あるビルの解体工事現場。街の中心部から少し離れた場所にあるので、元々8階建てのこのビルも周りの建物から見ればそこそこ高いものだ。
その横でビルに匹敵するサイズの大きな影が動き回っていた。
「ねぇ、これどうすんの?」
ちょうど視線の高さの最上階にあったロッカーを3つほどまとめて掴んで、由紀は足元にいる現場監督に声をかける。
身長28m、体重100tを少し超えるスタイル抜群の女の子の少し日焼けした脚を見上げる格好になっている監督の心中は複雑だ。
「そこのダンプに乗せてくれ~!」
「わかったぁ」
頭上から明るい声が轟くと、巨体がゆっくりとしゃがみ込み、ドスンドスンとロッカーがダンプの荷台に次々と積まれていった。
握力も並外れているらしく、普通に掴んでいるようにしか見えないがほとんどのロッカーは折れ曲がるか完全に潰されていた。
「まあ、廃棄するからいいけど・・・」
それよりも、監督が気にしていたのはこの女の子の年齢だ。並みの人間より10倍以上巨大なこの体躯がまだ小学校5年生なのだ。
法律的に問題があるのではないか?そうしたら、罰せられるのかな?など、心配事は山ほどある。
でもあの時断ったら、生命の危機が・・・いや、そんなに悪い子ではなさそうだが、などと監督の頭の中では、色々な思いが渦巻いていた。

前日、解体作業の準備を進めている最中に何か大きなものがどんどんと近づいてくるのに気付いた作業員達。
視線の先には、ひとりの女の子がズンズンと歩み寄ってくる。その大きさは道路の両端の建物よりもはるかに大きく、今目の前にあるこのビルに匹敵するほどだ。
「巨人の女の子・・・か。」
監督が『女の子』と言ったのも無理はない。彼女は背中に大型ダンプカーほどの大きさの真っ赤なランドセルを背負っていたのだ。
作業員達は、半ば唖然としながらその巨大な女の子が通り過ぎるのを見上げていた。巨人の存在自体は聞いたことがあるがその姿を生で見たのは初めての
者が監督を含めて大多数だったからだ。
ところが、乗用車サイズのスニーカーが工事現場の前でピタッと止まったのだ。しかも、こちらに向き直ってビルから視線を落としているのだ。
作業員達の全身が強張ったのも無理はない。
「ねぇ、このビル壊すの?」
彼女の問いかけに誰も答えられない。全員が『蛇に睨まれた蛙』状態だったのだ。
返答がないことに不思議がった表情の女の子がゆっくりとしゃがみ、同じ質問をしてみた。が、やはり返答はない。
「あ、そっか。この辺って来たこと無いから、みんな大きい子とか見たこと無いんだ。大丈夫だよ、怖いことしないから。」
大の大人にまるで子供をなだめるように優しく声をかけてみる女の子に、「そ・・・そうです。」多少上ずった声が上がった。
「ふ~ん、ねぇ、あたしも手伝いたいんだけど、いいかな。」
作業員達が騒めいた。そりゃそうだろう。工事現場に大型乗用車並みの巨大な足が動き回ることになるのだ。踏み潰される恐怖を感じたまま作業をするのか?
その時、監督が前に出て来た。ゆっくりと息を整えてから声を発する。
「その、お嬢さんの申し出は嬉しいのですが、小学生を働かせるわけには・・・」
「大丈夫だよ、それにあたし、こんなに大きいから力にも自信あるんだ。」
作業員達の上空を瞬く間に通り過ぎた右手が、2tトラックを掴み上げ目の前まで持ってきていた。
「ね、このくらいだったら、握り潰せちゃうよ。」
笑いながらトラックを元の場所に戻すと、今度は監督の身体をひょいと摘まんで目の前でプラプラさせ始める。
「お願い、いっつも怖がられてるからさ、たまにはこびとさんのお手伝いがしたいのよ。」
必死にもがいてもびくともしないこの親指と人差し指にもう少し力が入ったら。そう思うと、監督もいっぱいいっぱいになっていた。
「わ・・・わかりました。」
「ほんと?やった!じゃあ、明日から頑張るね!」
地上に降ろされた監督が顔を上げた時に見えたのは、ズッシンズッシンとスキップしながら去っていく女の子の巨大な後姿だった。

