本記事はファンティア向け作品「少女は女神の階段をのぼる」前編のサンプルです。
巨人種にトラウマのある中学生の主人公と、実は巨人種だった幼馴染のお話。急激に体格差が拡大していくうちにだんだん相手を巨人/小人としてしか認識できなくなっていくことへの不安や恐怖、どうしても相手を性的に感じてしまう巨人種/小人種の習性に翻弄される過程を書きました。

 前編の内容としては
・(3倍)体格差でのキス、キス責め
・(3倍差)巨人種フェロモンで止まらなくなってしまった幼馴染の母乳を強制的に飲まされるシチュ
となっております。

今回の投稿は全体のサンプルが含まれるため有料部分が少ない(サンプル10000字程度に対して5000字程度)点にはご注意ください。
後編では5→10倍急成長体格差セックスや30倍での女体探索、100倍シチュなどを考えています。
一心同体だと思っていた相手と急激に変わっていってしまう葛藤を書いてみました。心理描写も濃い目にしてみたので、巨人種巨乳中学生とのサイズフェチ生活にドキドキしたい方は是非(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆


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§

 夏、公園、蝉しぐれ。

 眺めていた入道雲が、不意に見えなくなった。

「だーれだっ♪」
 小さな手に目を覆われて、けれど僕は慌てない。
 こんなことをするイタズラ娘、ひとりしかいないもの。

「沙希でしょ。少しは隠す気ないの?」
「えへへっ、当たり♪」
 目を覆う細い指先、そのとばりが下りる。
「ちょっと声音変えたんだけどな~」
 そういってぴょこんっと僕の目の前に現れる黒髪の美少女。肩元で揺れる髪も艶やかに、眼は人懐っこい光を浮かべて。僕の幼馴染は、悔しいけど今日も可愛い。
「気づかない方がよかったわけ?」
「まあ気づかなかったら怒るけど」
「地雷じゃん……」
「ふふっ、可愛ければそれでよし!」
 茶化すように言ってボブカット少女が胸を張る。そうすれば、誇らしげな態度とともにふるんっと揺れる沙希の巨乳。僕は慌てて目を逸らす。見慣れたはずの姿、けれど中学生になってから急激に育ち始めた少女の体は、無経験な僕には刺激が強すぎた。
 幼馴染相手に何を考えているんだと頭を振る。それでも頭の隅で、“Fはあるよな”とか考えてしまって。
「どうしたの?」
 結果、沙希に怪訝な顔をされることになるのだった。
「いや、ちょっと暑いなって」
「ラムネ飲む?」
「……飲む」
 渡された飲みかけの瓶に口をつけ軽く呷る。意識した後だから少し恥ずかしいけれど、敢えて気にしないことにした。沙希の体温にぬくもった液体を喉に流し込めば、カランっと夏めくビー玉の音。見上げた夕陽が、なんだかノスタルジックで。

 ずっとこういう日が続いたらいいなと、
 そう思った、視線の先。

 遠く、何かとてつもなく巨大なものが歩いていた。

「……巨人種だ」
 それは、途方もなく大きな人影。
 女性だろうか、長い髪。街を隔てる壁さえ腰元に収め、女神のように君臨している。

 それは、僕らとは向こう側にいる存在の姿だった。
「……新しくビルが建つから、手伝いに来たんだよきっと」
「わかってる。別に珍しくもないし」
 けれど僕は、そこから目を離せずにいた。

「優……?」
 僕は、どうしようもない気持ちでその姿を見上げていた。
 何十メートルあるのだろう。
 どのくらい力があるのだろう。
 それは想像を絶するほどに強大で崇高な立ち姿。とてもじゃないが、同じ人間だと思えない。
 ……見ていると、ジャリっと、砂を噛んだような心地がしてくるくらいに。

