§
「ああ、クロはここにいたんだね」
 控えめなドアの音。扉の影からミカゲか例の真っ黒なドレスをひらめかせ、談話室に入り込んだ。
 それは昼食を終えて少しののち。
「クロを借りてもいいかな」
 ミカゲがムギに話しかけた時、僕は10センチほどまで縮められ、手慰みにムギの腕の上を歩かせられていた。ハムスターのように僕はその滑らかな褐色肌を渡らせられていたのだ。もちろん、それは簡単なわけがなく、何度も僕は足を踏み外しては真っ逆さま、ムギの引き締まった太ももの上へ落下し、大きく弾んでソファの上に転げ落ちていたのだ。
「いいよー。何するの?」
 ムギは勝手に快諾する。
「お勉強だね。クロをそばに置いておくと、なぜだか捗るんだ」
「へー」
 そう言ってポンと僕をミカゲの手に乗せる。小麦色の手から白い手袋の上へ。ムギはご主人に頭を撫でてもらうと、嬉しそうに目を細めて笑顔を浮かべた。
「さ、付き合ってもらうよ」
 そして僕を本棚の部屋へ連れ去ると、本を開いて僕をドレスの膝の上に乗せたのだった。
「この部屋にいるなら、好きにしていていいよ。どこにいる? 連れて行ってあげよう」
「大丈夫、ここで一緒にいたい」
 僕は即座に答える。
「嬉しいことを言うね。欲しいものがあるならなんでも言うといい」
「……じゃあ、膝の上に手を下ろしていてくれると嬉しいな」
「?」
 ミカゲは言われた通りに手を下ろす。そしてしばらく怪訝な顔をした後、読書に取り掛かった。
 こうなるとミカゲはちょっとやそっとでは集中を乱さない。少々僕がじゃれても全く気づかないほどだ。
「……」
 僕はうずうずとした気持ちを抑えて、ミカゲの膝の上に立っていた。飼い主の邪魔をしないよう、しっぽを振らんばかりに彼女の手へと近づいていく。
 ……この頃、僕はもう完全にみんなのペットが板について、骨の髄まで染め上げられてしまったようだった。犬のように彼女らに懐き、その膝に擦り寄り、小さくされて悪戯されるのが何より嬉しい生き物になってしまったのだ。そのように四人の飼い主達は僕を躾け、調教し、元人間の僕はすっかりみんなの愛玩動物にされていた。
 そのせいだ。シルクの手袋に包まれたミカゲの手、それが目の前に現れるだけで、僕は心底嬉しくなってしまう。スカートの上、太ももの丘を歩いてそこに近づくと、その度に僕の心は高揚していった。
 そしてミカゲの手までたどり着いた。
 ほっそりした指先に触れる。僕の手の長さほどもある指。ソファのように、わずかに丸められた四本の指。僕はそこへ滑り込む。滑らかな手触りに、仄かな暖かさ、手袋に染み付いたミカゲの香り。親指の付け根のふっくら盛り上がったところが、特に弾力の心地よい場所だ。曲線の綺麗なミカゲの手は、それだけで僕の公園のようなものだった。
 指を抱き枕にしたり、じゃれついたりして遊ぶ。真っ白な布地に浮かび上がる手の輪郭が好きだ。布に出来たシワもドキドキするし、手袋越しに感じる骨や関節も大好きなものだった。
 1時間ばかりもそうしているうちに、ミカゲは一区切りついたらしい。頭を休めながら、僕を手のひらに乗せてぼんやり眺めている。
 愛おしそうに僕を見つめてくれる。目を休め、気を緩め、ちょっと僕を小突いてみたりして、しばしの休息を取っているのだ。
「いい子に待っているね。ご褒美をあげようか」
 そういって手袋の指先をくちびるで引っ張り脱いでしまうと、戯れに僕のそばにおいてみる。
「……」
 僕は、目の前に置かれた巨大な布に少しずつ近寄る。
 見つめられているのは恥ずかしい。すぐそこには、宝石のような瞳が二つ輝いて、こちらを一心に見つめている。
 けれど、誘惑には勝てなかった。
 僕は薄い布の中に飛び込む。朝から手に張り付いて、少し生地の伸びた手袋はしっとり重たい。ミカゲの第二の皮膚だったそれにくるまれば、まるでミカゲにわしづかみにされてる気分だ。
 そんな僕にくたびれた目を少し緩めると、ミカゲは僕の頭を指で撫で、そっと包むと気を取り直して本に向かい合った。
 僕は手袋の中に潜り込む。ひときわ濃いミカゲの蒸気。そしてそこから抜け出すと、ミカゲの素手の中に丸まる。
 そしてあとはおとなしく、飼い主の読書を見守る忠犬としてミカゲを待っていた。
 振り子時計の音だけが響く。
 そしてそれが千を数えたあたりで、
「ん、んーーん、っハァ……。お待たせ、クロ」
 大きく伸びをして、ミカゲの読書が終わった。
「流石に疲れたね」
 なんて笑う。
 そして、あくびを一つ。
「ちょっとそこにいてね」
 僕を机の上に降ろす。そして毛布を持ってきて真横にあるソファに寝転ぶと、
「クロ、おいで」
 ミカゲが大きく腕を開く。胸に飛びこんでおいでと、そう言うのだ。
 ソファにすわる彼女は、小さな僕にとってはちょっと遠い。でも、不安はなかった。
 僕は駆け出して、ミカゲの胸に思いっきり飛び込んだ。眼下に広がる、山脈のようなミカゲの肢体。そして、その漆黒のドレス、大きく膨らんだ胸元が視界の中でみるみる膨らむ。
(ちょっと飛びすぎた……!)
