「妹神」




「千鶴さんたちのおうちは…ここですわね」
姉妹の住む町の横に足を降ろす女神。
郊外の畑や山や、全てが美しい素足の下に。
「ふふ…♪」
屈み込む女神。重心の移動で、つま先が大きく地面にめり込んでいく。
女神の素足が押し退けた土の山。それすらも山脈級の盛り上がりである。
「こんなに小さな…これでも街、ですものね」
姉妹の家、周囲数十kmを囲うように手の平を下ろす。
そのまま押し付けていく。硬い岩盤を容易く砕きながら、地面に美しい指が埋まっていく。
「気をつけないと握り潰してしまいそうですわ…」
お椀状にくりぬいた街並みを持ち上げる女神。もちろん、姉妹の家も手の平の中。
「こうして…えい♪」
左手で街を支えつつ、右手の人指し指で街を突き崩し始める。
白く美しい指が大地を削り、家を押し潰し、遥か下の本当の地面へと降り注がせる。
ずん、ずん、と指が突き刺さる度、街はどんどん小さくなっていく。
終には姉妹の家の周囲のみが残され、指の先にちょこん、と乗せられていた。



「お、おねーちゃん…」
「どどど、どうなってんのこれ!?」
辺りの地面がすっかり消失してしまっている。広がるのは肌色の大地のみ。
「お二人とも、見てくださいましたか…?」
柔和な声が響く、どこからかはわからない。
あまりに大きな素足が、なにもかもを踏み潰しながら降ろされるのを見た後、
二人には状況が分からなかった。
「ど、どこよっ!?」
「お、おねーちゃん…上…」
日向が呆然としながら何かを見上げている。
「上、って……っ!」
いつかと同じ、柔らかく微笑む女神の顔があった。



「あ、あ、あんたねぇ!」
「はい…?何かお気に障りましたか…?」
腰を抜かしながらも精一杯の声で怒鳴る千鶴と、首を傾げる女神。
「さ、さっきのもあんたなんでしょ!?あ、あの足!」
「えぇ、そうですわ…。
ごめんなさい、お約束の通り街を一つ踏み潰してきたものですから
少し汚れてしまっていたかも…見苦しいものをお見せして申し訳ないですわ…」
「そ、そーゆーことじゃなくてねぇ…」
やっぱり人間と女神では価値観が違うのか、話がずれている。
「もっと気をつけて…!」
「お、おねーちゃん!」
日向が割って入り、声を荒げる姉をおさめる。
「あのね、女神様…あなたの足もとっても大きいから…びっくりしちゃったの。
 でも、さっきのテレビもちゃんと見てたよ。女神様、凄いんだね♪」
にっこりと、上空の女神に向かって微笑む日向。
千鶴は、ばつが悪そうにそっぽを向いていた。
「日向さん…♪」
うっとりとした表情の女神。
「ね、おねーちゃんもあんまり乱暴なのはダメだよー」
「う…わ、わかったわよ…」
そっぽを向きながら返事をする千鶴。
その様子を見て、うふふと笑う女神。
「あのさ…ここ、どこなの…?」
おずおずと千鶴が問い掛ける。
「地面は一面肌色だし…なんか暖かいような…」
「それはテレビを見ていただければ分かりますわ♪」
二人がテレビに注目する。
雲を突き抜け、聳える女神の身体。
しゃがんでいるというのに凄まじい大きさ。
左手の人差し指がなぜか顔の前に突き出されている。
そこにカメラがズームしていく。
ぐんぐん近くなる指先。ぽつん、と黒い点がある。
さらにズーム。アレは…家…?



「そこはわたくしの指の上ですわ♪」
「ゆ、指…!?」
たしかに、先程のテレビの中の女神は凄まじい大きさだった。
実際に体感するとその凄まじさがよくわかる。
こんなの、人間がどうこうできる問題ではないのは明らかだった。
「な、なんか笑えてきちゃうわね…あはは…」
「うふふ♪いつもの大きさなら人間の家なんか見えなくなってしまいますわ♪」
「あはは、そうよねー…って、えぇっ!?」
「?なにか…?」
「い、いや…なんか今、凄いこと聞いたような…」
ふるふると頭を振り、今聞いたセリフを忘れようとする千鶴。
「えーっ!!女神様まだ大きくなれるのー!?」
驚きの表情で日向が叫ぶ。
「ちょ、ちょっとヒナ!」
「女神様すごーい!」
きらきらと、期待の眼差しを送る日向。
「え、えぇ♪でも、そんなに凄いことでしょうか…?」
「すごいよー!わたしもなってみたーい♪」
冗談っぽく言う日向だったが。
「いいですわよ♪」
「「へ…?」」
二人がそう呟いた瞬間、日向の身体は家の中から消えていた。



