人間が魔物娘と交流する事は様々なメリットがある。

多くの場合はアイテムや素材、ダンジョンで手助けしてくれる等々。
仲間になる者もいるらしく、カップルで歩いている姿もそう珍しくはない。

ただ、人間にはあまりに強過ぎるのだ。性欲が。
魔物の根本的なシステムなのか、彼女らは精液に飢えている。
それをただの食糧としてみる者もいれば、それを魔力の為に吸い出す者もいる。
人が聞かれずとも水の重要さを知ってて、日の温かさを知るように、
彼女らも本能レベルで精液を日夜求めている。

そんなわけで、
魔物娘との交流には精液提供が一番だが…。
欲に歯止めがつかない種族なのでただ一回の性交では全然足りず、
2回、3回でも足りず、朝焼けまで相手をする覚悟がいる。

ただひとつの素材交換で一晩中交わりあう。
わりに合うかと思えばわりには合うだろうが、
かといってしんどいと言ったらしんどいという気持ちがとてもする。
男だから多少は興味は…あるが、やはり覚悟がいる。
なので、戦闘する必要がある。

さて、そんな時に役に立つのがバブルサキュバスだ。
人の欲望が産んだのか、欲望が人を招く為産んだのか、多種多様なサキュバスが居る。
『夢の中を自由自在に飛び回るサキュバス』も居るかと思えば、
『尻尾が特化し搾精に強いサキュバス』も居る。

だが、『泡を自在に操るだけのバブルサキュバス』というやつがいる。
こいつがとにかく弱い。可哀想なほどに弱い。

体液からバブル…つまりは泡を作り出して、吹いて攻撃。それだけ。
泡は確かに粘り強くぬめっていて、当たればそれ相応に移動が制限されるのだが、
松明(たいまつ)などの炎で簡単に割れるという欠点がある。

また本体自体は魔法に弱く、
雷魔法を泡に当たれば連鎖反応で本体が感電し、
氷魔法を当てれば泡と共に本体が凍結する。
他にも、土魔法で泡はせき止められるし、風魔法で泡を吹き飛ばし無力化。
しかも最近の冒険者は撥水・防水作用のついた服装で冒険や地下深くのダンジョンまで潜るので、
服に泡が張り付きにくいというバブルサキュバスにとっては致命的な対抗策がある。

つまりは人間の文明力に敗北した魔物とも言えるだろう。

唯一、攻撃が通らないとしたら状態異常関係か。
毒・暗闇・石化・呪い諸々、そのようなバッドステータスを与える魔法は
泡と共に洗い流してしまえるというから少し注意。
泡として自由自在に操れるから、逆に毒の泡を吹いてくる場合がある。
その点から状態異常系統の攻撃は禁忌と言えるだろう。

まぁそんな使える泡だから
素材として『バブルサキュバスの泡』を狙われるのでなんとも可哀そうな魔物だ。
物好きだけでなく、冒険者も回復アイテムとして使ったり非常に重宝する。


かくいう私もその一人だった。

罠を用意した。
けれども並の罠ではぬるりと抜けられるので、あくまでおびき出すための罠。
ダンジョンに挑み、また帰還するまで
苦楽を共に着続けた自前の白シャツがあり、これを罠とする。

多岐の生物が蔓延る魔窟に人工物である白シャツが、ポツンとひとつ。

並の魔物なら何かあると思って警戒するだろう、バブルサキュバスもその一匹。
だが、冒険者に舐められ敗北続きで精にありつけないサキュバスには致命的だ…!

罠かもしれない…何かがあるかもしれない…と感じ取りながら、
男の汗が染み込んだシャツからサキュバスは目が離せない…!
『精液が欲しい…』『あのシャツを味わってみたい…』
『シャツを泡でぬちゃぬちょに使いたい』『この持ち主に会ってみたい…』と。
本能が罠だと警告を流しながらも、
脱ぎたての熱が籠もった男の出汁(だし)からは逃れられない…!


ちらりと、通路側から様子を見る。

ぼうっと湿り、空気が淀むが、それを浄化するように泡が撒かれる通路奥底に一匹。
人とは姿形こそ似るが、見れば見るほど人とは違った違和感が見て取れて…。
その肌はまるで外界とは隔離されたかのように、ぬるすべと硬そうな場所など見当たらない。
それもそのはず、彼女らは全身から体液…いや、粘液を垂れ流し泡に包まれた存在。
泡に身体を任せ摩擦が無いようにぬっちゃぬっちゃと腰を震わせる。その正体は…バブルサキュバスだ!