 僕はミカゲの胸元にダイブしていく。一瞬の浮遊感、そして自由落下。目まぐるしく変わる僕の視界は、ついに主人の元へ辿り着く。そして、深くミカゲのドレスの中へ沈み込んだ。限りなく滑らかなドレスは第二の肌も同然だ。やわい衝撃。空気抵抗に晒された肌は、次の瞬間にはミカゲの乳房に包まれていた。ミカゲのバストはどっしり僕を受け止め、弾力で大きくバウンドして、僕を宙に放り投げる。それはきっとミカゲには微かな弾み。けれど僕は高く空中に押し返されて。
「ふふ、捕まえた♪」
 ミカゲははねた僕を手のひらで受け止め、その胸元に深く抱きしめた。ドレスの切れ込みから覗く真っ白な谷間が、僕を受け入れる。ふにふにと体はその生肌に沈んで、全身でミカゲを感じることができた。
「ちゃんと来てくれた。クロはお利口さんだね」
 胸の中の僕を両腕で抱きしめる。巨大でしっとりした包容感。ミカゲのいい香りがして、産毛さえ頰に感じて、体の隅々まで柔らかい。女の子の体が気持ちいい。まして、ミカゲの胸元。極上だった。
 ブラに包まれた乳房、その中に僕はうずめられる。そして指先で頭を撫でられると、暖かな大地はあくびを一つ。
「ボクはちょっとお昼寝だ。クロはそこにいて、ね?」
 ミカゲが腕を伸ばして、クイと宙を引いた。乳房の山の向こうから、ドレスをヒラヒラと揺らめかせた腕が伸びて、見えない糸を引く。するとあたりは途端にほの暗くなった。あとは、カーテンからふんわり風と日差しが広がるだけ。
 ミカゲはお腹に手を組むと、そのまま小さく息を吐いて、緩やかにそれは細やかな寝息へと変わって行った。
 僕の体の何倍もある膨らみに挟まれ、あまりに贅沢なベッドの中に僕は潜り込んだ。体いっぱいの幸せ。それも、谷間の一番深いところだ。香りは濃くて、寝心地は暖かく、柔らかい。しっとりした肌はぎゅっと僕にのしかかる。えも言われぬ喜びと安らぎが身を浸した。とろけそうだった。
 おおどかなミカゲの寝息に包まれて、少しずつ僕はミカゲの中に浸透していく。鼓動が近い。乳腺を震わせて、乳房を滲み透る心臓の音。
 そこにまた、ミカゲと別の甘い匂いが混ざる。
(……ムギ?)
 気づけば上空で、ムギが僕を見下ろしていた。亜麻色の髪を垂らし、眠る主人を気遣いに来たのだ。
 ぱちくり目を瞬かせると、指を唇に当て、シーッと僕に合図する。そしてタオルケットを主人にかけると、ミカゲの足元で自分も丸まる。
 良い昼寝場所を見つけたらしい。
 主人を慕って眠る姿が、とても可愛らしかった。
 そうするうち、またも足音が二つ、聞こえて来る。
 いなくなったムギを求めて、アキとスズもやって来たのだ。僕らを見つけると、栗色と黒髪の娘は互いに笑い合う。
 そうっと近づくと、スズはソファに座り、ミカゲの頭を膝に乗せてやった。母性的なスズに、膝枕はよく似合っていた。
 アキも床に座る。そして栗色の髪を広げ、主人の枕元にしなだれかかった。
 三人の猫たちが主人の周りで眠り始める。小さな僕は、四人に囲まれ、主人の上だ。
 そして、あたりから少女たちの寝息が聞こえる頃には、僕もまた彼女らの中でまどろみ始めていた。

§
 目を覚ますと、僕は四人の大きな娘に見つめられていた。
「おはよ」
 ムギが言うと、四人はクスクス笑う。みんなの笑んだ吐息が伝わってくる。僕を乗せたままのミカゲの笑い声が、肌を通し直接僕に響いてきた。
(う、うわー……)
 寄りにも寄って主人の胸に挟まれ眠っていたところを、じっくり見られ、笑われている。僕の顔は真っ赤だった。
 それがまたみんなの笑いを誘う。
「いっそ今日は、そこに閉じ込めておこうかな?」
 ミカゲなど、そんなことを言う始末だ。
 僕は恥ずかしくって谷間の中へ顔を隠すけれど、逆効果なのは間違いない。小動物のような行動が、少女のいたずら心を刺激してしまう。
「クロはそこが気に入ったみたいだね」
 そう言うと、指先で胸元を撫で、僕をその中に押し込んでしまう。
「やだ、恥ずかしいよっ」
 たまらず叫んでも後の祭り。
 猫娘が三人、巨大な顔を寄せ合って小人を笑った。僕を谷間に閉じ込めるミカゲは、わざと胸を揺らして僕をからかう。
 そして大地が傾き始めた。
 むくりと起き上がると、ミカゲは伸びをしてソファから降りる。
「さ、お茶にしようか」
「だ、出してよ、こんな、ねえっ!」
「ふふっ、出してあげない。これは、ボクをベッドがわりにしたお寝坊さんへのお仕置きだ」
「そんなぁ……」
(あれ、これ一日中からかわれ続けるんじゃ……?)
