突然だった。
青年は気を失い、そして意識を取り戻したときには知らない場所へと飛ばされていた。
そこは広大な空間。そしてすべてが巨大な場所だった。
椅子、机、ベッド。タンスやクローゼット等家具や部屋、すべてが巨大だった。
あまりに突然でまるで理解が出来ない現象に、思考がまとまらないまま青年は更なる情報を得ようと周囲を見渡していた。
部屋はどうやら女性の、それも少女のものであるように思われた。
壁紙や家具などは清楚にシックな基調でまとめられていたが、棚などに入っているぬいぐるみや小物。遠くで見えないが壁にかけられた写真の入れ物や書かれたメッセージなどがそうだと思わせる要素だった。
自分は、巨大な少女の部屋に飛ばされたとでも言うのか。
さらに気付いたのは、飛ばされたのが自分ひとりではなかったということ。
良く見ればこの広大な床の上、無数の人々がいた。
床の上にポツンポツンといるので全体で何人いるのか分からなかったが、結構な人数がいた。
近くに居た男性に話を聞いてみたが、その男性も何が起きたのかさっぱりだったという。

暫し部屋の探索を続けていた青年。そこが女性の部屋だと思うと気が咎めるところもあったが、今は現状起きている事を解決するのが先決だった。
そうしていると突然、地面が揺れ始めた。

 ずぅん… ずぅうん… ずぅううん…

規則正しく、グラグラと揺れる地面。
青年は慌てて近くにあったベッドの脚の影に隠れた。
周囲の男達も同じ様に慌てていた。何が起きているのか分からないものが大勢いた。自分も、その一人だった。

大きくなる揺れが一層強くなったかと思われたとき、この巨大な部屋の巨大なドアがガチャリと開かれた。
ドアの向こうから巨大な脚がぬぅっと現れ部屋の中に踏み降ろされ次いで巨大な身体が部屋の中へと入ってきた。
この部屋の主の少女なのだろう。
身体つきや着ている制服などから予想できた。
白いハイソックスが青年の目の前に踏み降ろされていた。
視線を上に上げればやがて白い色から肌色に変わり、その肌色の柱ははるか天空でヒラヒラと揺れる巨大なミニスカートの中へと消えていっていた。
半袖のワイシャツからは長い腕が伸び、胸元は前へと突き出している。
ショルダーバックを肩に掛けファスナーについた兎のキーホルダーが印象的である。
はるかはるか上空でブラウンのショートヘアーが揺れていた。
そしてその巨人の少女の顔を見たとき、青年の脳裏を閃光が走った。

それは部活の後輩でありマネージャーの女子の顔だった。
汗を流している自分にタオルと飲み物を差し出してくれるときの笑顔がこどもっぽくて好感の持てる子だった。
よく気の利く子で部内での人気も高い。自分もその一人だった。
だが自分はもうすぐ卒業で、ここで下手に告白しても、それは卒業を間近に控えたからの勢いのように思われてしまうかも、と何も言えずにいた。

今ここで部活外の奇妙な接触を果たした。
巨人は知っている少女だった。
だが、何故…?

偶然、必然、分からない。
思案に陥る青年の心。
ところがそれはすぐに現実に引き戻された。

後輩の少女が机に向かって歩いてゆく。
ところがその進行方向にはまだ隠れていない人がいたのだ。
広すぎる床の上にいたせいで逃亡が間に合わなかったのか。
だが少女はまっすぐにそちらに向かって歩いてゆく。

あぶない!

と少女に向かって叫ぼうとした青年。だが…

 ずん

ソックスを穿いた足は彼等の上に踏み降ろされた。
そして次の一歩のときにも普通に持ち上げられ次の一歩のために踏み降ろされた。
この間、少女はまるで動じた様子は無かった。
気付かなかったのだ。
だが青年は、持ち上げられた後輩の足の裏に、小さな赤いシミができているのを見た。
…。
何が起こっているのだ。
自分達は突然小さくなり、そして自分の後輩の部屋に飛ばされ、そして後輩は踏み潰したのにも気付かずにいる。
すべてが狂っている。
小さくなるのも、突然空間を超えたのも、人々が自分の後輩に、気付かれもしないうちに殺されているのも。
何もかもがおかしかった。