 ジッと、遠くのその姿を見上げる僕。突然の沈黙に沙希は、気づかわしげな視線を僕へ向けた。
「……まだ、怖い?」
「……怖いっていうな」
「でも、おうち踏みつぶされちゃったんだよ?」
「もう昔のことだって」
「でも、手、震えてるよ?」
 ハッとして僕は自分の手を握りしめる。
 馬鹿な。もう物心もつかない昔のこと。けれど、いや、だからこそ、刻み込まれた恐怖心はままならないようだった。
 幸い、誰も怪我することはなかったあの事故。平謝りしてすべて直してももらった。土下座もしてくれた。多分優しい人だったのだと思う。けれど、謝るその体の巨大さだけが目に染みついて。
 今またその足を振り下ろされたらどうなるんだろう? そんなことばかり考えていたのを覚えている。

 僕も馬鹿じゃない。怖いものを怖いと認めなきゃいけないことはわかってる。けれど、どうしたらいいかわからないのも本当だった。

「……」
 何を言うべきか迷った沙希は、ただ僕の手を握ってくれた。

 小さく柔らかなその手。その中で、そっと緊張がほぐれた気がした。

「かえろっか」
 立ち上がり、そういう沙希。
「うん」
 僕もそれに続き、公園を出た。
 それは、僕たちのある夏の日。

 だったのだけれど。


 ──しばらくして沙希は、唐突に僕の前から姿を消した。


 ⁂
 沙希のいない日は味気なかった。

 どこに行ったのかも知らない。何でいなくなったのかもわからない。もしかして嫌われたんだろうかと何度も疑った。けれど心当たりはない。いや、こういう場合はたいがい僕の方がわるいんだろうけど、それにしても思い当たる節はなかった。

 散々沙希のことを考える日々。
 次第に、そのモヤモヤも形を帯びてきて。
「なんなんだよ沙希のやつ……」
 ベッドの中にうずくまり、ただそんなことを呟く始末だった。

 だから、沙希から呼び出しがあった時。

 まさに僕は、欣喜雀躍として公園に走っていった。

「だーれだ」
 いつものように、目隠しして僕をからかう沙希。
 けれど今日は、あまり元気がない。
「沙希でしょ。それより今までどこに……」
「ダメッ! まだこっち向かないで!」
 小さく叫んで、ぎゅっと僕の顔を包み込む沙希の手のひら。その強い力に思わず驚く。緊張のせいか少し冷たい女の子の手。震えてさえいる。
 何か、嫌な予感がした。

 しばらく続く、気まずい沈黙。

 たっぷり100秒は数えた、その後。

「…………ごめん」
 沙希は唐突に、小さくつぶやいた。
「私、優にずっと嘘ついてた」
「……どういうこと?」
 そして小さく息を吸い込むと。

「私、優と一緒じゃない」
 小さく、そう言った。

「……え?」
「見て。私のこと。……見て」
 彼女が手を離すと同時に、弾かれたように後ろを振り返れば。

 目の前にあったのは、二本の丸く柔らかいもの。
 眩いばかりの肌色が、視線の中で揺れていて。

 ようやく気づく。
 それが、少女の太ももだって。
 そこから視線を登らせていけば……。

「どうしよう優、私、おっきくなっちゃった……」
 泣き出しそうな沙希が、僕を見下ろしていたのだ。けれど、あまりのローアングルで見えるのはわずかに目元だけ。前に張り出す膨らみに隠れて、顔が見えないのだ。夕陽を背負い、その姿さえ逆光でよく見えない。まるで、女神様にでもなったみたいだった。

「どういうことなの沙希!? どうして急に……」
「……隠しててごめん。私、でも、ずっと言えなくて。……優が巨人種のこと怖がってること知ってたから」
「ま、待って!? 巨人種?! それってどういう……」
 いや、どうもこうもない。目の前の事実が全て。けれど、一気にいろんなことが襲ってきて、頭の整理がとてもじゃないが追いつかなかった。
 沙希が巨人種? ずっと黙ってた? 僕の家を踏みつぶした、あの人と同じ存在だって?? そんなこと、すぐに信じられるはずがない!
「ねえ、優」
 そう言いながら、しゃがみ込む巨大な人影。ようやくまみえたその顔は、確かに長年連れ添った女の子の顔で。そして、巨大な体を折りたたみ、優しく嚙み含めるように言うのだ。
「大きな私のこと、受け入れてくれる?」
 潤んだ目は、確かに僕を求めていた。ずっと不安だったに違いない。眠れない日もあったかもしれない。刻み込まれた恐怖に巨人種を拒絶する僕が、巨人種である自分をどう思うか不安で不安で。