 そのことに気づくと、僕はもがき始める。けれど、せめぎ合う大きな乳房には勝てない。小人のあがきが無駄に終わったのを笑うと、ミカゲは立ち上がった。
「わっ、ゆ、揺れる……!」
 巨大な弾力の塊は僕を挟んだままゆさっと揺れ始める。ブラと服で包まれていても、その重みは押さえきれない。それはミカゲたちには微かな揺れだけど、バウンドする乳房は僕にはトランポリンのよう。胸元に必死としがみつこうとするけれど、ミカゲの肌は滑らかで、僕はなすすべもなく乳房の暴力にさらされるだけだった。
「♪」
 そのまま軽い足取りでミカゲは僕を連れ去る。
 含み笑いのミカゲの中、ちょっと嗜虐的な悪戯。でも、僕はどこかよろこびを隠しきれないでいた。

§
 数時間後。
「ダメ、もうお嫁にいけない……」
 僕は女々しく顔を覆っていた。
 おっぱいに挟まれ続けるというのは予想以上に恥ずかしくて、僕はもう羞恥でゆでだこだった。どこか喜んでいるのも筒抜けだから、みんなのからかいも止まらない。
 おやつを食べる今も、僕はみんなに囲まれて笑いの種だ。
「私たちのものなんだから、お嫁なんて行けるわけないじゃない」
 アキがクスクス笑う。
「まあ、今はここからも出られないけどね」
 ミカゲは猫にするように僕の顎をくすぐった。けれど腕を動かすだけでおっぱいは腕で押され、僕の方に乗り上げてくる。窒息しそうだった。
「あーあー、すっかりミカゲさまの虜だね」
 スズは涼しい顔をして、でも僕をからかうのを忘れない。ケーキを一口食べて、よく冷やしたミントのお茶に口をつける。僕は巨大な女の子に密着し続けているせいで、その姿が羨ましくって仕方ない。
「ミカゲ暑いよ、喉乾いたよ……」
 すっかりしおれて僕はミカゲに懇願する。近すぎてミカゲの姿はよく見えないけれど、その分ご主人と一つになった気分だ。
「仕方ない子だね。つかまって」
 頭上に大きな指が伸びてくる。細やかなそこに、僕は全身でしがみついた。
 ミカゲの指に引き抜かれて、僕は双丘の上に乗る。巨大な膨らみの片方、その頂点だ。
「ちょっと、降ろしてくれないの!?」
「ボクをベッドにした悪い子は誰だっけ?」
 あくまでもお仕置きのつもりらしい。飼い主に言われてしまえば、僕は従うしかなかった。
「ミカゲ、ここ滑る、滑るよ!」
「アハッ、がんばれがんばれ!」
 ムギはのんびり僕を眺めながら励ますばかり。
 ミカゲの乳房に這いつくばって、なんとか僕は服のほうへ進んでいく。ミカゲがミントティーをスプーンですくって、僕に差し出していた。ずっと美味しそうだなと眺めていたから、とても待ち遠しい。けれど手をつくたび沈み込む地面は進みにくくて、しっとりみずみずしい肌は僕をからかう。
 そんな風だから、なんとかミカゲのドレスのふちに手をかけると、僕はすぐさまその中に潜り込む。安全確保に、僕は必死だった。
「……自分からそこに入るんだね」
 スズが呟く。
「あっ」
 途端に僕は巣に帰った。
 脚はブラと谷間の間に滑り込んでいる。体の輪郭はミカゲのドレスに浮き上がっている。きっと彼女らからは丸見えだ。乳房で隠れていた視界は大きく開けたけれども、その分巨人たちの視線ももろに突き刺さる。上空を見上げれば女神のようなミカゲの顔が驚いたようにこちらを見ていて、それから少し笑みをこぼした。慈愛のようにも、揶揄のようにも見えるその口元。唇が艶やかに光った。
「そんなにそこが気に入ったのかい? すっかり躾けられて、可愛い子だ。さ、お飲み。今日はサービスしてあげよう」
 僕の口元にお盆のようなスプーンを持ってくる。真っ赤な顔をそこに突っ込みたい。でも他にしようがないから、僕はドレスのふちに手をかけて身を乗り出した。慌ててミカゲが僕を押さえると、三人が一斉に笑い声を上げた。
 ミカゲが口をつけたスプーンに僕も口をつける。爽やかな香りが口の中に広がって、やっと一息つけた。
「ミカゲさまは優しいねえ」
 となりに座っていたムギが、ギュッと主人に抱きつく。頰を寄せて、親愛の証。でも、
 きっと故意犯だ。
 僕も二人の胸の間に挟まれることになるのだから。
 ムギの着るTシャツは大きく首元が開いていて、ムギのふくよかな胸がそこからのぞいている。大きくこちらに膨らんだバスト、その小麦色がみるみるこちらに近づいてきて……。
「わっ、……うぎゃっ!」
 二人の乳房に挟まれた。ムギは僕のピンチなんて気にもしない。巨人の無邪気な抱擁でそのまま僕を包み込む。頭上では頰を寄せ合う二人の顔。ミカゲはムギの頭を優しく撫でて、僕のことを忘れている。
「ムギ、お、重たい……!」
 ムギもミカゲに負けず劣らず大きな胸。そのすべすべした褐色の肌が思いっきり僕にのしかかる。柔らかい。けれどとんでもない圧迫感。二つの凶暴な乳房に襲いかかられて、僕はどうかなりそうだ。
(二人のおっぱいで潰される……)
 なんとか押しのけようと小麦色の乳房に腕を伸ばすれけど、弾力ある柔肌はそのまま僕を押しつぶす。背後からは乳白色のミカゲの胸が迫ってきて、同じく二つの乳房で僕を挟みつけた。二人の乳首程度の僕の体。それを山のような四つの乳房が抱きしめる。痛いような、重いような、気持ちいいような。
