「無限大の女の子」



 怖い・・・このままじゃ・・踏み潰されちゃう・・・
ティナの数キロ横には、ランの巨大すぎる美しい素足。
都市の一つや二つ軽く壊滅させることができるであろうその足は、地面に数十キロもめり込んでいる。
咄嗟に横っ飛びで回避しなければ、今頃自分は地面と同化していただろう・・・・
そう考えると震えが止まらない。なにせ、後輩の足の下で一生が終わるところだったのだから。
恐る恐る、顔を上に向ける。
遥か上空にはランの屈託の無い笑顔があった。
ほんのり蒸気した美少女の笑顔は、センパイから見てもとてつもなく色っぽい。
少しの間、見惚れてしまうが、上から降ってくる声に現実に引き戻される。
「センパ〜イ?ちゃんと逃げてくれないとダメじゃないですかぁ〜!ほ〜らっ早く早くぅ!」
ランはティナを急かしつつ、地面にめり込んだ素足を持ち上げると、
早くして、とでも言うように足の親指でティナを突っつき始めた。
本人は特にそんな気も無いのだろうが、大きさが違いすぎるためそれだけでもよろめかせられる。
そうだ・・・このゲームはまだ始まったばっかり・・・
ティナはよろよろと立ち上がる。さっき逃げる時に結構な体力を使ってしまった。
上を見れば、ランが心底楽しそうな顔でこちらを見下ろしている。
「さすがセンパイ!そうこなくっちゃ!・・・・ふふっ・・それではたっぷり遊んで差し上げます♪」
ランがそう言い終えた時、上を見上げるティナの視界は巨大な足裏で満たされた。




「・・・・いや・・・いやああああああああーーーーっ!!」
ティナは数歩後ろに下がった後、一目散に駆け出した。
怖い。ただ怖いのだ。見下ろされる、というものはここまで怖いのか。
それを初めて思い知らされた。
いままで「巨大化の天才」と称されてきたティナのセンスはかなりのものだった。
ティア星でも名の知られた人物である。
学校の巨大化試験はいっつも全校で一番。大人と勝負しても勝ってしまうほどだった。
そんな天才、ティナを世間は高く評価し、どこに行っても人気者だった。
そんなアタシが・・・
今は自分の十倍近く大きい後輩の足元で逃げ惑っている。
信じられなかった。今からでも遅くはない。夢であってくれ、と願いたくなる程だ。
「センパイおっそ〜い!それで全力ですかぁ?踏み潰しちゃいますよう〜♪」
ランがゆっくりと歩きながら迫ってくる。いくつもの山脈を平地に変えながら。
距離が狭まる。
二人は圧倒的な歩幅で十数秒後にはもう長野まで来てしまっていた。
「キャ!!」
長野の高い山脈に、慌てていたティナは蹴躓いてしまう。
そして、派手に長野と新潟の県境辺りにうつ伏せに倒れ込んだ。
三条市辺りの人間達は人生最後の光景が「巨大な女性の胸」ということになっただろう。
「・・・痛ったあい・・・」
ティナは胸に付いた地盤を手で払いながら立ち上がる。
その際、胸がぷるぷるっ、と愛らしく揺れた。
しかし、今度はティナのカラダが丸ごと揺さぶられた。
ランがティナの目の前に足を踏み下ろしたのだ。
三条市周辺の村や町がいくつも地面と同化した。
「えへへ〜♪とおせんぼですよ〜♪」
ランの可愛らしい声。快いまでの笑顔を浮かべながら、ランはしゃがみ込み、腰を下ろす。
ランの圧倒的なまでの質量で深さ百数十キロにも及ぶ窪み(もはや地殻変動)ができる。
ここは雨が溜まればさぞ大きな湖となるであろう。
それまで地球そのものが残っていればの話だが・・・・・




「あはっ♪もう逃がしませんよ〜!」
ランは座ったまま足を上空五十キロ近くまで上げ、自分の秘部を見せ付けるかのように大きく開いた。
開いたランの長い美脚は、太ももとふくらはぎで数々の街と山をすり潰し、地形を変え、
ほんの少し海に到達した足の指は大きすぎる津波を発生させた。
新潟県の下越地方は、「ランの下半身」という肌色の壁によって完全に周辺から孤立した。
その柔らかく暖かい壁は、どんな金属や城壁をも上回る強度を持っている。
ランの下半身によって囲まれた空間に、ティナも閉じ込められていた。
自分の背丈ほどもある厚い太もも。長い長い足によって完全に逃げられない。
「ちょっと!ランってばぁ!こんなのアリなんて聞いてないわよっ!?」
ティナは必死で講義する。
「なんですかあ〜?聞こえないですよお〜?」
ランは軽く首を傾げて見せた。
「・・くっ・・・んもうっ!」
力ずくで言い聞かせようにもこの状態では絶対に無理だ。
こうなったら快感に悶えさせてその間に・・・・
しかし、あの状態のランを感じさせることなどできるだろうか?
「でも・・それしかないのよねぇ・・・・」
ティナは思い切って走り出す。
何もかも、自分さえも飲み込めてしまえそうなランの秘部に向かって。
「何する気ですかぁ〜?何しても無駄です♪逃げられませんよぅ♪」
と、ランは嘲笑っている。
「今のうちにっ・・・!」
ティナは更に速度を上げる。もう新潟周辺の地盤はぐちゃぐちゃだ。
「とりゃっ!」
ティナは精一杯の助走から、ランの秘部に飛び蹴りを喰らわせる。
かなりの威力。なにせ身長四十キロの女の子の飛び蹴りだ。
小さな島のひとつぐらいは消し飛びそうである。
これでどう・・・?と、上を見上げるティナ。
しかし・・・ランの表情にまったく変化は無かった。
思った通り、全く感じていない。
微笑を浮かべたままこちらを見つめている。
「センパイ?確かぁ・・・逃げるほうは逆らっちゃいけないんじゃありませんでしたっけぇ?」
ランの微笑が優越感を持ち始めた。
ランの手がティナに迫る。
そして、ティナ本人と同じくらいの大きさの「でこぴん」の形を作った。
「そ〜れっ♪」
ランの中指が親指から開放され、ティナに襲い掛かる。
「きゃああっ!!」
身長四十キロの女の子は軽々と吹き飛び、海岸線まで転がった。
身長三百五十キロの女の子の「でこぴん」によって。
「センパイったら・・・ルール違反もいいとこですよぅ?さもないと・・・」
ランは右手を広げ、平手打ちの形を作る。それを、一気に振り下ろした。
太ももの傍にあった新潟市目掛けて。
ティナが痛みを堪えて起き上がった時、目に入ったのは、粉砕された新潟の街。
ランの手から剥がれ落ちる地盤、瓦礫。
「こうなっちゃいますよお?」
そして、ランの小悪魔のような笑みだった・・・・