※以前何回か書いた奈々美ちゃんのお話の続きです。横綱との関係や今までのエピソードは過去のものを探しておくんなまし・・・

赤道直下、熱帯に位置するこの島の小さな漁港で、海の男たちは今日の漁の成果を陸揚げしている真っ最中のことだった。
「おい!あれ、何だ?」
ひとりの男が指差す方向を近くの皆が見ると、水平線近くの大海原に、普段では絶対に見ることが出来ないものが視界の左から右へと動いていた。
それは、海面から出ている薄いグリーンのビキニに包まれた巨大な胸をユッサユッサと揺らしながら、大海原を歩いて渡っている女の子の上半身だった。
「お、おい・・・あの辺りって・・・」
「ああ、水深3000mはあるはず・・・」
ってことは、身長は軽く6000mを超えているということか。その大巨人が今度は反対側を向くと、ゆっくりと仰向けに寝そべるような形になったのだ。猟師たちからは顔の一部とその辺の島ほどに巨大な胸がゆっくりと移動していく姿が見えるだけになった。
「と・・・とりあえず、こっちには向かってねえから・・・」
「ああ・・・」
口では平静を装いながら、膝から下をガタガタと震わせて、猟師たちはその姿が視界から消えるまで片時も目を離せなかった。
そして、その大巨人が何だったのかを、翌日知ることになるのである。

「近くに島も無いから大丈夫だよね。」
奈々美は、掌に乗せていた5人ほどの同級生を胸元に移動させ、そのまま仰向けで海に浮かぶと、海中で脚を動かして、ゆっくりと進み始めた。
かなり遠くに陸地が見えるが、この距離だったら大丈夫だろうと思ったのだが、それにしても早い!1mを5秒かけて進む感覚であっても、時速3000km近くにもなる。ジェット旅客機なんぞよりも遥かに早いのだ!オリンピックに出れば金メダル間違いなしなのだろうが、50mプールが指先にちょこんと乗ってしまうほどの巨体なので、出場自体が不可能なのだが。。。
「ねえ、奈々美。船とかいたらよけられないよ。」
「今日は船は全部避難するって言ってたから大丈夫だよ。やっぱ、気持ちいいよね~。いくら大きいからって少しくらい泳げないとつまんないよ。」
少し顔を上げて、鎖骨と上胸の間でくつろいでいる身長400mに少し届かない小さな加奈子ににっこりと微笑んだ。
「そうだねぇ、そのうちどこに行っても泳げなくなっちゃうかも知れないもんね。」
水着の肩紐を軽く掴んで、ヨットの上でくつろいでいるかのような加奈子に、容赦ない大波が襲い掛かる。
「うぷっ・・・なによ~、怒ったの?」
「だって・・・奈々美だって、これ以上おっきくなりたくないよ・・・」
「あ~ごめんごめん。もう言わないからさ。」
ようやく成長が止まったかに思えた奈々美だったのだが、最近また少しずつだが大きくなり始めていたのだ。まだ12歳の中学1年生なんだから成長するのは当然だが奈々美たちの場合、それが尋常ではないのは周知のとおりだ。加奈子などは、たったの半年で2倍以上大きくなったのだから。
「それよりさ、もう少しで着くんじゃない?」
専用スマホのGPS表示を見ていた他の女の子に言われて、奈々美は身体を起こしながら胸元に乗せていた小さな巨大少女たちを掌に移動させて立ち上がると、海面から見事な太ももが聳え立つほどに浅くなっていた。といっても、まだ水深1500m以上はあるのだが・・・

