◆ ◆ ◆

ものすごい勢いで胃から押し出される。

そこは、胃よりもずっと狭く、細い管のような場所だった。

『十二指腸に出たか・・・。』

十二指腸では、先ほどの蠕動のような激しい運動は無く、穏やかに消化された食物を先へと押しやっていた。

とろとろ・・・。と、食物が優しく流れる音を聞いていると、また眠くなってきそうだ。

誠二はゆっくりと流れる食物の流れからは抜け出せないので、流れに身を任せる事にした。

『胃の時よりは流れが優しいし、十二指腸を抜ければ時間はかかるけど後は安全だろうから、今ぐらい休んでもいいよな・・
・。』

今は意識だけの体とはいえ、確かに誠二も疲れのようなものを感じていた。

『幽霊も、疲れたりするのかな・・・。』

これが、自らの体に対する警告のサインなどとは、まだ彼が気づくはずが無かった———。

◆ ◆ ◆

目が覚める。

どうやら自分は少し眠っていたようだ。

周りをゆっくりと見渡す。

小腸のような柔毛などのような特徴のあるものが見えない。

まだ自分は十二指腸にいるのだろう。

さっきまで聞こえていた優しい心臓の鼓動は十二指腸まできたせいか、少し遠く感じる。

だが、胃よりも少しくすんだ桃色の壁をちらりと見ると、鼓動のリズムが肉壁から、びくん・・・びくん・・・。と優しく伝わ
ってくる。

ぼっーとしていると、前方の壁が少し出っ張っているような部分が見えた。

よくみると、出っ張りの中央はすぼまっているような穴のような形になっていた。

鼓動のリズムに合わせてその穴は閉じたり、時には大きく開いて、誠二はそれを見ていて飽きなかった。

そして、

こぽこぽ・・・。こぽ・・。ご、ごぼごぼごぼおぉ・・・。

という汚らしい音が十二指腸に響いた。

『な・・なんだぁ!?』

今までほぼ眠っていた誠二は突然の事態に慌てふためくしかなかった。

———途端。

汚らしい音をたてながら、色もまた汚らしいどろりとした液体が、前方の穴からごぽごぽ・・・。と噴出された。

◆ ◆ ◆

情けない話、忘れていた。

十二指腸にも胃液と匹敵するような消化液があるということを。

その液体は黒っぽい黄土色で、大便の元となるものだった。

胆汁と膵液が混ぜ合わさったそれは、誠二を含む食物達を完全に自分の体の一部にするため、満遍なく食物達と溶け合う。

自分の周りがどんどん汚らしい消化液に侵食されていく。

最早形が無くなった食物達は、他の食物と混ざり合い、完全に1つとなった。

それは例外無く誠二の元の体にも及び、とうとうこの人間のおなかの中で誠二の元の肉体は、単なる栄養に成り果てた。

しかし、今更嘆いても遅い。

『胃液の時もそうだったんだ。また俺だけは溶かされずにすむ・・・!』

途端に食物———だったもの———の進むスピードが速くなった。

誠二は消化されたものに流され、背中に当たる部分が十二指腸に壁にぶつかった。

『十二指腸の終わりに出たのか・・・?』

誠二は壁にもたれかかり、もう大丈夫だ・・・。と思った。

その時だった。

ごぽごぽ・・・。・・・、ごぽぉ。

誠二がもたれかかっていた肉壁———に開いていた穴———から、先ほどの汚らしい液体がわずかに残った内容物を搾り出すよ
うに、消化液が吐き出された。

『!?』

勢い良く噴出された消化液は、目の前の誠二にもまた、勢い良くふりかかった。

『・・・え?』

誠二は動揺したが、それは消化液が自分の背後で突然噴出したからではない。

消化液を直接体に浴びることによって、痛みを感じる事が無いはずの誠二が、確かに痛みを感じたのだ。

普通の痛みでは無かった。いや、痛みと呼べたのかもわからない。

それは、自分の意識が無理やり引き剥がされようとしているような感覚。

視界が回る。

自分の体の感覚が、無くなっていく。
                                       ———気持ち悪い。
気を抜けば、一瞬で意識を持って行かれるだろう。
                                 ———熱い。    
なぜ自分が痛みを感じるのか?                                     ———痛い。

