「合図をしたら測ってね」
とリリーは言うと、おなかをへこませた。
「ここにずるをしているエレーネ星人がいるけど。いいのそれで…」
「早くしてよ。結構疲れるんだから…」
仕方がないので、アキラは数字を読み上げる
「680センチ」
アキラはそのまま巻尺をあてたままにしていると
「あーつかれた」
とリリーは言って、へこませていたおなかを元に戻す。
その反動でアキラは巻尺の線に引っ張られて、リリーのおなかの上に乗ってしまう。
「わわっ。急に無理して細くしようとしていたのをいきなりやめないで。
そのせいで、引っ張られちゃったよ」
リリーはアキラを見て、にやりと微笑むと…。
「そーれ、地震だぞー」
と言って、リリーはおなかの上にアキラを乗せたまま、おなかをへこませたり、ぽーんとおなかを膨らませたりした。
すると、アキラはリリーのおなかの上でトランポリンのように上下してしまう。
「ちょっとリリー」
アキラはなんとかしようとよつんばいになろうとして手を前に出すが、リリーがやめないのでなかなかうまくいかない。
「あははっ。面白ーい。今度は震度5だぞぉ」
とさらにリリーはおなかを動かす。
いちおう、リリーはアキラ君がおなかから落ちないように両手をおなかの横にあてている。
リリーはアキラがおなかから落ちて怪我しないようにしているが、聞かれたら落ちたらそれで終わっちゃうからと
答えようと思っている。
「ふー。面白かった。疲れたからそろそろやめよう」
アキラは、やっと終わったかと思い、アキラは怒った表情でリリーの目をにらみつける。
「やーね。ちょっとからかっただけじゃないの。もしかして怒った?」
アキラはぷんとした表情でリリーから顔を背けた。
「ねぇーん。アキラ君。もうしないから許してぇ」
アキラは答えず。そのまま後ろを向いている。
「ねぇ、許してぇ。とっておきのハーゲンダッツのアイスクリームあげるからさぁ。それとも、
あたしの体を自由にしていいからさあ。だったらあたしの胸を抱き枕にしていいからさぁ」
とリリーは言ってくる。
リリーが変なことをしてこなければ、リリーの胸にうずまるのもいいかもしれないとアキラは思い、
もうそろそろ許してあげることにした。
「りりー。もうしない?」
「しないしない。ごめんね。そんなに怒ると思わなかったわ。このとおり謝るわ」
とリリーは頭を下げた。どうやらやりすぎたことを反省しているらしい。
リリーはこんなことにつき合わせちゃってごめんねと言っていた。
そして最後のヒップを測り、アキラは再びリリーのポケットに入れられて最初の部屋へ戻ることにした。
ちなみにヒップのサイズは900センチだった。
ほんとに人間の十倍サイズだとアキラは思った。
そんなことをしているうちに夕食の時間となり、アキラは人間用の食堂で夕食をすませることにした。
リリーはエレーネ星人用に食堂があるらしいのでまたあとでと言ってわかれた。
そして、夕食の後、アキラはリリーと二人でテレビを見ることにした。
リリーは昼間、アキラをいじめすぎたことを気にしているらしく、アキラが望むなら彼女と一緒にテレビを見ようとさそってきたのだった。
リリーは壁際に足を投げ出すような格好でいるのだが、リリーはアキラを自分のおなかの上に座らせて、
アキラをリリーの両手でやさしく包み込むようにする感じでアキラを人形か、小動物かなにかのように抱きかかえるようにしている。
アキラはリリーのおなかの上に座っているような感じになっているので、
たまにリリーのおなかから、きゅるるるるーとかぐるぐるーとかおなかの音が聞こえてくるので、そのたびにわらいを堪えていた。
「あれっ、何がおかしいのかなぁ」
「えっ、いや、ここに座っているとリリーのおなかの音が良く聞こえてくるんだけど…」
「そうなんだ。そんなにあたしのおなかの音が聞こえるの?。さっき食べたばかりだから、おなかが空いて鳴る音ではないわよ」
「そりゃそうなんだけど、おもしろいなあと思って…」
「恥ずかしいからあんまりおなかの音を聞かないでね。ほらっそんなことよりテレビが始まるよ」
テレビでは、お笑い番組をやっている。アキラも笑うが、リリーが笑うとアキラの下のおなかが上下に揺れる。
「ほらー。けっこうゆれているよ。わざとじゃないよねぇ?」
アキラはあまり笑わないでくれる?とリリーに言うが、だって面白いんだもんといって笑うのをやめなかった。
なんか、大きな彼女のおなかの上にいるんだけど、なんかこんなのもいいなぁとアキラは思う。
彼女はとっても大きくて、こっちが抵抗できないことをいいことに、からかったり小動物のように扱いたがる。
でも、おっきくてやわらかくて、つつみこんでくれるような彼女と触れ合っているのはまんざらでもないなぁと思い始めた。
アキラはチャンスシステムで、こういう世界を願って本当に良かったと思った。
でもこれはお試し。このままでは1週間しかこの世界は続かない。
もし継続したいならまたあの男の人と会って願いを伝えなければならない。
気が付くともう夜の1時を回っていた。
「もう寝ようか」
「ふぁーあ。僕も眠くなってきた」
とアキラは別室にある仮眠室へ向かおうとしたとき
「アキラ君。どこへ行くの? アキラはこの部屋で一緒に寝るの」
「えっつそれはまずいんじゃない?」
「何言っているのよ。そんなこと言っているけど…本心はそう思っていないんでしょ?