「じゃあ次は壁を壊せばいいの?」
由紀は中のオフィス用品類がきれいさっぱり片付いた部屋を覗き込みながら両手を壁の両側にかけてゆっくりと力を込めた。
コンクリートの壁一面に一気に亀裂が入り、ボコボコと音を立てながら壁が崩れ落ちたので、少し下を見て足元の近くにいた作業員達に声をかける。
「近くにいると危ないからちょっと離れて。」
素手だと少し痛いので、軍手をはめた両手がコンクリートを押し砕き、中に埋まっていた鉄筋を簡単に折り曲げてあっという間に手前の壁を崩してしまった。
なるべく下に落とさないようにと両手いっぱいに瓦礫の山を持って、産廃運搬用のダンプカーに乗せようと振り返った時だった。
「うわぁ~っ!」
悲鳴?由紀は慌てて足元を見たが誰かが倒れているという訳でもない。というか足は動かしていないんだけど。そう思ってビルの方に向き直るとまた悲鳴が聞こえた。
ん?気を付けなければわからないほどの感触が髪から伝わってくる。背中まで伸びた髪を束ねてポニーテールにしていたのだが、少し首を振って髪の束を胸元に
移動させると、今度は胸元辺りから絶叫が聞こえてきた。
由紀が瓦礫の山をダンプの荷台に乗せて、肩に巻き付いている髪を持ち上げると、いた、ひとりの作業員が髪にしがみついてぶら下がっている。
「ちょっ、なにやってんの?」
「い、いきなり振り向くから、由紀ちゃんの髪に吹っ飛ばされたんだよぉ・・・」
作業員はもう涙目状態だ。これだけのサイズ差があると髪だけでも凶器なのか。足元にいた人たちは驚くと同時に、少し背中が寒くなったのを自覚した。

作業は順調すぎるほど順調に進んでいる。しかも、パワーショベルとクレーンは全く出番なしだ。何しろ彼らの目の前では、ひとりの女の子がこれら重機の代わりを
鼻歌気分でこなしているのだ。しかも、今日一日かけて解体する予定だった最上階は既に影も形もなく、7階の部分も既に壁しか残っていない。
だが、ここで思わぬ問題にぶち当たった。
由紀が両手いっぱいにオフィス家具などを持ってゆっくりと振り返る。髪はアップにしたのでさっきのように誰かを吹き飛ばすこともない。
そんな由紀も困ったことに気が付いたようだ。
「あれ?ダンプは?」
廃材が出るペースが余りにも早すぎて、手配したダンプカーは全て廃材満載で処理場に向かっていた。短く見積もってもあと1時間は帰ってこないだろう。
由紀は空いていた場所に廃棄物を一度降ろして、ゆっくりとその横に腰を下ろした。
「あたし、運ぼっか?」
「いや、ちょっと離れてるから、それより朝から動きっぱなしで疲れたでしょ。ちょっと休憩しよう。」
目の前に壁のように横たわる褐色の太股に少しドキドキしながら、監督はそう言って全員に休憩を指示した。

周りに作業員達がめいめいお茶を飲んだりしてくつろいでいるのを見ながら、由紀は持ってきた水筒(といっても高さ3mもある)を片手に水を飲んで咽喉を潤していた。
「結構動いたから汗かいちゃった。」
本人は何の気なしに言ったのだが、男たちをドキリとさせるには充分だった。何しろ目の前にショートパンツから伸びた健康的で逞しい太股がドンと横たわり、
ライトイエローのTシャツは、まだまだ成長途上だが普通の人間なら余裕でベッド代わりにできるほど巨大な胸にぺったりと貼りついているのだ。
何人かが顔を赤くして心臓の鼓動が飛躍的に高まったとしても無理はない。そんな男たちの心中を知るほど大人ではないので、由紀はTシャツの裾をパタパタと仰ぎながら
男たちと仲良く話をしていた。