 何気ない巨人たちの抱擁で、僕はむちゃくちゃにされていた。
「あ、ごめんごめん」
 ムギがやっと僕を気遣って、巨大な体を退ける。離れていく健康的な肌。なんとなく名残惜しいような気もする。けれど、汗だくになった僕は朦朧とするばかり。
「死ぬかと思った……」
「ムギとミカゲさまのおっぱいで死ねるなら、本望でしょ?」
 アキはニヤニヤしながら言い放つ。
 判断力のないまま思わずコクリと首を振ってしまったのだから、僕はもっと彼女らを笑わせてしまった。
「暑そうだね、ほら、冷たいよ」
 そうしてまたお茶をすくってくれるミカゲ。
 そして僕はそこに倒れこむ。
「ひゃっ!」
 ミカゲの可愛い悲鳴。
 僕は思いっきりそれをこぼしてしまった。フラフラの僕は、慌ててミカゲに謝る。
「ご、ごめんなさい!」
「いいよいいよ。でも、洗ってこなくちゃね」
 そうして席を立つと、僕を連れ立って行った。

§
「結構濡れちゃったな」
 ミカゲのドレスはとても薄い。僅かな量の水だって、肌を濡らすに十分だった。
 ミカゲの部屋のバスルーム。椅子に座って、ミカゲは呟く。
「もうお風呂に入っちゃおっか。ねえ、クロ?」
「うん、ぼくもお茶が冷たくて……」
 もちろん僕はびしょ濡れだ。彼女の体がなければ、とうに冷え切っているはず。
 ミカゲはブローチを取った。そしてドレスの背中を降ろし、全身を包むそれも脱いでしまう。だんだん気温も暖かくなってきて、普段のフリルシャツはしまってしまった。今は代わりに簡素なドレスだけだ。だから、脱ぐのに前ほどの手間はなさそうだった。
 黒い下着だけになったところで、ふと僕は鏡に目をやる。
 そして赤面すると、たまらず叫んだ。
「ミカゲ、そろそろ降ろしてよ」
 ミカゲの下着姿は心底綺麗で、そこに異物のように挟まったままの自分が恥ずかしくなったのだ。
「おや、そんなこと言うのかい? あんなに気に入って、あまつさえボクにお茶までかけたのに?」
 自分の乳房を掴むと、戒めるように僕に寄せ付けた。そのままふにふに揉んでくる。当然僕は翻弄されるわけで、僕を飲み込む柔らかな肌の海に溺れそうになる。
「ふふ、まあいいよ、出してあげよう。このままだと洗いにくいしね」
「……ミカゲ、あんなに恥ずかしがり屋だったのに……」
「なっ」
 今日の一連の大胆な行動に、僕は少し驚いていた。自分の体でこんなことするなんて、前は考えられない。
「たしかに、ね」
 少し赤面して、唇を尖らせるようにミカゲは言う。
「この間あれだけスズたちと遊んでるのを見たんだ。ボクだって大胆にはなるさ」
 僕が発情期の猫たちに襲われたのを、ミカゲはずっと見ていた。面白がっていたけれど、同時にすこし、つまらなくもあったのだろう。
「意地悪なクロだな、ちょっと恥ずかしくなってきちゃったじゃないか」
 そう言いながら、僕を胸から摘まみ上げる。ネックレスでも置くように、僕を机の上へ立たせた。
 すこし逡巡した後、ミカゲは諦めたように笑って服を脱ぎ始める。
「もう見たことあるだろう? あんまり恥ずかしがらないでよ。ボクも恥ずかしくなっちゃう」
 僅かに頬を染めながら、ミカゲはブラを解く。黒い紐が解けて、白い背中が全面に現れた。こちらに背を向けているから、ここからだと見える乳房はその輪郭だけ。
 大きなお尻にショーツはちょっと食い込んでいた。そこに手をかけると、ミカゲはすこし屈んで下着を降ろし始める。その腕の間で、溢れるように胸が下を向くのが見えた。そして僕の目の前に、乳白色の丸い臀部が見え始める。
 ミカゲがショーツを降ろす。重量感あるお尻がついに丸見えだ。ミカゲは続いて足を引き抜く。大きな太ももはお尻と滑らかにつながって、脚はすらりと長い。
 その姿が美しくって見とれていると、腕で胸を隠したままミカゲはくるりとこちらに振り返った。
「もう、見過ぎだよ!」
 手に持っていた下着をばさりと投げる。さっきまで巨大な乳房を包んでいたブラのカップが落ちてきて、僕を閉じ込めてしまう。
「ほら、クロも脱いで出ておいで」
 下着の香りは湯気が立つほど濃密だった。ミルクの甘い香りさえするようだ。そんな黒いブラのドームの中にいると、僕はドギマギしてしまう。ミカゲの乳房に合わせて、驚くほどそのカップは大きかった。そのすこしくたびれた感じが生々しい。ミカゲも十分意地悪だ。
 服を脱いで、なんとかそこから出ようとした。隙間から抜け出してみる。でもまだ周囲は黒くて、布が僕の上に覆いかぶさっていた。
「あはっ、ボクのパンツの中にいるのかい? ふふ、虫みたいに這いずって、存分に恥ずかしがるといいよ。ボクの大きさにひれ伏すんだね。キミならそれも嬉しいだろう?」
 意趣返しにミカゲがそんなことを言う。見れば、周囲は下着を縁取るレースが見えた。アクセントに白いフリルもあって、さっき見たミカゲの下着姿が脳裏をよぎる。
 きっとミカゲも恥ずかしいはず。もしかしたらちょっとヤケなのかもしれない。けれどやっぱり僕もミカゲには敵わなくて、顔を真っ赤にしてそこを進んでいった。
 ミカゲの体熱を含んでしっとりしたショーツは、僕の上に重くのしかかる。フリルやレースも僕の体に絡みついて、ひしひしと自分の小ささが身にしみた。