さては、安心させといて、夜中に夜這いをかける気ね? もー積極的なんだから(ぽっ)」
「そんな気ないよ。それは地球人同士なら可能性があるかもしれないけど、大きさが違いすぎるよ。
もし、夜中に襲いに布団に入ったらリリーの下敷きになってしまうかもしれないし…」
「むー。そんな気がない? ひどい言い方ね。さっきは宇宙よりも愛しているとか。
君のためなら、太陽へも飛び込めるとか言っていたじゃない?」
「言ってない。言ってない」
「あたしと離れ離れになるなら、ブラックホールへ宇宙船で飛び込んでやるーとか言っていたじゃない?」
「どこからそんな話が出てきたんだよ?」
リリーはどうやらアキラと一緒の部屋で寝たいらしい。
アキラは根負けして、もうわかったよ。一緒の部屋で寝ようと言うと、
「一緒に寝るって。もーアキラ君たら早いのね!」
「あのね。いちおう『一緒の部屋で』と言ったつもりなんだけど?」
「わかっているわ。からかっただけよ。さてとあなたの布団はここにないわね。布団の代わりになるものっと…」
リリーはすぐに布団になるものを探し始めた。
「あった。これなんかアキラ君のサイズにぴったりだと思うけど」
リリーはあたりを見回して奥のほうからリリーが使っていると思われるタオルを取り出してきた。
そのタオルはアキラにとってはシーツよりも大きい。
リリーは短い辺を2つ折りにして床に置く。
「さぁ、この上へ横になってね。さぁ」
リリーはせかすが、いやな予感がする。リリーは例の笑みを浮かべている。
「そう言って。また何かする気なんでしょ? 」
とアキラはリリーを見る。
「ちっ。ばれちゃしょうがないわね。せっかくアキラ君をこのタオルでころころっと巻いて簀巻きにしようと思っていたのに…」
「あのねぇ。僕はリリーのおもちゃじゃないんだから?」
「そう残念ね。って。あたしはアキラ君をあまりからかわないようにしたから安心していいよ」
あまりって何とアキラは思ったが、リリーはその後小物入れの蓋を持ってきて
タオルを敷いてアキラのために簡易ベッドを作った。
その簡易ベッドの大きさはアキラにちょうどいい。
リリーは自分用の布団をセットすると、枕元にそのベッドを置いた。
「ほらっ早くベッドに入らないと電気を消しちゃうわよ」
「えっ。あー待ってよ。すぐに入るよ」
アキラはベッドの中に入る。机や台の上のほうがいいかもと思ったが、その机や台ははるか頭上にある。
高いところで寝るのもいやだし。じかに床の上に寝るのではないからまだいいかと思った。
「ねえ? 夜中トイレとかに行く? 間違って踏まないでね? 大丈夫?」
「そうねえ。間違って踏んじゃうかも…」
アキラはリリーをにらみつけると、リリーは冗談、冗談と言って笑った。
そして電気を消して眠りにつく…。
アキラはタオルにくるまる。ちょうどいい大きさで、ほのかにリリーが使っていると思われる
シャンプーの香りもする。こうしてタオルに包まっていると彼女にやさしく抱えられているようだ。
アキラはちょうど明日で5日目だと考えて、明日の昼間。ちょっと外出しようと考えた。
隣からはリリーのすーすーという寝息が聞こえてくる。
リリーも疲れていたようだ。アキラは明日どうしようかと考えながら眠りについた。

そして、朝。
リリーはアキラより先に目が覚める。
リリーがアキラを見ると、アキラはまだ夢の中のようだ。
「えへっつ。まだ寝ているようね? アキラ君の寝顔かわいい!」
リリーはしばらくアキラの寝顔を見ていたが…
もう少しで起きる時間ね。よーし私がアキラ君を起こしてあげよう。
「もしもーし。アキラ君。朝ですよぉ」
アキラは起きない。
「ほらっつ朝よー。起きなさーい」
リリーは人差し指をアキラの体に添えてゆさゆさとゆする。
アキラはなかなか寝起きが悪い。目覚ましが鳴っていても、いつもなかなか起きないぐらいだ。
「早く起きないと、タオルで簀巻きにしちゃうぞー」
まだ、アキラは起きない。
「困ったわね。指でぐりぐりしちゃうぞー」
「んーん」
だめねぇ。アキラが寝ていちゃつまんないわねー。早く起こす方法は
とリリーは考えて、アキラを小物入れの蓋ごと持ち上げて、
机の上にある卓上スタンドの近くへ持っていった。
「起きろー。朝だぞー」
とリリーは卓上スタンドの光量を最大にして電気をつける。
さすがにアキラもまぶしくてやっと目を覚ます。
「リリー。まぶしいよ」とアキラはタオルを頭からかけて光から逃れようとする。
リリーはだめよ。といいながらタオルをひっぱがすとアキラはやっと目を開ける。

「ねぇ。あなたいつもそんなに寝起きが悪いの?」
「そうだな。いつも姉に起こされているよ」
「あっお姉さんがいるんだ。どんな起こされ方しているの?」
「ちょっとやそっとじゃ起きないから、カーテンを開けて。いつも上に乗っかってくるんだ。
その後、ベッドからけり落とされる」
「あはっ、アキラ君らしいね。あたしも今度からそうやろうかな?」
アキラは勘弁してよ。と言って起きることにした。今日は出かけないといけないし…。
今度一発で起きなかったら、タオルで簀巻きにしてあたしのくつしたの中に入れてあげると言っていた。
アキラはそんなのいやだよと言うと、
「あなたさえ。早く起きればいいのよ」
とリリーが言う。こうしてまたリリーとの一日が始まった。