「そう言えば、由紀ちゃんくらい大きい子って他にいるの?」
「あたしだけなんだよね~、だから学校では結構みんなに頼られちゃうんだよね。でも、おかげで男子もおとなしいんだ。」
そうだよなぁ、変なちょっかい出して軽くひっぱたかれただけでどこまで吹っ飛ばされるか・・・そう思うと同じ学校の男子が哀れでもあるが。
「でもよぉ、うちにも4年生の娘がいるけど、こんなに大きかったら反抗期とかおっかねぇだろうなぁ。」
少し年配の作業員が思わずつぶやいた。が、由紀の答えは皆がホッとするものだった。
「やだなぁ、うちのパパなんか引っぱたいたら死んじゃうから、絶対そんなことしないよ。」
笑いながら答える由紀。だが、次の言葉が全員を戦慄させてしまう。
「ママはあたしが本気になっても絶対勝てないしね~。」
「え?」由紀ちゃんのママって・・・
その時だった。誰かが声を上げた。
「地震?」
確かに地面が揺れた。そして、数秒後にまた、グラグラッ・・・、また、グラグラッ・・・
「え?おいっ!あれっ!」
ひとりが身体を震わせて一点を指差していた。全員がその方を見ると、山のように、本当に山のように巨大な女性がまさしく次の一歩を踏み下ろそうとしていた。
ズゥゥンッ!グラグラッ!ややおいて地響きと揺れが全員に襲い掛かる。今ここにいる巨人の女の子よりはるかに大きな女性がこちらに向かって歩いていたのだ。
しかも、紺色のタンクトップにホットパンツ姿の女性の胸元は歩を進めるたびに大きく揺れ、丸く安定した腰回りとむっちりとした太股が何とも言えない大人の
色香を漂わせているのだ。その場にいる全員が、いや彼女の肢体が視界に入る全男性が、恐怖と同じかそれ以上の比重でスケベ根性丸出しの妄想を脳内で膨らませていた。
「あっ、ママッ!」
「えぇ~っ!?」
作業員全員が目の前に座っている巨人の女の子と、歩いてくる超巨大で色香満載の女性を交互に見比べたのは言うまでもない。

超巨大女性が何かに気が付いて工事現場にたったの数歩で歩み寄り、その場でゆっくりと足元を見下ろすまで、全員が固唾を呑んで見守っていた。
というより余りの迫力で身動き一つ取れなかったと言ってもいいだろう。
「あら、由紀ちゃん。お手伝いの場所ってここだったの。」
突然現れた超高層ビル級の2本の脚のさらに上空に突き出している巨大な山のさらに上から、女性の声が轟いた。
「うん、そうだよ。でも、なんでママがここにいるの?」
由紀はその場に立って、母親の脚には遠く及ばないが、それでも並の人間が100人がかりでも到底動かすことなど不可能な立派な脚を足元の男たちに見せつける格好だ。
「実はね、向こうで事故があって片付けに呼ばれたのよ。初めての場所だから断ろうかとも思ったんだけどね。それより、ちょっといいかしら。」
ゆっくりとしゃがんだ由紀のママがちょうど折り曲げた膝の下にある数台の車とパワーショベルを、差し出した人差し指だけで簡単に移動させてしまう。
「立ったままだと話しにくいのよね。」
そう言いながら片膝を突いた瞬間、接地した衝撃で作業員全員がその場になぎ倒されてしまった。