 手間取りながらなんとか抜け出す。
「お乗り」
 ミカゲが手を差し伸べて待ってくれていた。
 僕は小さな手の中によじ登る。軽く掴むと、ミカゲは僕をシャワールームに連れていった。
「このまま体を洗うと、その大きさじゃ溺れてしまうかな?」
「危ない、かな」
 指に捕まって、僕はミカゲを見上げる。下から見上げると、大きくせり出す胸に隠れて、ミカゲの顔が半分ほど隠れてしまっている。
 仕方ないね、とミカゲは指を振って、大きさを調整し始めた。
 手の中で膨らみ始めて、手のひらに座る格好、そしてミカゲに抱き上げられる大きさまでサイズが変わっていく。
「ちょっと大きくしすぎたかな」
「でも、赤ん坊より小さいよ……」
 ははっと笑って椅子に座り込む。4分の1程度にまで大きさの変わった僕を膝の上に乗せて、蛇口をひねった。
 胸に当てていた腕を退け、石鹸に手を伸ばす。目の前にずっしりしたおっぱいが現れて、僕は途端に落ち着かない。大き目の照明だってこれほどではない。まして丸く膨らんでいるのだから、その存在感は余りある。
 ミカゲはシャンプーに取り掛かったらしい。
 シャワーの水滴に濡れて、キラキラ肌が輝く。瑞々しく肌は水を弾いて、無数の雫がコロコロ肌を転がった。
(綺麗……)
 思わず見惚れてしまう。長い黒髪も濡羽色に輝いて肌に張り付き、その輪郭を強調していた。
 ミカゲが身をよじる。シャワーの位置を調節するらしい。
 そう思った瞬間。
「わっぷ!」
 背中に大量の水が押し寄せてミカゲの体に押し付けられた。シャワーがもろに当たって、小人を吹き飛ばしたのだ。ボンっとミカゲの谷間へと顔が挟まる。そしてずるりとそこからずりおちると、僕はミカゲのお腹に抱きつく形になった。
「ああ、当たっちゃったね。動かそうか?」
「ううん、大丈夫」
 ちょうどシャワーはミカゲの胸が受け止めてくれて、僕を守ってくれていた。そこから滴り落ちる水が僕を洗う。
 乳房は頭上で震えて、時々僕の頰を叩いた。
 その表さえ全身で覆いきれないような巨大なお腹に抱きついて、少し心が浮き立つ。くびれやおへそをダイレクトに感じられて、まるで彼女の一部になったようだ。
「甘えん坊だね。そんな可愛いペットは、ボクがこのまま洗ってあげよう」
 ミカゲが指を這わせて僕の背を泡だらけにする。谷間から滴り落ちてきた泡は僕らのお腹を覆って、ヌルヌル滑らせ始める。そのままミカゲは僕をお腹にこすりつけて、スポンジがわりに自分たちを洗い始めた。
「あははっ! さすがにくすぐったいね」
 思い切った飼い主の行動に、僕は翻弄されてしまう。
 ヌチャヌチャとちょっとエッチな音を立てて、僕らは互いを擦り付けあった。おっきな彼女の体が僕を覆って、背中はミカゲの手のひらが洗ってくれる。重く乳房が僕をビンタして、でもミカゲはきっと気づいていないに違いない。笑いながらさらに激しくふざけあう。優しい無意識におっぱいで殴られる。でも、その重量感と無力感が、なんだかたまらず嬉しいのだ。度し難いけど仕方ない。
 なんだか変な気分がたまっていって、気持ち良さに思わず白いのを漏らしてしまう。それはあっという間に流されていって、痕跡一つ残らない。くすみ一つない美しい肌は僕を綺麗に洗ってしまうのだ。
 バレないでよかった、と僕は安堵した。
 ミカゲはじゃれているだけのようだった。ひとしきり笑い終えると、手を止めて泡を流してしまう。
 そしてそうっと僕を持ち上げると、バスタブの中に足をつけた。
「キミがボクのお風呂に入るのは、初めてだったかな。思ったより広いだろう? ほとんど使わない置物のようなものだけどね」
 笑いながらミカゲが僕を浮かべる。水面にぷかぷか揺られて海水浴の気分だ。ミカゲからは、アヒルほおもちゃのように見えているのだろうか。
 そしてバスタブに腰掛け、両脚をその中につける。
 僕の漂うそばに、ミカゲの太ももがそびえる。真珠のような肌。きめ細やかな表面が濡れてつるりと輝き、そこを反照が走っていく。
 みなもから間近に見上げるミカゲは大きかった。太ももは僕より太く、重みもあって、水面から力強く伸びている。日本の脚は頭上で交わって、そこを埋めるようにエッチな唇が綺麗に並び、奥ではお尻のお肉がのぞいている。汗のように水滴が肌を流れて、はるか上空、乳首から滴り落ちた雫が僕の頭を打った。
 もうミカゲは隠さない。僕なんかに隠す必要もない。僕は何度でも魅了されてしまうけれど、この大きなご主人は、惜しげも無くその肢体を晒してくれるらしい。
「残っていたバスミルク、使ってしまおうか。大きなお風呂じゃ使えないものね」
 バスタブに腰掛けたままに、ミカゲはトロトロと入浴剤を注ぎ込んだ。華やかな香りがふわっと広がって、お湯がまろやかになっていく。
 ミカゲが足でお湯を蹴る。白い水面から素足が現れて、無数の水滴を垂らしながら水流をかき回した。僕の体も揺られ始める。
「ミカゲ、な、流されちゃう……!」
 そんな僕の慌てる姿をミカゲはニヤニヤ見下ろすばかり。
「おやおや、こんなちっちゃなお風呂でクロはずいぶん楽しそうじゃないか。うらやましいな、ボクも遊びたいよ」
「……わっ!」
