美咲さんといっしょ (2)冷徹美少女

その日も、朝から発生した地震、というより地響きで目が覚めた。
美咲さん?いや、発生源は玄関の方だ。たぶん美咲さんはまだ寝ているだろうし。しかも巨大な壁の向こう側で本来のサイズに戻っているはずで、寝返りを打っただけでも
この程度の地響きで済むはずはない。
ということは、僕がいるこの家を置いてある美咲さんの部屋に入れるサイズの女の子。高校1年生の彩菜ちゃんか中学2年生の玲奈ちゃんしかいない。
僕はだんだんと大きく近づいてくる地響きと、グラグラと大きくなる揺れに翻弄されながら窓辺に近づいていった。
ひとりの女の子がこちらに近づいていた。窓を開けて顔を出さないとどっちが来たのかがわからない。もう、膝から下しか見えないのだ。さらに揺れが大きくなり、
基礎など無いこの家全体が揺さぶられる。同時に逞しいふくらはぎが一気に拡大され、視界全体を埋め尽くすのにたったの2歩しか必要としなかった。
そのまましゃがんだのか巨木がゆっくりと倒れこんで来て、巨大な膝頭とその上から丸太どころじゃない太さの太股が降臨すると、上空から轟音が轟いた。

『ねえ、起きてる?』
名前で呼ばないところと、少し不機嫌そうな声で玲奈ちゃんだとわかった。頭の良さそうな凄い美人なのだが、いつも不機嫌そうな顔をしている。子供の頃からそんな感じで、
クールビューティーという言葉がぴったりと当てはまるくらいの冷徹な雰囲気をいつも漂わせていた。
とは言っても、巨人族の中では比較的僕たちに危害を加えない方らしい。恐ろしいことを平然と言う割には故意に人を傷つけたりすることはしないということは、
彼女が入学した中学校で事故以外で彼女に傷つけられた生徒はひとりもいないという事実からも明らかだ。もっとも、入学式の日に全校の教師や生徒全員と父兄たちの前で
顔色ひとつ変えずにダンプカーを握り潰して全員に恐怖を植え付けて従順にさせたという噂もあるが、真偽のほどは定かではない。
ただ、美咲さんも『玲奈ちゃんがあたしたちの中で一番優しいのかもね。』と言っていたことがあったので、本当に優しい子なのかもしれない。

『あのさ、ちょっと出てきてくんない?』
輪をかけて不機嫌な声に促されるように僕は家を出ると、目の前から上を向くと紺色のスカートと白いブラウスのコントラストが視界いっぱいに広がる。
さらに顔を上げると、無表情な美少女が僕を見下ろしていた。
「な・・・なに?」
膝をついていても僕と家、美咲さんが住宅展示場から持ってきたものだが・・・が乗せられているテーブルを見下ろしている玲奈ちゃん。最近急成長が始まったと聞いていたが、
美咲さんにはまだ追いつかないにしても、高校生の彩菜ちゃんよりはふた回りは大きいだろうか。
『美咲さんは?寝てるの?』
僕は黙ってこのテーブルが置いてある反対側の壁を指差した。壁と言っても高さはどんな高層ビルよりも高く、部屋の中にちょっとした街ならすっぽりと収まってしまう。
その壁の向こうには途方も無く広大な空間が広がっていて、そこに身長60kmを超える、巨人という言葉では言い表せないほどの恐ろしく巨大な美咲さんが横になっているはずだ。
ちなみにその広大な空間は数百km四方におよび、高さ100km以上はあるという世界を分断するようなサイズの壁で完全に外界と遮断されているらしい。
僕も一度だけ入ったことがあるが、遥か彼方に空の上まで伸びている白い壁が見える以外は所々山が崩れたり地面が抉れたりしているがただの風景にしか見えなかった。
それだけ広大だということなのだが、全くピンと来なかったのだ。