突然の大きな揺れと前後して、工事現場から広い道路を挟んだ反対側の一角が暗闇に覆われた。家にいた人も何だろうと思って外を見ると、
道路があるはずの場所が肌色の壁に埋め尽くされていることに気が付いた。しかも目測で5階建てのビルよりも高く聳えているのだ。
上空から轟く女性の声が、その壁の正体が巨人の脚だということを物語っていた、しかもふくらはぎなのだ。それが伸びている方から今度は天空に向かって
屹立している太股はさらに倍以上の太さなのだから。そして、さらに視線をその太股の付け根付近まで向けた時、自分たちの頭上に何があるか気が付いた時、
誰もが我先にと逃げ出し始めた。
そう、住宅街の一角の上空には由紀のママの巨大なヒップが数十m上空に鎮座していた。その直径は100mを軽く超えるだろう。
あの巨尻が降下して来たら、数十軒の木造家屋が一瞬でバラバラに粉砕され、廃材になり果てることは容易に想像できる。そんな家の中にいたら当然・・・
近隣住民がパニックになるのも無理は無かった。

「すみません、娘の我儘に付き合ってくださって。」
由紀のママは自分のヒップの下で繰り広げられているパニックなど気付くはずもなく、現場監督を指先で摘まみ上げ、掌に乗せていた。
彼は生きた心地がしなかった。何しろ自分の身長を遥かに超える指に逃げる間もなく全身を挟まれてしまったのだ。このまま力加減を間違えられれば一瞬にしてミンチ、
いや、染みにされてしまうことは疑いなかった。それは他の作業員達も同様だったかもしれない。ふくらはぎが完全に道路を封鎖し、もう片方の足はビルの横に
たまたまあった空き地を埋め尽くしている。履いているサンダルのソールだけで今解体しているビルなど簡単に潰してしまえるだろう。
「い、いえ・・・お嬢様にはとても感謝しています。え・・・うわっ!」
恐る恐る顔を上げた監督の眼前に広がっていたのは、由紀のママの巨大な胸元、しかも、タンクトップの胸の部分が大きく開いており、巨大な胸の谷間の大峡谷を
まじまじと見る格好になっていた。いつの間にか掌は胸元まで上げられていたのだ。
「あら、どうかしました?」
慌てて声のする方に顔を上げると、その上空には30代、いや、20代後半くらいに見える美しい女性が優しく微笑んでいた。
「な・・・なんでも・・・」
もう顔どころか全身が火照っていることを自覚していたのだが、何を聞かれても目の前に広がった大パノラマが瞼に焼き付いてしまっていた。

「どしたの?監督ぅ。」
突然しどろもどろになった監督に気が付いて由紀は声をかけてみた。だが、返事が無い。
「どうしたのかしらね。」
ママも気になって掌を目の前まで上げて、中央でうずくまっている小さな男性を見てみたが特におかしいところはなさそうだ。
ところが、由紀が唐突に核心を突いてしまった。
「ひょっとしてママに見とれてた?こびとにはあり得ないばかでっかいおっぱいだもんね~。」
「な・・・なにをばかな・・・」
そんなことがバレたらそのまま握り潰されるかもしれないと思って、監督は必死の弁解をしようとしたが、それをママの声が遮った。
「あら、私ってそんなに魅力的かしら。照れちゃいますわ。」
ママは相変わらず余裕の笑顔だ。しかし、由紀は少し不機嫌だった。
「もう、みんな男の人って大きいおっぱいが好きだよね~。どうせあたしはつるぺたですよ~」
「そんなことないよ。これから大きくなるんだから。」
足元からそんな声が聞こえたので、由紀はズシンッ!とその場を踏みつけた。
「踏み潰すわよっ!それにあたしはあんなでっかいおっぱいにはなりたくないの!」
それっきり男たちが静かになったのは言うまでもない。