 本来、採るべき立場は一つだったはず。
 その大きな体を抱き締め、問題ないと言うべきだったはず。

 けれど、僕は。
「ゆ、優!?」

 混乱のあまり、後ずさりすると。

 何も言わず、その場を逃げ出してしまった。

 受け入れられない現実から目を逸らして。

 そのまま、公園に巨人種娘を置いて行ってしまったのだ。


 ⁂
 しばらくして僕は、沙希に電話をかけた。
 けれどそれはどうも相手も同じだったらしく、何度かけても電話中。ようやくつながるまで、都合5回はかけ直す羽目になった。
 そのおかげかどうか。やっと聞こえた声に思わず安堵して。
「公園で待ってて」
 そう言うと僕は、いつもの場所に駆けていったのだった。

「沙希!? よかった、この前は僕……」
 息せき切って駆け込んだ公園に、一人たたずむスラリと高い少女の姿。その足元に駆け寄って、僕はけれど次の言葉が出てこなかった。

 前より、大きくなってないか?

 会ったのはつい二、三日前、けれど2倍あった身長は既に3倍にも達していて、僕はその膝と背比べだ。
 一方の沙希も、同じことを思ったらしい。
 スカートの陰に隠れてしまいそうな幼馴染の小ささに衝撃を受けたように目を丸くして、けれどそれを隠すように目をつむった。
「……もう、“だーれだ”ってさせてよ」
 むくれたように笑う沙希。もう、僕の顔ごと覆えてしまう手を小さく振って、ひさしぶり、とだけ囁く。

「ごめん、この前のことは……」
「いいの。混乱したの、私も一緒だから」
 僕はまごまごして俯きながら、沙希の大きな足と自分の足を見比べる。サンダルを履いたそれは綺麗で、女の子っぽくて、けれど僕の胴くらいもあって。
 ……少し、あの日降ってきた足を思い出させる。
 そんな視線に気づいたのか、サッと足を引いて沙希は一言。
「すわろっか」
 そう言ってベンチに腰を下ろした。小人用のベンチを半ば占領するお尻の横にちょこんと腰を下ろし、リスにでもなった気分だ。

「どうしたの?」
「ううん。……服、どうしてるのかなって」
「ああ、これ、借りたの」
「借りる?」
「みんなすぐ大きくなるでしょ? だからレンタルとかおさがりとかたくさんもらって、次の子に渡すんだ。だからほら、ブカブカでしょ?」
 そう言って裾を引っ張って見せる沙希。不意に生脚を見せてくるものだから心臓に悪い。
 おまけに、漂ってくるのはどこか複雑な服の香り。
 いろんな女子の良い香りが染みついた、服の香りだった。それが、なんだか沙希が知らない人みたいに感じさせて僕をソワソワさせるのだ。
「う、うん、……似合ってるよ」
「ん、ありがと」
 そう言ったっきり、口をつぐんでしまう沙希。

 木陰に、温い風が通る。
 煮え立つような蝉の声に、汗が頬を伝った。

 そして、しばらくして。
「私ね、引っ越しするの」
 やおら、とんでもないことを言い出すのだ。
「えっ!?」
「体がどんどん大きくなるから、それに合わせた家に行かなきゃいけないんだって」
「そ、そうなんだ」
 狼狽えつつも、そういう他にしようがない。だって既にこの大きさなのだ。公園の木々を追い抜きそうなその身長は、とてもじゃないが小人の街では暮らせそうもない。今だって、どうやって暮らしているか分からないくらいだ。

