※破壊系。「大鎌を持った超巨大サイズの死神っ娘が人々に死を振りまく。まさにデスサイズ!」というしょーもない思いつきのもと生まれた作品です。元ネタ:昨日の夢。ぶっちゃけ死神である必要が無い作品なので、オリジナリティとかはあまり期待しない方がいいかもです。今日の朝 寝起き20分で書いたので。以上、言い訳終わり。



 「 超巨大死神娘 」



実態は、全身を黒い布で覆い、ぶかぶかの布のからは両手首の先と足首から先が出てるだけ。
フードになっている部分の穴の中に顔が見える。
幼い少女のそれのようだ。
薄暗いフードの中、赤い瞳が輝き線を引く。
言いようによってはまるで黒い雨合羽を羽織っているような姿。
背格好は10才のそれか。
その小さな右手には、自身の背丈ほどもある巨大な鎌。
まさに噂に聞く死神の姿に相応しい。

が、人々を最も恐怖させたのは死神が現れた事そのものではなく、その死神が身長1400mと巨大だったからだ。

ビルよりも山よりも巨大な幼い死神の少女が、そこに立っていた。

「はぅ…見失ってしまいました…」

小さく淡い唇からしょぼんとした言葉が紡がれる。
死という冠をいただいているにしては非常にかわいらしい声だった。おどろおどろしさはどこにも感じられない。
薄暗いフードの中で、眉を八の字にし、きょろきょろと辺りを見渡している。

この巨大なる死神が何を探しているのかはわからない。
だが現に、あの布の下から飛び出た地面に下されている幼さ残る素足はひとつの住宅街の上に降ろされ何十もの家々を踏み潰している。
丸っこくかわいい足の指ですら、家ほどの大きさがあるのだ。
足の下敷きになってしまった家は当然ぺしゃんこであり、周囲の家もガラガラと崩れて瓦礫の山になっている。
足元を、その死神から見たらゴマ粒のような人々が逃げている。

地面に降ろされた自分の足を見て人々が恐怖している事など露知らず、死神はため息をついた。

「どこに行ってしまったんでしょう…。今日のお仕事は彼で最後なのに…」

命を刈り取る予定の人物を見失いそれを探しに来たのだ。
だが、下界はごちゃごちゃしてて探しにくい。
それでも探さねばならないのが、死神としての使命だ。

はぁ…。死神は再びため息をついたあと、目標の人間を探して歩き始めた。

人々の恐怖は最高潮に達した。
あの巨大な死神が歩き始めたのだ。巨大な足が持ち上がり、新たな住宅街と逃げる人々の上に踏み下ろされる。
時間は一瞬、人々は自分に向かって降りてくる幼くも巨大な、薄汚れた足の裏を見上げ悲鳴を上げた。

  ずしぃいいいいいいいいん!!

足は凄まじい振動と轟音を轟かせながら家々を踏み潰し周囲に砂煙を巻き上げた。
その間にもう片方の足が地面から持ち上がり前へと踏み下ろされ再び地響きを引き起こした。
するとその住宅街の上に降ろされていた足が再び持ち上がり別の場所へ下され同じように大地を揺るがす。
低い雲さえ貫く、超巨大な死神の少女が歩く。それだけで街は壊滅状態になり無数の人々が死神の少女の素足の下に消え、後に残された相応に巨大な足跡の中には何も残っていなかった。

  ずしぃいいいいいいいいん!!

    ずしぃいいいいいいいいん!!

死神が歩くたびに地面が凄まじく上下に跳ね上がり、人々は立っていられないどころか、地面から宙に放り出される。
再び地面に降りたときには体をしたたかにぶつけ、すぐには動けないほどの激痛が襲う。
そうこうしていると真上からあの巨大な足の裏が下りてくるのだ。
家も車も人も関係なかった。
恐ろしく巨大な死神の足は全てに平等に死をもたらした。

周囲で死神から逃げる人々はその顔を見上げた。
フードの中で光が遮られ薄暗い顔は自分たちのいる地面をきょろきょろと見下ろしている。
八の字に寄せられた眉、その表情が、幼い顔に申し訳なさを漂わせていた。
この巨大な死神は、少女は、自分の行いを後悔しているのか?
自分が無数の人間を踏み潰しながら歩いている事を心苦しく思っているのか?
ならば、それを止めさせることもできるのではないか?

