ある日のこと、妻から相談を受ける。
妻「ねえあなたー、最近コンロの調子が良くないのよ。新しいの買っていい?」
俺「そうなの?でも使えないことは無いんだろう」
妻「そうなんだけど色々不便なのよ。
 それで調べてみたんだけどすごく安いのがあったからこれならいいでしょ?」
俺「なになにービビッどコンロかー、確かに安いな。
 ええと付属のオプション機能を使えば高い所の収納も楽々かあ。(踏み台でも付いてるのかな?)
 ※危険防止のためオプション機能は女性のみ使用可能です?(あまり強度が無くて男は重くて使えないってことかな?変なの)」
俺「なんかこのオプション機能ってのがよく分からないけど
 まあこの値段なら買ってもいいよ」
妻「やったー、じゃあ明日さっそく電話してみるわね!」

数ヵ月後
夕食を終えた俺は一人リビングでビールを飲みながらテレビを見ていた。
(ん、ビールが無いな)
「おーいビールお代わりー」
…キッチンにいるはずの妻に声をかけるが返事は無い。
聞こえなかったかなと思いながらキッチンの様子を見に行くと
そこでは見上げる程に巨大な姿の妻と娘のA子がお喋りをしながら夕食の後片付けをしていた。
コンロを買って以来オプション機能をすっかり気に入ってしまった妻と娘は
家にいる間は常時使用して2倍程に巨大化して生活するようになっていた。
「おーいビールー」
少し大きめの声でキッチンの入り口から声をかけるが
体が大きくなったのに伴い声も大きくなっているせいか2人のお喋りにかき消されて気が付く様子が無い。
(自分で取るか。それにしてもあのコンロを買ってからだんだん家庭内における俺の立場が低くなっていってる気がするなあ)
などと思いながら冷蔵庫の扉に手をかけた瞬間、
ドンッ「うおっ」「キャッ」
俺は何か大きなものに衝突され俺の体は吹っ飛ばされた。
俺「いてて…」
妻「ごめんなさいあなた。視界に入らなくて気が付かなくて蹴飛ばしちゃった」
娘「もうだめじゃないお母さん気をつけないと、お父さん家の中じゃ小さいんだから。
 お父さん大丈夫?はい」
俺「ああ、ありがとう」
そう言うと俺は差し出された俺の2倍はあろうかという娘の大きな手を掴んだ。
するとすごい力で引き起こされたかと思うとそのまま娘に持ち上げられてしまった。
娘「うわー軽ーい。お父さんすっかり軽くなっちゃったねー」
俺「ははは、そうかな(いや変わってねーし)」
妻「うーん、そうねー。でもあなたの方にも責任はあると思うの。
 今度からは私やA子に近付く時は事前に一声かけるようにしてくれる?」
俺「(ええ…)ああ、うん、分かったよ」
俺「そろそろ降ろしてもらえるかな?」
娘「あ、ごめんお父さん」
ようやく娘に降ろしてもらった。
妻「それで何か用なの?」
俺「ああビールが無くなっちゃってね」
妻「もうっ、最近ちょっと飲みすぎなんじゃないの?」
ガチャ、バタン
妻「はいあなた」
俺「ああ、ありがとう」
そう言うと俺はこれまた俺の2倍近くある妻の大きな手からビールを受け取りリビングへと戻る。
(はあ、やっぱり俺の家庭内での立場がry