「なあ。お前が休んでいた理由なんだけど本当はエリィを迎えに行っていたんだってな」
「どうして知っているんだ。なんとかごまかしたのに…」
学校の帰り道に正人が言う。
「やっぱり図星だな。
いや。お前がいない間に電話をかけたら。航さんだっけ。その人のところに出かけたと聞いたから。
それに、トエールミナの船団が地球に寄らないというニュースも丁度そのころあったし、
おまえのことだからもしやと思っていたんだがな。やっぱりそうか」
食あたりで入院したということにしておいたんだけど。
「正人にはごまかしがきかなかったか」
「いや、今聞くまでは知らなかった。
もしかしてそうかもと思って聞いてみたわけだ。そしたら白状した」
「なんだよ。それ。でも他の人に言わないでくれよ。
嘘をついたと知られたら先生に怒られる」
「大丈夫だ。学食の食券10枚で手をうとう」
「ちっしょうがないな。
そうだこれからどうする?
バイトも辞めてしまったし、これから暇だからどこか行かない?」
とトオルは正人に聞いてみる。
「いや。今日はだめなんだ。デートでな。
さっきメールで会いたいと言ってきた。
隣町の広場で待ち合わせ」
「なんだよ。それ?
いたずらじゃないのか?」
「俺もお前からのメールでいたずらかと思ったんだけどよ。
なんか町で何回か見かけたみたいで、どうしても忘れることができないんだと。
俺の時代がきたのさ。
というわけでこれからおめかしをして隣町へごーというわけだ。
ついてくるなよ」
ぴぴぴ。
トオルの携帯が鳴る。
メールだ。
どうやらエリィからのものでこれから会えないかなぁということだ。
「こっちも用事ができた。エリィからだ」
「おっトオルも彼女さまからのメールか。
じゃお互いがんばろうぜ。じゃあな」
と正人はスキップをしながら歩いていく。
それを見て僕もスキップをしたくなる。
「ふっ正人にも彼女か。
変なことを言ってふられなければいいんだけど……
明日聞いてみよう」
トオルは帰路を急いだ。

……

正人はるんるん気分で支度をした。そしてお花屋さんでバラを1本買う。
「今日もきまっているな」
ガラスに写った自分を見る。
そして約束の時間までだいぶ時間があるけど、
待ちきれないので急いで列車に乗る。

