サイズ変換機14
作:いと小さき人


伊藤 彩香(いとうあやか) 20歳 160cm 48㎏ 足24.0  備考 ミニチュアの街の主要人物
伊藤 大祐(いとうだいすけ) 19歳 175cm         備考 彩香の弟
伊藤 颯真(いとうそうま)  10歳 135cm         備考 彩香のいとこ
伊藤 悠真(いとうゆうま)   8歳 125cm         備考 彩香のいとこで颯真の弟



颯真と悠真の2人の兄弟は、夏休みを利用していとこである彩香の家を訪れていた。
颯真「こんにちは~。おじゃましまーす。」
悠馬「彩香姉ちゃん、久しぶり!!」
2人の愛くるしい笑顔に彩香も自然と笑みがこぼれる。
キラキラと輝く2人の瞳のは純粋さが滲み出ていた。
彩香「待ってたよー。」
その瞬間、彩香は兄の颯真を抱きかかえる。
小学4年生ということもあって、軽々と持ち上げられる。
そのまま颯真の顔を彩香の2つの乳房に押し付ける。
颯真「うっ、苦しいよ、彩香姉ちゃん。」
彩香「あ、ごめんごめん。つい・・・。」
胸に押し付けられたとしても、小さな子どもにとっては息苦しいだけでしかない。
彩香は残念そうな表情を浮かべつつ、颯真を床に降ろす。
その様子を見ていた悠真は、彩香の太ももにがっしりとしがみ付く。
弟の悠真の方が甘えたい年頃なのだろう。
『僕も』という自己表示が前面に押し出されているように彩香は感じた。
彩香「あっ、悠真ー。いらっしゃーい。」
悠真「うん!!」
少しの遠慮もなく悠真は彩香の胸へと飛び込む。
豊満な彩香の胸に安堵感を覚えたのか、悠真はにっこりとほほ笑んでいた。
彩香もまた悠真の髪から香るシャンプーのにおいに心地良さを感じていた。
そして、自然と悠真の頭を優しく撫でていた。
ひとときのスキンシップが済んだ後、彩香は悠真を床へ降ろす。
彩香「さーて、まずは2人にケーキをごちそうしようかな?」
颯真「えっ、ほんとう?」
悠真「やったー!!」
嬉しさを隠すことなく全身で喜びを表現する颯真と悠真を見ているだけで彩香は幸せな気持ちになっていた。
彩香「じゃ、リビングで待っててくれる?」
颯真「はーい。悠真、行くぞ!」
悠真「あっ、兄ちゃん、待ってー。」
こうして彩香はケーキを用意するためキッチンへと向かった。
一方で、リビングに向かった颯真と悠真は、ケーキの登場を今か今かと待ちわびていた。
悠真「ケーキ、ケーキ♪」
彩香「はーい、お待たせ―。」
颯真「イチゴのショートケーキだ!!」
彩香「先に食べてていいよ。今、ジュースでも持ってくるから。」
悠真「はーい、いただきまーす。」
幼い2人の兄弟は、幸福感に包まれた顔でじっくりとケーキを味わっていた。

そんな2人のもとに大祐がリビングにやってくる。
大祐「おー、久しぶり、2人とも。元気してた?」
颯真「大祐兄ちゃん、こんにちはー。」
悠真「うん、元気だよ!!」
大祐「そうだっ。2人に面白い体験をさせてあげよう。皆で小さくなって冒険しようぜ。」
そう言うと、大祐はポケットからサイズ変換器を取り出し、おもむろに機械を操作する。
程なくして、妖しい光が3人を照らすと、3人は100分の1サイズに縮小した。
颯真「うわ・・・、すごい!!」
悠真「僕たち、ちっちゃくなったの?」
大祐は、サイズ変換器を幼い兄弟に渡して得意気に説明する。
サイズ変換器を知らない子どもたちに自慢げに話したところで何の得にもならない。
しかし、大祐は兄弟に丁寧に解説し、ある種の優越感を感じてニヤリとほくそ笑んだ。
大祐「どうよ、すげーだろ?」

ズシーン!!

大祐の解説の終了を待っていたかのように、リビングに重低音が響き渡る。
冷たいジュースを携えて戻ってきた彩香が戻ってきたのだ。
彩香「あれっ、2人ともどこに行ったのー?」
大祐「あ、ヤバイ。おい、2人とも急いで元に戻るぞ。」
大祐が悠真の持っていたサイズ変換器に触れようとした次の瞬間、3人を再び怪しい光が包み込む。
悠真がサイズ変換器のスイッチを誤って押してしまったのだ。
復元ボタンを押すことなく、作動スイッチを押してしまったということは、3人は再び100分の1サイズに縮んでしまったことを意味する。
つまり、トータルで1万分の1サイズになってしまったのだ。
これでは、1ミリ以下のサイズになってしまい、巨大な彩香からは目視もできない状態になってしまう。
大祐「ゆ、悠真!! 僕にその機械をわたす・・・」

ズッシイイイン!!!