どっすうううううううぅぅぅん…
新たに現れた二つの巨大な素足。
何もかもを押し潰して、そこに存在している。
女神と同じ倍率にまで巨大化した日向のものだった。


「…どーなってるの…?」
目の前には何もなかった。地平線が丸い。
「ひーなーたさんっ♪」
「は、ひゃいっ!?」
声の聞こえたのは足元から。
女神様がしゃがんだままこちらに微笑んでいた。
「うふふっ、驚いちゃって…かわいらしーですわ♪」
「はうぅ…すみません…」
顔を赤らめる日向。
「あ、あの…どーなってるんでしょう…?」
「あら、大きくなりたいって言ったじゃありませんか♪」
「え…」
足元を見てみる。
雲の切れ間に、自分の素足の幅と同じくらいの灰色の地面がある。
おそらく、それが街なのだと理解した。
「ホントに…おっきくなってるの…?」
「えぇ♪とりあえずわたくしと同じくらいにしておきましたわ♪」
足元の小石の集まりはきっと山脈なのだろう。
足指ほどの大きさの水溜りは、きっと有名な湖なのだろう。
世界が、変わっていた。



「すっごーい!でっかいよわたしー!」
きゃあきゃあと騒ぎ始める日向。
どすぅん、どすぅん、と興奮のままに動かされる素足。
気が付かぬままに数個の街が丸ごと踏み潰される。
「おねーちゃん見てる!?すっごいよー!」
女神の指先の家に向かって手を振ってみる。
姉のぽかん、とした顔が目に浮かぶ。
「女神様ー♪」
しゃがみ込んで、背後から女神に抱きつく。
「あらあら、喜んでいただけたようで何よりですわ♪」
同じ倍率でも女神のほうが30kmほど大きいので、背中に乗っかるようにくっつく日向。
「うわぁ、女神様おっぱいおっきい!何カップあるのかなぁ♪えーい♪」
むにゅん、と背後から手を回し、女神の乳房を鷲掴み。
が、とうてい手に収まらず、指の隙間から零れ落ちそうになる。
「あぁん、だ、だめですわ日向さん…♪お姉さんが落っこちてしまいますわ…」
色っぽい声を上げる女神。
「えへへー♪すっごーい、わたしより全然おっきい…」
もにゅもにゅ、ととてつもない大きさの胸が、もう一人の巨人の手で揉まれている。
「ひ、ひなたさぁん…♪んあっ…♪」



そのころ、姉はというと。
「ちょっ…!ヒナのやつ、なにやって…きゃあっ!」
快感に震える女神の指の上。
女神が不思議な力で守ってくれているものの、揺れが凄まじい。
肌色の地面を転がりながら、必死で堪えるもあんまり意味は無い。
目前には、日向の手に揉まれている女神の胸。超スケールではあるが。
日向の、長さ10kmを超える綺麗な指が、女神のもちもちした白い乳房にめり込む。
ぷっくり膨らんだピンクの乳首は、あそこだけでどんな広さがあるのだろうか。
胸が形を変えて揉み解されるたび、びくん、と震える女神の身体。
伸ばされたこの指も大きく震え、そのたびに転がされる。
「ちょ、ちょっとあんたら!いー加減にしなさいよぉっ!」
指の腹に這い蹲りながら叫ぶ。
「あっ、おねーちゃん見てるー?女神様のおっぱいすんごいよー!」
「そ、そんなん見れば分かるわよ!その手を止めなさいよっ!」
「えへへー♪やだよー、ちっちゃいおねーちゃん♪」
「なっ!?くうぅ…」
このサイズ差では、何をしようにも不利なんてもんじゃない。
「ひ、日向さんっ…あんっ、お、お姉さんもこう、んっ、言ってらっしゃ、いんっ♪」
女神がちょうど言いかけたとき、日向の指がすっかり硬くなった乳首に触れた。
「えへへ、なぁに女神様♪」
「な、なんでも…あんっ、ないれすわぁ…♪」
「ちょっとちょっと!!なんでもなくないでしょっ!?」
千鶴が叫ぶ。
すっかり日向の胸への愛撫にやり込められている女神。
「あはは♪このくらいにしとこーか、女神様♪」
つん、と膨らんだ乳首をつつく日向。
「はぅんっ!…はぅ…♪」
すっかり蒸気した顔の女神様。
あのままだったらどうなっていたのだろう。



「一旦家に帰ろうよ、いっぱい聞きたいことあるし♪」
「はぁん…そうですわね…」
息を整えながら、女神が言う。
「お茶も出すし、ね?女神様♪」
「い、今すぐ参りましょう♪」
どーやら日向が出してくれたお茶が気に入っているらしい。
ひゅん、と二人の巨体が掻き消え、家はいつの間にか地面に降ろされていた。