂上部分がほとんど水平近いゆるやかな勾配になっている。
立ち上がってみれば、危な気なく歩くことができる。
そして歩いてみれば踏み下ろした足は地面であるアスカの乳房に、ぷにっとやや沈む。
やわらかい。温かい。そのきめ細かい肌のぬくもりが、足の裏からじんわりと伝わってくる。
その上を歩いているだけで穏やかな気持ちになれる。
いや、歩かなくても、この乳房の上に大の字に寝転んでしまえば、そのまま眠りについてしまえるだろう。

小惑星のように巨大な乳房。
近くで見れば臆してしまうほどの威圧感だが、その実はまるで母に抱かれるが如く安らぎに包まれる。
こんなにも巨大でありながら、こんなにも愛おしく感じられる。
まさに女神。今のアスカは俺からすれば女神と呼ぶほどに凄まじい力と凄まじい魅力を持っていた。

本当にのぼせていたのかもしれない。
あまりに心地よくて頭がボーっとしていた俺は乳房の表面に着いていた水滴に足を取られそこから転げ落ちてしまった。
素早く反応し、滑り落ち行く乳房の表面に大の字になって張り付くことで、それ以上の転落を防ぐ。
アスカの胸に大の字でへばりついているというのはなんとも恥ずかしいことだったが、転落という危機を前にしたとき、プライドなど考えている余裕はなかった。

俺はアスカの谷間に向かって滑り落ちていく途中だった。
今は乳房に張り付くことでなんとかこらえられているが、ここから上に戻るのは厳しい勾配だ。
右の乳房にへばりついている俺の背後には、すでに左の乳房が迫っている。下には暗い谷間があった。

 アスカ 「あらら、助けたげようか?」
 シュウ 「た、頼む…」

張り付いている手足がぷるぷると震えてきていた。
限界っぽい。
しかしそこにアスカが左手を伸ばしてきてくれて、俺をつまんで乳房の上に戻してくれた。

ふぅ…。乳房の上に大の字になる俺。

 アスカ 「別におっぱいから落ちるくらいなんでも無いでしょ」
 シュウ 「でもその瞬間は高いところから転落するって思って無我夢中だったんだよ…」

ヘンに疲れた後での安心感から力が抜けてしまった。
濡れていたとはいえ、乳房の半球を登ることもできないとは。
いかにアスカの巨乳でもそれが女の子の胸であることにかわりはない。
胸をよじ登ることもできない。アスカが助けてくれなければ、そのままズルズルと滑り落ちて行っていただろう。
落ちたとしても下は湯船なのだからあの程度の高さから転落なら大したけがなどはしなかったはずだが。

そうやってアスカの胸の上に大の字になっているとアスカの心臓の音が聞こえてきた。
どっくん、どっくん。俺が大の字になっている左胸の奥から聞こえてくる。
胸の上に大の字になっている体に、乳房の奥から突き上げてくるような振動を感じた。

長い付き合いだが、アスカの胸の音を、ここまで間近でゆっくりと聞いたことはない。
大の字で寝そべる胸の心地よい温かさと鼓動の優しいリズムに、なんだか眠気が……。

 アスカ 「お? シュウ、おちんちん起ってるね」
 シュウ 「ぬぉ!?」

寝転がっていた体勢からガバッと起きて両手で股間を隠す。

 アスカ 「あはは。そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃん。あ。なんならあたしがヌいてあげようか?」
 シュウ 「いらんッ!!」
 アスカ 「いーからいーから」

