アキラは、リリーの隣でタオルにくるまりながら、雑誌を読んでいた。
すると、ぴりりりりーと音がする。どうやらエレーネ星人達が使っている携帯電話みたいなものからだとわかった。
リリーは、カシューチャのように頭につけている通信装置に触れて回線をつないだ。
すると、リリーの目の前に映像が浮かぶ。どうやらテレビ電話みたいだ。
その画面は大きいので、床に寝そべっているアキラからもよく見える。
「おっ、リリーか? やっと例のものが使えるようになったから、母船へ取りに来てほしいんだ。
それとリリー。ルサーラの主催するレースに参加申し込みをしたのか? なんか当選の連絡が来ていたぞ」
と、エレーネ星人サイズのだれかが話している。知り合いそれともリリーの両親?とアキラは考えた。
「やったぁ、当選していたのね。楽しみー。それと、今日は暇だからすぐに取りに行くね。じゃぁあとで…」
リリーは回線を切ってから、アキラのほうを見て、行くしたくをしてねと言ってくる。
アキラは何があったの?とりリーに聞くと、
「さっきのはあたしのお父さん。そして、お父さんは古代文明の残したテクノロジーや、異星のテクノロジーを研究しているの。
取りに来てほしいといっていたのは、数年前に母船の倉庫から見つかった、母性から持ってきた機械が
復元されたのと解析が済んだので、あたしにテストとして使ってほしいと前から頼まれていたもの。
そして、ルサーラの主催するレースにあたしが抽選で選ればれたの。どう?すごい?」
「そのルサーラの主催するレースってのが良くわからないんだけど、すごいの?」
アキラはリリーに聞いてみた。すると、
「ルサーラというのは、航空系の乗り物を作っているメーカーのひとつなの。
他にも乗り物を作っているメーカーはあって、レースには自社が作った最新のマシンが使われるの。
要するに、自社のマシンの技術力や性能を見せ付けるためね。レースで良い成績が出れば、
その会社のマシンは高性能だと自慢できるしよく売れる」
とリリーが説明する。さらに…
「このレースは人気があって、ちょうど日本の宝くじぐらい当選確率が低いの。
なぜ人気があるかというと、参加者には宇宙船がただで貸し与えられて、レースに参加すればそのままその宇宙船がもらえるの」
「へー。そりゃすごいや。最新の宇宙船がただでもらえるの?」
「そういうこと。レース当日欠席せず、レースに参加すればいいのよ。だって、ルサーラーの最新宇宙船よ、
お金持ちのセレブにだってぽんぽん購入できるような金額じゃないし」
アキラは、これが一生に一度のチャンスの効果なのかをリリーに聞いてみたが、
「うーんどうかしらね。前から申し込んでいたし…。あっそうそう。レースは2人で一組だからアキラ君も参加するのよ」
リリーからそう聞いてびっくりした。
リリーが言うには地球人も参加が可能で、レースは交代で宇宙船を操縦し、ある目的を達成するとのことらしい。
入賞すれば、もう一台別に宇宙船がもらえるとリリーが言う。
すると、僕にも専用の宇宙船が手に入る?。アキラは念のためリリーに聞いてみた。
「ねえ、リリー。もし、もしもだよ、レースで勝ったらもう一隻宇宙船がもらえるとのことだけど、
その宇宙船はエレーネ星人用のものなのかなぁ」
リリーは安心してもいいよと言った。地球人の参加も可能ということでそのことも考慮されているらしく、
希望なら地球人に合わせた宇宙船ももらえるらしい。
「すげーな。ずいぶん太っ腹だなぁ。宇宙船を持っている学生は地球人でもいないんじゃない?」
「まぁ、そうよね。で、アキラ君はもう勝った気になっているみたいね」
「そりゃそうだよ、こんなチャンスめったにないし…」
アキラは思う。エレーネ星人のことを願って、アキラはその願いを叶えた。
さらに宇宙船を手に入れる。うーん、なんてすばらしいんだ。リリーに感謝しないととアキラは思った。
「じゃぁ行くよ」
とリリーが言って、アキラに手を伸ばしてくる。
そのままリリーの手にわしずかみされて、またリリーのポケットへ放り込まれる。
「どこ行くの?」
「母船」
とリリーは答えた。そういえば、テストしてほしい機械を取りに行くんだっけとアキラは思い出した。
リリーはいつもの部屋を出て廊下を進む。
リリーはうれしそうだ。廊下を歩きながらスキップしようとしている。というかしている。