 それでね、と沙希はつづけた。
「小人の友達、1人なら連れて行っていいって言われたの」
「小人って……」

 けれど沙希は構わず、不意によそを向くと。
「……一緒に行かない?」
 沙希は、ぶっきらぼうにそう言った。

 僕は何も言えなかった。

「……そう」
 一瞬、表情に影を落とした沙希。
 それから、立ち去ろうと腰を上げた時。
「……ん」
 自分の太ももにしがみつく、小人の腕に気づいた。
「……何ひとりで行こうとしてんのさ」

 何も言わずに沙希はしゃがみ込むと。
「……ありがと」
 ギュウッと僕を抱きしめてくれた。
 もうスイカのような柔らかおっぱい。その深みに埋もれさすように深く抱き込んで。
 そっと、僕の頭を撫でてくれたのだ。



§
「朝だよ、沙希。起きて」
「んん……、やだ、もう少し……」
「沙ぁ希っ!」
 幼馴染とのドキドキの同居生活。
 それは、何とも色気のない低血圧少女との格闘から始まった。
「起きてよ沙希!! 起きてくれないと何にもできないんだって!!」
 かれこれもう15分は起こしにかかっている。けれどこんもりとした山は、モゾモゾ動くだけで起きる様子もない。その上に跨ってゆさゆさ揺するけれど、少女の大きさを感じるだけ。うんともすんとも言わないのだ。
 沙希の奴、相変わらず寝起きの悪さだけは誰にも負けない。それでもしつこくしつこく僕は沙希を呼ぶ。起きてもらわないと、僕一人じゃ食事すらおぼつかないからだ。

 再三上がる叫び声。けれど沙希は、起きる気配も見せず。
「うるさいなぁ……」
 恨めしげに、布団から目だけこちらに覗かせると。
「沙希っ!?」
 やおら、僕に腕を伸ばした。突然二本の長い腕に絡みつかれ、3倍少女の体に引きずり込まれていく僕の体。そしてすっぽりその腕の中に収められてしまうと、黙れと言わんばかりに胸に押し付けられてしまう。
「これなら、喋れまい……」
 うつらうつらしつつ、フフフと笑って見せる巨大美少女。
 当然だ。
 “むっぎゅうう……♡”と抱き締められる、巨乳少女の胸は柔らかくて。
 暖かくて。
 おっきくて。
 少し寝汗でしっとりした肌が、僕をドキドキさせる。幼馴染じゃなかったら、どうかなっていたかもしれない。だって相手は、抱えきれないほどおっきな乳房が2つ。それが“たぷんっ♡”と僕を受け止め形を変えると、柔く柔く体を包み込むのだ。
 ダメだって沙希。
 これ。
 興奮しちゃう……!!
「沙希、出して、離してよぉ!!」
「やだ……、もう、ちょっと……」
「沙希ぃ……!!」

 それから。

 たっぷり、1時間はまどろみ少女のバストと付き合わされることになった、その後。

 僕は、真っ赤になった沙希を見ることになる。
「ご、ごめん……」
 沙希のレア顔を見れただけで、僕は満足だった。
「あの……、忘れて、お願い……」
 悪いけど、それは無理だろう。

 俯く沙希を見上げながら、僕はその胸元の感触を思い出してしまう。沙希は慌てて胸元を隠すけど、腕で押さえつけるせいでかえって柔らかさが強調されるばかりだった。
「バカっ! 優のエロ! そんなに変なこと考えるんだったらご飯あげないよ!?」
「胸に押し付けたのは沙希の方じゃないか」
「ぐっ……!」
 わなわなと唇を波打たせ、言葉を探る沙希。
 それからプイっと横を向いてしまうと。
「……バカ」
 捨て台詞のように、そう言った。


 実際のところ、僕らの共同生活は万事こんな調子だった。
 プレハブのような素っ気ない部屋には、布団と少しの家具と僕らだけ。二人っきりでいれば気まずくなりそうなものだが、もう物心ついた頃から一緒にいるのだ。腐れ縁の関係は同居しただけではそう変わるものでもなく、つつがなく、そう、つつがなく進行していった。