水中からアスカの巨大な手が現れた。
全裸で抵抗するすべもない俺はその巨大な手によってあっさりと摘ままれ持ち上げられてしまう。
 
持ち上げられた俺はいったい何をされるのかと恐々としていたが、俺を摘まんだ手が移動した先は、アスカの右胸の前だった。

 シュウ 「…」

俺の目の前には、俺の身長の何倍もの径のある巨大な乳首があった。その中央にピコンと飛び出ている乳頭だけでも直径は1m以上もある。ドラム缶よりも巨大な乳頭だった。

 シュウ 「……まさか乳首で?」
 アスカ 「そゆこと」

俺が見上げた先、この巨大な乳房の丸っこい斜面の向こう、巨大なアスカの顔はニッコリと微笑んで言った。

直後、俺の体が乳頭に押し付けられる。
すると俺のちんぽは乳頭の先端にある乳腺にズブッと刺さった。
そのままアスカは、俺の体を乳頭に押し付けている右手の人差し指をぐいぐいと動かし始めた。
乳頭の中で亀頭が乳腺の壁にこすりつけられて気持ちいい。未知の感触だった。

 シュウ 「はぅ…!」

思わず喘いでしまう俺。
そんな俺に気をよくしたのか、アスカはくすくすと笑いながら俺を押し付ける指をうりうりと動かし続けた。

気持ちがいい。気持ちがよすぎる。
今ちんぽを挿入しているのはマンコでも口でもなく、乳腺だ。本来なら母乳を出すための穴だ。
しかし俺は、そんな乳腺にちんぽを突っ込まされて亀頭を愛撫されている。
乳腺コキだ。
直径1m以上ある巨大な乳頭に体のほぼ全体を押し付ける格好で乳腺にちんぽを挿入させられているのだ。
足の先と頭や手の先などは乳頭の範囲から出るが、それ以外、胴体や股間などはみな乳頭に触れている。
乳頭の太さだけでほとんど俺の大きさと変わらないのだ。そしてその乳頭の根元から広がる乳輪は俺の身長の倍以上もある。
俺はアスカの乳首よりも小さい。
そんなみじめとも言える気持ちが、理性の抑制に待ったをかけてしまった。

  とぴゅっ

そのせいであっという間に射精に至ってしまう俺。
押し付けられている乳頭の、挿入させられている乳腺の中にぶちまけてしまう。
しかしあまりに気持ちよすぎて、俺は射精を止められなかった。

  とぴゅっ  とぴゅっ

次々とアスカの乳頭の中に発射する。
この乳頭の向こう、あの超巨大な乳房の中にはアスカの母乳が大量に詰まっている。それこそその乳房を山のように膨らませるほどに。
そんな母乳の詰まった乳房の中に、俺は精液をぶちまけている。これらはアスカの母乳に混ざってしまうのだろうか。この巨乳を形成するほどの大量の母乳と比べれば無いに等しい量だが。
女の子であるアスカの乳首の中に射精し中の母乳に精液をまぜる。
それは俺に酷く罪悪感を抱かせた。
アスカの乳首を犯しているのだ。幼馴染の女の子の乳首を。
字面だけならあまりにも異常な行為。しかし実際にそれはなり得ている。
そしてそんな罪悪感も、打ち寄せる感動の波にのまれて消えてしまう。

 アスカ 「ほれほれ、あたしの乳首は気持ちよかったかい?」

指を動かすのをやめていたアスカはまだ乳首に押し付けられている俺に問いかける。
射精の心地よさと疲労感から、ぐったりとして乳頭にもたれかかる俺は答えることができなかった。

 アスカ 「うむうむ。語るに及ばずってね。じゃあこのまま左のおっぱいもヤっちゃってください」

アスカは右の乳頭に俺を押し付けていた指を動かし、今度は左の乳首の前に持って行った。
俺の前に、再び巨大な乳首が現れる。
しかし今度は押し付けられることはなかった。

 アスカ 「今度はシュウが自分から動いてくれるかな?」

俺を指先に乗せた人差し指は乳頭の前に添えられた。
指先の上に立った俺の目の前にはあの巨大な乳頭がある。
それをアスカが望むなら…。

俺はやや憔悴した体を動かしてアスカの乳頭に両手を添えて体を支え、そして乳腺にちんぽを挿入した。
巨大な乳腺は俺の小さなちんぽをあっさりと受け入れる。
そのまま腰を動かす俺。
超巨大なおっぱいのその先端の乳首の乳頭に組み付いて体をチマチマピストンさせる様はかなり滑稽だっただろう。

