やっと起きましたか。おはようございます、夜ですけど。
……めずらしいですね、皆さん結構パニックを起こして、暴れたり叫んだりめんどくさいのに。
ずいぶんと落ち着いてらっしゃるみたいですね。ま、別にどうでもいいですけど。
で、貴方、いまの状況、理解できてますね?……聞こえないです。ていうか聞いてないです。キーキー喧しいだけなんでしゃべらなくて結構です。
こうしましょう。答えがはいならジャンプする、いいえだったらその場にしゃがむ。これなら分かりやすいです。ほら、さっさとスタンダップ。……よろしい。聞き分けのいい子は嫌いじゃないです。
さっきの質問、答えてもらえますか?いまの状況、理解できてますね?……分からないんですか?見ての通りだと思うんですけど。しょうがないなぁ。じゃあ、説明してあげます。
貴方、私のことつけてましたよね?駅から、ずーっと。ちょっと後ろからこそこそ、電柱の影に隠れながら。いわゆる、ストーカーですよね?答えてください。貴方は、ストーカーですか?ストーカーですよね?
……素直ですね。まあ、嘘ついたっていいことないでしょうけど。
説明に戻りますね。そのストーカーな貴方は、家に入ろうとする私に、あろうことか声をかけてきたわけです。覚えてますか?覚えてますよね。あのときの貴方の表情、正直言って、フツーじゃなかったですよ。私、怖かったんですから。反省してくださいね。
ま、こんなお仕事してますから、ストーカーなんて日常茶飯事なんです、ぶっちゃけ。だから、社長からこういう物を渡されてます。知ってます?これ、男の人をちっちゃくしちゃうスプレーなんですよ。
あー、信じてない。信じらんないですか?私も正直、半信半疑でした。そんなおとぎ話みたいなこと、あるわけないじゃんって思ってました。けど、確かに効いちゃうんですよ、このスプレー。
ある日、私が電車に乗ってる時です。なんか変なお兄さんが私の後ろにたってて、身体をまさぐってきたんです。痴漢ってやつですよ、痴漢。怖くて、声も出せない。振り向くことさえできなかったんです。で、次の駅で降りろって、私に言ってきました。その時、このスプレーのことを思い出したんです。
彼に従うふりして、電車を降りて、人目につかない駅のトイレまで一緒に行って、そこでこのスプレーをかけてやったんです。そしたら、みるみるうちにちっちゃくなっちゃって!びっくりでした!
その時の私、すっごい怒ってたから、彼をつまみあげて、トイレのゴミ箱にポイッて捨てちゃいました。トイレを出るとき、掃除のおばさんにすれ違ったので、きっとそのままゴミと一緒に捨てられちゃったんだと思います。ごみ袋破って脱出できたかもしれませんね。でもすぐに、からすか野良猫かに食べられちゃうかも。
……人殺し?何バカなこと言ってるんですか?この世界のどこに、私みたいなか弱い女の子が、つまみ上げてポイッて捨てることができちゃう、ちっちゃな人間がいるっていうんですか?あんなの、人間じゃないです。虫けらです。貴方だって、ゴキブリを見たら殺して捨てちゃうでしょ?あれと一緒です。
あんまり私に変なこと言わないでください。ただでさえ貴方の声って、キーキーうるさくて、不愉快なんです。だからしゃべらなくても返事できる方法を考えてあげたのに。頭使ってください。
痴漢のお兄さんの一件を社長に報告したら、褒めてくれました。自分の身を守るのに、有効活用したわね、って。このときから、もうためらわないで使おうって決めたんです。あ、もちろん身を守るためだけですよ?たとえば、ストーカーに声をかけられたとき、とか。
ここまで言えば、いまの状況も飲み込めますよね?私、貴方をちっちゃくしちゃったんです。夢じゃなく、現実に。
最初は、その場で踏み潰しちゃおーって思ったんです。でも私、貴方のこと覚えてたので、ここまで持ってきてあげました。ここ、私の部屋です。特別ですよ?ファンサービス、です。
貴方、この間のライブ、最前列で応援してくれてましたよね?その前のイベントも、握手会の時も。お花とか、ファンレターとか、よく下さってた、あの方ですよね?……やっぱりそうだ。いつも応援してくれて、ありがとうございます。私、記憶力には自信、あるんです。
貴方のこと、熱心なのに他のファンみたいにうざったくない、紳士的な方だなって思ってたんです。事務所でも話題でした。それなのに、ストーカーだなんて。最悪です。わかりますか?貴方、私を裏切ったんですよ。
……言い訳なんて、聞きたくありません。貴方はファン、私はアイドル。その関係性を、ストーカーすることで壊してきたのは、貴方なんです。もう、貴方のアイドルでは、いられない。
だから、これからラストステージです。貴方だけの、卒業公演、してあげます。――チケット代として、貴方の命を頂戴します、ね?