ものの見事に罠に引っかかったようだ。
空腹を紛らわせるかのように白シャツをしゃぶり、
持ち主を渇望するかのようにむぎむぎと歯を立てては…。
バタバタと顔をうずめ、『その先』を夢に見て地面にだらだら横たわる。

かなり飢えているようだ、欲求不満が見て取れる。
その証拠に辺り一面が泡であふれ、靴にすべり止めが無ければ転げていただろう。

だが、これでいい。
そーっと近付き武器を構えポカンと一発、それで決着。

「ねぇ…これ、あなたのなの?」

待ち構えていたかのような声に一瞬ビクッとする。
だが、計算内。余裕の無いサキュバスは男の匂いに敏感過ぎるからだ。

「ちょっとだけでも男の子の精力に触れて元気になったから、
お礼をしようかなーって思うのだけど…」

ここでいう『お礼』とはサキュバスの言葉で『搾精』の事である。
もちろん乗ってはいけない。

「お礼って…泡の素材とか?」
「あ!泡が欲しいの!?それならほら、こっちおいでよ!全身に塗り込んであげる!」

うーん…悪い子ではない気はするし、
精に飢えた魔物娘を助けるのは冒険者の義務ではあるが…。
いかんせん下心が見え見えでこれはどう対応していいか…。

「例えば…何時間くらい『洗って』くれる事になる?」

「1週間!」屈託のない笑顔でそう、のたまった。

剣を構え、松明を発火。
許せサキュバス、許せ次の冒険者…
そこまでの負債、自分にはとても払えそうにない…!

「大丈夫!大丈夫!私の泡で疲れとか一瞬で洗い流せるから!」

だが、構えを崩さない。
ふーんっと…相手もそれを察したらしく…。
サキュバスとしてのスイッチが入ったように目を細めて舌舐めずり。
『男を食い物として認識した』時の目だ…!

「このシャツ、美味しかった…あなたもしゃぶればもっと楽しめるかな…!」

ぬるりと泡を背に回し、立ち上がる相手にまずは先制攻撃!
ふぅっと吹かれた泡を松明で振り払い、そのまま切り付ける…!

「いったーい!もう…人間って本当に容赦ないのね」
「それはお互い様…!」一週間は流石に容赦がない!

第二の手として小麦粉を投げ付け、辺りを粉で包み込む…!
粘液を固める非常に残酷な有効打だ、バブルサキュバスは粉にまみれ、泡も出せぬ。
もはやどこを攻撃してもダメージは確実に通るだろう。
「ね、ねぇ…3日なら…どう?」命乞いにしてはなかなか豪胆。
これは…勝ったなと勇み足で困惑するバブルサキュバスに剣を振り上げると…。

カチリと、何かを踏み抜いてしまった。

途端に床の隙間から噴出する淡緑色のケミカルな煙。
『罠を踏んでしまったか…!』だが、ここからが勝負!
ガクッと来たる倦怠感に備え、道具袋に手を添える!

モロに喰らった煙を吐き、
息を止めて舌に残った味をなめり確かめる。

でろりと舌が弛緩したら毒消し、
ぴりりと来たらすぐに麻痺薬、
ガッチリ舌が固まったら石化薬を飲もうと待ち構えるが…。

舐めると感じるのは、甘くパチリとした神秘的な触感。

なんだろうこれは…。魅了の類か…!?
もちろんサキュバス相手なので持っている、
ベルトに備え付けた薬だ、ラッパ飲みで喉に掻き込む…!

バブルサキュバスもようやくその煙が何らかの罠だと気付いたようだ。
煙にむせるこちらの身体を…なにやら案じている。

「あー!もったいない!私なら状態異常治せるのになー!」
本音か、下心あるのか、そのどちらか。
にやにやと心配そうに…賭けに負けて欲しいと願う顔である。

一瞬…空気が止まった。
両者見合って…動かない。
身体に異変が起こるかどうかを、
ただただ待ち続けるだけの呼吸の時間。

だらだらと…額から滲む汗は本当に緊張感からか、
それとも…本当に身体に異変が起きたからか…?