しかしそれを見下ろすアスカの顔に嘲りの様子はない。
純粋に楽しんでいるようだ。
指先に乗せた俺が乳首を犯す様をクスクス笑いながら見ている。



山のように大きな乳房。ガスタンクのように丸っこく、内部にはガスではなくミルクが詰まっている。
乳房全体なら見上げるほどに大きい。この乳首だけでも、両手を回すこともできないほどに大きい。
これが一個の乳房。アスカはそれを二つも持っている。
巨大すぎて巨大すぎて感覚がマヒしてくる。今、俺はアスカの乳首に組み付き息を切らすほど必死に腰を振って乳頭を犯している。
なのにアスカはそれを忌避するようなそぶりすら見せず、ただただ笑顔で俺のことを優しく見下ろしている。
圧倒的な巨大さでありながらもあふれるほどの慈しみ。その巨大さも相まって、まるで聖母や女神のようだった。

そんな女神の乳首に組み付く俺は腰の動きを止められなかった。
罪悪感や背徳感が募るのに、その乳首から漂ってくる甘い香りに本能が暴走していた。
アスカのミルクの香りに、俺のちっぽけな脳は完全にやられてしまってる。理性などまるで機能していない。
俺の体で快感と罪悪感が、快楽と焦燥が渦を巻く。
止めなければと思うのに止められない。
あまりの快感に体が言うことを聞かない。
俺はアスカの乳房を犯し続けた。
それでもアスカは最後まで笑っていた。


  *


 アスカ 「はぁ~いい湯だね~」

浴槽の縁に体を預け、両腕を広げ浴槽の縁の上に投げ出しているアスカ。
上半身は浴槽の縁にもたれかかるためにやや後ろに倒れている。そのために乳房はやや上を向くのだが、俺はそんな上を向いた乳房の乳首の上に大の字でうつ伏せになっていた。
広い広い乳輪の中、ちょうど乳頭の上くらいの位置で、乳輪の上に大の字でへばりついている。
左の乳房の乳首の上なので、うつ伏せになって頬を押し付けている乳輪の奥深くからはアスカの心臓の鼓動が聞こえてきていた。

 アスカ 「そんな落ち込むこともないのに」

首を動かし乳首の上の俺を見下ろす。

 シュウ 「でも……俺はお前を…」
 アスカ 「あはは。こんなのいちいち気にしてたらでっかいオトコになれないぞ」

左手を伸ばしてきたアスカが人差し指の指先を使って、乳首の上にうつ伏せる小さな俺の体を優しく撫でる。
しかし俺は、欲望に負けてアスカに向かって腰を振ってしまった事実に泣きそうだった。

 アスカ 「ほらほら、もうハルちゃんとは本番やっちゃってるわけだし、こんなの数に入らないって」
 シュウ 「あ、あれはアイツが望んで自分から動いたけど、今回は俺が欲望に負けて…」
 アスカ 「あらら、ホント、シュウってば真面目なんだから」

俺を見下ろすアスカは苦笑した。

アスカは笑ってくれているが俺はとても笑えそうにない。
最初はアスカから誘ってくれたかもしれない。しかし最後は俺が俺の意思で腰を振っていた。そしてその時にアスカの気持ちなんて考えてなかった。
フェロモンにヤられて、性欲に負けて、本能の向くままに腰を動かしていた。腰を振っていた相手が乳首だったとしても、アスカであることにかわりはない。
俺は欲望に負けてアスカを犯したのだ。幼馴染を。なんだかんだと言いながら大切に思える存在を、俺は欲望に負けて穢してしまったのだ。
思い起こせば起こすほどに自分が情けなくて悔しくなる。
いっそのこともっともっと小さくなって消えてしまいたい。
後悔の念が涙とともに零れ落ちた。

 アスカ 「……よし、んじゃこうしよ」

不意に、アスカが立ちあがる。
俺のうつ伏せになっていた乳房をぐわっと動き出したが、それは俺を支えていてくれるアスカの左手のおかげでなんとかなった。
立ち上がったアスカの乳首に指先でそっと押し付けられて落下を免れている俺。

が、

  シュン!