大祐の発言が終わる前に、彩香の超巨大な素足は床に莫大な衝撃を与えていた。
2400mもの超巨大な素足の着地は、床に衝撃波と共に爆風を生んでいた。
当然、小さな3人は四方八方に吹き飛ばされてしまった。
大祐「ううっ・・・。」
体勢を立て直した大祐の周囲がひときわ暗くなる。
大祐の上空全てが黄色っぽい何かで覆われてしまったのだ。
大祐「う、わ・・・、まさか、姉貴の足の裏・・・?」
そして、刻一刻とその物体が床に迫ってきたのだ。
その黄色っぽい平面は、徐々に闇を濃くし、大祐の周囲に微かな風を巻き起こしていた。
大祐「ちょ、姉ちゃん、待って!!!」
大祐の微細な叫びなど、超巨大で肉厚な足の裏に吸収され彩香に聞こえるはずもない。
勢いよく、彩香は小さな大祐を踏みつけた。

ズッシイイイン!!!

大祐「うぎゃあああ!!!」
1万分の1サイズというミクロのサイズ差が奇跡を生んだのか、彩香の足の裏のしわの間に挟まれ、大祐は辛うじて踏み潰されるのを回避できた。
しかし、彩香が足をわずかでもスライドした瞬間、大祐はその肉壁に巻き込まれ生命を落としてしまう。
自由の利かない大祐は、懸命に彩香の足の裏を叩き続ける。
しかし、悲しいことに大祐の行動は、彩香の足の裏に刺激すら与えることができなかった。
まったく反応が返ってこないのだ。
大祐「ううー、颯真、悠真ー、助けてくれー!!」
大祐は、幼い2人に助けを求めるしかできなかった。

一方で、超巨大で獰猛な素足が容赦なく振り下ろされ、幼い2人の兄弟はテーブル付近まで吹き飛ばされていた。
当然、颯真と悠真の2人は、どうすればいいかもわからずただただ泣き叫びながら逃げ出すしか方法はなかった。
颯真「彩香姉ちゃーん!!!」
悠馬「うわああん!!」
幼い兄弟が床下にいることなど知る由もない彩香は、無造作に左の素足を掲げる。
2人の兄弟の一帯は、彩香の超巨大な素足で作られる影で覆われてしまう。
颯真も悠真も懸命に助けを求めるしかなかった。
しかし、たった1万分の1サイズでは、彩香に助けなど聞こえる由もない。
2人の兄弟目がけて彩香の超巨大な素足が猛然と迫りくる。
颯真「あ、悠真!その機械を貸すんだ!!」
悠真「うわああん!!」
颯真は半ば強引にサイズ変換器を悠真から奪い去る。
機械のディスプレイには、「100」と表示されている。
颯真「この数字を1にすればいいのかな・・・?」
颯真と悠真の間近に肌色の肉の壁が接近する。
颯真「迷う時間がないか、えいっ!!」
次の瞬間、幼い2人を妖しい光が包み込み、一気に2人は元のサイズへと巨大化する。
自身の足下が突如として盛り上がった彩香は、盛大に転倒し、持ってきたジュースを頭からかぶってしまう。
彩香「え、ええっ!? どういうことなの?」
何もないところから突然颯真と悠真が登場したことでパニックになりかけた彩香であったが、颯真の持つ機械を見て、ある程度の状況を飲み込む。
彩香「大祐の奴ね・・・。」
そう言って、大祐が張り付く足の裏を床に振り下ろす。
大祐の眼前に猛烈なスピードでフローリングの床が迫る。
大祐「う、うわああ、姉貴―!!」

ズッシイイイン!!!

大祐は生きた心地がしなかった。
幼い兄弟は、再度サイズ変換器を照らしたわけで、復元スイッチを押したわけではない。
つまり、大祐だけは1万分の1サイズが解除されないのだ。
足の裏のしわに挟み込まれている大祐を残したまま、彩香は再び歩行を始める。
大祐「ちょ、姉貴―!!!」

ズッシイイイン!!!

やがて、幼い兄弟から事情を聞いた彩香は、復元スイッチを押下し、ミクロサイズの大祐を救出した。
もちろん、烈火のごとく彩香に叱られたわけだが。
こうして、颯真と悠真の真夏の大冒険は幕を閉じた。

(完)