広大な面積を持つ海。そんな海を支配する海賊たち。
僕はその1人だ。

僕の名前は、ジョン。まだ18歳で、船の中では最年少だ。



僕が海賊になった理由は、家出。親が嫌になり、たまたま、憧れていた海賊になった。
しかし、海賊の船の中で、僕はいじめにあっている。
集団でいじめられるのはもちろん、船長にでさえ、いじめを受けている。助けてくれる人はいない。
船から飛び降りて自殺しようとしたが、飛び降りる寸前でそんな勇気が無くなっていた。

かれこれ半年が過ぎた。

朝食、昼食、夕食と、みんなよりも食べる量が少ない僕は、痩せて行くだけだった。
いじめはエスカレートし、何日か前には、船の先端に吊るされた。




そんな中、乗組員から奇妙な話を聞いた。

乗組員A「○国の船が沈んだそうだ。」

乗組員B「あの巨大な船が!?何でだ?」

乗組員A「噂だと、巨大な人魚の仕業だと聞いたぞ。この広い海の中に、全長が300mくらいの
女人魚がたくさんいるんだ。怖いな。」

乗組員B「いつかこの船も、やられるかもしれないな。何でも、人魚って人を食うんだろう・・・。」

僕はその話を聞いた後、鳥肌が立った。
怖い。海賊は、恐れてはいけないと言われているけども、人を丸呑みできるほどの、大きさの人魚に、
襲われたと想像すれば誰でも怖くなる。









太陽は、真上。
僕らの船は、島を見つけ、久しぶりの陸地に足を踏み入れた。
そこで見つけたのは、人魚だった。
僕もちらっと見たが、体長は、3mくらいで、上半身だけを見れば、まだ幼かった。上半身の体は美貌で、
何もつけていなかったからいろいろ丸見えだ。
それは6人がかりで持ち上げ、船に持ち帰り、巨大な浴槽に入れた。

その日の夜、僕はその人魚の世話係として、人魚に近づいた。
人形は、檻の中にいて、深さ1mくらいの浴槽の中から僕を睨んでいた。
船長の命令で、人魚に餌をあげろと言われたので、夕飯の残り物を持ってきたのだが、
睨まれては渡しにくい。

檻の扉を開け、中に入ると、水の中から顔だけをひょっこりと出した。

僕「大丈夫だよ。これ、夕飯。」

人魚「・・・。」

腕を伸ばし、皿を人魚の前に持ってくると、人魚は、手に取り、皿に乗っている食べ物を口に運んだ。

人魚「うえぇ!ドボボボボボ・・・」

僕「だ、大丈夫か!」

慌てて人魚の背中を撫でた。
吐き終えてから、人魚は、僕に話しかけた。

人魚「私たちは人間の肉を食べて生きている。私はまだ小さいから、人間を丸呑みには出来ないけど、
   人間を細かくすれば食べられるんだ。」

僕「じゃあ、今・・・僕を食べるのか?」

人魚「いや、食べない。私は、お前が好きになった。人魚が食べる相手を好きになるなんてありえないが、
   私はお前が好きだ。」

僕「僕の名前は、ジョンだ。まだ18歳さ。」

人魚「私の名前は、マリー。私は20歳。私の方が年上だな。」

なんだか知らないが、人間の敵、人魚を仲良くなった。
僕の目線は時々、彼女の胸に行っていた。








それから1ヶ月、マリーに餌をあげに行く度に、楽しい会話をした。
彼女に姉がいるとか、海の中とか、知らないことをたくさん教えてもらった。
ある時だった。

マリー「お願いがある。私をこの船から逃がしてくれないか?
    人間の作る食べ物に慣れたが、人間の匂いがしてくると、人間を食べたくなってしまってな・・・。
    ジョンを食べてしまわないかと私自身、とても心配なんだ。」

僕「そうだね。本来、生活の場は海の中だもんね。よし、分かった。今日の夜に、海に返すよ。」

マリー「ジョンは優しい人間だ。」


6人がかりで運んだ彼女を僕1人で運んだのはとても辛かった。
しかも、見つかれば、死刑にも値する。そして、今日、計画を実行したのは、
船長らがマリーの体を食べると聞いたからだ。船の中での始めての友達のマリーを食べられるわけにはいかなかった。

僕「はぁはぁ・・・。疲れた・・・。」

マリー「すごい力だな・・・。驚いた。私たちの重さは人間からしたら相当重いはずなのに。」

僕「君のためさ。じゃあ、海に落とすよ。」

マリー「また会いに来るからね。」

高さ10mほどから彼女を落とした。きれいに海に落ちた。



乗組員C「何をしてる!!」

人魚を逃がした事で僕は檻に入った。






何日が経った?
与えられる食べ物も少なく、ただ生きているだけ・・・。もう死んでもいいかな?


ドオオオオオオン!

突然、船が急停止した。
船が急停止するなんて、とても強い風が吹き付けてるか、座礁するかしかなかった。
座礁したら船底に位置しているこの檻には水が入ってくるからありえない。

考え事をしていると、船長が来た。

船長「今すぐ来い!」

船長は、僕の反論の言葉も聞かず、腕を引っ張って、甲板まで連れて行った。
その光景は以上だった。
船の周りを巨大な人魚たちが包囲していた。上半身70m~90mはあった。こんなにも大きいのか・・・。

船長「こいつが生贄です。どうぞ、好きにしてください。」

船長は、集まった乗組員の前に出てくると、僕の背中を強く押して、船の目の前にいた人魚に話しかけた。
生贄と言うことは僕は食べられるのか?想像しただけなのに体が動かなかった。
そして、僕が気が付かぬうちに、人魚に摘み上げられていた。

巨大人魚「じゃあ、食べてもいいわよ。」

巨大人魚たち「いっただきま~すぅ!」

僕はバラバラにされて食べられるのか・・・と思いきや、乗っていた船に人魚たちが襲い掛かった。
船の上に集まられていた乗組員たちは、人魚たちから見ればお皿の上の食べ物。
逃げられることもなく、食べられていく。運よく、船の中に逃げ込んでも、
人魚たちは船を破壊しつつ、見つけると摘み上げ、口に運んだ。

マリー「大丈夫?ジョン?」

僕「え?ま、マリー?」

マリー「知らぬ間に、私はこんなに大きくなったわ。もう抱きかかえるなんて無理ね。
    私を救ってくれたお礼に、私はジョンを保護してあげる。大丈夫よ。
    ジョンを食べる人魚なんて私以外にいないからね。」

僕「ぼ、僕を食べるのか?」

マリー「そういう意味じゃないわよ。愛しているって事。」

船は全壊し、僕は人間の世界を離れ、人魚の世界へといった。
全長400m、上半身100mのマリーとの生活の始まりであった。





おわり