僕が答えようとしたその時、部屋の上部がゴゴゥッ!と唸ったかと思うと、1000m以上の高さにある天井がググッと開いていった。そこからこの部屋を覗き込んだ巨大な・・・顔。
まだ少し眠そうな美咲さんだった。このサイズの美咲さんは何もかもが巨大過ぎだ。見下ろす瞳は大型旅客機がその中に飛び込んでもゴミが入ったとしか感じることが
できないだろうし、鼻から下は壁の向こうに隠れている。だが、肩まで伸びている髪が壁に少し落ちかかっただけで、玲奈ちゃんを始めとする巨人がぶつかった程度では
びくともしないこの部屋の壁を簡単に崩してしまうほどなのだ。
『おはよう、どしたの?玲奈ちゃん。』
声だけで、この部屋が破壊されるのではないかと思うほどの大音量に、僕だけでなく玲奈ちゃんまで思わず耳を塞いでしまう。つまり、美咲さんがうっかり口を壁の上に上げて
会話などしようものなら僕は言うまでもなく玲奈ちゃんまで吹き飛ばされてしまう。
そんな超が山ほど付く大巨人の美咲さんなのだから、たったの一歩で小さな街なら完全に消滅させてしまうほどの破壊力を有しているのも頷けるというものだ。
『なんかさ、政府の代表ってのが来てるんだけど。どうする?追い帰す?』
用件は恐らく先日の一件だろう。美咲さんは少しだけ考えた表情をしていたが、
『ちょっと待ってて。』
と言い残すと、轟音と共に天井を元の場所に戻した。

桁外れの巨大地震とそこにいるもう一人の可愛い悲鳴、と言っても玲奈ちゃんが叫ぶよりもはるかに凄まじい声量のもの、の中で翻弄されながら待つこと数分。
『お待たせ~』
高さ1000m近いと聞いていたドアを開けて美咲さんが現れた。Tシャツにショートパンツという軽装で、ズシンズシンとこちらに歩いてくる。そして、同じ場所からどこかの
制服姿の女の子が四つん這いになって現れた。そう、この子が僕がこの場所で生活することになった最初の原因、あの時美咲さんは処分しないでここに閉じ込めていたのだ。
『お、おはようございます。。。』
本来の美咲さんの圧倒的なまでの力が骨身に染みているのか、小さくなった美咲さんの前でもおとなしいものだ。だが、近くで見るともの凄い威圧感だ。
立ち上がった玲奈ちゃんは並んで立っている身長500mを超える美咲さんの腰より少し高いほどの身長しかなく、座っても高さ1000mを超える天井に頭が付きそうな大巨人の女の子、
名前は絵里というらしいが、その絵里ちゃんの胸元辺りに美咲さんの頭があるのだ。つまり絵里ちゃんは1000倍クラスだ。

玲奈ちゃんは、フンッと少し鼻を鳴らすと絵里ちゃんを無視するように美咲さんと話し始めた。僕はただ超高層ビル級の長さとそれを簡単に粉砕できる太さの4本の脚を
見上げることになる。
『どうするの?連れてくる?』
『そうだなぁ、ここだとヒロ君もいるし・・・』
政府関係者に僕を合わせたくないということと、話の内容によっては僕の目の前で彼らを消し去ることをしたくないという思いもあってか、『ヒロ君はちょっと待っててね。』と
だけ言い残して3人は部屋を出ていった。

しばらくして美咲さんだけが戻って来た。
僕の前にズズンッ!と腰を下ろし、幅3mを超える指先で、あっという間に僕は美咲さんの左手の上に移動させられた。
『あのさぁ、ヒロ君の会社があったとこ、あたしたちに整地して欲しいんだって。』
結局、僕がここにいる直接の原因、本来のサイズの美咲さんによって街が丸ごと踏み潰されてしまった件は何も語られなかったようだ。もっともその話を出したところで、
美咲さんが不機嫌になるのも分かり切っていたので、僕としては少しホッとしたのは事実だ。
何しろフルサイズの美咲さんであれば、鼻歌交じりに世界征服することも人類を滅亡させることも余裕でできてしまうことは疑いようもないことなのだから。
そんなわけで、整地する前に会社に置きっぱなしの私物を取りに、僕は久しぶりに外の世界に出ることになった。