覚えてますか?この服、最初の握手会の時と同じなんです。あの時はまだ衣装なんて用意してもらえなくて、私服からがんばって可愛いの選んでたんですよ。ほら、このスカーフ、可愛いでしょう?だから、巻いてあげます。ほら、ぎゅーっ。……かわいいですね、じたばたしちゃって。私、軽く結んだだけですよ?息、できますよね?それとも、ストーカーさんは変態さんだから、息もできないほどキツいのがお好みですか?じゃあ、もうちょっと。ぎゅーっ。
……顔、真っ赤ですね。そんなに嬉しいんですか?私が1日巻いてたスカーフ。きっと、汗とか吸っちゃって、私の臭いとかしちゃうかも。だからそんなに嬉しそうなんですか?この変態。
これじゃご褒美になっちゃいますね。解いてあげます。はい……息、荒いですよ?そんなに興奮しちゃったんですか?
あっ、そういえば、ファンの人ってライブの時、なんか光る棒みたいなの振ってますよね。さいりうむ、って言うんですか?あれ、楽しそうだなーって、一度やってみたいなって思ってたんです。だから、ちょっとやらせてください。ええ、さいりうむなんてないので、代わりに、貴方で。
いいじゃないですか、大きさ的に同じぐらいでしょ?それに、憧れのアイドルの手で握ってもらえるんですよ?男の人って、そういうことして欲しいんでしょ?ほんと、サイテーです。不潔。全身じゃなくて一部分?そんなのどうでもいいです。
じゃあ、いきますよ。そーい!そーい!それそれ!はいはい!ふー!
……これ、何が面白いんですか?私にはよくわかりません。つまんない。
しかも貴方なんか握ったせいで、手汗かいちゃいました。ハンカチもないし……貴方の服で拭いちゃえばいいですよね。ごしごし、ごしごしって。
……なんですか、これ。おまたのところ、なにか固いのありますよ。
変なもの隠してないか、ちょっと確かめますね。ほら、持ち物検査とかあるじゃないですか。
服を……めんどくさいから、破っちゃいますね。ぴりぴりーって、ティッシュみたい。よく考えたら、虫さんが服なんて着ないですもんね。下も。ジーパンってちょっと固いんですね。ま、破れるんでいいですけど。下着も。……やっぱり、勃起させてたんですね。変態。思った通りです。
赤面?するわけないじゃないですか。業界でそんな話しょっちゅう聞いてます。誰がどこのプロデューサーと寝ただの、あの局のお偉いさんはフェラばっかさせるだの。ほんと、男の人って変態でサイテーですよね。
そんなサイテーな男の人、いや、もう人ですらない虫さんの、粗末なモノなんて、指で潰しちゃっても、いいですよね?だって、サイテーなんですから。
……ふふっ、冗談です。そんな汚いもの、触る気になれませんから。なにブルブル震えちゃってるんですか?怖いんですか?私みたいな、か弱い女の子が?
怖がらないでくださいよ。わたし、ただの女の子ですよ?貴方みたいな男の人に、普通勝てるわけないじゃないですか……ああ、貴方もう人じゃないんでしたっけ。
そうだ。特別大サービスです。してほしいこと、なんでもひとつだけお応えしちゃいます。キスでも、なんでも。死ぬほど嫌ですけど、我慢するのがアイドルですから。あ、元に戻せはナシですよ?無理なので。
……お、おっぱいに、のっけてほしい?
