「いってきまーす♪」

元気に家を出て行く小枝ちゃん。
今日は先日、買ったブーツをお披露目する為に友達の家までお出かけである。

今日の服装は…
白いブラウスの上にピンクの薄いカーディガン。
膝丈のキュロットパンツに先日、買ったブーツ。
ちょっと大人っぽくまとめてみた。
ブーツを履いているので今日の身長は320cmだ。

そういえば、先日は大変だった。
ブーツを手に入れたはいいが収納する場所を考えていなかったのだ。
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ブーツを買ったあと、せっかく遠くまで来たのだから…と周辺を歩きまわってみた。(そこでも色々あったがそれはまた今度)
そして小枝ちゃん、家に着いてから気が付いた。
(このブーツ、どこにしまおう…)
高さ94cmサイズ62cmの巨大なブーツ。
当然、下駄箱になんか入らない。
それでなくても下駄箱には62cmという巨大な靴たちが並んでいるのだ。普通の靴なら縦に置けるのだが、小枝ちゃんの靴の場合、横に置かなければならないので余計に幅を取っている。
どうやっても入る気配がない。
玄関に直接、置いておくという考えもあったが…。狭い玄関、このブーツだけで半分以上の面積がとられてしまう。
迷った結果、自分の部屋に置いておくことにした。めったに履くものじゃないし、一番、邪魔にならないとこといえばここしかない。
ブーツの底に付いた汚れを丁寧に拭き取り、部屋に持って行く。

小枝ちゃんの部屋。部屋自体は普通の大きさ。
だが、家具類は全て特注品である。
巨大な勉強机に椅子。机の上にのっているパソコンはデスクトップなのだかまるでノートパソコンのように小さく見える。
椅子も普通サイズなら机にもなりそうな巨大サイズである。200kg超の小枝の体重を支えられるような頑丈に作られているようだ。
この机のセットだけで部屋の約4分の1を占める。
あとの4分の1はテレビを見るスペースらしい。
テレビの前には座椅子や小さいテーブルが置いてある。果たしてこの普通サイズの座椅子に小枝ちゃんが収まるかは疑問だが。
テレビは1人で見る分には丁度いい大きさだが、この家具類に囲まれていると非常に小さく見える。
あとの半分は、夜になったら巨大な布団が敷かれるのだろう。
部屋の端から端までぴったり敷いても小枝ちゃんはまっすぐ体を伸ばせない。少し縮こまりながら眠りにつくのだ。
圧巻はクローゼットである。押し入れを改造して作ったのであろうと思われる場所に、天井より高い所から巨大な衣服がところ狭しとぶら下がっている。
そのクローゼットの端に先ほどのブーツを置く。あれだけ巨大なブーツが普通サイズに見える。
「これで良し☆」
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「ふふっ♪由美ちゃん、驚くかなぁ?♪」
多分、驚くだろう。あまりの巨大さに…。
転校初日の休み時間に”お話”に誘ってくれた女の子3人組。その中でも一番小柄な女の子、それが由美ちゃんだ。
話をしていくうちに家が近いという事がわかった。
その超凸凹コンビ、今では登下校を一緒にするほどの仲である。

小枝ちゃんの歩幅で歩いて約30分。
先に由美ちゃんに書いてもらった地図を見ながら歩いていく。

「あっ!ここだ!」
駅から少し離れた郊外に建っている一戸建て。ここが由美ちゃん宅である。
今回はずっと歩きだったため特に大きなトラブルはなかった。(驚かれるのは日常茶飯事なのでトラブルに含んでいない)
「そういえば、由美ちゃんちに来るのって初めて!自分の家があるっていいなー。(小枝ちゃんちはマンション)」

「ちゃんとしなきゃ。」
服装を正し、一つ咳払いをする。
玄関のドアを遥かに見下ろし、膝ぐらいの高さにある呼び鈴を押す。
ピンポーン♪「こんにちはー」

由美ちゃん視点で家の中から見ると、改めて小枝ちゃんの巨大さに圧倒される。
呼び鈴が聞こえたので玄関を見ると、何か巨大な人影が待っている。
玄関扉のさらに上にある採光用のガラスからでも顔は見えない。そこに見えるのは、胸元付近だけである。