視界が揺らいだかと思うと俺は元の大きさに戻り、浴槽の中に立ってアスカと抱き合っていた。
先ほどまで見上げるほどに巨大だったアスカが、今は俺より少し背の低い存在になっている。

 シュウ 「…え……? ええええええ!?」
 アスカ 「ニシシシ。シュウ~おちんちん当たってるよー」

抱き合うアスカが笑う。そしていつの間にか全快していた俺のちんぽがアスカの腹に押し当てられていた。

 シュウ 「す、すまん!」

俺は慌ててアスカから離れる。

 アスカ 「でもまだこれで終わりじゃないんだな」
 シュウ 「は…?」

俺が一歩下がった分距離の離れたアスカが「にぃっ」と笑う。

瞬間、

  シュン!

また視界が揺らいだ。
今度は真っ暗な場所だ。どこだかわからない。ていうか体もうまく動かない。
いったいどこに…。まさか俺が小さくなりたいと思ったから、もっと縮めてくれたとか…?

 アスカ 「シュウーこっちこっち」

声が聞こえそちらを振り向けばそこにはアスカがいた。
俺と同じように、先ほどまでと同じように、全裸だ。

 シュウ 「アスカ…ここはいったい…」

確かに小さくなりたいと願ったが、何故アスカまで小さくなるのか。
そして体がうまく動かないのはなぜだ。動かないというよりは、下手に動くとへんな動き方をしてしまうような。

 アスカ 「わかんない? これこれ」

アスカが自分の胸の前を指さす。
そちらに目をやればアスカの巨大な胸のその前を、ふわふわと浮いている小さな青い球があった。

 アスカ 「これ、地球」
 シュウ 「…………………………は?」
 アスカ 「いやだからこれは地球です。あたしたちは今1億倍の大きさになってます」
 シュウ 「はぁぁぁああああああああああああああああああ!?」

俺は驚愕した。
その拍子で体がくるくる回ってしまう。

あの10cmくらいしかない球が地球!?
1億倍の大きさになってる!? 
じゃあ今 俺たちがいるのは宇宙なのか!?

 アスカ 「そゆこと。ふふふ、シュウったらくるくるまわっちゃって。無重力の中で動くのは大変そうだね」

なんでお前は当たり前のように動き回ってるんだ。

 シュウ 「ってかなんで1億倍なんて大きさに!?」
 アスカ 「そりゃ決まってるでしょ」

宇宙空間をすぅ~と泳いできたアスカが回転していた俺の体を止める。

 アスカ 「シュウがあまりにもちっぽけなことで悩んでるから、そんな悩みなんかよりこの周辺の星のほうがよっぽどちっぽけだってことをわからせるためよ」

アスカの手には地球が握られていた。

 アスカ 「シュウは何を気にしてたの? 世間体? 倫理? そんなちっぽけなこと気にする連中なんて、70億全員集めたってあたしの手の中の小さな球の上に納まっちゃうのよ? こんな連中のこと気にしたって仕方ないじゃん」

ポイと地球を投げ捨てたアスカがそっと抱き着いてくる。
地球よりもはるかに巨大な二つの乳房が俺の胸に押し付けられる。

身長16万km。
今や巨大惑星サイズになってしまったアスカが、ここまで巨大化してなお見事なプロポーションを誇るアルティメットボディで抱きしめてくる。

 シュウ 「せ、世間体とか無くても気にするものは気にする……お前は気にならないのかよ」
 アスカ 「あたし? 全然?」(ずぷっ)
 シュウ 「……って何当たり前のように入れてんの!?」