 沙希が、巨大になったこと以外は。

「見て見て、フリフリスカートだよ~♪」
 どんどん大きくなっていく体。それに合わせ部屋には様々なサイズの服が用意してあった。そして手慰みにそれを漁っては、感想を僕に求めてくるのだ。
「ちょっとあざとすぎない?」
「こういの好きなくせに♪」
 いろんな服を着られて沙希は楽しそうだった。それだけは、この部屋に来て良かったことかもしれない。
「どう? どう? 可愛い?」
 普段着ない服を身にまとい、上機嫌に沙希は感想をねだる。そんなの決まってる。いつもより大人っぽかったり子供っぽかったりする少女の姿は、いろんな相貌を見せてくれて。
 けれど、僕はどう言ったらいいか分からなかった。
「……うん。かわいい、と思うよ」
「煮え切らないなぁ。もうちょっと素直にほめてよ!」
 ムゥと頬を膨らませ屈みこむ沙希。ゆさっと大きな胸が垂れ揺れて、思わずドキリとしてしまう。
 
 けれど何より僕を当惑させたのは、ふわりと漂ってくるその香り。
 いろんな女の子の香りが混ざり合った、服の香りだった。
「……なんていうか、いろんな人の匂いがするね」
「そう? まあレンタルだしね」
 ベッドに腰掛け、足元の僕に小首を傾げてみせる沙希。見上げるその姿はちょっと大人びていて、下から見上げる構図も相まって思わず胸をドキリとさせる。
「……沙希、脚、見えてる」
「あ~、優照れてるんだ♪」
 そう言って、からかうように僕の前へ素足を伸ばしてくる沙希。そしてツンツンと小突いては、その力強さで僕を驚かせる。巨人種の足。綺麗な素足。それにツツツと脛をなぞりあげられ、思わず続々と背筋が粟立つ。
「ふふっ、お姉さんの脚にドキドキしちゃうんだ? 優ってば、ヘンタイ♪」
「ばっ、誰が……、ちょ、ちょっと、持ち上げないでよ!!」
「ふふっ、やだよ~♪」
 グンっと持ち上げられて膝の上、沙希がむちむちの太ももに乗せてくれる。柔らかく、暖かい沙希の太もも。
「ほ~ら、女の子の匂いだよ~♪ ふふっ、もしかして優って“匂いフェチ”?」
 そう言ってギュウッと抱き締められれば、柔らかなその肉体に埋もれていく甘い感覚。おっきな女の子の服と体に包まれる感じが生々しくて。
 なんだかゾクゾクする。
「沙希、ちょっと、苦しい……」
「ふふっ、照れてる照れてる♡」

 多分、沙希には分からない。
 いろんな女の子の香りをまとった自分の姿が、僕にはどう映るのか。巨大化途上に発散される、女の子たちの成長フェロモン。それをしっかり吸った服の香りは独特で、華やかで、甘やかで、艶やかで、……強く人種と性を感じさせるものだったのだ。
 神々しいまでに巨大化してしまう少女たちの、溢れ出る旺盛なフェロモン。その匂いはどことなくエキゾチックで、小人男子をゾクゾクさせる何かを持っていた。そしてその中に沙希の香りを見つけるたび、沙希がその仲間だと思い知らされる。沙希は僕と違う、巨人種の力を秘めた少女なんだ。もっともっと大きくなって、僕を置いて行っちゃうんだ。そう思うと怖くて、不安で、でも興奮してしまって、ただその体にしがみつくことしかできなくなってしまう。
「……どうしたの?」
「酸欠」
「ふぅん?」
 もう腕を乗せられるだけでずっしり重い少女の体。その中に埋もれるたび僕は、沙希の中に溶けてしまいたくなる。