由美ちゃんは確信した。
「(このデカさは…小枝ちゃんだ。)はーい!」
玄関に降りて、ドアを開ける由美ちゃん。
「(…!?何これ…!?ブーツ?)」
ドアを開けると、まず巨大なブーツが目に入った。
「やっほー♪来たよー♪」
上を見ると、いつもの笑顔の小枝ちゃんだ。
巨大な手を広げ、にぱっ☆と笑っている。
「小枝ちゃーん!ようこそ我が家へ♪どうぞどうぞ中へ…」
「お邪魔しまーす♪」
最敬礼するようにして玄関から中に入ってくる小枝ちゃん。
ウエスト付近にドアの上辺がある。お尻の幅もドア、ギリギリだ。
中に入るとちょっと屈み気味でないと立てない小枝ちゃん。
「(改めて見ても、デカいなー…家が小さくなったみたい。)じゃ!私の部屋に案内するね!」
「うん!あっ…ブーツどうしよう…?」
「…?別にそのまま置いといていいよ。」
「じゃお言葉に甘えて…(邪魔にならないかなぁ…)」
広くはない玄関に巨大なブーツを置く。由美ちゃん一家の靴の横に並べる小枝ちゃん。
普通の倍以上のサイズ、しかもブーツである。まるで普通の住宅街に超高層ビルが突然、現れたようだ。
一般家庭にあると異様な存在感があるブーツを見ながら部屋に案内する由美ちゃん。
普通の家に62cmなんてスリッパは無いので小枝ちゃんはいつも特注のマイスリッパを持参している。それを履いて家にあがる。
小枝ちゃんが家にあがると更に屈まなくてはいけない。歩くたび『ミシッ!ミシッ!』と廊下が抜けるような割れるような音がする。
由美ちゃんは思った。
「(今まで身長だけしか気にしてなかったけど、こんだけ大きいってことは体重も相当あるんだよね…。床、割れない…よね?)」
なるべく音を気にしないようにして案内する由美ちゃん。
「私の部屋、2階なんだけど…大丈夫?」
小枝ちゃんにとっては狭い階段。
「大丈夫大丈夫♪こうして登れば…ね!」
四つんばいになり長い腕と脚を折って登る。
階段の幅、ギリギリのお尻。後ろから見ると怪獣か何かが2階に侵入していくように見える。
「(今、小枝ちゃんが脚を滑らしたりして落ちてきたら私、死ぬな…)よ、良かったー。私の部屋はその先だよ。」
そのまま四つんばいで由美ちゃんの部屋まで行く小枝ちゃん。由美ちゃんの部屋は女の子らしく、ピンクでまとめられていた。

「ふぅ~。腰が大変。」(ズズーン)
脚を崩した格好で座る小枝ちゃん。座る時に部屋が揺れたような気がしたが気のせいであろうか。
「小枝ちゃん、相変わらずおっきいねー。私の部屋が小枝ちゃんでいっぱいになっちゃうみたい(笑)」
広くはない由美ちゃんの部屋。
普通なら3人が囲んで座れるカーペットも脚を崩して座っている小枝ちゃんのだけで埋まってしまった。
ベッドの上に座る由美ちゃん。しかし、脚を崩して座っている小枝ちゃんを少し見上げている。
一応、座布団も用意していたのだが、小枝ちゃんの巨大なお尻の下に隠れてしまっている。

「でさー、このあいだ言ってたショップなんだけどさー、、、」
小枝ちゃんが話し始める。いつもながら小枝ちゃんのエピソードは豪快だ。
「(やっぱりあのショップでも小枝ちゃんサイズは特殊だったか…)」
「(店員さん…大変だったろうな…)」
ニコニコして話す小枝ちゃん。
そういえば一度、小枝ちゃんのお買い物に付き合ったことがあった。
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「由美ちゃーん!ここだよー!」
由美ちゃんは、だいぶ遠くから見えていた。まわりの人たちが小枝ちゃんを待ち合わせ場所に使っているぐらいだ。
「お待たせー♪」
この超凸凹コンビ、一緒に歩くというのは至難の技である。
小枝ちゃんは精一杯小さい歩幅でゆっくりと、由美ちゃんは大股で早歩きにならなければならない。
「今日は何を買いに行くの?」
由美ちゃんが聞く。
「「買い」にっていうか、この前オーダーメイドした服が出来たから取りに行くんだ♪」

店の前に着いた。由美ちゃんも利用しことのある店だ。中にはトールサイズの洋服なんかもあったはずだ(当然、小枝ちゃんには小さすぎるが)。
「注文してたの取りに来ましたー」
店員が棚から何か巨大な物を出してきた。
「こちらでございます。」
と手渡されたもの。小枝ちゃん用の特注サイズのジーンズでとTシャツである。
「さっそく着ちゃおう♪」
試着室へ入ろうとする小枝ちゃん。
「小枝ちゃん!待って!」
由美ちゃんが引き留める。
「お願い!そのTシャツ私に1回着させて!」
パンッと手を合わせ、妙なお願いをする由美ちゃん。
実は由美ちゃん一度、小枝ちゃんの大きさを実感してみたいと思っていたのだ。
「…?別にいいよ?」
心の中でガッツポーズをする由美ちゃん。
「(やったー!!)じゃー、ちょっと貸してね。」
試着室に入っていく由美ちゃん。
とりあえずTシャツを広げてみる。自分のTシャツの3、4倍はある。
着てみると、お尻は隠れ、裾は膝下あたり、袖は7分袖になってしまった。横幅はだぶだぶでなんだか落ち着かない。
「……。」
あまりのデカさに声が出ない。ジーンズも試してみようと思っていたが心が折れてしまった。
試着室を出て、小枝ちゃんにTシャツを渡す。
試着室に入る小枝ちゃん。試着室から肩から上が飛び出してしまっている。
しばらくすると着替え終わったようで…
「じゃーん!」
大きくかがみながら、飛び出てくる小枝ちゃん。
あれだけ大きかったTシャツが小枝ちゃんの体にフィットしている。ジーンズも女性のウエストぐらいある太腿、筋肉質な脹ら脛にピッタリあっている。
今までスカート姿しか見たことがなかったが脚が凄まじく長い。正面で見ると多少の恐怖感があるぐらいだ。
とにかく、欲しいものが手に入って嬉しい様子だった。
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テレビ番組や最近買ったCD、ファッションなど一通り話をした後、
「そういえば!ブーツ!見てみる?」
今日の本題である。これを見せたいがために由美ちゃんの家まで来たのだ。
「見たい!(色んな意味で)」