結論を言うと、賭けに負けた。


装備が…重くなる。
変化を感じたのは肩の方から。
肩から腕を繋ぎ止めていたショルダープレートがするりと下げ落ち、
ピシッと装備で固めた肩の締まりがするりと抜ける。

それだけで…自分が矮小に叩き縮まされる予見を得た。

ずり落ちる装備をだんだんと背負う形に身体が変化していく。
縮む肩幅は『このままだと服の首周りに呑み込まれるぞ』と
訴えるかのように服に収まっていき、服を着込む感覚が無くなり沈み込む。

周りの風景も距離が遠く霞むようで…手を伸ばした指にピントが定まらない!
眼前を見ると、縮小化の罠にハマったとケラケラ勝ちを確信するバブルサキュバス!
少しずつ巨大化していく泡まみれの身体に、
来たる破滅に心が焦がれ、受け入れようとさえもしてくるほど。

「あ~小っちゃくなってきてる~
 これ以上小っちゃくなったらどうしよう…私の泡の中に入れてあげようかな~?」

もう…自分が負けることも考えていないようだ…!

体中が火照り着実に縮みゆく身体。
だが、それ以外の異変に今気付いた。

身体の構造が…変わって行くのだ。
ぶかぶかに空いた服を埋める様に…胸がでかくなってくる。
細る腕とは反比例して体中の肉という肉が集まるくらいに巨大化する胸。
慌てて何が起きたかと抱えるとぽよんと柔らかく、
小さくなり続ける腕では埋まってしまってとても抑えられない…!

先程まで鼓張し始めていた下半身もそうだ、
男を象徴するそれがだんだんと萎(しぼ)んで縮む…いや、そうではない!
縮んだものがまるで内臓のように股の内にするりと入る。
痛み無く、まるで元からそうだったかのようにそこには一筋の穴だけで何も無く喪失感が残るのみ。

前かがみになるほど胸は巨大化し、
脚や尻の締まりが甘くなり、髪が色素と共にパステルカラーのように伸び、肌が柔らかくなる。
するとチリリと背が焼けて、皮膚から咲くように…羽が伸びてきたのだ。
薄羽の透明な虫かと見紛うほどの小さな翼。
感覚はハッキリし、知っていたかのように羽が動く。
間違い無い…妖精化の罠だ…!

聞いた事がある、魔物化する罠があると。
人間達に魔物の気持ちを知らせるための罠があると…!
知っててはいたが、こんなに小さく、胸は大きく…性転換するとは…!
油断していた…!

「あれれ~どうしたのかな?」


それは知らずか、様子を見るように天から声が降ってくる。
もう身長はよく見る妖精的な手の平サイズ、10㎝だろうか。
身体はとうに服に埋もれてしまっていて………女体になってしまったからだろうか
全裸で胸をさらけ出してしまっているので少し恥ずかしい。

完璧に妖精化が固定化してしまった。

いや、だからこそ…この窮地を脱出できるのではないか…?
背の羽に動けと命令し…プルプル震えてみると…なんとなく…感覚がつかめて来た。
妖精の本能だろうか…遺伝子に刻み込まれたものだろうか…飛んだ時の軌跡が想像できる!

勝負は一瞬、羽をはためかせ足を踏み込み力を溜める。
『どこかな~』と戦利品を漁るかのように服を覗き込んだその瞬間、ピッと出た。

脚をバネの様に跳ね、きりもみ回転を加え羽をはためかす。
ふわりと浮く未知の感覚に心臓が震え、心奪われそうになるが油断はできぬ!
バブルサキュバスが目の前に居るのだ…!

自分より数十倍、丸呑みできるほどの大きさの顔に飛び出せば『どくん』と心が嫌でも跳ねる。
だが、それは相手も同じなようだ。
まるで戦利品のように目星く漁り、にやにやと警戒心の無かった顔が一瞬にして驚愕した表情になる…!

突っ込むしかなかった、顔にごっつんとぶつかったと同時に、
頬からぼよんと跳ねて軌道修正、急なアドリブで羽ばたけるのかと思ったが…飛べは出来るようだ!

そのまま!出口までひとっとび…!
と、思ったけれども初めて飛んだのだからやはりコントロールが効かない!
しかも、胸が一般的な妖精よりもデカい気がする…!