 そんな僕がおかしいのか。

「服の中、入ってみる?」
 沙希は最後に、茶化したように、けれど少しじっとりした声音で、そう言った。


 ⁂
 小人閑居して云々、というけれど。

 それは巨人でも同じことらしかった。

「がおー、巨人さんだよ~♪」
「何言ってるんだよ沙希……。ちょ、ちょっと、立ち塞がらないでよ!!」
「ふふっ、捕まえた♪」
 僕は、ことあるごとに沙希に可愛がられることとなったのだ。
 妖しげな雰囲気を察して逃げ惑う僕。それを部屋の隅っこに追い詰めると抱き上げ、うりうりと頬ずりしてくる3倍幼馴染。服から誰の香りかもわからない香りを漂わせ、僕をオモチャ扱いしてくる。
 もう、比べ物にならないほど強大な躯体で僕を包み込んで。
「ちょっと、やめ、離してよ沙希!!」
「なら逃げてごらんよ、男子なんでしょ~?」
 幼馴染に抱きしめられて藻掻く、その情けなさったら。つい最近まで僕を見上げていた……のは嘘だけど、同じくらいの背丈だったはずの沙希。それがもう赤ん坊サイズの僕を抱き締めて、非力な抵抗を楽しんでいるのだ。

「……ほらほら、早く逃げないとおっぱいに押しつぶされちゃうよ♪」
 何かを繕うに軽口をたたく、大きな大きな幼馴染。
 そして猫でもかわいがるようにあちこち突くと、息が出来なくなるほどくすぐってくるのだ。
「……ふふふっ、優、弱っち♪」
 ……沙希が、抱き締めた僕の体の大きさをこっそり測っていることには既に気づいていた。手のひら同士を重ねて、その面積差に驚いたり。太ももと僕の体を見比べて、あまりに細い小人の体に瞠目したり。触診する独特の手つきが、僕の体を這う。大きな手が僕を知りたがっている、その感覚が僕をざわつかせた。
 いや、触診するだけならまだ良い。
「沙希っ、ちょっと、離し、て……!」
 もっとも沙希に自分の大きさを実感させたもの。それは、非力な小人との力比べだった。
「……ふふん、女の子の手にも負けちゃうんだね!」
 沙希が、ごまかすように明るく言う。
 じっとりした体温を、僕に絡みつかせながら。
「優、かわいいよ♪」
 そして決まって、わざとらしく僕の頭を撫でるのだ。

 そんな、沙希のおふざけ。

 それが、徐々にエスカレートしていっているのは、退屈のせいなんだろうか。

 毎日僕は、沙希の腕に抱かれて夜を過ごし。

 胸で押しつぶされながら、目を覚ます。

 隣に立つ巨大な生脚に驚かされ、間違ってお尻に座り潰されて。

 全部、わざとだ。
 沙希は、わざと僕の大きさを実感しようとしている。僕を、戸惑わせ、怖がらせ、興奮させようとしている。小さな僕が必死に自分を鎮めようとしているのを見て、ひそかに鼓動を高鳴らせているんだ。

 それは、身長を測っている時も同じこと。
「……551.2㎝」
 毎日僕らは、沙希の身長を測るようにしていた。どんどん大きくなってしまう少女の体、それをせめて数字の中にでも残しておきたかったのだ。そして沙希の肩に立ち高さを測れば、まばらに伸びていく数値が僕を驚かす。次いで、どんどん親友が巨人になっていってしまう寂しさが僕を襲った。
「大きくなる時は一気に増えるから、伸びたって言っても誤差なんだけどね」
 10㎝単位の変化、それも誤差と言い切ってしまう沙希がちょっと怖い。
 僕だって本当は、成長期に入ったはずなのに。

 ねえ知ってる、沙希。僕、もう1㎝も伸びたんだよ。
 気づいてる、沙希。前より筋肉もついたはずなんだ。

 けれど、そんな微小な差異に気づくには沙希はもう大きくなり過ぎていた。
 そして僕は、もう沙希の親友というにはあまりに小さくなりすぎていて。
「ちょ、ちょっと、あんまりマジマジ見上げないでよね……!」
 僕の視線に気づいたのか、恥ずかしそうにスカートを押さえる3倍娘。
 その身長ももう、550㎝を越えつつある。

「……優も測りたいの?」
「え?」
 僕の様子がおかしいことに気付いたのだろうか。沙希がそっと足を下ろし、美脚で僕の隣に立ち並ぶ。それはもう、電柱も同然。滑らかで白い生脚二人に囲まれて、僕は気恥ずかしげに俯くばかり。
 そして、そのまま背比べをすれば。
「……もう、私の膝より低いんだね」
 残酷な体格差を突きつけられるのだ。