青年が注視するなか後輩は引っ張り出した椅子へと座ると机の上にバッグを置いた。
そしてため息をつきながらバッグの中をあさりだした。

「あ〜あ、まったくいやんなっちゃう。気付いたら先輩帰っちゃってるし…」

そして目当てと思しき物を見つけるとそれを目の前にぶら下げた。
古びたキーホルダーの様にも見えた。

「なーにが『想い人と急接近できます』よ。まるっきり逆効果じゃない」

はぁ。
再びため息をついて後輩は脚を伸ばした。
その伸ばされた脚のつま先に数人の男が巻き込まれていた。
床を滑ってきた白い足は彼等を床との間で一瞬にしてすり潰した。
その足の指がもじもじと動く。

「あー汗でヌルヌルする…着替えよ」

言うと後輩は立ち上がりクローゼットへと向かうとそこを開けて私服を取り出し始めた。
そこに移動するまでの間にまた数人が踏み潰されていた。
ファスナーが降ろされるとスカートはふぁさりと床へと落ち、その爆風は周辺の小人を吹き飛ばした。
ワイシャツが脱がされるとブラに包まれた小ぶりな乳房が姿を現し青年は思わず顔を背けていた。
別のミニスカート、Tシャツを着込んだ後輩は汗で蒸れていると思われる靴下も脱ぎ、それについている赤いシミを見て止まる。

「? 豆できて潰しちゃったかしら」

言いながら足の裏を見てみるがどこにもそれらしきものも怪我らしきものもない。綺麗な足だった。
まぁなんでもないならいい。後輩はもう片方の靴下も脱ぎ、脱いだものをベッドの上へとまとめておこうと思った。
自分の方に向かって巨大な素足が歩いてくるのを見たとき青年は思わず腰を抜かしてしまった。
さらにはその足がこちらに来るまでに、そこにいた人々を踏み潰して来るのを正面から見てしまっていたのだ。
人々が泣きながら叫びながらこちらに走ってくるのと、その人々を踏み潰しながらもそれに気づかない後輩のいたってのほほんとした顔のギャップに青年は吐き気を覚えた。

だがここで青年の心に一つの考えが生まれる。
今ここでベッドから出て行って後輩に気付いてもらえれば、とにかくこの危険な状態を脱出することが出来るのでは無いか。
幸いにもまだ後輩はベッドの前にいる。
巨大な足がそこにある。
指の太さですら、今の自分より大きいだろう。
前に一度、彼女に選手になるのをすすめたことがある。
彼女は走ると速いのだ。持っている記録も、部の男子の準レギュラーに劣らない。本当の走りの才能を持っていた。それは、目の前の足を見ても良く分かった。
だが彼女はマネージャーのままでいいと言った。
選手ではなく、選手を補佐するマネージャーでいいと。

今飛び出して足を叩けば気付いてもらえるはずだ。
だが、もしも失敗したら…。
それが自分である事に気付いてもらえなかったら…。
先ほどまでに何人もの人が踏み潰されたのを見てきて、青年の心は決断に踏み切れなかった。

そうこうしているうちに足は別の方向を向いてしまった。
用が済んでしまったのだ。
青年は内心で自分の優柔不断を呪った。
だが…。

「やだ! 虫!?」

突然、後輩が叫んだ。
何かと思ってみてみると、後輩が振り返った先、つま先の前に一人の男性が腰を抜かしているのが見えた。
突然足が振り返ったので驚いたのだろう。口を開けたまま動けないでいた。
当然である。目の前に幅80mにもなる巨大な足と前に連なる巨大な指が踏み降ろされたのだから。
家よりも大きな指である。親指にいたってはビルに匹敵する。
だがとにかく、この男性は後輩に気づかれた。
先ほど青年がやろうとしていた後輩へのコンタクトを果たしたのだ。
しかし後輩の次の行動は早かった。
棚にあったティッシュボックスからティッシュを一枚取るとそれを足元の男の上に落とし、その上から踏みつけたのだ。

 ずぅぅうううううううううううん!

床の世界を大地震が襲った。
間近にいた青年はその振動と爆風でベッドの下の奥まで飛ばされた。
つま先を乗せぐりぐりと踏みにじった後、足をどけてみるとそこには赤いシミがついていた。それを見た少女は部屋の床をジロリと注視した。すると床のあちこちに似たような黒いものがいることに気付いたのだ。