抱き合う俺とアスカの股間が連結していた。

 アスカ 「いやーいつまでも小さなこと気にしてるし、ここは一発ヤっちゃって吹っ切れさせてあげるのがいいかなーと」
 シュウ 「お前は少しは気にしろ!」
 アスカ 「あとあたしって喘ぐキャラじゃないし、喘ぐのはシュウオンリーね」

アスカが腰を少し動かすと、俺の体は電撃に打たれたかのように快感が突き抜けた。

 シュウ 「あぐ…」

アスカの言った通り、思わず喘いでしまう。
しかもこの無重力のせいで体がうまく動かせず、リードは完全にアスカに握られていた。
全長1万3千kmほどの俺のちんぽが、縦の長さ5千kmほどのアスカのマンコに呑み込まれている。
アスカが腰を引くと愛液に包まれた俺のちんぽのサオが姿を現し、腰を押し付けると股間同士がくっつき俺は亀頭に奥を突く感触を覚えた。

上半身はアスカに抱きしめられているせいで押し付けられている大きな乳房のぐいぐいという圧力を感じていた。
力いっぱい押し付けられたら、結構息苦しくあるかもしれない。
こんな巨大なものを、アスカは常に持ち歩いているのか。

ふと、アスカが俺を抱く腕をほどいて、上半身を少し離した。
そして横に手を伸ばすと、宇宙の彼方から飛んできたそれをそっと捕まえる。

 シュウ 「なんだそれ?」
 アスカ 「火星」

「にぃっ」と笑うアスカの手の中には直径7cmほどの赤い球が握られていた。

 アスカ 「これをこうして…」

手に掴んでいた火星を胸の谷間に置いて、

 アスカ 「こうする」

胸を寄せる。
するとその小さな火星を左右から何倍も大きなアスカの乳房が挟み込んだ。
たっぷりとした柔らかな乳房の間で火星は健気にも抵抗していたが、やがて表面に亀裂が入ったかと思うと、寄せられた乳房の間でバスンと潰されてしまった。
アスカが寄せていた胸を開くと、乳房の間が土らしきもので汚れていた。
それをパタパタと払うアスカ。宇宙空間でぶるんぶるんと弾む乳房の表面から、火星の残骸はあっという間に叩き落とされた。

目の前で、太陽系の一つを枠取る火星が、あっさりと潰されてしまった。
しかも、乳房の間で。

 アスカ 「ほれほれ、あたしのおっぱいの間で火星が潰れちゃったよ。シュウにも味わわせてあげよっか」

そう言ったアスカはまた二つの星を引き寄せていた。
水星と金星。およそ5千kmの水星と1万2千kmの金星だが、どちらもアスカの手の中に納まってしまっていて、そしてその二つの乳房よりもはるかに小さいことに変わりはない。

アスカは右手に持った水星を俺の左胸の上に、左手に持った金星を俺の右胸の上に置いた。
そして

 アスカ 「ほい。いくよー」

再び抱きついてきた。
アスカの胸が俺の胸に押し当てられる。
その瞬間、その刹那、アスカと俺の胸の間で水星と金星は挟み潰された。
ぶつかってきたアスカの巨乳は俺の胸との間に挟んだ二つの星をあっさりと押し潰し、そして俺の胸に押し当てられてむにゅうと潰されて変形した。
押し当てられてハミ乳になった乳房をぐりぐりと動かすアスカ。押し当てられるアスカの乳房と俺の胸との間で、潰されていた星たちがさらに細かく擦り潰される。

自分の体で星が潰れる感触。
そのあまりにはかない感触に、俺は背筋がゾクッとした。
決して快感ではない。ほとんど恐怖だった。一個の星があっさりと潰れてしまったことに対する恐怖だ。
自分の強大さと巨大さが恐ろしかった。なんでもないようなことが大破壊になってしまう。
こんな恐ろしい感覚を、こいつやハルは嬉々として受け入れているのか…。
真正のドSだ。