「奈々美~!本当に誰もいないみたいだよ~!」
招待状で指定された、南半球のとある大陸の海沿いの街。それなりに大きな船が停泊している港口には、そんな船を指先だけで摘めるほど巨大なビキニ姿の美少女、奈々美が立って街を見下ろしていた。街の中では、身長200~400mほどの5人の少女たちが、ビルや車を無造作に踏み潰しながら歩き回っている。
「じゃあ、いいのかな。みんな、ちょっと離れてて。」
奈々美はそう言うと、右足を少しだけ上げて倉庫街の上に翳す。サイズ約1000mの巨大な足が占領していた空間にドドッと海水が流れ込み、停泊していた大型船舶が簡単に転覆して海流に呑み込まれる。足からはそのサイズに見合った特大の水飛沫が倉庫街に襲い掛かかり、直撃を受けた倉庫はその水圧だけで押し潰されてしまった。
コンテナ船に荷物を運ぶために据え付けられているガントリークレーンのあたりは真っ暗だった。その暗闇がどんどんと濃くなっていく。その黒い影を作っていたもの、縦横200m以上ある奈々美の足の踵がその大型クレーンを丸呑みにしようとしていた。
据付型なのでかなり頑丈なはずのクレーンは、少女の下ろした足の破壊力に全く無力だった。踵がクレーンに触れた瞬間、その頑丈なはずの鉄骨がクシャリと折れ曲がってしまったのだ。もし、その場に人がいたら、細い針金細工のように簡単に変形させられる鉄骨の姿を見て恐れおののいたことだろう。
しかし、破壊はそれだけに止まらない。強靭な踵はさらに鉄骨を折り曲げ、へし折り、あり得ないほど簡単に変形させられながら押し潰されていったのだ。その踵の持ち主が、そこにそんなに頑丈なクレーンがあることさえ気付かないほど簡単に潰され、ついには岸壁に接地した踵の下に消え去っていた。
深く岸壁までを踏み砕いた踵を基点にして、足先が倉庫やビル群に襲い掛かっていた。これらの全てが、足裏が触れた瞬間に砕け散りさらに押し固められていくのだ。

ズッズ~ンッ!!!
奈々美の右足が完全に接地した瞬間に、巨大地震と桁外れの爆風が周辺の建造物に容赦なく襲い掛かった。ある建物は基礎から跳ね上げられ、粉々になって四散した。巨足の横にあった大型トレーラーは塵のように簡単に吹き飛ばされ、数km先に叩きつけられた。
もちろん、なんとか形を保ったものも数えるほどだが存在した。ある10階建てのビルは、ちょうど足の親指と人差し指の間に挟まれる格好になった。指の間があまりにも広すぎて直撃と足先であったが故に爆風を免れ、高さ100mを優に超える親指の隣で豆粒のようにちんまりとそこに存在していた。
だが、奈々美がほんの少しだけ足指に力を加えた瞬間、そのビルは親指と人差し指からの圧倒的な圧力の前に敢え無く粉砕されてしまった。もちろん、粉砕した本人は、数百という数の建造物をひと踏みで潰した中のたったのひとつに過ぎない小さなビルのことなど気付くことも無かった。
奈々美は2歩目で街の中心部を踏み砕き、3歩目では郊外の住宅地を完全に更地に変えていた。足を上げた時に足裏に張り付いていた色々なもの、粉々になった瓦礫や鉄板状の車両、そしてクシャッと潰した針金細工になって踵に張り付いていたガントリークレーンの成れの果てまでもが、バラバラと直接破壊を免れた街のあちこちに降り注ぎ、この超巨大少女が何気なく歩くだけで街はほぼ壊滅状態になってしまった。

加奈子たちをもう一度掌に乗せ、奈々美は大陸の中心部へと歩いていった。特に目新しいものも無く砂漠地帯に入っていく。
「奈々美が走り回っても大丈夫じゃない?」
「なにそれ~・・・」
でも、確かに走り回れるほどに広いと奈々美も感じていた。しかも障害物はほとんど無さそうだ。なるほどここだったら大会を開いても大丈夫かも知れないな。奈々美は招待状の文面を思い出していた。

