「無限大の女の子」



ランの右の掌から剥がれ落ちる瓦礫、地盤。
先ほどまで新潟市が存在していた場所には巨大すぎる手形が残っているだけだ。
海岸線まで達している深い手形の指の部分からは大量の海水が流れ込み、くっきりと手の形をした湖を造った。
ティナはその一部始終を見ていた。痛む体を支えながら。
悪魔のようなランの微笑み。あれには一切の優しさが感じられなかった。
ホントに・・・ホントに潰されてしまう・・・・




アノ子にとっては遊びのつもりでも、こっちにとっては命が危ういのだ。
自分がランに潰された、とラン本人が知ったらアノ子は泣いてくれるだろう。
あの優しさをもったアノ子なら。しかし、それでは遅い。まだ人生を完全に堪能していない。
ティナは考える。生き残る方法を。こんなに平和が恋しかった時はない。
「そうだっ・・・これなら・・・でもダメかしら・・・」
そう言ってティナが掌を胸の前でお椀のように合わせると、光の玉が出現した。
その大きさはティナの掌に軽く収まる程度で、ティナの掌の上で浮かんでいる。
「これなら眠ってくれるかも・・・でも・・・・」
この光の球体は睡眠薬なのだ。遠いティア星からの宇宙船の旅で仮眠に使用するものである。
ティナは可愛い後輩に会いたい一心で、全速力で飛ばして来たのでほとんど使用していない。
「一気に全部入れちゃえば・・・・でもなぁ・・・」
ティナがこんなに躊躇うのは何故か。何故なら、この睡眠薬は秘部に挿入しなければ効き目がない。
巨大化したティア星の女性にも効くような強力なものなのだが、ここまで巨大化してしまっているランにも効き目はあるのだろうか。
これをランの秘部に入れた後、すぐに効き目が表れなければ「ルール違反ですよぉ?」とか言われてこんどこそ潰されてしまうかも・・・・



そんな危険な賭けはしたくない。
でもこれしか方法が・・・・
「センパ〜イ?止まってないで逃げて下さいよぉ〜?まだゲームは終わってないんですからぁ♪」
ハッ、としてティナが顔を上げると、上空はランの掌で覆われていた。
殺気を感じた。ティナは飛ぶようにして、巨大な影から逃げる。
数瞬の後、そこはランの掌によって更地に変えられていた。
「あはっ♪そうそう。ちゃんと逃げて下さいよぉ?それっ♪」
次々とランの掌が降ってくる。
その度に大きな地震が発生し、避け続けるティナもよろめかせられる。
それでもなんとか睡眠薬の玉は落としていない。
その後もしばらくモグラ叩きのようなゲームが続く。
新潟県の下越地方全体がランの掌に蹂躙され、高い山も低い建造物も平らになってしまっていた。
ティナの体力も限界だった。もう足が持たない。倒れてしまいそうだった。
「うふふっ♪センパ〜イ?もうお疲れですかぁ?」
ランの嘲笑うような声が降ってくる。
「手と足はもうやったからぁ・・・今度はこのおっぱいとあそびましょ〜♪♪」
そう言って、ランは巨大な胸を軽く持ち上げる。
チャンスが来た。やるなら両手が塞がっている今しかない。
ティナは最後の力を振り絞って駆け出す。
「あらっ?いけませんってば!センパイ!」
ランは自分の胸から手を離す。
ぷるんっ、と辺りの大気をも震わせて、巨大な胸が揺れた。
「もうちょっと・・・・」
ランの秘部まであとおよそ百キロ。
「だ〜め〜で〜すっ!」
ランの手が降りてくる。その指をギリギリのところで避ける。
ティナの横数キロのところをかすめて、きれいな形をした爪が地面を抉り取った。
「これで・・・お願いっ!」
ティナはランの秘部に飛びつくと同時に、睡眠薬を押し込んだ。




睡眠薬を奥へ奥へと押し込むと、爪を立てて膣内を引っ掻き回した。
「これでどう・・?」
ランの秘部に手を突っ込んだまま、ティナは上を見上げる。
そこには幾度か見た、掌があった。
それは、ティナを鷲掴みにして上空に持ち上げる。
「うふふ〜♪今のはちょっとくすぐったかったかな〜?」
ランの目は笑っているが、顔が笑っていなかった。
「センパイ?何度ルール違反すれば気が済むんですか!?」
いつもより語尾が強い。
「分からず屋のセンパイにはお仕置きが必要みたいですねぇ・・・・?」
そのままティナを握る手に力を込める。
「くっ・・あ・・痛・・いっ・・・・」
ティナの身も心もとっくに限界だった。体が悲鳴を上げているのが自分でも分かる。
「ほ〜らぁ?『もうしません』って一言言えば済むんですよぉ?」
ランは更に両手を使ってティナを締め上げる。
「きゃ・・・あっ・・・・ラ・・ラン・・・助け・・・もう・・」
さすがにもう死ぬ、と思った。ちょっとお花畑が見えた。
「は〜い?なんですかぁ〜?よく聞こえな・・・・」
ランの言葉が急に途切れる。
「あれぇ〜?なんか・・・イイキモチ♪・・・うふっ・・・ん・・・あはは〜♪・・・お休みなさ〜い・・センパ・・イ♪・・・」
言葉もそこまでに女の子座りをしていたランの体が傾き始めた。
ティナを握ったままランの超大なカラダが倒れていく。
次の瞬間、日本アルプスの一帯は平らになることとなった。



ランのカラダは日本アルプスを押し潰し、巨大な足は佐渡島の上に乗っけられている。
ティナは緩んだ右手からなんとか脱出し、すやすやと眠る後輩の顔を見つめていた。
「んうん・・・えへへ・・センパイ・・・あたしのおっぱいキモチイイですかぁ?・・むにゃむにゃ・・・」
どうやら夢の中でもティナと遊んでいるらしい。両手で胸を弄っている。
「まったくぅ・・・付き合いきれないわ・・・」
ティナは睡眠薬を出した時と同じ方法で、一つのビンを出した。
中には液体がたっぷり入っている。そのビンも人間から見たらとてつもない大きさだ。
そこになにかメッセージを書き残すと、さらに乗ってきた宇宙船も出現させる。
これもかなりの大きさだが空中に浮いているため、被害は出ていない。
「悪いけどアンタに付き合ってたら命がいくつあっても足りないわ・・・
 アンタが寝てる間に帰らせてもらうことにするからねっ・・・じゃあ・・・ガンバレ!後輩!」
ティナは刺激しない程度にランの胸に手を触れる。
「じゃあ・・・ティア星で会いましょうね・・・グランツの加護のあらんことを!」
そう言い残して宇宙船に乗ると、あっという間に飛び去っていった。


健やかな寝息を立てる身長350キロの美少女。
何か意味ありげな液体の入ったビン。
この二つが圧倒的な大きさで日本列島の上に横たわっている・・・