「もう! 夏はこれだから嫌なのよ!」

両手に数枚のティッシュを持った後輩は部屋の中の虫を捕らえて回った。
もちろんそれら虫ではなく青年と同じくして縮められた男性達。
だがわずか2㎜にも満たない人間など、後輩の目には虫としてしか映らなかった。
男達は次々と巨大なティッシュを持った手によって捕らえられていった。
ティッシュで床に押し付けられすり潰され、押し潰され、ティッシュ越しに捻り潰されていった。
数人が同時に捕まったときはティッシュごと丸められ潰された。
それだけではなく、後輩が部屋の中を歩き回る際に足によって踏み潰されてしまったものも後を絶たない。
もともと小さくて見つけるのに難儀しているのに影に入ってしまうと見えにくいのだ。
後輩の足の裏にはいくつもの赤いシミができていた。
部屋の中の小人は次々と駆逐されていった。

見た感じ虫がいなくなったのを確認した少女は自分の足を持ち上げて裏を見てみた。
そこにはいくつかの赤いシミがあった。

「うわぁ…やっぱり踏んじゃってた…気持ち悪〜い」

ティッシュで赤いシミをふき取り、丸めたティッシュは皆ゴミ箱へ捨てた。
小人となった男達は全滅した。
唯一、ベッドの奥に吹っ飛ばされていた青年だけが難を逃れていた。
彼はそのベッドの下の隙間からその光景をすべて見ていた。
後輩が何十と言う人々を皆殺しにしてゆく様を。
結果、生き残っているのは自分ひとりになってしまった。

「あぁもう最悪」

立ち上がった後輩は再びあのキーホルダーを手に取った。

「もうみんなコレのせいよ。こんなのに頼ったのが間違いだった」

ぶらぶらと揺さぶられるキーホルダー。
遠巻きに見ていた青年には、そのキーホルダーがとても精巧で不気味な細工を施されているように見えた。
まるで、悪魔を具現化したように。
だが後輩はそのキーホルダーを摘むとポキリと折ってしまった。
その瞬間、そこから黒い蒸気のようなものが悲鳴を上げながら消えていったのだが後輩は気付かなかった。
壊したキーホルダーをゴミ箱に捨てた後輩は机の上に飾ってあった写真を手に取った。
青年は、その写真に写っている人物に気付いた。
自分だったのだ。

「先輩、きっとあなたを振り向かせますからね」

後輩は、写真の中の青年にそっとキスをした。
青年はすべてにきづいた。
自分が無駄な気を回していたことと後輩の想いに。
胸の中が熱くなるのを感じた。
無事に元に戻れたら想いを打ち明けよう。
だがまずは、戻るのが先である。

写真についてしまったキスマークをふき取る少女。
だがその手が止まる。

「あ…先輩の事考えてたら疼いてきちゃった」

後輩は写真を机の上に戻すと棚に向かって歩いていった。
青年は驚愕した。
後輩が自分の方に向かって歩いてくるのだ。
ひとまず気付いてもらうための作戦として何をするにも道具が必要であると思い棚に何か役に立つものは無いか探しに行こうと棚に向かって歩いている途中だったのだ。
巨大な足がズンズン迫ってくる。
先ほど十数人を踏み潰した足だ。
青年は棚に駆け寄り、一番下の段にあった箱に隙間から身を滑り込ませた。
足音は目の前で止まった。
そして…。

 ゴゴゴゴ…!

世界が揺れ始めた。
後輩が、自分の入っている箱を手に取ったのだ。
青年は慌ててそこにあるものにしがみついた。
掴まるところの無いつるんとしたものだったが、なんとかその一辺につかまれそうな場所を見つけ、そこを掴み更にはその隙間に身体を滑り込ませた。
そうこうしているうちに箱が開かれ、薄暗かった内部に明りが照らされた。
そして青年は、今、自分がしがみついているものが何なのかを悟って驚愕する。
それは、ローターだった。
女性が、自慰をするときに用いる道具である。
まさかこんなものを持っていようとは…。
だがそんな青年の驚愕をよそに巨大な手が箱の中に侵入してきてそれを掴んだ。
巨大な指が、青年のしがみついているすぐ横の部分を摘んだ。
そして手はローターを青年ごと持ち上げていった。

「くす、これこれ。結構具合がいいの」

くすっと笑った後輩は椅子に腰掛け、スカートをはいたままパンティを下ろした。
そしてローターの先端を自分のむき出しになった秘所へとあてがった。
青年からは、薄暗いスカートの中の空間にじんわりと蒸す甘酸っぱい臭いとひくひくと動く巨大な女性器を見ることができていた。
これから、自分が入れられるところである。

「本当は先輩にしてもらいたいけど、今は我慢。先輩が卒業するまでに振り向かせないとなぁ」

言いながら後輩はそれを内部へと入れた。
流線型のそれはすでに濡れはじめていた内部ににゅるんと入っていった。
そこに青年を乗せたまま。
ちゃんと内部に入ったのを確認した後輩は手に持っているスイッチをONにした。
ブブ…!
ものが動き出した。