 不意に下から何かが顔をのぞかせ、撲を背に乗せて浮上した。ミカゲの素足だった、。僕を足に乗せて、戯れに持ち上げてみたのだ。
「ぼうっとしてると食べられちゃうぞ? ふふ、そんなにしがみつかなくたって溺れやしないよ。ボクがいるからね」
 またがっているミカゲの足に、僕は必死ですがりつく。ミカゲの素足はほっそりしててなめらかで、簡単に落ちてしまいそうだ。そんな僕の慌てっぷりが彼女を刺激してしまう。わざとこの意地悪な巨人さんは足を振ったり伸ばしたりするのだ。まるで暴れ馬のような少女の足。そしてツンとそれが空へ伸びると、傾斜に従い僕は太ももの方へと滑り落ちていく。
「ああ、そこなら安心だ。キミよりボクの太ももの方が大きいからね」
 僕はボールのように足の上を転げていった。
 ツルツルした太ももを転がり、ミカゲのお腹にダイブする。僕の周りには巨大な太ももとお腹。三方向から包まれ、ミカゲが一層近い。
 ピチッととじられたお股の上に座らせられているのだ。あまりのことに、僕は目を白黒させながらも赤面してしまう。バスミルクのおかげで、肌同士はとんでもない密着感だ。その上、大きな手のひらが彼女のお腹へ押さえつけてくる。全身をくるむミカゲのお腹が暖かくて暖かくてたまらない。頭がおへそに潜り込んで包み込まれる。ミカゲの肌を伝ってその汗も僕にまとわりつき、お腹やお尻、耳までもが彼女の肌とくっつき合うのだ。
 なんとなく、ミカゲのおへそにキスをする。そして舌を出して、その丸み、ふちに沿って舐めてみた。
「なにしてっ、きゃっ!」
 驚いたミカゲがバスタブからずり落ちる。ドボンッと水柱を上げて、ミカゲの体がバスタブの中に沈み込んだ。
 激しく揺れる水面に弄ばれ、僕はミカゲの太ももや胸へ交互に叩きつけられる。そんなペットを捕まえると、ミカゲはメッと叱りつけた。
「驚くじゃないか。ハァ、いつのまにかそんなイタズラを覚えたんだか」
 呆れたように頭を振る。僕を再び水面に浮かべると、広がった髪が濡れないよう、おだんごのようにまとめ始めた。珍しく髪型が新鮮で、ちょっと僕は見とれてしまう。足のつかないままプカプカ浮かんで見上げるミカゲは、いつもと違っていてみえた。妖艶な雰囲気から、少しキュートな感じに変わっている。
 水面から見上げる風景は地面に寝っ転がって見上げる景色に似ていた。よりミカゲが大きく見える。大きなおっぱいは浮力に持ち上げられてこちらを向き、裸の肩が僕をドキドキさせた。お昼のお風呂場は夜と違ってキラキラ煌めいていて、ちょっとした非日常の世界だ。窓から差し込む光が湯気に当たり、ミカゲを美し照らし出す。
 つるりと綺麗な脇をこちらに見せながら、ミカゲは髪をまとめる。そのせいで乳房が少し引っ張られていた。そこから脇へつながるラインが曲線美を作って、普段はドレスに隠されている脇のくぼみがよく見える。撫でてみたいけど、今度こそ大目玉をくらいそうなので流石にこらえた。
 腕を下ろすと、ミカゲはジトーッと僕を見下ろす。
「これはちょっとキツめのお仕置きが必要かな?」
 そう言って、僕に手を伸ばした。

§
「あれ、クロは?」
「眠たそうだったからね。ボクの部屋で寝かしてあげてるよ。ぐっすりだから、部屋には入らないであげてくれるかい?」
「わかったー」
 僕の耳にアキの声が聞こえてくる。もちろん、そんなところに僕はいない。
 そして行ってしまうと、ミカゲの忍び笑いが聞こえてきた。
「ふふ、どうだい? 誰にも気づかれずに囚われる気分は。ましてドレスの中に隠されて、お尻で踏まれてるなんて……、笑っちゃうね!」
 そしてスカートをたくし上げて、太ももの間の僕を笑った。
「ごめんなさい、ごめんなさいミカゲさま! だから出してよ、恥ずかしいし苦しいよ!」
「ふふ、ミカゲさまなんて殊勝だね。でも出してあげなーい」
 そしてスカートを下ろすと、少しお尻で僕をにじって見せる。
 僕は今、ドレスとパンツの間に挟まれてミカゲに座られていた。さっきの大きさから、少しずつ、少しずつ縮められているのだ。
 ミカゲのお尻はおっきくて、ミチミチに僕を挟んでいた。肉の詰まったそのお尻は、柔らかいけれど同時にとても重い。僕は太ももの山とスカートの天蓋、僕にのしかかるミカゲのお股のショーツに囲まれ、体にずっしり乗っかるミカゲの重量をかみしめていた。
 時々わざとミカゲはプリプリお尻を振って、僕の顔をお尻で殴る。ムギやスズが僕を探しに来ると、助けを求めようもする僕にギューっと体重をかけて黙らせてから、彼女らをやり過した。ミカゲのお尻の牢獄はどんどん重くなって、僕の顔を挟む太ももの山も、どんどん膨らみ大きくなる。タプタプ柔らかなお尻とショーツの下を、縮んでいく僕の体は滑っていく。そして股間や肌をミカゲのお尻はくすぐって、その度に僕を切なくさせた。
 叫ぶと僕の声がお股を震わせて、それが気持ちいいのか僕をそこに擦りつけたり少しじんわり湿らせたりする。するとどんどんスカートの中に香りが濃くこもっていくものだから、僕はそのフェロモンに酔ってしまってもう目の焦点が合わない。でもどっしり重いお尻で動けないものだから、生殺し以外の何者でもなかった。