1週間ほど前、奈々美の部屋。奈々美と加奈子、そして極大山が話をしていた。
「それにしても、加奈子ちゃんも大きくなったね~。」
奈々美の広大な掌に乗せられた極大山が、テーブルに乗せている奈々美の山脈級バストの横に立っている加奈子を見上げていた。
「うん、400m超えたからね。でもさぁ、このでっかいおっぱいよりちっちゃいんだよね~。」
加奈子が超特大ブラに包まれている奈々美の胸をペチペチと叩く。確かにこの巨大な女の子をすっぽり挟んでしまえるほど奈々美の胸は大きかった。恐らく東京スカイツリーも余裕で挟めるだろう。
「もう、加奈子ちゃんのエッチ・・・」
「でもさ、極大山さんも大変だよね。山登りするようなもんだもんね~。」
「え、あ、いや、その・・・」
あまりにも勾配が急すぎて山登りも出来ないんだけど・・・なんてことを言うと加奈子が調子に乗ってまたからかうのでここは黙っている。その時だった。奈々美と加奈子の特注スマホからほぼ同時に、メールが入った着信音が鳴り響いた。
「なんだろう。」
見たことが無い差出人。件名は「世界大会へのご案内」とある。なんの世界大会?と思って開いてみる。まあ、奈々美に怪しいメールを送りつけるような命知らずはいないだろう。
しばらく読み進めて、不安そうな表情で加奈子を見下ろす奈々美。極大山にはまだ内容はわからない。
「加奈子ちゃん、どうしよう。。。」
「面白そうじゃん。行こうよ。」
「でも・・・」
「大丈夫だよ。奈々美が余裕で世界一だって。それに、私もこの500m以下級に出てみたいしさ。」
内容は世界女子相撲大会の招待状だった。しかも、世界中の巨大女性を対象にした文字通り世界最大最強を決める大会らしい。場所は南半球の某大陸でトーナメント方式で行われる。
いくつかカテゴリーがあって、150m以下、300m以下、500m以下、1000m以下、無差別級に分かれているようだ。
「剛士さんは、どう思う?」
奈々美は掌を目の前まで上げて、極大山に問いかけてみた。
「出るか出ないかは奈々美ちゃんが決めることだよ。でも、出るんだったらひとつアドバイスがあるけど」
「な~に?」
「外国人は同じ体格でもパワーがあるからね。押し負けるかもしれない。でも、腰を落として相手のパワーをうまく利用すれば必ず勝てるよ。パワー任せの外国人は必ずと言っていいほど腰高だからね。」
「うん、わかった。」
「奈々美のでかさとパワーに勝てる子なんかいないと思うよ。いたらとっくにニュースになってるじゃん。」
加奈子が横から口を挟むが、
「いいの。剛士さんのアドバイスは大切なんだから。」
のろけているとしか思えない奈々美の一言に、加奈子も両手を上げて『勝手に言ってな』といった感じで呆れてしまったのだが、とにかくも、その世界大会に奈々美たちも参加することになったのだった。

話は某大陸に戻って・・・(会話は日本語ベースです。悪しからず)
砂漠の中を地響きを立て砂煙を巻き上げながら歩いている奈々美の視界に、何か動くものが入ってきた。
「あそこかな、誰かいるし。」
何人かのやはり巨大な女の子と、そのサイズに見合った大きさのいくつかのテントが見える。大きい子で2000~3000mくらいだろうか。明らかに奈々美より小さい子達だ。
「やっぱ、奈々美が一番おっきいのかぁ・・・」
その時だった。テントの向こうで何かが動いたかと思うと、ズイッと大きくなったのだ。スタイル抜群の真っ赤なのビキニの金髪の女の子。しかも、相対的に見ても爆乳だ!その子も奈々美に気がついたらしい。こちらに向かってゆっくりと歩いてきた。
お・・・大きい・・・明らかに他の子よりも巨大だな爆乳美少女が、どんどんと近づいてくる。奈々美も思わずその場に立ち尽くしてしまった。