やっぱり変態ですね。今すぐ叩き潰してあげましょうか。
でも、私嘘はつきませんから。のっけてあげます。この変態。
ん、しょ。今日のブラ、かわいいでしょ?ライムグリーン、好きなんです。ワイヤーも固くないし、でもカップはしっかりしてるし、何より蒸れにくいんですよ、これ。
フロントホックなんで、外してください。……ほら、貴方が頼んだんでしょ?これぐらいやってくれてもいいじゃないですか。
そう、そうやって、曲げて…………まったく、ホックひとつ外せないんですか。もういいです。はい、外してあげましたよ。何ブラの下敷きになってるんですか。まったく。
はい。お望み通りのっけてあげましたよ。何から何まで私任せ、男として恥ずかしくないんですか?プライドも虫さん並みになっちゃいました?
私、枕だけはやらないんです。だって、バカみたいじゃないですか。ちょっとのお仕事のために、痛くて気持ち悪い思いしなきゃいけないなんて。割に合わないです。
……ええ。処女ですよどーせ。男の人ってどうして、処女にこだわるんですか?いいじゃないですか、誰が誰とエッチしようが。その娘の勝手です。とやかく干渉しないでほしいですよ。
だから貴方が私の胸をはじめて触った男の人です。おめでとうございます。……ま、人じゃないんでノーカン、です。
だいたい男の人って、乱暴に揉んだり吸ったりで、全然気持ちよくしてくれない……ってみんな言ってました。なのに気持ちいいかって聞いてきてウザいって。やっぱり男の人ってサイテ……んっ、くすぐったいです。何してるんですか。変態さ、んっ、ちく、び、チロチロって、舐めるの、くすぐったい、ですっ……くぅんっ。
――はぁ……はぁ……。虫さんサイズなら、乱暴には、ならない、っぽいですね。まだマシ、なのかな。
はい、もうおしまいです。特別サービス終了。だいたい、のっけるだけで、舐めていいなんていってないですし……私は寛大なので、見逃してあげます。
じゃあ、そろそろお代をいただきましょうか。ええ、貴方の命です。
生きて帰れるとでも思ってたんですか?ストーカー。変質者。変態。犯罪者。貴方はもう、社会的には死んでるも同然なんです。だったら、ホントに死んじゃったところで、何も困りませんよね?
それに私、その薬の解毒薬、持ってないんです。ちっちゃくしたら、みーんな処分するって、きめてるんです。だから貴方も、処分しちゃいます。私が、踏み潰してあげちゃいます。
今日はずーっとブーツ履いてて、ソックスも大分汗吸っちゃってて……変態さんには、これもご褒美、ですよね?えいっ。
私、爪先でつついただけですよ?無様に倒れちゃうなんて。きっと、すぐにぷちって潰れちゃいますね。ほら、ぐぐーっ。
……お腹圧されると、苦しいですよね?息、出来なくなりますよね?もっともっと、ぐぐぐ、ぎゅーっ。ふふっ、顔、赤くなったり青くなったり。口がパクパクしてますよ?何か仰りたいんですか?
はい、休憩。仰りたいことがあればどうぞ。聞くだけ、聞いてあげます。……無いんですか。じゃあ、再開しますね。今度こそ、潰しちゃいます。
ぐぐーっ、ぎゅーっ。骨、ミシミシいってます?また息ができなくて、苦しいですか?だんだん、目の前が暗くなって、そのうち楽になるんじゃないですか?ほら、ほら。ぎゅーっ、ぎゅーっ。さっきみたいに、手足をバタバタ、反抗してくださいよ。じゃないと、楽しくありません。ぽこぽこって、私の足、叩いて、感じさせてください……ふふふっ、あはははっ。

――死んじゃった、ですかね?
どれどれ、うーん……まだ心臓、動いてるみたいです。息も、あるみたい。気絶しちゃったみたいですね、情けない。
どうしよっかな。戻してあげるわけにもいかないし。……飼って、あげようかな。
残り物とか食べさせとけばいいし、野良猫やからすで脅しておけば、逃げ出す心配もないだろうし。そうすれば、またさっきみたいに……遊べる、し。
ふふっ。
ま、目が覚めるまで待ってあげましょうか。