「…ッ!!」

青年は打ちのめされていた。
自分のしがみついていたそれが突然凄まじい速度で震え始めたからだ。
震えたといってもその幅は自分の感覚で5〜10m、大地震以上の大揺れだった。
ぶつかってきた表面に頭を叩かれ一瞬意識を失った。
胃の中のものを一瞬で吐き出した。
当然掴まっていられるはずも無く青年は表面から振るい落とされ後輩の中に墜落した。
だが痛みに悶える時間は無かった。
すぐにここを離れなければ、あの巨大なローターと内壁との間で潰されてしまうからだ。
更にすでに周囲にはジャブジャブと愛液が流れ始めてもいた。
入口はローターでふさがれているので、一時的に奥を目指した。

「くぅ…! やっぱりきくぅ…! でも…こんなの使ってるって知ったら先輩は嫌だろうなぁ…。一緒になったらとっとと捨てよ」

ふふ。先輩との来る幸福を思い描いて後輩は笑った。
その時先輩はビクビク動く内壁に翻弄されあふれ出る愛液に足を取られ押し寄せる肉に潰されそうになっていた。
しかし今は逃げるしかないのだ。
逃げて、無事生き延びて、なんとか自分の事を後輩に伝えて、助けてもらわなくては。
青年は濡れた襞の一枚をガシッと掴んだ。

「うぅ!? な、なんかいつもと違う……気持ちいい…!」

後輩は更にローターを前後させ始めた。
ローターの動きと振動に合わせて内部の動きもより活発になる。
襞を掴んでいる手により力を込めた。
先ほどからぐらんぐらん振り回されているのだ。更に襞の表面がざわざわと動くのも気持ちが悪かった。
だがここで手を離せば後ろに迫ってきているローターに激突、最悪その振動で骨を粉々に砕かれるだろう。
壁面に叩きつけられるのを、ひたすらに耐えていた。

気持ちいい。
気持ちよすぎる。
今までとはわけが違う。
何故だろう。
凄い盛り上がるのだ。
まるで…そう、まるで先輩と一緒にしているような。
先輩を凄い身近に感じていた。
本当に触れているかのような接近感。
先輩の手が、アレが、自分の中に入っているような感覚。
凄い。
凄いクる。
満たされて行く。
もうイく。
イけちゃう。
あっという間に頂点へと上っちゃう。
先輩。先輩!!

後輩が絶頂へ達しようとした、その瞬間である。

 コンコン

ドアがノックされ、その向こうからは夕飯の仕度ができたことを告げる家族の声。

「……。もう! 折角いいところだったのに!」

後輩は憤慨しながらローターのスイッチを切った。

青年の目の前で巨大ローターは突然動かなくなった。
何が起こったかはわからないが、これはチャンスだった。
再びこれにくっついて外に出れば、後輩の目に止まるはずだ。
そしてものがものなだけに注視せずにはいられまい。
掴んでいた襞を離し濡れた膣の中を駆け出した青年。
ところがである。

 ゴゴゴゴ…

青年の手が届くと思われた瞬間、ローターは凄まじい速度で遠ざかっていった。
光の漏れる出口へとまっしぐらに進んでいってしまった。

ちょ、ちょっと待ってくれ! まだ俺が! 俺がここにいるんだ!

手を伸ばし膣内を駆けるようとして転ぶ青年。
その青年を無視してローターは出口へと向かってゆく。
青年は転んだ際に打ち付けた顔から鼻血を流しながら手を伸ばし続けた。

やめろ! 行かないでくれ! 俺を…置いていかないでくれえええ!!

青年の叫び声が膣内に響くがローターはそのまま外へと出て行ってしまった。
目的のものを取り出し収縮する膣の中、暗闇に包まれつつある空間の奥の、絶望に染められてゆく表情をした青年の姿は、やがてぴったりと閉じた陰唇の向こうに見えなくなった。


ローターを良く拭いて箱に仕舞った後輩はパンティを穿きなおしう〜んと伸びをした。

「ふぅ…。最後まではやれなかったけど凄い気持ちよかった。まるで先輩としてるみたいで…。もしかしてこれがキーホルダーのご利益だったのかな。だとしたら悪いことしちゃった」

後輩は苦笑しながら箱を棚に仕舞った。

「うん、これはご利益なの。だから明日…明日先輩に告白しよう!」

よし! と意気込んだ後輩はリビングへと降りていった。