「たしかここだったよな」
隣町の駅から10分ほど歩いたところにある広い公園。
数年前に改良されて、広場や歩道の幅もとっても広くなっている。
それに歩道も強化されている。
ちらほらエレーネ星人の女の子もいるようだ。
結構遠いところにいるんだけど、その子はでっかいので遠くからでも見える。
広場の中ほどにある時計塔の壁によりかかって携帯電話を見る。
そこにはもらったメールの文字が表示されていた。
「あたしは芽衣と言います。町であなたのことを見かけてから気になっていました。
私は悪いと思ったけど、あなたの通っている学校をつきとめました。
そして、私の友達も同じ学校にいるので、その友達経由であなたのメールアドレスを知ることができました。
もう。あたしは我慢できません。
このまま終わってしまうのも耐えることができません。
なので、明日の午後4時に公園の時計塔の前に来てくれませんか?
待ってます」
というメールが表示されていた。
すごい執念だなぁ。
きっと俺が知らない子なんだろう。
ひとめぼれってやつか?
くぅ。
かわいい子だったらいいんだけど。
もしブスだったら彼女いるからと断ってやろう。
ということを思いながら正人は待っていた。
3時55分。
正人はあたりを見回してみるがそれっぽい人はいない。
あの子か?
いや違うな。
歩いていく方向が違う。
正人は公園の向こう側も見る。
エレーネ星人ぽい人が歩いてくるがこれも違うだろう。
正人はあたりをきょろきょろ見る。
ひょっとしてあれか。
年のころは同じぐらい。
結構かわいい子だ。
まっすぐこっちの方に向かってくる。
きっとあの子だ。
かわいい。100点だ。
「お。あの…」
と正人は声をかけようとする。
が、
その子は正人のほうをちらっと見た後にそのまま通りすぎていく。
4時2分。
時間は過ぎた。
やっぱり誰かのいたずらか?
くっそ。
後で見つけたら懲らしめてやる。
と思ったそのときだった。
地面に影が落ちる。
僕のまわりだけ。
それにその影の大きさはばかでかい手のような形をしている。
正人は後ろ振り返ってみる。
なんだこれ。
さっきまではこんなものはなかった。
靴下のような白いごわごわしたもの。
その下は靴のようなもの。
もしや。
と思って上を見る。
「うわっ」
巨大なエレーネの女の子が正人を見下ろしていて、正人の頭上にばかでかい手で日傘を作るように覆っている。
「こんにちわ。正人お兄ちゃん」
「あわわわっ」
「ん?
どうしたの急に現れたからびっくりした?
あっ。そうそう。
正人お兄ちゃんの携帯電話にメールを送ったのはあたしだよ」
「は?。はい?」
正人はそばにしゃがみこんでいる女の子を見る。
ちょうど正面を見たとき。
足の間から白いものが見えるのに気がつく。
ぱ。ぱんつ。
その子はズボンではなくスカートのようなものを履いていたのでパンツが見え見えになっている。
正人は上を見る。
「ん?
あー。
あたしのパンツ見たでしょう?
ねえ」
「ん。えっ。いや見ていないぞ」
「うそっ。
目がなんかいやらしいよ。
このまま踏んじゃおうかな。
一応今度は立体映像ではなくて実体があるからねー」
と言いながらメイちゃんは、足ではなくて指を近づけてくる。
指が僕の胸にあたり、ちょっと後ろのほうに押される。
「ほらほらっ」
つんつん。
「おい。やめろよ」
「あははっ。あたしのパンツを見た罰だよ。
今回は許してあげる。
もしかしてエリィお姉ちゃんのパンツを見ようとしたりしていないよね」
とメイちゃんは顔をぐっと近づけてくる。
「いや。していない。していないぞ。
エリィは、トオルの彼女だし…
って、なんでお前がここにいるんだ。
お前はずっと遠い星のかなたで、もくずとなって消えたんじゃないか?」
「なっ。なんでよ。
無事にトエールミナの船団は星に着いたよ。
地球とのゲートが開通したから遊びに来たの」
「ちっなんだ。残念」
「むー」
「むー。とはなんだよ。
このメールとっても期待していたんだからな。
それが会ってみるとこんなちんちくりんのガキだったとは。
どうしてくれる。
慰謝料をよこせ。100億円ぐらい。そうしたら許してやる」
「ガキじゃないもん。やっぱり正人はあたしの天敵だ。
そうだ正人に100億円の保険をかけてから事故に見せかけて殺るってのはどう。
そうすれば100億円が手に入る。
このまま手を下に下ろしてみようかな」
とじりじりと正人の頭上にあるメイちゃんの手が下がってくる。
このままでは潰される?
「ふふっ。とりゃとりゃ」
とぽんぽんと自分の頭がつつかれる。
「背が縮むだろう。やめろ」
「縮んじゃえ。縮んじゃえ」
「くっそ。図体ばかりでかいガキが。
じゃ俺の用事はなくなったところで、俺帰るわ」
と正人はメイちゃんの手のしたから離れると立ち上がる。
「わわわっ。ごめん。からかいすぎた。
実はあたしはエリィお姉ちゃんに会いにきたんだ。
トオルお兄ちゃんにも言っていないの。
びっくりさせようと思ってここに来ちゃった。
だから、あたしの知り合いは正人お兄ちゃんだけだから、
メールしたの」
「なんだよ。それ。まぎらわしいメールをするな!」
「正直に書いたら来てくれた?
こないでしょう。
だからあんなメールにしたのよ。
あんなのにひっかかるなんて。
ぷぷっ。
でもあたしの名前からわからなかったのかなぁ。
芽衣と書いてあったんだけど。
そこから想像できない?」
「ぐっそういえば芽衣と書いてあったな」
「じゃ。案内してくれる?
エリィお姉ちゃんのところ」
「なんでだよ。俺は知らねえよ。トオルからまだ聞いていないぞ」
「えーそうなの。
じゃ。聞いてみてよ。
あたしは、はるばる他の星系からたずねてきたんだから」
と急にメイちゃんは俺をわしずかみにする。
「おい。こらっ。はなせ」
「やだ。ここに入っていて」
とメイちゃんの胸ポケットの中に入れられる。
10メートルはあるだろう。
「おい。おろせ」
「やだ。
ほらっ早く連絡して。
でもあたしがいることは内緒にして。
いうことを聞かないとここから落とすよ」
本気ではないんだろうけど。落ちるのはいやだ。
ジェットコースターの下りの感じは絶対だめだから、それよりひどい自由落下の感じには耐えられない。
「だめだ。お。おとすのは。
絶対ふりだけでもだめだぞ
俺の心臓が止まっちまう。
今電話するから」
と言って電話をする。
「なあ。トオル。元気か?」
「なんだ。正人か。そういえばどうだったデートは?」
「あっあれか。間違いだった」
「なんだ。やっぱりそうか。おかしいと思った」
「くっそ。ということで今暇か?」
「えーと。今はエリィと一緒に買い物に出かけている。
もう少ししたら買い物が終わるけど…」
メイちゃんが小声で。
「エリィお姉ちゃんが住んでいる場所に行きたいからそこで待ち合わせることにして…」
ちっうるさいな。
「あのさ。俺。エリィさんの住んでいるところを知らないんだ。
後でエリィさんの家に行っていい?」
「どう? エリィ?」
とトオルがエリィに聞いているような声が聞こえる。
「いいって。じゃ場所はメールするよ。多分1時間30分ほどかかるから。
そのころに待ち合わせよう」
「わかった。サンキューな」
「うん。じゃ後で」
電話を終える。
「うまくいったようね。ありがと正人お兄ちゃん」
「こういうときだけお兄ちゃんか。
じゃどうするよ。それまでの時間」
「そうね。じゃデートしよう。デート。
あたしは仕方がなく正人お兄ちゃんとデートしてあげるんだから。
失恋した正人のためにね…」
「失恋していないぞ。お前のメールがきっかけなんだろうが」
「さあ。行きましょ。このあたりで面白いところはないかなぁ」
とメイちゃんは僕を無視して歩く。