 相変わらずミカゲのお尻は気持ちよくて、柔らかくて、なおかつ僕だけの牢獄だった。怖くて苦しくて泣きそうだけど、ちゃんと叱ってくれるのが嬉しくもある。愛おしくて、なんだか太ももにキスしたい気分だ。太ももでは、ガーターベルトで引っ張られた黒いサイハイソックスが、薄暗いなかで光沢を放っていた。黒いショーツとストッキング、それに、白い肌。これらを延々と見せつけられて動けないのだから、ご褒美のようだけどオシオキなのは間違いなかった。
「ボクにはクロがどんどん縮んでいってるのがよくわかるよ。怖くて泣きたくて、でも気持ちよくて。どうすればいいのかわからないんだろう? ふふ、存分に反省することだね。ボクのペットであることを叩き込んであげるよ。どんな気持ちだい? 恥ずかしいよね。重いよね。そして嬉しい。そうだろう? キミはどうしようもないワンコだからね。当然だ。ボク達がそうしたんだもの。キミは全部ボク達のものだ。心も体も全部が全部。なにもわからないことはないよ。キミにとっては最高のご褒美だね? さ、ずっとボクのお尻に怒られ続けるがいいよ!」
 そして少し腰を浮かせると、どしんとお尻を落下させた。ぶるっとお尻が震える。僕が歓声とも悲鳴ともつかない声を上げる。
 もう気の遠くなるような時間、僕はそうされていた。
 その間僕の心はミカゲで占領されていて、肌のキメを一つ一つ目でなぞって、少し透けて見えるミカゲの巨体を待ち遠しく見上げた。この肌の中に溶けて一緒になりたかった。こんなに密着しているのが嬉しくて仕方ないのに、同時に切ない。だんだん僕の体はミカゲのショーツの中に飲み込まれていく。それがどんどん僕の気持ちを浮き上がらせる。繊維の一本一本に頬ずりしたいほど。全身で感じるミカゲは、とてつもなく重くて、とてつもなく暖かくて、宇宙より大きかった。
「あ、これ以上はお尻で踏み潰してしまうかな?」
 ミカゲはスカートをぴらりとめくると、やっと僕を指で引き抜いてくれた。悶々として恍惚として、ヘロヘロになりながらもどこか満ち足りた僕を、まじまじと見つめる。
「あー、お仕置きにならなかったかな。本当にクロはどうしようもない子だ。仕方ないね。……もう一度閉じ込めてあげよう」
 太ももに手を添える。そして少しサイハイストッキングの口を開くと、人差し指大の僕をねじ込んだ。
「アハハッ! 変な格好で貼り付けられてるの丸見えだよ?」
 僕はどんどんストッキングの中をずり落ちて、太ももの周りをくるりと回っていく。そして、裏腿にくっつく虫になっていた。
「ふふ、頑張ってね!」
 ミカゲは腿を持ち上げると、脚を組んだ。僕の真下に広がる光沢ある太ももがみるみる迫って、上下で僕を挟みこむ。黒ストにサンドされてしまった。
「む、もがいてるね? まるで虫みたいだ。でも出られないよ? キミは今僕の太ももの中だ。絶対に逃がさないし、出してあげない。ふふ、せいぜい絶望するがいいよ。ボクがゆっくり本を読む間、キミはボクのストッキングに囚われ続けるんだからね!」
 ミカゲが嘲笑して、もじもじと僕を太ももに練り込む。巨大な太ももは、お餅みたいな柔らかさで僕にのしかかった。ぴっちり張り付いて、なにも見えない。
 小さくなった体には、太ももはお尻と同じくらい重かった。そして、もっともっと柔らかい。フニフニムチムチの太ももは僕を完全に閉じ込めて、さっきと違い空気さえ薄いのだ。そしてわずかな空気も、ストッキングの生地によってたっぷりミカゲの香りを含みこみ、媚薬のように鼻の中に広がった。
 柔らかい分さっきよりは動く余地があった。重い。暗い。苦しい。そして、気持ち良い。絶望的な気持ちと嬉しい気持ちがないまぜになって、僕はおかしくなりそうだ。太ももの間でもがき苦しんでるのが、きっとミカゲには筒抜けだろう。そう思うと恥ずかしいとともにとても気分が高揚した。
 独特なストッキングの手触りと、極上のミカゲの柔肌が全身をパックする。湿気の逃げ場のないストッキングの中は、ミカゲの蒸気で蒸れ蒸れで、僕の肌にミカゲの層が出来る。
 僕がみっともなく動くたび、ミカゲの肌に苛まれた。快感に貫かれるのだ。僕は自分で自分の首をしめてしまう。するともっとミカゲが欲しくなる。僕を押しつぶすのは、ミカゲほ太もも。大地もまたミカゲの太もも。ストッキングに包まれた締まった脚。どこを見てもミカゲだらけで、僕はどうしたら良いかわからなかった。
 その気持ちを発散させようと、肌に額や頬、全身を寄せる。ミカゲは本に夢中で、そんな虫けらのことなど気づいてすらいない。息が荒くなって、酸素が足りなくなり、それが僕を変にした。何度も何度もずりずり肌に身を擦り付ける。
 そして頭が真っ白になって、ほんの少しだけ、ミカゲの肌を汚してしまった。
 綺麗にしなきゃ、と思ったのもつかの間、ミカゲがもじっと身じろぎすると、それは跡形もなくすべて拭い去られてしまう。僕の微量の体液など、その肌を汚すことも叶わないのだ。そして、夜のお風呂で全てがなくなってしまうだろう。申し訳なく思いながらも、どんどん縮んでいく体で僕はミカゲの肌を進んで行った。
 僕の体はちっちゃくなり、その分肌の滑りで動くことができるようになっていった。肌のもちもちした厚みが、僕の体より厚くなったのだろう。
(出れた!)