『あ・・・ぐ・・・。』

自分も溶かされるのか?                           ———嫌だ。

自分の肉体と同じように?                                ———嫌だ。

———怖い。                                 

この体も、頑丈にはできて無かったのかよ。

そりゃあないぜ。

もうすこしででられるとおもったのに。

おれも、もう、だめか。

そして、誠二の意識は消化されたものの中に、沈んだ。

◆ ◆ ◆

「ふふふ・・・。」

少女は、床の上に転がっているものを潤んだ目で凝視している。

部屋は暗く、闇に包まれている。

その中にいながら、少女の白い体は輝いているようだった。

まだ少し幼さが残るしなやかな肢体。

月明かりが差す。

月光を浴びて輝く少女は部屋の中、裸体をさらけ出していた。

少し肌寒い程度の外気。

だが、少女はそれにもかまわず、ゆっくりと動き出す。

部屋に転がっている小さな何か。

傍らには、まだ少女のぬくもりが残る衣類。

その傍に、少女のものよりも少し大きめサイズの衣類が転がっている。

少女は小さな何かをつかみ、自分の座るベッドに落とす。

その何かは、確かに人間の形をしている。

だが、意識は無いようで、まだ眠っているようだ。

少女が足を大きく開いた。

真っ白な丸いお尻の中央に、濃い桃色に染まっている少女の秘部。

それは、暗闇の中でてらてらと怪しく照り、さらに透明でネバネバした液体が唇からだらしなく垂れ下がる。

大きな少女は、意識の無い小さな人間を自らの秘部へと誘い、少女の鼓動に合わせてびっくん、びっくん、と呼応する「穴」の
入り口に人間の頭をあてがう。

そして、そのままその「穴」に人間の頭を押し込んで———。

◆ ◆ ◆

「これでやっと、一つになれるね・・・。」

少女は、愛液でべとべとになった小さい人間に向けて、静かに語りかけた。

その顔は真紅に染まっていて、どこかうれしげだ。

瞳は溶けそうなほど熱く潤んでいる。

「せいじ・・・。大好き・・・」

少女は意識の無い人間の頭を優しく撫でた。

少女は人間の体を、ゆっくりと自分の口に近づけて、どんなキスよりも深いキスをする。

「ん・・・。んぁ・・・。」

ゆっくりと、人間の体を口の中に入れる。

少女の舌が優しく肉を舐めまわす。

それは少女が今まで味わったことの無い、そしてこれからも一生味わえないであろう至高の味だった。

少女はこの舌の上に転がる味を一生忘れないように、何度も、何度も優しくその味を確かめる。

そして、とうとう。

こきゅん・・。

小さなのどが、かわいく、人間を飲み込んだ。

船田マキは、自分の愛する清水誠二を永遠に自分のものとするため、彼を「喰」った。

少年は少女の桃色の洞窟をゆっくりと、滑り落ちる。

やがて、飲み込まれた少年は少女の桃色の世界へと誘われ、消化され、吸収され、文字どうり、彼女と一つになるだろう。

「ずっといっしょだよ・・・。せいじ・・。」

少女は自分のおなかに手を当てて、まるで自分の胎内に子供がいるかのように、優しく、撫でる。

少女の清らかな肉体の内側では、愛する彼が、穏やかに眠っている。

少女は再び、足を開いた。

少女の太ももの付け根と付け根から糸のようなものが垂れ下がっている。

桃色よりも大分濃い色をした少女の秘部。

今度は、少女が自分で激しく自らの秘部を弄ぶ。

その顔は、儚げで、艶やかで、魅力的だった。

「せいじぃ・・・。」

少女は最後にうれしそうに呟いた。

お尻の下にあるベッドのシミは、一際大きくなっていた。

◆ ◆ ◆

『!?』

唐突に意識が戻る。

『今の・・・なんなんだよ・・・』

今の生々しい映像は、何だ?

夢では、なかった。

確かに誠二は、今の映像の中で「小さな人間」として、マキを見ていた。

マキの細かな息遣いも感じられたし、小さな人間がマキに弄ばれた時の生々しく、溶けるように気持ちいいあの感覚も、確かに
感じられた。

そこまで思い出して、誠二は真っ赤になった(気がした)。

『確かにマキはかわいいけど、今まであいつを女の子としてみた事なんて一度もないし、でもあいつ・・・。』

誠二はショート寸前だった。

マキのスマートで清らかな白い裸体。

溶けそうなほどに潤んだ瞳。

そして・・・。

『————』

これ以上は無理だった。

『それにしても、ここがマキのおなかの中ってのが信じられねぇな・・・。』

見た目は結構綺麗なやつなのに、中身はぐちゃぐちゃで、臭いし、消化液の色も汚いし、どう見ても女の子のものとは思えなか
った。

『なんかギャップがすごいな・・・。・・・それより・・・』

どうして、マキが俺を・・・。

そんなことはわかるはずがない。

ならば、やる事は一つだ。

ここを生きて出よう。

そしてマキに問いただしてやる・・・。

よし、だったら早く大腸の方に行って、マキの大便といっしょにお尻から・・・。

・・・・・・・・・。

とりあえず、そんな気まずい事ができるのか?