ずぅぅぅん、ずぅぅぅん・・・
僕のいる場所の下の方から重厚な地響きと時折金属がひしゃげる音が聞こえてくる。目の前にはどこかの高台から街を見渡すような景色が広がり、もの凄い速度で流れていく。
不意に僕を掌に乗せている女の子が立ち止った。中学生の玲奈ちゃんだ。美咲さんは僕を玲奈ちゃんに託して、あの絵里ちゃんを送っていったのだ。
どうしたんだろう?と思って振り返ると、ブラウスを思い切り盛り上げている巨大な胸の上から相変わらず不機嫌そうに僕を見下ろしていた。
『たったの一歩で湖作っちゃうんだ。』
フルサイズの美咲さんの足跡は、地下水が染み出したり雨水がたまったりしてできた湖になっていた。その面積は相当なものだろう。この下に僕が暮らしていた街が丸ごと
沈んでいるわけで、改めて美咲さんの力の凄まじさを感じたが、玲奈ちゃんの次の一言は僕をさらに驚愕させるのには充分過ぎた。
『あたしも気をつけなきゃ。。』
え?どういう?思わず呟いてしまったことに気が付いて、玲奈ちゃんがハッとなって僕を見下ろした。数十秒の沈黙。。。
『き・・・聞こえた?』
明らかに動揺したような声に僕は思わず頷いた。
「ひょっとして・・・玲奈ちゃんも?」
今度は玲奈ちゃんがコクンと頷く。
『あたしも本当は今より100倍大きいんだよね。』
僕は呆けてしまった。目の前の美少女があの美咲さん並みの途方もない超巨人だなんて思ってもみなかった。
『いつもはこの大きさだけど、たまに元に戻ってあの部屋で過ごしてるんだよね。』
玲奈ちゃんが歩き始めながら色々と話をしてくれた。あまり長い間小さくなっていると、身体が不安定になって無意識に元のサイズに戻ってしまう可能性があるらしい。
だが、その話は玲奈ちゃんにとってはつい言っちゃったレベルなのかも知れないが、僕は全身の震えが止まらなかった。

『着いたよ、ここでしょ?』
バキッ!グシャッ!ずぅぅぅぅんっ!
ミニスカートに包まれた既に大人の女性のそれになっている丸く巨大なヒップが、人ひとりいない街の中に降ろされ、いくつかのビルや車を押し潰していく。
脚の間に降ろされた掌の先には、僕があの時まで勤務していたビルが建っている。だが、壁面には無数のひびが入り、窓ガラスは全て割れ落ち、
心なしか少し傾いているようにも見えた。
そしてビルの両側に玲奈ちゃんの長い脚が伸び、少し先を巨大なローファーが踏み潰している。僕は玲奈ちゃんの脚の間に収まった決して小さくは無いはずのビルの屋上に降ろされる。
これって20階建てなんだけど、と思いながら振り返ると、膝を少し曲げて座っている玲奈ちゃんの大きな胸元くらいの高さでしかないことに、改めて玲奈ちゃんが300mを
超える大巨人であることを思い知らされた。が・・・入れない。屋上の扉はあることはあるが、当たり前のように施錠されているのだ。どうするかなぁ、と思っていると、
『何してんの?』
ウロウロしている僕を眺めていた玲奈ちゃんが声をかけてきた。
「いや・・・入れない、んだけど。。。」
『めんど・・・』
同時に人差し指を丸めた右手がヌウッと伸びて来る。
ビシィッ!ドゴォッ!
『これで入れるでしょ。』
僕は粉々になって吹き飛ばされた屋上の入り口があった場所を、しばし呆然と見つめていた。

僕がいたフロアは16階だ。取りあえずノートPCと仕事の資料・・・これはいらないか。結局PCといくつかの私物をもって屋上に向かおうとした。でも、凄い散らかりようだ。
ほとんどのロッカーは倒れているかしているし、椅子も色々な場所に転がっている。床面にも大きなひびが入っている場所もあった。巨人にとってはこんなビルを破壊するのは
簡単なことなんだろうな。当然エレベーターなど動いていない、というより電気も通っていないので、また階段で屋上に向かおうとしたその時だった。
ズッズゥンッ!グラグラッ!
玲奈ちゃん?じゃなさそうだ。その時外から玲奈ちゃんの声が轟いた。
『どうしたの?』
『このおっきいビル、玲奈ちゃんが壊すの?』
聞いたことの無い声だ。しかも、かなり幼そうな感じがする。
『そうじゃないけど、今は壊しちゃダメ。』
『なんで?』
『今こわしたら美咲さんが大切にしてるこびとさんが死んじゃうよ。そしたら、千夏ちゃん、美咲さんに潰されちゃうよ。』
『え?じ、じゃあやめとく・・・』
地響きが遠ざかっていくのを感じて僕はホッと胸を撫で下ろし、屋上に向かおうと階段室に入っていった。

「え・・・まじ?」
荷物一式を抱えてまま階段室で茫然自失の僕。目の前にはぽっかりとした空間が広がっていた。上階に向かう階段がスッポリと消えていたのだ。
たぶんさっきの振動で崩れてしまったのだろう。僕は階段が消えた場所から下を覗き込んでみた。
「行けそう・・・かな?」
ところどころ瓦礫で塞がれているが、何とか避けられそうな空間は開いている。それより気になるのが、降りている途中に玲奈ちゃんが動いて階段が崩れたら今度は真っ逆さまだ。
『ねぇ、まだぁ?』
外から轟く大音量と、それに呼応するようにパラパラと崩れる壁面が、ここにいても危険だということを知らせている。仕方なく、僕は階段を降り始めた。