ぶらぶらと、揺れる胸に必要以上に体力が持って行かれる…!
こんな巨乳でふらふらと飛んでいる妖精なんて見た事が無い。
もし、自分が今の場所にいたとしたら珍しいモノでも見付けたかのように捕まえてしまうだろう。
それは、あまりに愚鈍で初々しくて、そしてこそ楽しめそうな大粒の嗜好がある。
バブルサキュバスだけじゃない!こんな姿を他の冒険者に見つかって捕まってしまったら…!

そう考えるとドッドッと呼吸が高鳴り、
巨大な世界が全て自分に脅威として迫ってくる錯覚を覚える!


だが、そんな心配は杞憂として終わった。

脚がつぷっと…粘液状の何かに突っ込む感触を得た。
バタつかせても取れる気配は無い、
いやそれどころかあがくたびに粘液が身体を覆い…
羽を取り込まれてしまったが最後、もう空気をとらえる事ができずべしゃりと落ちる。
バブルサキュバスの泡だ…!こんな速く出せたのか…!?

「うわぁ!」

自分でも驚くくらい甲高い女性の声を出して地に伏した。
幸い妖精は頑丈な上、泡にまみれてクッション代わりになったのかケガはない。
だが…粘着力が強くて逃げられない…!こんなの元の身体なら振り払えたのに…!

「あははっ命中!ビックリしたけど私こういうの得意なんだよね~」
逃げられたと思ったバブルサキュバスが『今度こそ捕まえた』と、にやにや見下ろしてくる。

粘液にまみれたその裸足、伝う粘液は身体全身から流れ、
見上げた巨大な胸から絶えず溢(あふ)れて垂れ流れ、泡の飛沫が降りかかる。
圧倒的な体格差、もう逃げることはできない…。
すると、自分は恥ずかしくなって思わず胸を隠してしまった。

「ふーん…やっぱり妖精化トラップだったんだー、初めて見るなー」

サキュバスなりのマナーなのだろうか、相手の肌を傷付けないためか、つっと口に指を含み、出す。
そのぬるぬるの指で物珍しそうに胸をつついてきて脳天に伝わる快感で思わずヒッと声が漏れた。

「や、やめて!」と言ってもぐりぐりさらけ出された指は止まらない…!

えーいいじゃーん、胸デカいしー、
女の子になっちゃった人間初めて見たしー、と言われても…!

ぐっと力を入れて飛び跳ねるように前屈み、やっと身体を動かすことができた…!

「あーあーそんな態度取っちゃうんだー、治してあげてるんだけどなー」

「どこが…!」

「それじゃあ、その身体のまま街に戻って教会で治してもらうのー?
絶対恥ずかしいよ~?明日からあだ名が妖精ちゃんになってるかも」

うっ…!
確かにこんな痴態、他の人間には見られたくない…。
バブルサキュバスなら状態異常を洗い流してもらうことができる。
それならもう、見られているこのバブルサキュバスに助けてもらった方が…。

「私だってさ、男の身体じゃないと精力貰えないしさ…。
 ね、これは交渉…良いでしょ?」

「うーん…確かにこのまま帰るよりは…」でも、どのくらい搾り取られるのやら…。

「まぁ、答えは聞いていないんだけど」

えっ?と、状況把握するも、もう遅い。
ぬるぬる泡立った巨大な口内が一瞬見えたかと思えばパクッとひと口。
泡が潤滑剤になったのだろう、ちゅるっと足先から呑まれそのまま丸呑み。
途中胸がつかえても、舌で舐めずり円を描くように舐め取られ口内に収まってしまった。

「ほれじゃあ、ひょっと舐めまふねー」

声がかけられるのではなく鳴り響いて来る口内洞窟。
ぶるぶるする息が身体に当てられ女体の脂肪に波紋が響いてビクっとなる。
狙われるのはもちろん女体と感じさせられる部分全般。

最初は丁寧に…味わうように、身体全身をぬるぬる舌が舐めまわしていた。
足、腹、胸、上半身に下半身。
食事みたく精を吸って…、まだどこかに精力が残ってないか全身を舐めまわす。
すると…感じるのだ『これはこれでいいんじゃないか?』と。
赤薄暗い口内に吸い込まれた時はどうなるかと思っていたけど、
マッサージ店にいるかのような甘苦しい倦怠感。