監督を地面に降ろし、足元を見回すとママは中途半端に破壊されたビルを指差した。
「これを壊してたの?」
「うん、上2階分は終わったんだけど、今は休憩中なんだ。」
「どうして?まだお昼まで時間あるでしょ?それにこのくらいのビルだったら由紀ちゃんでも簡単に壊せるでしょ?」
由紀はどや顔でママを見上げて説明を始めた。
「あのねぇ、ただ壊せばいいってもんじゃないの。ちゃんと綺麗にバラバラにしてダンプカーに乗せて運ばなきゃいけないんだから。」
「あら、そうなの。でも、ダンプカーがいないわね。じゃあ今日はもうおしまいなの?」
地面についた膝の横に小さなショベルカーとクレーンはあるが、他は作業員達が乗っていたのであろう数台のワゴン車しか見えない。
「じ、実はお嬢様の仕事ぶりが早くて廃材を運ぶダンプが足りなくなってしまって・・・その・・・」
とりあえず平静を取り戻したかに見える監督が代わりに説明する。
「そうでしたの。。。そうだ、せっかくだから私もお手伝いしようかしら。」
「えっ!?」
「さっきも電車と車を捨てる場所に困るからって持ってきているんですの。このくらいのビルが増えてもあまり変わらないわ。」
ママは片手をゆっくりと移動させて、5本の指で小さなビルを取り囲むと、あっさりとビルを丸ごと引き抜いて上空に持ち去ってしまった。
「あ~っ!せっかくお手伝いしてたのに~!」
「早く終わらせちゃった方がいいでしょ?うん、誰もいなさそうね。」
ママは娘の抗議を一蹴して、6フロア分の高さのビルを鷲掴みにして中を覗き込んでいる。地上の作業員達はほぼ全員が呆けた顔でそれを見上げていた。
あっという間に目の前にあったビルが影も形も無くなって、上空で玩具扱いされているのだ。しかも桁外れのパワーにビル全体が軋み壁がポロポロと崩れ落ちている。
その時、由紀が大声を張り上げた。
「ママ~っ!気を付けてよ~っ!壁が落ちてこびとさんに当たったら大けがしちゃうよ~!」
ママが下を見ると、指の間から零れ落ちている瓦礫に当たらないようにこびとたちが逃げ惑っている。ママから見れば小さな粒だが、実際には100kgを軽く
超えるコンクリート塊が100mを超える高さからズドンズドンと落下してくるのだ。当たったらタダでは済まない。
「ごめんなさいね。ここで壊さない方がいいみたいね。すぐ片付けるわね。」
何を思ったのか由紀のママは、作業員はもちろん、由紀でさえ驚く行動を取ってしまった。

「す・・・すげぇ・・・」
「ママ・・・なにやってんの?」
そこにいた全員が驚きを隠せなかった。ただ、由紀だけは半分以上呆れていたのだが。
ママは手に持っていたビルを、上空で突き出している胸の谷間に乗せてしまったのだ。作業員達がどよめいたのも無理はない。だが、当の本人は涼しい顔だ。
「こうすれば、ビルも崩れないでしょ?じゃあ、これは私が持ち帰って処分しておきますね。」
ママは歩いても落ちないようにしようと思って、ビルを人差し指で胸の谷間に少し押し込んんだ。が、ビルの強度よりもおっぱい山の圧力の方が遥かに勝っていたようで
メリッ!ボコッ!という悲鳴を上げたかと思うと、グシャァッ!!!あっさりと押し潰されてしまったのだった。
「もう、ママのおっぱいって凶器だよね。。。」
娘の呆れ顔と、胸の谷間に転がっている瓦礫を見比べてママは少し赤面してしまったが、股間に零れ落ちていたり身体にこびり付いている瓦礫をトートバッグに
投げ入れると、すっくと立ちあがった。
「そ・・・それじゃあ、皆さんお騒がせしました。ゆ、由紀ちゃんもあんまり遅くならないようにね。」
それだけ言うと、恥ずかしそうに地響きと共に歩き去ってしまった。
「まったく・・・あたしのお手伝い無くなっちゃったじゃん。じゃあ、あたしたちも片づけして帰る?」
由紀が足元を見ると何か様子がおかしい。試しに監督を鷲掴みにして目の前まで持ち上げると、
「いやぁ、凄いもん見ちゃったなぁ。」
少しムッとする由紀。
「ほんっと、みんなエッチだよね~。ところでさ、今度はどこのビル壊すの?」
ハッと我に返る監督。
「あ・・・ここを今週いっぱいの予定だったんだけど、どうするかなぁ・・・」
目の前には解体する物が無くなった空間が広がっていた。