などと思っていたらアスカが股間から俺のちんぽを引き抜いた。
そして俺の手を引いて宇宙を飛行し始めた。一人ではその場から動くことすらできない俺はアスカに身をゆだねるしかない。

連れてこられた先は木星だった。
直径14万kmを超える巨大な惑星も、今はアスカより少し小さな球でしかない。太陽系最大の惑星もアスカの身長には及ばなかった。
アスカはそんな木星を背中の支えにし、右手にいつの間にか持っていた月を、自身のマンコの中にそっと押し込んだ。
直径3千5百kmほどの大きさしかない月は、アスカのマンコにあっさりの呑み込まれて内部に消えた。

 アスカ 「支えがあればシュウも腰を触れるでしょ。さ、どうぞ」

クスッと笑ったアスカは両手両足を開いて差し出して見せた。
それは「めしあがれ」のポーズだ。
ゴクリ…。俺はつばを飲み込んでアスカに抱き着いた。

ずぷっ。ちんぽをアスカのまんこに突き刺す。
切っ先に何かを感じたが、先に挿入されていた月だろうか。
そのままちんぽを奥まで差し込むと、切っ先にあった月はクシャッと潰れてしまった。

 アスカ 「あはは。シュウのおちんちんとあたしの子宮の間で月が潰れちゃった。じゃあそのまま粉々にすり潰してあげちゃおっか」

アスカが目で俺に促した。
言われた通り、俺は腰を動かす。
アスカごと木星に抱き着くような格好で体を支えれば腰も振ることができる。アスカの股間に、俺の股間を何度もたたきつけた。その過程で、切っ先に感じていた月の破片のザラザラした感触は無くなっていった。

 ずぷ ずぷ ずぷ ずぷ

宇宙空間で行われるセックス。
アスカが抱きしめてくるせいで、俺の胸にはアスカの乳房がぐいぐい押し付けられていた。

 アスカ 「うんうん、気持ちいいよー」
 シュウ 「ホントかよ……」

いつも通りなアスカに、俺は微妙な顔になる。

 アスカ 「ホントだって。あ、やっぱり喘いだ方が雰囲気出る? イグウウウウウウウウウウウウウウ! イッチャウウウウウウウウウウウウ!」
 シュウ 「ごめん…いつも通りでいいです…」

「にゃはは」と笑うアスカ。
どこまで巨大化しても、どんなことをしても、やっぱりアスカはアスカなのだと改めて再認識した。

 ずん ずん ずん ずん

アスカの股間へとピストンを続ける。
そのピストンの衝撃で木星が崩壊し始めていた。
一度のセックスにも耐えられない…。一度のセックスで星を破壊してしまう…。
自分の、今の巨大さを思い知るばかりだ。

 シュウ 「うぐ…でる…」
 アスカ 「お? イっちゃう?」

言うとアスカはその全長8万km近い長さの脚で俺の腰を抱き込み、さらに上半身を抱く両腕により力を込めた。
俺はアスカに全身で抱き着かれていた。その押し付けられる胸も含めて、全身が苦しい。窮屈ですらある。
しかしその窮屈さが、アスカの想いであるとわかる。
俺はそうやって抱き着いてくるアスカの中に、思い切り放出した。

  どぴゅうう!  どぴゅうう!




宇宙空間で、しばし抱き合ったまま動かなくなる俺たち。
木星は半分ほど崩壊していた。

 アスカ 「どう? ふっきれた?」

抱き合う俺の頭をアスカが撫でてくる。

 シュウ 「吹っ切れたっていうか…賢者タイムだから…」
 アスカ 「あらら、それはイカンね。また深く考えちゃうね」

そう言ったアスカは抱き着いていた俺を突き放した。
俺とアスカの体が分かれる。連結していた股間も離れる。
ふわりと動いたアスカは、そんな俺の股間に顔を寄せると、俺の精液とアスカの愛液で汚れた俺のちんぽを舐め始めた。