・・・気まずすぎる・・・。

それに、相手は一応女の子だぞ・・・。

そこで、さっきのマキの裸体を思い出してしまう。

同時に女の子の秘部のぬくもりや柔らかさや香りを思い出してしまう。

『———!!』

しばらくの間、誠二はさっきのリアルな映像に心を捕らわれてしまった。

◆ ◆ ◆

状況はこうだ。

今誠二はタール状の、消化された食物の中に幽閉され、ほとんど動けずにいる。

わずかに露出している部分から顔をのぞかせると、小さな突起が一面にビッシリと生えている。

はっきり言って、綺麗だった。

周りからの状況して、ここは小腸だろう。

誠二は今、船田マキのおなかの中———小腸———にいる。

さらに、もう一つ気がかりがある。

誠二の体が常に激しい痛みに襲われる。

視界が霞み、考え事ができない。

先ほどのショッキングな映像も、今は思い出せない。

恐らく、原因は壁からにじみ出る腸液などだろう。

わけがわからないが、この体も終わりが近づいてきているのかもしれない。

聞こえてくるものは、少女の優しい心臓の音だけ。

俺は、生き延びる事ができるのだろうか。

今も柔毛からは栄養がどんどん吸収されていっている。

俺の体も、もう吸収されたのだろうか。

途端、小腸がグルル・・・と音をたてて俺たちを前へ押しやろうとした。

ああ、もう早くしてくれよ。

こっちはもう、限界なんだ。

その時、前へ行く反動か何かで、食物がひっくり返ってしまった。

俺の体が柔らかいカーペットにぶつかる。

『・・・・・・!』

急速に意識を失っていくのがわかる。

俺が柔毛に触れた途端、視界が黒一色に塗りつぶされた。

最早この意識も持たなかった。

『やっ・・・ぱり・・・だめかぁ・・・。』

最後に、色を失ったマキの体内で、白い何かが光った気がした。

あれは、きっと、おれの、骨・・・。

誠二の肉体と意識が、彼を愛する少女の体に取り込まれていく。

最後まで響いていた鼓動も、もう聞こえない。

◆ ◆ ◆

俺に形なんて無かった。

ここがマキの血管でもリンパ腺でも関係は無い。

俺はマキの体の一部として生きるのだ。

しょうがねぇなぁ。

そのちっちゃい胸の足しにでも、してくれや。

◆ ◆ ◆

少女は便秘をしやすい体質だった。

だから、便意を感じた時は少しほっとしたような気分だった。

すぐにトイレに駆け込んで、下着を下ろし、和式の便器にまたがる。

あれから時もたった。

多分、今自分のお尻の中にいるであろうものは、愛する彼の搾りかすだろう。

そう考えると、あまり用など足したくないのだが、これに関してはワガママは言えない。

「だから、ゆっくり、優しく出してあげるね・・・。」

少女は自分のおなかを優しく撫でながら、何かに語りかける。

「フンッ・・・」

少女が力を入れると、真っ白でぷりっとしたお尻のワレメがこれでもかというくらい大きく開かれて、そこから桃色の肛門が盛
り上がってきた。

ぷすーーっ。

最初に抑えきれなくなったガスを放出すると肛門はびくん・・・びくん・・・と、すぼまったり開けかけたりしている。

(今日はなんだか大きいみたい・・・。ふんっ・・・。)

少女はさらに力を入れる。

肛門がさらに盛り上がって、その先っぽから茶色をしたものが控えめに顔をのぞかせる。

少女は予告通り、ゆっくりと大便を排泄する。

健康的な色をしたマキの大便は、肛門をさらに大きく開かせながらミチミチ・・・と音をたてて体の半分を肛門から外に出す。

やがて白いお尻と、白い便器の間に立っている柱のようなものができる。

だがその柱もついには崩れ落ち、ホカホカと蒸気をあげながら完全に静止した。

黄金色の液体と、透明ですこしネバっとした液体が少女の股間から垂れ落ち、今生み出したばかりの大便の周りに水たまりをつ
くる。

それを念入りにふき取って、少女の排泄行為は終了した。

そこにあったのは、最早少年の面影などどこにも無い、女の子にしては大きめの単なる大便だった。

次の日、少女はブラジャーを付けようとして、気がついた。

「なんだか、胸が少し大きくなった気がするなぁ・・・。」

決して大きいわけではないが、それでも少女にとっては大きな進歩だった。

そして、また何かに気がついたような顔をして、にっこりと微笑み、

「誠二・・・。もう、あたし達は、一つだね・・・。」

うれしそうに、その名を、呼んだ。

                                                 つづく(多分)