そのとき、少女の赤い瞳が足元の人々を捉えた。
人々と少女の目が合う。人々は自分たちの存在を主張するように手を振った。
が、瞳はすぐに別の方を向いてしまった。たった今手を振っていた自分たちを、まるで気にしていない仕草だ。
あの赤い瞳が、線を引きながらぷいと横を向いてしまった。
人々は思った。あの赤い瞳はとても冷たかった。その燃えるような色と反して氷のように冷たかったのだ。
自分たちを見てもいない。見ても、何も感じない。
この巨大な少女にとって自分たちは道端の石ころ程度の存在だった。
人々が絶望した直後、彼らの頭上に巨大な足の裏が現れた。

「ん~どこにもいません~…。この辺りにいるはずなんですけど…」

辺りを見渡しながらあっちへテクテクこっちへトコトコ歩き回る。
すでに街にはたくさんの足跡が残され、無数の人々がその中に埋められていた。
街は蹂躙されているのだ。これ以上歩き回られては街そのものが消えてしまうかもしれない。

ふと、その少女の周囲を飛び交うものが現れた。
戦闘機である。
巨大生物の襲撃を受けて、わけもわからぬまま出撃してきた軍隊だ。
ターゲットが巨大な人間、それも少女となって彼らはためらったが、その足元に広がる無残に踏み尽くされた街を見て彼らは引き金を引く決心をした。
少女の体を覆う黒い布のいたるところでパチパチと小さな火花が散る。

「もう、邪魔だな~」

少女は困ったような顔をしながら、右手に持っていた大鎌をブンと横薙ぎに振りぬいた。
それだけで戦闘機たちは全滅した。
衝撃波かなんなのか、少女が鎌を振った瞬間、周囲を飛んでいた戦闘機たちはみな一斉に爆発し砕け散った。

「ひとのお仕事邪魔しないでくださいよ~」

もう。とちょっと怒ったように言う少女。
その足元で、頼みの軍隊が鎌の一振りで全滅してしまい人々は絶望した。
軍隊が攻撃を始めてから10秒とかからぬうちの出来事だった。

少女は鎌を肩に担ぎ直してまた辺りを見渡す。

「見つけられません…。仕方がないですね…」

少女が呟くと同時に、その巨大な姿が掻き消えた。
周囲に穿たれた足跡以外、なんの痕跡も残さず消えたのだ。
唖然とした人々だったが、やがて悦び周囲の人と抱き合った。
死神はいなくなった。自分たちは助かったんだ。
歓喜の声がそこらじゅうで上がった。

直後、周囲が暗くなる。
悦びに震えていた人々は、おや? と空を見上げた。
突然、夜になった街。上空に何かがるのか。
彼らの視界の空を埋め尽くす巨大な何か。それがなんなのか人々にはわからなかった。
薄汚れた足の裏であるなどと分からなかった。

「全部潰しちゃえば目的の人の命も刈り取れます」

死神の少女は街の上空に片足を掲げていた。
ただし、先ほどまでの人々の1000倍の大きさから、更に1000倍の大きさになって。
身長1400kmになった少女がそこにいた。
長さ200kmにもなる素足が、たかだか20kmほどの街の上に掲げられた。
足の裏から、先ほどまで踏み潰していた街の瓦礫がパラパラと街の上に降り注ぐ。
そして、

「えい」

  ずしぃいいいいいいいいん!!!

街は、そのあまりある範囲を少女の小さな足の下で踏み潰された。
足を持ち上げて見れば、街などどこにもなく、ただ巨大な足跡が残されるのみだ。

「はぁ…また目的の人以外の命を刈り取ってしまいました…。目的の魂以外は持って帰れないのに…。ちゃんと処理しないと…」

少女は街の上にしゃがみこむと「すぅ…」と息を吸い込んだ。
するとこれまで彼女が踏み潰した数百万人の魂が地表から飛び上がり、少女の口の中に飛び込んで行った。
最後の一個の魂が口の中に入ったのを確認した少女はもぐもぐと口を動かし、やがてゴクンと喉を鳴らした。

「これっぽっちじゃお腹の足しにもならないです…」

立ち上がった少女が鎌を振り上げた。
すると少女の姿は忽然と消え去った。

あとには、全長200kmの足跡だけが残されていた。


  おわり