「ハイ!あなたがナナミ?あたしはシェリー。」
奈々美が少し見上げるほどの巨大な美少女。しかも胸元では奈々美のそれよりも確実に一回りは大きなふたつの山が、声を発するだけでブルンブルン揺れている。腕や脚もがっちりとしていて恐らく単純な力比べでは奈々美よりも強いだろう。
「あ、はい。。。」
それよりも、奈々美は生まれて初めて人を見上げていることに衝撃を受けていて、それだけ答えるのが精一杯なのだが。
「大きいわね。あなたとだったらちゃんとオスモウできそう。」
シェリーが右手を差し出すと、奈々美は慌てて右手の上に乗っていた友達を左手に移す。加奈子たちの小さな悲鳴に「ごめん。」と小さく答えながら、シェリーと握手を交わした。
クシャッ!?
「ふぇっ!?」
手の中で何かが潰れた感触。誰かまだ残ってた?うそ・・・やばいよ・・・慌てて右手を目の前に上げると、そこには原型を留めないほどに潰れた、たぶん船、それも軍艦だったものが横たわっている。
「あ、あの、これ・・・」
「ああ、これ?さっき軍隊が生意気なこと言ってきたから苛めてやった時に持って来ちゃった。でも、あたしたちが普通にシェイクハンドしただけで潰れちゃうんだから、やっぱこびとの物って弱いよね~。」
シェリーは悪びれずに笑っている。奈々美としてはひとまず友達を握り潰してしまったわけではなかったことに安堵の表情を浮かべて苦笑いをするのが精一杯だった。

「この人たちみんな出場者なの?」
連れてきた友達を一度各階級の集合場所に降ろして、奈々美はシェリーと共に無差別級の集合場所に向かっていた。足元にはたくさんのこびと、いや、巨人の女の子が超特大サイズのふたりの女の子の姿を仰ぎ見て驚いている。
「そうよ。こびとクラスはいっぱいいるから今日から予選なの。あたしたちは明日ね。それよりナナミって12歳なんだって?同じ歳だね。」
二度目のビックリである。奈々美より遥かに大人びたこの女の子も同じ歳なんだ。思わずその場で立ち止まってしまった。
「ナナミ~!何してんの?こっちだよ。」
付いて来ない奈々美に気付いて、シェリーが手招きする。
「あ、ごめん。」
奈々美は慌てて盛大な地響きを立てて、シェリーの後を追っていった。

無差別級の出場者は奈々美とシェリーを含めて18人だ。その中には奈々美の友達が4人もいるのだ。その奈々美とは別行動を取っていた昌枝ちゃんたちも奈々美が来たのに気付いて走り寄って来た。
「ねぇねぇ、奈々美。シェリーちゃんに勝てそう?」
奈々美とシェリーを除けば最大級の身長3000m近くある昌枝でさえ、この超巨人の腰を見上げなければならないのだ。事実上の世界一はふたりのうちどちらかになると言っても過言ではない。
「う~ん。奈々美の方がちっちゃいしね・・・でも、がんばるよ。」
「そうだよ~、ナナミとだったら本気でオスモウできるもん。お互いがんばろう!」
余裕の表情で笑いながらシェリーは自分の友達のほうに歩いていった。

無差別級は翌日なので、奈々美たちは加奈子たちの応援だ。
確かに階級を分けないと、この子達が対戦相手だったら踏み潰さないように逆に気を使わなければならなくなっちゃう。そんなことを思いながら小さな数百m級の女の子たちの対戦を眺めていた。
でも、大きな子っていっぱいいるんだなぁ。全世界から集まった数百人の巨大な少女たち。奈々美は自分と同じような子がこんなにたくさんいるとわかって少し嬉しくなった。
結果、奈々美の友達の中では、加奈子を含めた半数が決勝に駒を進めることとなった。