途中何度かコンクリート塊を乗り越えながらようやく1階のエントランスにたどり着いた。でも、何か暗い・・・
当然動いていない自動ドアをこじ開け外に出ると、一瞬その場で固まってしまった。片側3車線の道路は途方もない大きさの巨大なこげ茶色の壁に埋め尽くされていたのだ。
間違いなくこれは玲奈ちゃんのローファーだ。たぶん何気なく足を置いただけなのだろう。だが、その破壊力は桁外れだ。靴裏はアスファルトを押し潰して道路に靴全体が
埋め込まれ、その重量をあらわすかのように回りは粉々に砕けたアスファルトが盛り上がっている。
これより巨大な美咲さんの足も何度か見ているが、こんなに至近距離で見るのは初めてで、もの凄い威圧感を全身に感じてしまっていた。
『なんだ、下から出てきたの?』
声がした方を向くと、「えっ・・・あっ・・・」思わず声にならなかった。玲奈ちゃんは僕がいたビルを足の間に挟むように座っており、当然僕の視界の先には圧倒的な
存在感のふくらはぎとさらに太さも桁違いの太ももが紺色の制服のスカートに中から伸び、そのスカートの中が・・・白かった。
僕にとっては想像もしていなかった大開脚が目の前で映画のスクリーンの数倍の大迫力で展開されているのだ。文字通り茫然自失の状態だった。

『ふ~ん、そういうことか。』
僕が全く反応しないことに気がついた玲奈ちゃんが、視線を下に落としてそれだけ呟いた。
えっ、いや、違う・・・言いたかったのだが、玲奈ちゃんの視線の冷たさに全身が凍り付いて何も喋れない。その時、こげ茶色の壁がゴゴッ!と動き始めた。
足裏からパラパラと瓦礫を落としながら、瞬く間にソールの部分が頭上まで上がっていく。僕はゼンマイ仕掛けの人形のように動きに合わせて無意識のうちに頭を上に上げていた。
メキッ!ベキベキッ!ズッシン!靴裏から何かが剥がれ落ち、巨大な足跡の中に落下する。その正体は全体が完全に潰されたトラック・・・ただ足を乗せただけだと言うのに
文字通り鉄板のように貼り付いていたのだ。
『女の子のスカートの中を覗くなんて最低だよね。美咲さんのお気に入りでもちょっと許せないなぁ。』
いつのまにか、僕の頭上は真っ暗になっていた。踵を支点にして移動してきた巨大なローファーの靴裏が頭上いっぱいに広がっている。逃げなきゃ!と思っても恐怖で身体が動かない。
『美咲さんには覗きのことは内緒にしといてあげるよ。気づかないで踏み潰したことにしとくからさ。』
迫りくるローファーに、僕は頭を抱えて蹲ることしか出来なかった。

ヴォンッ!ドゴォッ!空気が唸り、次いでまるで至近距離に爆弾が落ちたかのような爆音と地響きが襲い掛かってきた。さらに追い討ちをかけるように、道路の向こうから
何か大きなものが崩れ落ちる轟音までが・・・でも、僕はまだ生きている。
恐る恐る顔を上げると、頭上にあったはずの凶悪な靴裏の姿は無く、爆撃があった方を見ると思わず息を呑んだ。10階建てのビルがあった場所には今まで頭上にあった
玲奈ちゃんの巨大ローファーのつま先が、ちょうど4階より上のフロアを吹き飛ばして宙に浮いていたのだ。
『フフッ、踏み潰されると思った?』
声がするほうを見ると、あのクールな玲奈ちゃんが悪戯っぽい笑顔で見下ろしている。しかもスカートの中は見えたままだ。
つま先がゆっくりと降下していき、3階部分を完全に踏み砕くのに5秒もかからなかった。すぐに2階と1階の壁面が同時に砕け、変形していく。ただ足を下ろしただけで
凄まじい破壊力だ。
『いちいちパンツ見られたくらいで踏み潰してたら、うちの学校の男子誰もいなくなってるよ。』
ズゥゥゥンッ!!!
玲奈ちゃんは笑ってそう言いながら、ビルの下層階を簡単に、しかも完全に踏み潰した。