下に降りて行く2人。
やはり、階段や床は不安な音を出す。
玄関まで来る。相変わらず、異様までの存在感を出しているブーツ。
「(まるでオブジェね…)」
脚を入れようとする由美ちゃん。
靴底に足がつく前に履き口に股が当たってしまった。自分の股下より長いブーツ。
「由美ちゃん、細いから脚2本入るんじゃない?」
小枝ちゃんが提案する。
試しに入れてみると多少キツめではあるが入ってしまった。
小枝ちゃんの脹ら脛1本分が由美ちゃんの脚2本分…。由美ちゃんは笑っていいような悲しいようななんとも言えない気分になっていた。
改めて外観を見る。
シックな黒い革。ヒールがだいぶ高いが長身の小枝ちゃんにはこれぐらいが丁度いいのだろう。持ち上げようとしたが…重い。
「(これを"履く"のか…。小枝ちゃん恐るべし…!)」
横にある自分の靴と比べる。小さい…幼稚園児の靴に見える。
由美ちゃんは考えた。
小枝ちゃんが自分の靴を履こうとしたらどうなるだろう…
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23cmの自分の靴。
62cmの小枝ちゃんの足。
靴を2つ、縦に揃えても小枝ちゃんの足より短い。幅は靴の3倍近くある。
小枝ちゃんの足の横幅だけで自分の靴の長さぐらいありそうだ。
足を自分の靴の上に置くと靴が隠れてしまうだろう。もし、踏まれなんかしたらペチャンコになってしまい、その靴は二度と履けない。
この小さい靴を履く…?
足の親指一つでつま先部分はいっぱいになるだろう。他の足指4本は靴の外に出っぱなし。土踏まずですら、まだ靴の外に出ている状態である。
つま先も収まらない自分の靴。実際、靴の中に入っているのは親指1本と親指の付け根付近のみである。
『無理やり履く』なんて無茶をしたら、小枝ちゃんの足の指のパワーだけで由美ちゃんの小さすぎる靴は一瞬でバラバラになってしまうだろう。
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由美がそんなことを考えてるとも知らず、明るい声で聞く小枝ちゃん。
「どう?いいでしょー♪」
ニコニコ顔で聞いてくる小枝ちゃん。
「う…うん!すごくいいよ!」
精一杯の笑顔で返す由美ちゃん。

「ちょっと出掛けようか!」
これ以上、家の異音を聞きたくない由美は、外へ出ることを提案した。
「いいねー♪どこ行く?」
小枝ちゃんはのってくれた。
「ゲーセン行かない?」
「…ゲーセン?」
「そう!ゲームセンター…って小枝ちゃん…まさか、ゲーセン知らないの…?」
「知ってるよぉ!でも…あれってお金を賭けるんじゃないの?しかも『18才未満の方は立入禁止』みたいな事が書いてあるし…」
「え…?それってパチンコじゃない…?私が言ってるのはゲーセンだよ!UFOキャッチャーとかがあるとこだよ!」
「…!あれって違うものなの!?あーいう店は入っちゃいけないと思ってた!!」
「まさか…小枝ちゃん、今までゲーセン行ったことないの…?」
「うぅぅ…恥ずかしながら…」
「よしっ!じゃー今日を小枝ちゃんのゲーセンデビューの日にしよう!」
こぶしを天に突き上げながら言う由美ちゃん。
「お願いしますぅぅ…」
「どーせなら大人数で行ったほうがいいよね!葵(あおい)と志保(しほ)も呼ぼう!」
【葵、志保は由美の友達。この3人組が例の『転校初日の休み時間にお話に誘ってくれた女の子3人組』である。】


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こうして、初ゲーセンに行くことになった小枝ちゃん。
はたして何が起きることやら・・・(汗)