翌日も順調に試合は進んでいく。ここで番狂わせがあたりを騒がせた。なんと、身長400m弱の加奈子がひとまわり以上も大きな女の子を投げ飛ばして500m以下級で優勝してしまったのだ。
投げられた子よりも投げた加奈子の方がビックリした顔で立ち尽くしていたのだから大金星と言ってもいいだろう。
もう加奈子の周りはお祭り騒ぎである。奈々美も自分のことのように喜んでいた。
「極大山さんが言うこともたまには役に立つのね。」
「あ~、素直じゃないんだ。でも、帰ったらちゃんとお礼を言わなきゃね。」
「うん。」
加奈子にしては珍しく、素直に答えたのだから本当に嬉しかったんだろうな~。

ついにメインの無差別級である。しかも、全世界に中継されているのだ。安全のためにテレビクルーは100km以上離れた場所で撮影しているのだが、そこからでもシェリーと奈々美の姿ははっきりとわかる。世界最高峰の山々が動くようなものだから、当然といえば当然かもしれない。
そして優勝者は世界最大最強として認知されることになるのだ。
「あれ?奈々美の名前が無い・・・」
トーナメント表を覗き込む奈々美が少し不安になった。
「どれどれ?ホントだ。でも、シェリーちゃんの名前も無いよ。」
どういうことだろう?シェリーちゃんだったら主催した側なので何か知っているかもしれないと思い、奈々美はシェリーの元に理由を聞きに行くと、実にあっさりと答えが返ってきた。
「あたしたちを相手にして他の子が勝てると思う?」
「そうだけど・・・じゃあどうやって優勝者を決めるの?」
「それはね、」
それはこういうことだ。奈々美とシェリーを除く16人がふたつのブロックに分かれてトーナメント戦をする。Aブロックの優勝者がシェリーと、Bブロックの優勝者が奈々美と戦い、それぞれの勝者(まあ、誰が勝つかは当然わかるが)が、世界一決定戦を行うのだ。
シードってことなのかな?でも、確かに最初に自分と対戦する子は1回戦負けになっちゃうからそれでいいのかな?よくわからないなりに納得する奈々美だった。

それぞれの優勝者は奇しくもAブロックが昌枝ちゃん、Bブロックがシェリーの友達の女の子だった。やはり身長は3000mほどで、奈々美の半分くらいだ。
まずはAブロックの準決勝が始まった。土俵の直径は奈々美たちの体格に合わせて18kmもある。そこから周囲10kmは立ち入り禁止にしてそのさらに外側で他の女の子が応援するといった形だ。
昌枝は目の前に聳え立つシェリーの巨大さに圧倒されていた。奈々美とは全く異なる威圧感があるのだ。本気で投げられたら死んじゃうかもしれない・・・そんな恐怖を感じていたのだ。
「じゃあ、ちゃちゃっと終わらせようか。」
ビキニ姿のままのシェリー。本来はポロリ防止のためTシャツを着て、短パンをはかなければならないのだが、必要ないとビキニのままで出てきたのだ。
見合って~、はっけよい・・・
俊敏さを生かして、昌枝がシェリーの横に回ろうとするが、あっさりと両腕を掴まれ抱き上げられてしまった。脚をばたつかせるがどうにもならない。シェリーはそのままズシンズシンと土俵際まで歩くと、土俵の外にストンと昌枝を下ろした。それでおしまい。あっさりと勝負がついてしまった。
確かにこの相手ではTシャツも短パンも必要ないかもしれないな。と奈々美も思っていた。
Bブロックの準決勝も、奈々美も目の前の女の子を軽々と抱き上げて、土俵の外に下ろしただけで簡単に終わってしまった。