……

「正人君。残念だったね」
「うん。まあ。僕はきっとそうなんじゃないかと思っていたんだ。
正人を元気づけてあげなきゃな」
「うんそうだね」
トオルとエリィは地球の町で買い物をしているところだ。
ちょうど町案内もかねている。
「やっぱりトエールミナの商店街と違うわね。広いし。空が高いし」
「あははっここはエレーネ星人のために、地球にある商店街をそのまま大きくしたようなつくりにしてあるんだって。
僕もここに来るのは初めてなんだ。
地球人1人だと立ち入りが禁止だから」
ここは地球人が下を歩いてはいけないことになっている。
だから僕がここに来るためにはエレーネ星人であるエリィと同伴で来る必要がある。
「やっぱり。地球に来て良かった。
ずっとトオル君と一緒にいることができるんだもん」
あの件以来、エリィは僕と可能な限りずっと一緒にいたいと言ってきた。
夜寝るときも、朝起きたときも…
でも僕はまだ学生なのでそれは無理だ。
だから学校が終わった後や、休みの日は可能なかぎり会うようにしている。
そして、明日は休みだから友達の所に泊まると言って、エリィのところに泊まるつもりだ。
最初はだめと断ったんだけど。エリィがどうしてもと涙目になって頼むのでそうしたのだ。
1年も僕を探していたからなんだろうか。
そのときにあるものが僕の目にとまった。
「あれってひょっとしてブラシかなぁ」
僕が腕をその方向へ向ける。
「あっそうだね。髪をとかすものだっけ」
「うん。そうそう。あれ買おう。僕が会計するよ」
「いいの? ありがとう。
ちょうどああいうのがなかったんだ」
「あれを使えばエリィの尻尾もブラッシングできる?」
「えっ。まあできると思うよ。でもトオル君が持つには大きすぎるよ。
そっちのもうちょっと小ぶりな感じで軽そうなものにしておいたら?」
僕はここからじゃ良く大きさがわからないんだけど、
一番最初に見つけたものより小さい。
どうしよう。
大きすぎたら持てないし、エリィが言うんだから小さいほうにしておくか。
「じゃあの小さいので」
「うん」
エリィに頼んでその品物を取り寄せてもらい、会計は自分で済ませた。
僕はこれを使ってエリィにブラッシングをしてあげることができると思った。
でも他にも買うものがある。
「あっあれなんだろう」
エリィが聞いてくる。
「あれはね…」
そんな感じで時間が過ぎていく。
僕はずっとエリィのポケットの中だ。
エリィの荷物を持ってあげることができないけど大丈夫かな。
僕じゃ荷物を持つことはできない。
しかも僕はエリィのポケットの中なので歩かなくてもいい。
とってもらくちんだ。
地球の女の子のときはこうはいかない。
きっと荷物もちだ。
エリィの荷物持ちを手伝ってあげることができなくて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