『はい、乗って』
僕の目の前には玲奈ちゃんの人差し指がアスファルトを簡単に押し砕いて半分ほど地中に埋めた状態で横たわっている。
「い、いや・・・その・・・腰が・・・」
あまりの凄さに僕の腰は完全に抜けていた。しかも、大きな声も出せないので玲奈ちゃんも何で動かないのかがピンときていなかったようだが、ようやく何かに気が付いたのか、
一度指を上げてから僕を親指と人差し指で軽く摘み上げ、左手の上に降ろしてくれた。
『ひょっとして、腰ぬかしちゃった?』
たぶん前例があったのだろう。僕は図星を指されて「う、うるさいっ!」としか答えられなかった。しかも、あまりの恐怖からやっと解放されてホッとしたのか、
涙が溢れて止まらなくなり、思わず玲奈ちゃんの掌の上で号泣してしまったのだ。これには玲奈ちゃんも少し動揺したらしく、
『え?あ・・・そ、そんなに怖かった?ご、ごめんね。もう、怖いことしないから・・・さ。』
となだめてくれたのだが、一度噴出した感情はなかなか収まらず、そのうち玲奈ちゃんも逆に怒り出してしまった。
『あのさ、いつまでもピーピー泣かないでくんない?マジで潰したくなってきちゃうんだけど。』
だが、玲奈ちゃんが軽く握っただけで僕が一瞬で赤い染みになってしまうほどの強大な掌が動く気配はない。
結局、美咲さんの部屋に送り届けられるまで、ひとことも言葉を交わさなかった。ただ、遥か下界の破壊音が少々大きく響いてきてはいたが。

『ただいま~、玲奈ちゃんにやられちゃったんだって?』
ズシンズシンと地響きを立てながら美咲さんが戻ってきたのは昼ごろだっただろうか。家から出た僕の目の前に、タンクトップに包まれた巨大な胸がズンッ!と置かれる。
その辺のオフィスビルなど全く敵わないほど巨大な胸の上には美咲さんの顔が僕を見下ろしていた。
『玲奈ちゃんに聞いちゃった。あの子、こびとの心を折るのが一番上手いからね~。』
確かにあの時の玲奈ちゃんには殺意がみなぎっていた。美咲さんにもかなり怖いことをされているが、殺意が感じられなかったのである意味安心していたので、
本気で潰されると思ったのだ。
『まあ、あの子がこびとに一番優しいっていうのは事実だからさ、許してあげて。ね。』
美咲さんの指先にヒョイッと摘まれて掌に乗せられる。玲奈ちゃんよりもふた回りほど広い掌が上昇し、美咲さんのドアップの笑顔が見え、そこで僕は小さく頷いた。
『フフッ、じゃあご褒美あげるね。』
こういう時のご褒美は大体決まってるんだよな。そう思いながらも美咲さんはズンズンと布団の場所に近づいて行った。

胸の谷間から見上げる山は圧巻の一言に尽きる。美咲さんの自慢の爆乳は仰向けになったくらいではあまり横に流れることなく、ドンッ!と50m以上の高さを保ったまま
谷の両側に聳えている。ちょっとしたオフィスビル程度では、その頂には到底及ばない高さだ。
僕は爆乳山を見上げながら谷間を通り過ぎて鎖骨あたりまで近づいていく。美咲さんは少し顔を上げて僕がいる場所を確認すると、何やら片手でごそごそし始めた。
『今日はこれかな?』
谷間には5階建てのビルが乗せられていた。高さはおっぱい山の半分もないくらいだ。
『中に入る?』
「いや、今日はやめとく。」
『あら、トラウマになっちゃった?可愛いわね。じゃあ、潰すね。』
笑いながら美咲さんがおっぱい山を少しずつ中央に寄せていくと、ビルの壁面に一気にひびが入る。メリメリバキバキという破壊音が鳴り響き、バゴォッ!
ビルの壁の中央にひときわ大きな亀裂が全フロアに跨って発生した。相変わらず凄い力だ。そのまま屋上、というよりビル全体が亀裂を中心にV字型に変形していき、
ついにはピッタリとくっついたおっぱい山に完全に隠れてしまった。美咲さんがそのままグニグニとおっぱい山を上下左右に揺らす度に中から破壊音が聞こえてきた。
やがて、手を離したのかおっぱいが元の状態に戻った時には、谷間にはグシャグシャに粉砕された瓦礫が散らばり、山の斜面にビルの残骸やらいろいろと貼りついて、
元のビルの姿は全く見えなくなっていた。
「肉の山の破壊力は相変わらずだね。」
山の斜面の残骸を美咲さんが指先で払い落とした後、僕は谷間に向かっていった。粉々になったコンクリート、針金のようにグンニャリとひん曲がった鉄筋、
中にあったと思われるロッカーや机や椅子もぐっちゃりと潰れている。こんな場所に人がいたらひとたまりもないだろう。
「そう言えば、人を入れたままこんなことしたことあるの?」
何気なく聞いてみた。
『ヒロくんと知り合ってからは無いかなぁ。でも、あったとしても数えるくらいだよ。』
やっぱりあるんだ。でも、なんとなく怒る気になれない。これだけの巨体なのだから当然なのかもしれないなとも思ってしまう。彼女たちにとって何気ない行為が、
自分たちには大災害級の出来事になるなんて、たぶん美咲さんも玲奈ちゃんもわからないのかもしれない。