「気を付けてね、ホント。踏んじゃったらどうなるかわかんないよ?」
 そんな、表面上は気遣う少女の声音。
 けれど、その底には何かがゾワゾワとなにかがたゆたっていて。
「どうなっちゃうか、な……」
 緊張したように、すこしじっとりと汗を滲ませる少女のおみ脚。
 それが、ソワソワと僕を取り囲むと。

「……いっぺん、試して、みる?」
 そう言って、トンっと、僕を突き倒れさせるたのだ。

「……さ、沙希?」
 突然のことに追いつけず、おみ足に蹴倒されるがままになる僕。
 一方の沙希は、スカートも押さえず僕を足元にひれ伏させるだけ。そして黙ったまま、僕に足を重ねると。
「…………」

 グッ、と、体重をかけたのだ。

 それは、あの人同じ巨大な女性のおみ足。
 その美しくも強大な足裏が、いま、僕を圧し潰し。
 踏み殺そうとしている。
 僕を、沙希が、踏みつぶそうとしてる……!!

 フラッシュバックするのは当然だった。
「……やめて、やめてよ、誰か、助けて、誰か、誰かあああ!!」
 トラウマを刺激され、爆発に叫び喚く僕。

 その声にハッとした沙希は、
「……ごめん」
 ただ一言そう言うと。

 自分を恐れたかのように、その場を去ってしまった。



 ころころと変わっていく沙希の様子。
 “いつもの沙希”がいたと思えば、“巨人種の少女”が現れて。
 自分でも戸惑うくらい、その間を揺れ動く沙希がいた。

「……ごめん」
 謝ることが多くなった沙希。いつもきまって、どう僕を見たらいいかわからないといった様子で目を伏せ、気まずげにそうこぼすのだ。
「だめ」
「え?」
「ダメダメ、今度のは始末書ものだよ? ほら、謝った謝った」
 笑い飛ばす以外に、どうしろって言うんだろう? 蓄積する気まずさは、無かったことにすればするほど膨れ上がってしまうもの。出来るのはただ、ペシペシとその脚を叩いてやることくらいだ。
「で、でも私……」
「……これ以上謝ったら本気で怒るよ」
 恐怖はあった。けれど、そんな沙希が見ていられなくもあって。
 ……小人の役割が何か、少しずつ分かって気がする。
「まあさ、沙希も気疲れしただろうから」
 そして、全てをごまかすように。
「今日は寝よっか」
 そう言うのがオチだった。
「……うん」
 そう、睡眠だけは互いに平等だ。同じベッドで身を寄せ合って眠る。そして一緒に起きれば、何か全て救われる気がした。

 寝支度に入る沙希。最近は、僕に構わず服を脱ぎ始めるようになった。慌てて背中を向ければ、巨大娘の衣擦れの音と生々しい気配で僕をからかって。
 最後に。
「おいで、優」
「ん」
 パジャマ姿の沙希は寝そべって、僕に腕を広げるのだ。
 その胸に滑り込んでから僕は、抱き枕扱いが当たり前になっていることに気づく。……まるで、ペットみたいだ。

「おやすみ、優」
「おやすみ、沙希」
 そして電機が落とされれば、どこまでも続くような巨大娘の体。全貌が見えない少女の体に包まれるたび僕は、沙希の体がどこまでも広がっていってるような錯覚に陥るのだ。今、大きくなってるんじゃないか。そんな不安さえ催す始末。そして夜陰の中辺りを探れば、幼馴染の顔は大きくも安らかに眠り、僕を安心させた。

 ただ、それからが長いのだが。

(……暑くて、眠れん)
 パジャマ越しに乳房に包まれて、僕は汗をぬぐいながら呻く。
 沙希の胸の中は、寝苦しいなんてものではなかったのだ。
 だって、伝わってくるのは36.7度の少女の体温と、550㎝もの大きな体の弾力、そして、重量感。巨人種少女の香りは日に日に香りを強く、甘くしていく。何より、おっきな乳房が僕にのしかかってきて。
 女の子の胸の中って、想像以上に過酷だ。熱くて、重くて、柔くて、気持ちよくて。そんな肉感に全身を包まれ、半ば理性が蒸発したころに気絶同然の睡眠を貪る毎日だった。