…浅はかだった。
サキュバスが精を求めるのはあくまで男の精が美味しいため、
そのため精を生成できぬこの身体を…まるで味のしなくなったガムのように遊び始めた。

「うーん…最初は汗が男っぽかったけど、もう同族っぽいなぁ…」

腹に…這っていた舌がついに本性を現す。
コポコポと泡を湧き出し、臍をなぞって、
下乳から谷間を割り入り顎を持ち上げるように舐める。
『どこが身体か』を確かめるように…、『どれほどの大きさ』か確かめるように…。
くるりと舌を沿わして『あなたの胸ってこんな大きさなのね』と値踏みする。

楽しく遊ぶために…はむっとくちびるで乳を挟んでみたり…
とん…とーんと、舌に股を乗せようともしてくる。
どちらにしても、くちゅくちゅとよだれから生成された泡まみれ。
身体を転がされるたびに気泡がパチパチと割れて、身体に張り付き皮膚を覆う。
サキュバスの泡だ、快感が増幅する…!

そんな舐めまわされたからには絶対に反応するものはある。
絶対に知られるわけにはいかないと思いながらも、
あくまで快感をどうにかするために刺激を抜く。
羽を羽ばたかせ、大きな動きで誤魔化すように舌に擦り付け大げさに跳ねて…イッた。

『ふふっ』

汗がだれだれ出て来る…。快感が舌に伝わって…バレたか…?
舌に無数にある突起…味蕾がザラザラしてこそばゆい。
か細くと笑った声ははたして
女体への初々しさへの微笑ましさか、女体を弄んだ自体の嘲笑か、表情が分からないので分からない。

そんな応答をすることなく…ただ時間が過ぎて…何回か舐めまわされて…。
ふと、舌の動きが止まる。

「ふいたよー」

すると淡い光と共にガポッと口が開き、
ぬるぬるとした泡や涎と共にどろりと流れ落ち…胸に落ちた。

妖精の身体では一回りも二回りもデカい身長以上のその巨乳。
粘液により弾力と粘着力を盛ったそれからべちべちと羽ばたこうが逃れられない…!

「ここが私の住み家だよー、人間に見せたのは初めてなんだから」

ぬるりと胸に張り付けられた身体を廻し、見ると広がるのは殺風景なすみか。
あくまで魔物的な簡素なつくり、人間とパートナーになった個体は物を持つというが、
バブルサキュバスのすみかには泡以外には何もない。男しかいらないのだ。

「へへ、私の胸大きいでしょー。あなたのも大きかったけど、
 人間大になっても私の方が大きいんじゃない?」

「好きで女体化したわけじゃない…」

「まぁまぁ、同族になったらそんな事気にするんだって。
 じゃあほら、元に戻りたかったら始めようよ」

確かに…早く戻りたい。後に待ち受けるものが何かを知りながらも。

「やっぱり私の泡はねー、おっぱいからいっぱい出るからここで洗ってあげるねー」

…やっぱり、そうなるか。
ぬるぬるの快楽粘液で塗り固められたバブルサキュバスの胸の上。
主導権は相手にあるが痴態を見せたくないので…
あくまでただマッサージを受けるみたいに抵抗はしたい。

ぬるり…と片乳が持ち上げられた。自分が張り付かれた場所とは逆側の乳の塊。
粘液でまみれ、今まさに泉から上がったかのような滴る水分量。
持ち上げただけで泡が跳ねて浮いて…下乳に流れて集まり沼と化す。

だがそれだけでは当然終わらず…
こちらを狙い…巻き込むようにズリ合わせた。

声を出す間もなく、乳と乳の間にぺたりと潰される。
多少は隙間が空くだろうそれも、泡がぐじゅぐじゅ流れ、まるで肉壁に固められてしまったかのよう。
だけどそれもただの一瞬、粘液が引力で妖精の身体を奪い合い、それが何度も続くだけ。
張り合わされた瞬間にビクっと身体が跳ねてしまう時もある。
自分の胸が…その数十倍もある胸に激突されてぼよんと負けて…そのたびに巨大感をひしひしと感じる。

力技だ…。

べたり…べたり…と胸で挟み体中を泡立たせ塗り込むように擦り付けて…。
リスが木の実をかじるように、アライグマが木の実を洗うように…。
サキュバスがスキルとして持ち併せているような慣れた手つきの反復作業だ…!