僕はへその横を通って、密林地帯に近づいていた。その少し先では、すでに美咲さんが股間を弄っていてグチョグチョという音が聞こえ始めている。
人並みのセックスなどできるはずもないのでもっぱらオナニーなのだが、今日はなんとなく美咲さんの大切な部分に触れたいとお願いしたのだ。
『大丈夫かなぁ。』
少し不安そうな顔を見せたが、美咲さんは危なくなったら思いっきり毛を引っ張るように言うと、自分から感じやすいようにと準備を始めていたのだ。
陰毛の密林をかき分けて先に進もうとした時だった。
ガチャッ!
『えっ!?』
『やっぱさぁ、昼間のことやりすぎちゃったかなぁって思って、謝りに・・・なっ、何やってるの?』
ドアを開けたまま固まっている玲奈ちゃんと目が合った・・・気がした。それはそうだろう。全裸でM字開脚している美咲さんも表情は固まったままだと思う。
『ごっ、ごめんっ!また来るからっ!』
バタンッ!
3人にとって何時間にも感じた数秒間の出来事だった。

翌朝、なんともばつの悪い空気。玲奈ちゃんは気を取り直した風を装ってはいたが、顔はそっぽを向いたままだ。
『き、昨日はちょっとやり過ぎたから、ご・・・ごめん。』
「いや・・・べつに、もう・・・平気、だから・・・」
普段なら空気を察して間に入ってくれる美咲さんもやはりぎこちない。
『あ、あのさ・・・今日、ヒロ君預かって・・・くれる?』
今日も政府の役人と打合せらしく、僕を政府関係者に会わせたくないと思って、美咲さんは玲奈ちゃんにお願いしようと来てもらったのだ。でも、昨日の今日で
玲奈ちゃんというのも・・・という思いもあったので彩香ちゃんでもよかったが、こびとの扱いでは玲奈ちゃんの方が上手い(この場合の上手いはうっかり潰してしまう
ことが少なそうという理由らしいが)ので、昨夜のことはあるが、玲奈ちゃんが一番安心できると美咲さんは思ったらしい。
事情を聞いて玲奈ちゃんも、『わかりました。』と短く答えるのが精いっぱいだった。

僕は廃墟の中をズシンズシンと歩いていく玲奈ちゃんの掌に乗せられていた。ふたりとも一言も交わしていない。気まずい雰囲気のままだ。
『このあたりでいいか。』
玲奈ちゃんが立ち止まった場所は、僕の会社から2駅先の駅前だ。少し離れた場所に港も見える。そんなに破壊されているようには見えないが、
鉄道の復旧の見込みが全くないので対象の地域に入っていた。
グシャッ!ズゥゥゥンッ!玲奈ちゃんが何かを踏み潰し、そのまま僕を乗せた掌もゆっくりと下がっていく。次いで、ズッズゥゥゥンッ!という特大級の地響きの後で、
僕は地面に下された。
どこかに座ったのだろうか、駅前のバスターミナルの中に下された僕から巨大なローファーが見える。駅から少し離れた繁華街を踏み潰しているようで、衝撃で
傾いている雑居ビルもある。視線を移すと、大通りの一角を文字通りこげ茶色のローファーが占領していた。
どうやら足の間に下されたようだ。ん?ということは・・・恐る恐る振り返ると、やっぱり・・・駅を直撃して完全に押し潰している巨大なヒップ、紺色のスカートに
包まれているが、中央に白い壁が見えた。
「ちょ・・・玲奈ちゃんっ!丸見えっ!」
叫んでみたが、玲奈ちゃんはどこ吹く風といった感じだった。
『昨日も言ったじゃん。こびとにパンツ見られたくらいじゃどってことないって。』
そう言いながら右足をゆっくりと伸ばしていく。つま先が建てられたローファーに敵う建物などほとんどなく、巨大ブルドーザーと化した靴裏に粉砕されながら
鉄筋コンクリート建ても木造家屋も関係なく押し流されていく。横を見ると、極太の太ももが10階建てのオフィスビルを押し潰しているところだった。