 けれど、今日は僕ばかりじゃないらしい。

「……沙希、起きてるでしょ」
「…………起きてない」
「斬新な寝言だね」
 沙希の心臓の音を誰より聞いているのは、僕なのだ。少し早いその鼓動に包まれれば、沙希がどんな状態かなんて手に取るようにわかってしまう。
「昼のこと、まだ後悔してるの?」
「そうじゃない」
「……じゃあ、何考えてたのさ」
 沙希はすぐには答えなかった。
 そして、しばらく経ってから小さく息を吸って。
「どこまでおっきくなっちゃうのかなって」
 一息に、そう言った。
「……」
「黙んないでよ」
「なんて言って欲しいの?」
「愛の言葉が欲しい」
 まだ冗談口を叩く余裕はあるらしい。僕は少しホッとして、でも、何と言えばいいのかは分からないままだ。
「……どうなっても僕は沙希を支えるよ」
 乳房に埋もれて悶々と眠れもしない僕が、何を言ってるんだろう。対する沙希は短く「ありがと」とだけ言って、重い吐息を一つ。
「時々思うの。もう、優の顔もよく見えなくなっちゃったらどうしようって」
「……」
 僕は何も言えず、沙希の顔を見上げることしかできない。僕だって既に、沙希の全身を見ることは難しくなっていた。このまま、部分ごとにしか沙希を認識できなくなるかもしれない。いや、きっとそうだ。そうなったとき、何が失われてしまうんだろう?
「……寂しくはさせないよ。絶対に」
「期待してる」
 けれど、沙希はなにか別のところに目を向けているようだった。
 大きさを手に覚えさせるように、僕の頭を撫でる沙希。そのたび乳房が波打つように揺れ、僕を翻弄する。

 そんな手が、ピタリと止まった。

「……ねえ、優」
「なに?」
 小さく、耳元でささやく少女の唇。
 それが、キュッと一度引き締まると。

「……エッチしよっか」
 ポソリと、そうつぶやいたのだ。

「えっ!?」
「……うそうそ♪ なーに本気にしてんの、優のばーか♪」
 ごまかすようにワシャワシャと僕をくすぐり悶えさせる沙希。そして酸欠になるまで僕を無理やり笑わせて、何もできなくさせてしまう。
「私、もうこんなにおっきいんだよ? 優とエッチできるわけないじゃん……」
 そう言って、何とも言えない表情で僕を見下ろす巨人種娘。

 負けたら、ダメだ。

 僕は乳房から身を抜き出すと、沙希の顔に覆いかぶさり。
「……沙希の欲求不満。これで我慢して」
 無理やり、その唇を奪ってやった。
「……!」
 一瞬、目を丸くした沙希。
 そして、体格差に苦戦しながらも自分の唇に顔をうずめる僕に気づく。沙希にとっては僕の頭もスモモ程度、もう少しで丸呑みにできてしまうような大きさだ。そんな小人が自分の大きな唇に唇を重ねている。
 とくんっと、沙希の心臓が鳴った。
「……ん」
 少女の柔らかな唇、それが僕を受け止め、柔く僕を包み込む。本来触れてはならない少女のリップ、そこに顔をうずめているのだ。もっちりとした下唇、ぷるぷるとした上唇。その柔らかさに心を奪われ、頭がふわぁっと軽くなる。
「……優のばか」
 そう言いながらも、チュッと軽い音を立てて僕に吸い付く沙希。そのままチュッチュッと音を重ね、僕をついばんでいく。柔らかな沙希のキスに、僕は溺れるばかりだ。
 そして、再び深くキスを交わすと。
「……ん♡」
 控えめに、チロッと出された舌先。それに吸いつけば、沙希は僕を慈しむように頭を撫でてくれた、

のも束の間。

「もっと、いい、よね?」