 太ももの領域から抜けて、僕は歓喜した。けれど、なぜか狭くなっていく。そしてそこが膝の裏、ひかがみだと気付いて初めて、自分が逆方向に進んでいることに気づいた。
(このままじゃ落ちちゃう……!)
 そう気付いた時にはもう遅い。既に体はひかがみの中へと飲み込まれ始めていた。
 薄い皮膚と湿り気を帯びた独特の感触へと、体が引き摺り込まれていく。その先にはふくらはぎの丸みが控えている。そこへ行ってしまえば、もう戻ることは出来ない。
 僕はストッキングの生地に手をかけて、なんとかそこを登ろうとした。でも、生地は伸縮性が高すぎて全く登れない。むしろ、布地が伸びて僕をずり下ろしてしまった。
 ミカゲの丸い膝に当たる。そしてそのままするすると滑り降りると、ふくらはぎの膨らみでギュウギュウにタイツに押し付けられた。その膨らみをなぞるように、するすると落ちていく。そしてアキレス腱を通り、足裏の方へと僕の体は止まらない。
「ひゃっ?!」
 敏感な肌に突然異物が舞い込んで、思わずミカゲは飛び上がった。そして、足裏に押しつぶされている僕を見つける。
「……こんなところでなにをしてるんだい?」
「えっと、……えへへ」
「笑ってごましかしてもダメだよ」
 そしてストッキングを少し引っ張ると、指先に僕を滑り込ませてしまう。
 僕はつま先のてっぺんで、ストッキングの中からミカゲを見上げる。蔑むような面白がるようなミカゲの目が、僕を射抜いていた。
「そんなにボクの足が好きなのかい? クロのヘンタイッ」
「違うの、落ちちゃって……。わざとじゃないよ!」
「でも、クロの体は嬉しそうだよ?」
 慌ててそこを押さえると、たしかにミカゲの言う通りだ。僕の子供なそこは、好きな人の特殊な領域に好奇心を抑えきれないでいた。
「ハア、悪い子だね、勝手に僕の足を堪能するなんて。でも寛容なボクは許してあげる。そのかわり……」
 ストンと、足をスリッパの中に下ろす。
「今日はずっとそこにいると良いよ」
 クスクス笑って宣言した。
「クロはボクに踏まれるのが嬉しいんだろう? 嬉しくて嬉しくてどうかなりそうなんだろう? ペットに慕われるのは悪い気はしないからね、遊んであげるよ。干からびるまでね!」
 ゆっくりスリッパの中で足を前後し始める。もちろん、中の小人は大混乱だ。
「わああっ! ミカゲさま! やめて、頭おかしくなっちゃうよ!」
 もうそれは天変地異のようだった。
 ミカゲの履いていたルームシューズにはミカゲの香り、僕を踏みつける巨大な素足は全身を刺激して、ストッキングがグニグニと肌触りよく僕をこする。ミカゲの親指と人差し指の間に体は挟まれて、ズリズリあそこをこすりつけられるのだ。足裏のどっしりずっしりした重みはわずかな湿り気で肌に吸い付き、気持ち良さはすぐに僕をおかしくさせる。
 ストッキングの中の裸足は、グリグリ左右に踏みにじったり、前後に動かしたり、グネグネと足指を蠢かしたりして僕を翻弄した。ほっそりと綺麗なミカゲの素足は柔らかくて、ビロードの繊維のように繊細な刺激を僕にくれる。僕は抱えきれない人差し指に抱きついてなんとかやり過ごそうとするけど、止まらないミカゲの足には敵いっこない。すぐに僕は無理やり白いものを出してしまう。
(と、止まんない……!)
 けれどミカゲは許してくれなかった。まだまだ足は動き続ける。無造作に足を振り続けて、まだ射精したばかりの陰部に無理やり快感を叩き込む。
 ミカゲの足裏というだけで僕はエッチな気分になってしまうのだ。その上足指に挟まれて、ストッキングの中に押し込められて、スリッパを履かれ、踏み潰されながら足裏で擦り付けられ続ける。気持ちよくないはずがなかった。
 僕は涙を流しながらミカゲの足指にかじりついて、そのまま強制的に射精させられ続ける。もちろんまだまだミカゲの巨大な素足は止まらない。まだ。まだダメ。そんな風に僕を叱り続ける。
 僕は何度も何度もミカゲの足裏に搾り取られた。もう意識は朦朧で、何も出ない。なのにそのままミカゲは僕を踏みにじり続け、失神寸前のところでやっとその責め苦を止めた。
「ふう、お陰でいい暇つぶしになったよ」
 そんなことを言ってのける。
 そして僕を閉じ込めたまま立ち上がり、ハイヒールに足を通した。
 絶望感に満ちた腕で、ミカゲの足指を叩く。
「言ったろう? 今日はずっとそこだって。ふふふ、後でムギたちにたくさんからかってもらおうね。そしてみんなにイジメてもらうんだ。まだまだ夜はこれからだよ。ね、クロ?」
 そう言って、自室を後にしたのだった。