高さ40m以上ありそうな肌色の壁が目の前に聳えていた。玲奈ちゃんに近づくように言われたのだ。
『触っていいよ。昨日のお詫びだから。』
「へ?」
『別にこびとに触られたってどうってことないし。中学生の女の子の脚触るチャンスなんか滅多にないでしょ。』
何を考えてるんだか。でも、ここでまたぐずぐずしていると何を言われるかわからないので、言うとおりにしようと、目の前の太ももに手を当ててみる。
「肉の山の次は肉の壁かぁ・・・」
『なんか言ったっ!?』
げっ!聞こえた?
『別に肉の壁でもいいけどさぁ、あたしからするとなんか虫が這ってるみたいでムズムズするんだよね。』
「はいはい、どうせ虫けらですよ。」
『あ、可愛くない言い方。虫だったら潰してもいいんだよね。』
大きな影が近づいてくる。と思った瞬間、僕は玲奈ちゃんの親指と人差し指に挟まれて急上昇していった。
降ろされたのは広大な掌の上、目の高さまで持ち上げられている。でも、何か楽しそうな眼差しだった。
『ねえ、ひとつ聞いていい?』
「な、なに?」
こうやってドアップで見ると、まさしく蛇ににらまれた蛙だな。でも、今はなんだか美咲さんの掌に乗っているくらい安心できる。と、突然のひとこと。
『毎晩あんなことしてんの?』
あんなこと?あ、いや、その。。。なんて答えればいいのだろう?頭の中をぐるぐるが駆け巡って口から出た言葉は、
「え?気になるの?」
『ばっ・・・そ、そりゃ付き合ってるんだから当たり前だけどさ。昨夜は突然あんな場面だったから・・・』
何故か玲奈ちゃんが少し狼狽しているので、少し調子に乗ってみる。
「なに、玲奈ちゃんもしてみたいの?彼氏とかいないんだ。」
『なっ、ばっかじゃないの?マジ潰すよっ!』
僕が乗っている床が一気に硬くなったのが分かった。手に思わず力が入ったのだろうがこれ以上は危険だと僕の内なる声が叫んでいた。
「いや、ごめん。玲奈ちゃんもそういうことに興味を持つ年頃かなと思っただけで・・・」
『ま、まぁ、少しは気になるけど、あたしはただ美咲さん、大変だなと思っただけだよ。』
「なんで?」
『だってさ、』
そう言いかけると玲奈ちゃんは地面から何かを摘み上げた。それは前後を親指と人差し指に挟まれた路線バス。すでに車体から嫌な金属音が聞こえている。
メギャッ!一瞬で指先がくっつくと、バスの姿は全く見えなくなる。
『あたしだってこんな力なんだよ。興奮して手加減できなくなったらこびとなんかあっという間に潰しちゃうでしょ。美咲さん相当気を使ってると思うんだよね。』
開いた指先には、完全にぺしゃんこになったほぼ鉄板上のバスの残骸が貼り付いていた。
確かにそうだよな。たぶん興奮したら僕は生きては帰れないだろう。でも、何となくだがギリギリのセンで美咲さんは踏みとどまってくれているように思えるのだ。
『まあ、あんたが潰れても構わないけどさ。それに、本当の大きさの時はこびとから見たら天変地異だと思うから、どうにもならないよね。』
クスッと笑うと、玲奈ちゃんが伸ばしている足の方から破壊音が聞こえてきた。

