ギシッ…ギシッ…

今日も俺の隣の席からは椅子を軋ませる音がしている。
俺の隣に座るのはクラスメートの高垣綾音 。

チラリとその席に目をやる。

まず、目に入るのは巨大な上腕二頭筋。
恐らく、俺の太腿以上…いや、このクラスのどの女子のウエストよりも太い二の腕。
綾音がわずかに動くだけでも、グリッグリッっとパンパンに張りつめさせている半袖のブラウスの袖を今にも弾き飛ばしてしまいそうだ。

その上にあるのは、小さな小さな顔。
普通の人よりも小さな顔はその豪快な体と較べるとさらに小さく見える。
キリッと切れ長の目は、黒板に向けられている。
セミロングの髪をかきあげる仕草はかわいいが、そのかわいい仕草とはあまりにかけ離れた豪腕で行われる為、迫力満点だ。。

綾音は先生の話に耳を傾け、真剣にノートを取っている。
しかし、時たまに「あっ…」と、小さな呟きが聞こえる事がある。
それは大抵、鉛筆を"握り潰して"しまったときである。
体力測定で、軽く握ったつもりの握力計を握り潰してしまったことはこの学校の誰もが知っている。
旧式のアナログ握力計の針を吹っ飛ばし、持ち手の所がグシャグシャになっているのを見た体育教師は「これでやっと新品を買ってもらえる」と笑っていた。…顔はひきつっていたが。
そんな"測定不能の握力"の前で、木製の鉛筆は小枝のようなものだろう。少し力の加減を間違えただけで、その大きな手の中でポッキリと真っ二つになってしまう。
プラスチック製のシャープペンなど持っているだけ無駄だろう。

少し目線を下に移す。
一般的な学生用の椅子などには収まりきらない大きな大きなお尻。
深く腰掛けているつもりだろうが、座面にはそのお尻の半分も載っていない。
その重みに耐えられないのだろう。綾音の椅子は、約3ヶ月に一度のペースで新品に交換されている。
今、その交換されてから3ヶ月ぐらいの時期。しかし交換して3ヶ月とは思えないような音が静かな教室に響いている。

わずか3ヶ月足らずで新品の椅子からそんな音を出す原因は、綾音の太腿にもあった。
巨大なお尻から伸びる、さらに巨大な太腿。
幾重にも重ねられた筋肉は最早、人間の物とは思えない。
その巨大は太腿は机の下には到底、収まりきらない。
机は太腿の上に乗ってしまっている。綾音の机の脚は床に着いていないのだ。
がっしりした筋肉の付いた太腿、机を支えるのに分けはない。机はしっかりと支えられ、特に支障は無いようだ。

凄まじい脚の長さ故、膝から先は机より前に飛び出している。
太腿同様、脹ら脛も豪快な太さ。成人男性の太腿ぐらいの太さの脹ら脛。学校指定の紺のハイソックスが今にも千切れてしまいそうだ。
持て余し気味に伸ばされた足は、前の席の陽子さんの椅子の脇に置かれている。
学校指定の内履きにはサイズが無かったのだろう。特注品の色をした内履きは陽子さんの足と比べると1.5倍近くある。

『え~っと…じゃ、今日は17日だから出席番号17番の…高垣さん。前に来てこの問題を解いてみて。』

「はい」と答えて、綾音が席を立つ。椅子がまたギギギッと軋む音がした。
立ち上がり、黒板へと歩いていく。
綾音と俺は一番後ろ席。まるでモーゼの十戒のように前の席の人達が各々、机をよけさせる。そうでもしないと、綾音の極太の脚では机と机の狭い隙間など通れないのだ。

後ろ姿を見る。
恐らく、一番大きいサイズの制服だろうが、どう見ても綾音には小さい。
清楚なはずのセーラー服は暴力的に盛り上がる綾音の筋肉を抑えられていない。
もし、中にブラウスを着ていなかったら、レンガのように割れた腹筋を絶えず見せることになるだろう。
スカートは流石に特注品だろう。しかし、未だに成長しているのか、綾音の脚には少し小さい気がする。
黒板まで歩いていると、脇に座る人達は丁度、目線に綾音の太腿が来る。
ミニになってしまっているスカートから伸びる極太の太腿。歩みを進める度にグリッグリッっとうごめく筋肉に生唾を飲む同級生達。

黒板の前に立つ。当然、黒板より大きい。
隣に立っている先生がまるで幼稚園児のように見える。
少し考えてから身を屈めて、黒板に答えを書いていく綾音。
一番前の席に座っている人にとっては絶好のパンチラチャンスだが綾音の場合、その極太の太腿によってスカートの中身は見えない。
チョークを砕いてしまわぬよう慎重に書いているようだ。

「出来ました。」と、綾音が言うと先生が答えを確認する。
こうして並ぶと凄まじい対比だ。
標準的な女性よりやや小柄な先生。
どう見ても先生の脚より綾音の腕の方が太く逞しい。先生のウエストより綾音の太腿の方が太いだろう。
先生が今、履いているスカートは綾音の太腿を通らないのだ。

「はい。いいでしょう。席に戻っていいわよ。」
綾音が席に戻ってくる。今度は正面から綾音の体を眺める。
セーラー服を大きく押し上げる胸。噂では余りの大きさに合うブラが無く、ノーブラらしいが大きな大胸筋に支えられている胸はツンと立っている。

ギシッッ!!ギシギシッ!!!!

不気味な音を立て、椅子に座る綾音。
この椅子もそろそろ寿命だろう。
以前のように座った途端、座面が真っ二つになり、骨組みが針金のように曲がる前に交換して欲しい。


さて…俺も授業に集中しなくちゃな。