だが、妖精化しているという例外の上の行為である全身パイズリ。
手元がくるう事もある…つるっと滑り泡でまみれる床にべちゃりと落ちたりもする。
もちろんなんともない、だが、動けない。羽でさえも泡立たせるだけの物体と化している。
そして、バブルサキュバスが「あっごめーん」と言ってそれで終わり。

だから…それだけで自分が物同然のように感じられて…。
…なかなか自尊心が削れてきた。いっそ痴態を曝けだして快楽に溺れてしまおうか。

それに気が付かれてか、ひょいっと持ち上げられる。
『はーい、乳合わせしてあげるー』と、なんとも…妙な提案をし出すバブルサキュバス。
巨大な乳首を前に、こちらの乳首を比べ合わせるようにぺたりとつける。
自分の胸でくにゅっと潰れ伸びた乳首は…ちょっと…男心にはなんだか妙な気分だが楽しい。

「ね?すごいでしょー」

いや、なんだか慰め方が人間とはかけ離れていて…!
身体が妖精化することによって、変な幸せが分泌されて
新たな価値観が築かれようとしているそんな感覚だ…!

おそらくこれは魔物同士のコミュニケーション、
女体同士の接触による言外の交流手段!

もしかして…精神までも妖精化してきているのでは…!?

力がふにゃりと抜け落ちる。
この湧き上がる淡い感情はきっと…この泡で綺麗に呪いと共に洗い流れてしまうだろう。

だが…一度快楽を知ってしまったら…!?
脳天を貫くほど、心の赤い実がはじけてしまったらどうなるのだろうか…!?

呼吸が荒くなり、見上げると…
なんだか物足りなさそうなバブルサキュバスの大きな顔。
それもそう、性交がコミュニケーションともあれば『接触』の『その次』が存在する…!

「ねぇ…まだ洗ってなかったとこあるよね…?」

ガチっと身体を掴まれた。片手で挟み込むように持つ。
親指で身体を押さえつけ、2本で乳を挟み、2本で支える。

胸を持たれてももう興味なく、簡単に抑えられるからと挟むだけ。
羽を羽ばたかせても、どこに飛べばいいのか空を切る。

興味があるのは下半身、何も無くなったハズの部分。
それだけに視線が注がれる。

「冒険者だよね…それならオナホ妖精って知ってるでしょ…?」

つーっと…その穴の部分に指が沿う。
泡を溜めて、溜めて、指で無理矢理入れ込む気のようだ…!!!

「魔物だからさ…ここ、洗わないと魔力が流れないと思う」

断言する目には熱意が籠もって、
そんなはずはない!と言ってもまばたきもしない!

嘘だろ…やめてくれ、それだけは!
考えなくても察しはする…!魔物娘の乱れる姿は何回でも見ている…!妖精もだ…!

助けて!と叫んでも声が高くて自分の声ではないような感覚がしてビックリする!
それはそう、そこに居るのは小さい女の妖精なのだから!

せめて…!たえようと…羽をピンと伸ばし、
筋肉を硬直させて運動しているだけと自認し、心をたえようと試みる…!

でも、力が入らない。
男の頃にはあった筋肉はすぐ脂肪に代わり、
脚はスラッとしているのに太ももは太く、胸も飛ぶのに支障があるくらいには柔くデカい。
髪も伸びてふわっと軽く、漂う香りは魔に侵された淫靡な神秘的な甘い香り。
触られている部分が気持ち良く…もう全てが揉みほぐされてしまった。
もう男の部分が無くて…小さくて…力の無いただ一匹の妖精で…。

受け入れてしまった。


にゅるっと…泡と共に膣口から指が流れて来る。
力の無い自分は…入った瞬間、腰がくだけて丸めた身体がふんにゃりほどけ…くたりと曲がる。
自然落下するようにずぶずぶと指を呑み込むのも自然の事だ。
まるで指人形のよう、指の第一、第二関節を呑み込み根元に来てようやく止まる。

精神は大丈夫…。
来たる快感は男であった『自分が射精した感覚に似たもの』にしようとただ務めた。
ぐちゅっと膣に伸びる指はただただいつも通りの自慰に似た気持ち良さだけ…!
泡で塗り込まれる膣も、ぬるぬるの粘液で手コキして貰った事もあるだろうと心に刻む!!!