『ちょっとここにいて。』
僕が降ろされたのは15階建てほどのそれなりに面積もあるビルの屋上だった。ビルの周りには・・・何もない。さっき玲奈ちゃんが踏み潰したからで、
100m四方くらいの更地の中にポツンと僕が乗せられたビルが建っている。
『これからちょっと暴れるからさ、間違えて潰さないようにしたのよ。何かリクエストがあればやってあげるよ。』
ビルの前で膝立ちになっていた玲奈ちゃんが、地響きを立てながら立ち上がってローファーを脱ぎ捨てる。50m以上あるサイズのローファーが宙を舞い、
まとめていくつかの建物を叩き潰して土煙が上がった。
「爆弾より凄いな・・・」
さらにもう片方も近くに落下して、付近に壊滅的な打撃を与えていたが、そんなことは気にも留めずに玲奈ちゃんは白いソックスも脱ぎ捨てて素足になって
膝にも届かないビルの前で仁王立ちになっていた。
『ねえ、美咲さんってこんなことするのかな?』
屋上まで右足を上がった玲奈ちゃんの右足を見て、少し驚いてしまう。ダンプカーが足の親指と人差し指の間に挟まって、ミチミチと音を立てながら変形していたのだ。
「器用な足だな。」
『でも、こびと挟んだら力加減が難しいからすぐ潰れちゃうよ。試しに挟んでみていい?』
足指の動きだけで、簡単に変形していくダンプカーを見せられてそのセリフは、足指で殺してあげると言っているようなものだよなぁ。
「遠慮しとく・・・」
『そっ、』ベギャァッ!
あっさりと押し潰されたダンプカーは、玲奈ちゃんが足指を開くと50m以上下の地面に向かって落下していった。

『さぁて、いっちょうやるかぁ!』
そう言うと、軽快な足取りで重厚な地響きを立てながら倉庫街へ向かう。大小様々な倉庫は、身長300mを超える巨大女子中学生のスキップに
耐えられるものなどひとつもなく、踏み潰され、吹き飛ばされて瞬く間に瓦礫の山へと変わっている。近くにあった大小様々な車両も同様で、
ひと踏みでペシャンコにされるか、着地の衝撃で数十mも跳ね上げられて廃材の山になった地面に叩きつけられる。
次に玲奈ちゃんは住宅街へと歩を進め、ひとしきり見まわした後に四つん這いになった。両手で数軒ずつの住宅を叩き潰し、数十軒の住宅やスーパーを
その巨体の下に収めると、ゆっくりと寝そべっていく。人間サイズで推定Eカップの美巨乳が3階建てのスーパーをブラウス越しに圧し潰しているその顔は
いつもの冷徹な表情とは真逆で、凄く楽しそうな少女の顔だ。
片手で頬杖をついて、手の届く範囲にあった駐車場の車を鼻歌交じりに次々と弾き飛ばし、車が無くなったのか的にしていた10階建てほどの穴だらけになった
ビルに手を伸ばすと、ズドンッ!と叩き潰した。
満足したのかひとしきり遊び終わったという顔で、僕の前に戻った時には、周りの廃墟の面積は数倍にも広がっていた。

「凄い暴れっぷりだよなぁ。」
僕の目の前には、ビルの前に座った玲奈ちゃんの少し土に塗れたブラウスが見える。最後のおもちゃにするのか片手で全長50mほどの貨物船を掴んでいた。
『そぉ?でも、本当の大きさだったら軽く引っ叩いただけでこのくらいは余裕で潰せちゃうよ。今度見せてあげよっか。』
そうだった。玲奈ちゃんの本来の大きさはこの前の美咲さんより一回り小さいくらいだった。普通に歩くだけで街のひとつやふたつ簡単に消し去ることができるのだ。
「いや、そ、それは・・・」
少し及び腰の僕の答えに気が付いたのか、玲奈ちゃんはこう付け加えてくれた。
『大丈夫だよ。美咲さんの掌に乗ってれば安全でしょ。』
確かにそれはそうだが。それよりも、何で船なんか持ってきたのだろう?そっちの方が気になったので聞いてみた。
『これ?美咲さんへのお土産だよ。あたしにはまだ少し大きいけど、美咲さんにはちょうどいいかなって思ってさ。』

その日の夜・・・
「はぁ~、すげぇ!丸のみかよ・・・」
ほとんど絶句状態の僕の目の前では、全裸の美咲さんがあの船を軽く掴んで開いた脚の中央に押し当てていた。すでに前半分をジメジメとした洞窟の中に
呑み込もうとしている。
『電車とかじゃ物足りなかったのよね。玲奈ちゃんってこういうとこ気が利くのよ。んっ・・・いい感じかも・・・』
そのままズブズブと美咲さんの中に取り込まれたそれは、メリメリという嫌な音をたてながらついには完全に?み込まれた。
『もうちょっと頑丈だったら、ヒロくんを中に入れて入れられるのにね。』
いやいや、美咲さんの締め付けに何とか耐えられても、中は大洪水かもしれないでしょう。最悪溺死しちゃうよ。
そう思わないでも無かったが、僕は美咲さんが船の後部を摘まんで抜き差ししている姿を、少々股間を元気にしながらしばらく眺めていた。