日本さえその上に置いてしまえるような超巨大な舌が、俺のちんぽに絡みついてくる。
アスカの舌は俺のちんぽの表面を舐めると、そこについていた精液とかをあっさりと舐めとってしまう。
月の残骸も大量についていたはずだが、それらは欠片一つ残さず舐めとられ、それらを舐め取ったアスカはゴクンと喉を鳴らした。

それらアスカの一連の動作のせいで、萎えつつあったちんぽが再びシャキーンと起ってしまう。

 シュウ 「いやなにしてくれてんの?」
 アスカ 「賢者タイム防止運動?」
 シュウ 「ってだからって起たせちゃダメだろ! どうすんだよコレ!」
 アスカ 「え? もう1ラウンド?」
 シュウ 「え?」

見つめあう俺とアスカ。
アスカが抱きついてきた。



   *



アスカの部屋。
ベッドの中。

 アスカ 「んー、今日もすばらしい一日だった」

パジャマを着て布団に入るアスカが今日の感想を述べた。

 シュウ 「いや、ていうか、どうすんだよアレ…」

並んで布団に入る俺が言う。

 アスカ 「まぁ火星とかはそのうちなんとかするから気にしなさんな。シュウがぶちまけた精液も一滴残らず回収しておいたしね。1億倍のシュウの精子は全長が6kmにもなるから、そんなのがもし地球に飛来しちゃったら地球壊滅しちゃうし。シュウの精子一匹のせいで地球滅んじゃうし」
 シュウ 「恐ろしいこと言うな! …それで、なんで俺はこうなってる?」

アスカの隣に並んで横になる俺。
大きさ1/2。

 アスカ 「別に意味はないけど」

ないのか…。

 シュウ 「はぁ…。……それにしても、お前は本当によかったのか? その、俺とセックスして…」
 アスカ 「なんだ、まだ気にしてたの? すでにハルちゃんとヤってるくせに気にしすぎー」

笑うアスカ。
そして今、俺の2倍の大きさになるアスカのその大きな手が俺の後頭部を掴み、そのパジャマのはだけられた胸元に押し付けられる。
今や俺の頭よりも大きな二つの乳房の谷間に、俺の小さな頭が埋まる。アスカが胸を寄せると、そのまま頭が完全に埋まってしまいそうだ。

 シュウ 「もがーもがー! ……ぷはぁ! そういうことじゃなくてだなぁ!」
 アスカ 「あたしはもちろんOKだよ」
 シュウ 「う!?」

谷間から顔を脱出した俺が上を向くと、アスカがニッコリと笑いながら言った。

 アスカ 「いつもいつも一緒だもんね。これも幼馴染の特権かな」

アスカが顔を寄せてきた。
今の俺の2倍の大きさのあるアスカの唇が俺の小さな唇をふさいだ。

 アスカ 「んー、ハルちゃんには悪いけど、今日はあたしのものね」

再び、俺の頭はアスカの胸の谷間に埋められる。
横を向いているアスカの胸の谷間に顔をが埋められる。左右の大きな胸が、上下から挟み込んでくる。
アスカが胸を寄せなくても、乳房自身の重みでのしかかってくる。
その息苦しさと圧迫感のあまり、俺は手足をバタバタと動かした。

 アスカ 「あはは。そんなことしても無駄だよー」

笑いながらアスカが2分の1サイズの俺の体をギュッと抱きしめた。
それだけで俺の抵抗はすべて封殺されてしまう。

全身まるごとアスカに抱きしめられ俺は息苦しさから気を失い、疲労感などからそのまま眠ってしまった。
アスカの胸の谷間に頭をうずめたまま、すーすーと寝息を立てる俺。

アスカはそんな俺の頭を優しく撫でながらクスクス笑っていた。


  *** おまけ おわり *** 




※ いやーおまけって便利だわ(意味深)
  しかしいったいどうしてこうなった。