ついに世界一決定戦である。奈々美はもちろんシェリーもTシャツ短パンを着ている。当然がっぷりになるのだからビキニの紐を掴んだら下半身ポロリ確定だ。そんなものを全世界に中継されたら、世界中のテレビ局、いや、ネットも含めて破壊され尽くされてしまうだろう。
シェリーの戦闘モードに引き摺られて奈々美も無言でシェリーと向かい合う。お互い本気のガチンコに周りの女の子たちもさらに後方に下がっていく。どちらが勝つにしろ勢いあまって踏み潰されたらたまったものではない。
見合って~、はっけよい・・・
ドッゴォォォンッ!!!
巨体が激しくぶつかり合って巨大地震を引き起こし、それが数秒後に100km以上離れたテレビクルーにも襲い掛かった。世界中のテレビ画面が激しく揺れ、このふたりが本気で暴れたら簡単に世界が滅亡してしまうと、見ている誰もが思っただろう。
シェリーは奈々美を大きく抱えるように抱き締め、そのまま押し込もうとする。両手の動きを封じられた奈々美はどうすることもできずにただ腰を落として耐えるしかない。奈々美の1km以上ある足がググッと砂地に100m以上も沈み込んでいた。
たぶん、シェリーちゃんもさっきの加奈子ちゃんの決勝戦を見ていたんだ。相手の力を利用した見事な投げ技、だけどどちらかの上手を取らないと・・・奈々美の顔にあせりの表情が浮かんだ。
だが、シェリーもかなり焦っていたのだ。投げられないように両腕を封じてかなり本気の力押しをしているのだが、少し押し込めただけで止まってしまったのだから。
「ナナミ、やるわね。」
「シェリーちゃんも・・・強い、よ。」
ふたりの真剣さの籠った笑顔がぶつかり合った。

先に勝負に出たのはシェリーだった。もう、思い切り行くしかないと、全力で押し込もうとしたその直前、両腕の力が少しだけ抜けたことを奈々美は見逃さなかった。さっとシェリーの左上手を切ると、自分の左四つの体制に持っていき、慌てたシェリーが押しに来るのを半分だけかわした。
その後は無我夢中で奈々美自身もよく覚えていないが、シェリーの力に合わせて左腕を引き、そのまま右手で思い切り投げを打った!
ズッドォォォンッ!!!
2回目の超巨大地震の震源地のシェリーは、仰向けになって雲ひとつ無い青空を見上げていた。あたし、投げられちゃった。でも、不思議と悔しさは出て来なかった。

同時刻、テレビの前に釘付けになっていた極大山の部屋の連中は大騒ぎだ。稽古を早々に切り上げて、全員で奈々美を応援していたのだ。少し前に各階級の優勝者から加奈子の名前を見つけたときに、まだ昼間だというのに宴会が始まり、奈々美の見事な上手投げで優勝が決まった時には大歓声に変わっていた。
極大山は、「俺の初優勝の時にこんなに喜んでくれたか?」と少しすねていたが、それでも自分にとって一番の女の子が世界一になったのだ。嬉しくないわけは無く、一升瓶に半分ほど残っていた日本酒を一気に飲み干して、満面の笑顔で両手を高々と上げて喜んでいた。

手を突いて立ち上ろうとしたシェリーの前に、奈々美の手が伸びてきた。しっかりと握手をして立ち上がる。
「おめでとう、完敗だわ。」
身体中についた砂を払いながらシェリーは聞きたいことがあると奈々美に尋ねた。
「あの技はオスモウの技なの?」
「うん、教えてもらったんだけどね。」
「それは、スモウチャンピオンの彼氏から?」
へ?なんでそんなことまで知ってるの?奈々美の顔がみるみる真っ赤に染まっていく。
「ふふ、あの子たちに教えてもらったの。ねえ、今度ナナミの彼氏、紹介してよ。」
「な・・・なんで?」
「あたしもオスモウの技を教えてもらいたいなって。そしたら今度はナナミに勝てるかも知れないでしょ?」
全く押し返せなかったんだから力勝負では完全に負けてたし、それより・・・あのすっごくおっきなおっぱいに剛士さんが見とれちゃったら・・・
「か、かんがえとく・・・」
奈々美にはそれだけ答えるのが精一杯だった。