アキラはリリーが歩くたびにリリーのポケットの中で飛び跳ねてしまう。
「ちょっとリリー、もう少し静かに歩いてよ」
「えー、だってうれしいんだもーん。らったらった♪」
リリーがスキップするたびにポケットの中が大地震のように揺れるので、アキラはバランスをとるので精一杯だ。
そのうち、扉が開く音がしたと思うと、外の空気をアキラは感じた。
スキップのゆれも収まったので、アキラはリリーの胸ポケットから顔を出してみる。
建物の外の発着場に向かっているらしい。リリーはある宇宙船のほうへと近づいていった。
「どう。あたしの船よ。もう、長いこと使っているからがたがきているのよね」
と言いながら、リリーは宇宙船の中に入っていく。どうやら個人用の母船と地上の連絡船みたいだ。
この船でも宇宙へは行けるらしいが、あまりかっこいい船でもない。
リリーはアキラ君操縦してみる?と聞いてくる。
「えー。そんなの無理だよ。だいいち車も運転したことないのに…」
「そうなの。あたしも地球の車には乗ったことないわね。ってあるわ、
この建物の外に、いつも黒塗りの車が路上駐車してあって、むかついたから、
あたしがその車の上に足を乗せてみたら、つぶれちゃった」
乗ったんじゃなくて、それは踏んだんだろう。リリーが足を乗せたら車はつぶれるだろうし。
「黒塗りの車?それってやばいんじゃないの。それでどうしたの?」
リリーはその後、通りの向こうから数人のグラサンをかけた人が来たのを見て、
謝ったらしい。でも、
「兄貴の車どうしてくれるのよ。ああーん?エレーネ星人で、図体でかいからっていい度胸しているんじゃねぇぞ。このあまっ」
と言ってきたので、リリーはここに止めているのが悪いんじゃないと反応し、かちんと来たので、
「ねぇ。その隣の車にだれか乗っている?」
と低い声でそのチンピラに問いただす。
「だれも乗っていねぇが、どうしれくれるんだよ。3000万円といったところだな。さぁ姉ちゃんよ」
とそのチンピラは言うので、リリーはにやりを笑みを浮かべると、そばに止まっていたもう一台の車の上に足をかざして、
次に足をいきよいよく踏みおろした。
そして、さらにリリーは。
「いつもあんたの車が邪魔だったのよ。で、あ.な.た.も.こ.の.車.の.よ.う.に.な.り.た.い.わ.け?」
とリリーが低い声で言うので、そのままチンピラは逃げていったという。
その話を聞いて、アキラはこの建物のまわりには路上駐車が一台もないことに気が付いた。
それはリリーのしわざかとアキラは思った。
リリーがポケットの中に手を入れて、アキラをつかみ出す。
宇宙船のコンソール付近にアキラを置いてから、あるものをアキラへ差し出す。
それは地球人のサイズに合わせた操縦用のコントローラらしい。
両腕にはめる腕輪のようになっている。
リリーもいつのまにか、同じものをつけている。
これで操縦するのよとリリーは言う。
両手を使って、宇宙船のコンソールに表示されている、現在位置と、目的地の間の航路を設定してから
両手を使ってゼスチャーをすると、宇宙船が動き出すらしい。
アキラはリリーの言うとおりにして、やっと宇宙船を発進させることに成功した。
「うわぁ。すごいや。これ本当に僕が動かしているの?」
「あらっ、思っていたよりうまいわね。いいんじゃない?」
その後は順調に母船へと向かって船は進んでいく。
その間アキラはリリーの両手に抱えられているような感じで宇宙船のコンソールを見つめている。
アキラは、リリーから教えてもらったとおり、発着場のナンバーを入力して、船を自動操縦に切り替えた。
これで母船のドックへ入るまでは操縦しなくて良い。
どうやら、宇宙船の操縦はリリー達が5歳くらいのころでも出来るよう、簡単に動かせるようになっているらしい。
それをリリーから聞いて、アキラはなーんだと思った。どうりで簡単すぎると思った。
でも、ドックに入った後は、自動操縦をOFFにするんだけど、そこでぶつけないでねとリリーが言う。
案の定リリーの船が母船に到着し、アキラはドックに入ってからドックの奥へ進むまでの間にリリーの宇宙船を少し壁にすってしまったようだ。
「あとで、ハーゲンダッツ100個」
とリリーが言う。うへぇ。アキラはリリーのほうを見るがどうやら本気らしい。
小遣いが足りるかなとアキラは考えた。