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引き続き,ポール・アハーン博士がレコーダーに吹き込んだ研究日誌を書き起こす.

2011/11/17

ついにジェスが7フィートに達した.正確には,212.8cmであった.
ジェス自身はとうに,自分の大きさを受け入れているように思える.
私は,ジェスの背の高さ,およびその美しさに日々目を奪われている.

サンクスギビングデーが近づいてきた,私達が交際を初めて,最初のサンクスギビングである.
ジェスの食欲はさらに程度を増している.私は,自分の貯金がジェスの食費に消えないことを祈らずにはいられなかった.

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2011/11/19

ジェスは少し前,スーパーに行ってターキーを2匹買ったらしい.私はそれを聞いた時,かなり驚いた.
ジェスの家族がこちらに向かっているようで,ジェスはオーブンと電子レンジを忙しく使い,料理している.
また,私の母と妹もすでに招待したようだ.
私は以前,ジェスと家族の面会を延長したことがあった.それは,誰も,ジェスのことを1ミリも知らないからだ.
ジェスの成長は,1日に8-9mmであり,その値は,日々増加しているのだ.

ジェスは自分の家族に,この異常な成長についてどのように説明する気なのだろうか?

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2011/11/24

ついに,サンクスギビング・ディナーである.どうなることやら.私はハラハラしながら,家族の到着を待った.
今日のジェスの身長は229.9cm,この長身を目の前にすれば,誰しもが驚くだろう.しかもそれが身内であれば,いったいどうなるだろうか.
ジェスは前もって家族に,自分の現在の状況について説明はしていた,しかし彼らは,それを完全に理解し,心の準備を万端にしていたわけではなかった.

私の母と妹は,ジェスを見てもそこまで驚きはしなかった.2人は,ジェスがウィルスに感染する前の身長を知らないのだからであろう.
初めてジェスを目の前にした時,私の母は一瞬目を見開いたが,次の瞬間には笑顔で振舞っていた.
妹のリサも,ジェスを一目見るなり,私にこう言った.
「背が高いのは聞いていたけど,こんなにキレイな人なんて,聞いてなかったわよ!」

ジェスの母は,ジェスに食べ過ぎであると注意していた.
事実,私達がターキーを2つも買った理由は,ジェスが1体のほとんどを食べてしまうからである.
そしてジェスがターキーを丸まる食べている間の食卓は,雰囲気が悪かった.

夕食が終わると,その不穏な空気はついに爆発した.
まず,ジェスの父が,ジェスのあまりに変わり果てた容姿に怒りだした.
ヒステリックに叫びながら,ラボを訴えてやると言い始めた.
ジェスは父を落ち着かせ,ウィルスに感染したのは紛れもない自分の責任であることを説明し,ラボを訴えることは不適当だと言った.

父の興奮がある程度収まった後,ジェスはゆっくりと彼のもとに近づき,自分の父親の襟を掴んで持ち上げた.
「もう落ち着いてよ!」
ジェスはそう言ったが,父は相変わらずじたばたと,まるで赤ん坊のように暴れていた.
それを見たジェスは,父を膝の上に乗せ,尻をペシッと叩いた.
その瞬間父は唖然とし,それまでの興奮がピタリとやんだ.

その後,変な空気が流れたが,とにかく場は収まった.
ジェスの家族は直ぐに帰って行き,残された私達と,私の母,妹で部屋の片付けを始め,ジェスと共に時間を過ごした.

私の母が電子レンジを掃除している時,母はジェスに,こんなことを尋ねた.
「ジェシカ,貴女が急成長しているっているのは,私にも見て取れるものなのかしら?」

ジェスは頷いた.
「ええ,ミセス・アハーン.私は毎日2,3センチも背が伸びるの.しかも,成長のスピードは日々増加しているの」

母はジェスを同情の眼差しで見上げ,手を差し伸べ,ジェスの二の腕を優しくなでた.
「そう・・・・・・それが良いのか悪いのか,私にはよくわからないけれど・・・・・・でも,あんなに楽しそうなポールは今まで見たことないわ! ポールは本当に,貴女のことが大好きなのね.
ああ,早く成長が止まると良いわね・・・・・・まあ,もちろん貴女がそれを望めばの話だけれど・・・・・・」

ジェスは,ニコニコしている私の母を見下ろした.
母は笑顔を崩し,こう言った.

「貴女は,強くて大きいのがお気に入りなのよね? そしてポールも,そういうのが好きなのよね?」
「・・・・・・ちょっと,言っていることがよくわかりません」

母は,どもりながらこう言った.
「わ,私の息子はいつも,強くて賢い女性がタイプなのよ.そして貴女は,その両方を兼ねた理想の女性じゃない.ポールの雰囲気から察するに,外だけじゃなくて,家の中でも貴女は強い女なのでしょう?」

ジェスは腰を曲げて,ありがとうと言いながら母を抱きしめた.
「私こそお礼を言いたいわ.息子をよろしくね!」
母はそう言った.

「ジェス,貴女たちが幸せなら,誰がなんと言おうとそんなの関係ないわ.
2人で幸せになってちょうだい!」
ジェスはコクリと頷き,母をもう一度抱きしめ,そのまま持ち上げた.
「ありがとう,ミセス・アハーン.ポールの良い所を教えてくれて!」
「どういたしまして,ジェス! それと・・・・・・もう,ミセス・アハーンはやめて.お義母さんて,呼んでちょうだい」
「はい,お義母さん!」

ジェスは母を持ち上げたまま,母の頬にキスした.

2人が去った後,妹は私に「この幸せ者!」と言ってくれた.
母は私の手を取って,最後にこう言った.
「ジェスの体は時にハンディキャップとなると思うの.でも,彼女と話してみて,アンタがなんでジェスを選んだのか,わかったわ.彼女はトクベツなのね」

母と妹が去った後,ジェスはすぐマットレスの上に寝そべった.
「みんな,あなたのことが好きなのね」
私はマットレスの端に立ち,ジェスの広々とした背中を撫でる.
「みんな,君のことを心配しているんだよ.お元気でって」
「うん,分かってる.でも,私だって何も考えていないわけじゃないわ.ただ,これからのことが,よくわからないだけよ」
「それは僕も同じだよ.長い目で見よう.
それよりさ・・・・・・今はこんなことを,楽しまないかい?」

私はジェスのそばに擦り寄り,耳と首を軽くかじった.ジェスは頭を反らせ,ウウン,と唸った.

「・・・・・・ねえ・・・・・・私の方から,いってもいい?」
「僕の母が言っていただろう,僕はね,強い女性が大好きなんだよ」

するとジェスは立ち上がり,私を持ち上げ,ベッドルームの端まで私を運び,尻をつきだした.
「これで,良いかしら?」
「ああ,良いよ」
私は思わず顔がゆるみ,ジェスにニコリと微笑んだ.