だけど…感じるのだ。魔物娘の本能が。
『あるべきものを収めた感覚』
魔物娘として、おぼこである自分は…その初めての味覚で精神が変容する!

ダメだと分かっていても、人間の頃を思い出せと思っても…。
それがサキュバスの指であると目と耳と頭が自覚していても…。

味わいたくて…その初めての快感をまた感じたくて…。
ぐちっ…ぐちっ…と、膣が動いて仕方がない!

生殖器を自在に動かす事を知らなくても、魂が覚えている。
どうやればはむ事が出来るか…どうすれば味わえるか…
この味わっても足りない物足りなさ…『私の栄養』はどこで得ればいいのか…。


泡でにゅるにゅると…腹が膨らみ…そのたびにビクビクッと快感で心が焼ける。
かき回されもして、パチパチと子宮内で泡が弾けるたびに何かが欲しくなってくる…!

くたっと手の平に下ろされても、疲れよりも欲が次から次へと湧いて来る…!
脚も空から自由になったので、腰を振るために動こうか。
胸も…何かが流れ出して来たので飲んで…美味しいと言ったら…じゃあ私もと吸われてしまい…。
貰ったから私もあげると、指をくわえさせながら…巨大な乳房にしゃぶりつき…。

生まれ変わり赤ん坊になったようだ。
薄れ行く意識の中で「どんどん綺麗になっていくね!」という声だけが鳴り響き…。

後は覚えていない。





寝覚めは…快適そのもの。
見上げた空は岩で覆われて、じめじめした空気で肺がいっぱいだが…。
風呂に入った後かのような爽快感があり、力が漲るかのようだ。

気付けばシャツを着て、ズボンも。
知ってる服だが、異様に綺麗。新品同然で…。

なにかなにかと、
駆け寄って来たバブルサキュバスを見てぶわっと記憶が蘇った…!!!

気まずさよりも感じさせるのは、
あの快感に魂が持って行かれたのではないかという焦燥感…!
息をすーっと吸って…何か変な影響をうがいのように絡めて、はーっと吐く。

自分は…正気なのだろうか!?
でも、あの快感は…新しく…自慰を覚えた少年のようにまた味わいたく…!

「あー!もしかしてさっきのプレイ、ハマっちゃった?」

…言葉にするとすっきりするような気がして吐き出した。

妖精化の感想、快楽の欲求、魔物娘の渇望や、
自分が変わってしまったのではないかという焦燥感。

でも、
「へー、じゃあ私達が精液欲しいと分かったのなら頂戴よ」と、魔物側の視点のみ。
これを教訓に生きろというのか、
もはやこれは人に話す事ではなく墓場まで持って行くしかない。

「でも…耐えられなくなったらまたシてあげるから、ほら」

取り出したるは…キュポンと閉まった薬品のビン。
その中ではパチパチと泡が跳ね…薄羽色の粘液がのたうち回っている。
そうだ…こいつは状態異常を泡にして操れるのだった。
つまりこの中に入っているのは…。

いいや、目の毒だ。考えないように頭を振り払うと…。
バブルサキュバスのなにか物欲しそうな顔がある。

この目は知っている、だからせめて…
心の準備が欲しいと立ち上がろうにも…いつの間にか足が泡で固められていた…!
妖精からでも精を味わったからか、魔力がその泡に籠もっていて…振りほどけない!

「あれだけサービスしたのだから、私にもちょうだいよね!」

それじゃーなにがしたいー?このままする?それとも状態異常プレイ?
今度は女体化?それとも小人化?他にもあるよ!ほら!

ずらりと並んだそれはおそらく状態異常入りのビンの数々。
精力増大だけならまだ良かったが、好事家が好きな状態異常もコレクションしている。

ここから最低1週間はこれに付き合わされる事になるだろう。
今後自分はバブルサキュバスを見直すことになる。サキュバス内の状態異常の専門家。
そして自分は様々な状態異常を経験した人間。
妖精化なんて『かわいい』ものだったかもしれない、
先程の魔物化による精神汚染が上書きされるほどの強い衝撃を受けるのは間違い無い。

だから、そっと妖精化のビンを懐にしまって、いざとなったら今日の快感にまみれて逃げる事にした。