……

「さあついたよぉ。正人君はまだ来ていないのかなぁ」
とエリィはあたりを見回す。特に足元を。
「うーんまだ来ていないのかな」
僕も見てみる。
そして、
「中で待っていましょう」
とエリィは集合玄関になっている扉を開けた。

「ばー。やっほー」
とだれかが急に飛び出てくる。
「わわわっと」
とエリィはびっくりして後ろに倒れそうになる。
「わぁ。エリィお姉ちゃん」
とその子がエリィの手をつかむ。
エリィは後ろに倒れないですんだ。
僕もびっくりした。
エリィごと後ろに倒れてしまうんじゃないかと思った。
何メートルか後ろにエリィの体が移動したからだ。
「え。えーと。ありが…
め。め。め」
「め? め? め?」
メイちゃんが首をかしげる。
「メイちゃん? どうしてここに?」
なんかエリィは驚いたときに言葉がどもるらしい。
「あっわかった? 地球とのゲートが開通したから、遊びに来たの。
ほらっここに正人お兄ちゃんもいるよ」
とメイちゃんが手で胸ポケットを示す。
「お。おう」
「あっそんなところにいた。
いつから一緒だったんだ?」
僕は正人とメイちゃんを交互に見る。
「えーと。ちょっと前から。デートの待ち合わせの後に出会った」
「ぷっ。
そういうことにしておく。
そうなんだ。びっくりさせようと思って待っていたんだ」
「なんだそうだったの。本当にびっくりしたよ。
びっくりして後ろに倒れそうだったんだから…
今度からはあまり驚かせないでね。
トオル君が怪我したら困るから…」
エリィは自分が倒れることよりも僕のことを心配している。
けど、エリィごと倒れたら何メートルも落下することになるんだよな。
エリィの体があるから地面に激突ということはないと思うんだけど、大丈夫なんだろうか。
と考える。

「でも驚いたよ。メイちゃんが地球に来ているなんて、
トエールミナの人達はみんな元気かなぁ」
「うん。元気。エリィがいなくなって寂しがっているよ」
「あはっ。やっぱり。
いつか。あたしもメイちゃんの所に遊びに行こうかなぁ」
「うん。おいでよ。
そのときはトオルお兄ちゃんも一緒だよ。
正人お兄ちゃんは来なくていいから」
「なんだよ。それ。俺も行くぞ」
「エリィお姉ちゃんとトオルお兄ちゃんにはご馳走を用意して、
快適に泊まれるような場所を用意しておいてあげるから。
正人お兄ちゃんは空き箱の隅っこでいいよね」
「なんだよ。ずいぶんひどい扱いじゃないか」

と言いながらエリィ達一行はエリィの部屋に入る。
エリィの部屋は地球人から見ると体育館より広いぐらいに感じる。
天井も高い。
5階建てのマンションより高いぐらいだ。
でもエリィからしてみれば、そんなに広くはないらしい。
これでもエリィは十分という。
ひととおりのものはそろっており不自由はない。

部屋の色調は淡いピンクや緑色、青を基調とした感じだ。
「ここが、エリィさんとトオルの愛の巣かぁ。
このこの。うりうり」
と正人が言う。
「まだだよ。僕もこの部屋には数回しか来たことがないよ!」
「おっ。まだということは将来そうなるね」
「そうだね。いいなぁ。あたしもいい人を見つけたいなぁ」
と正人とメイちゃんは言う。
「そういえば明日は休みだけど、トオルはここに泊まる気だろ」
「えっ。なぜそれを…」
「やっぱり。トオルは俺のところに泊まるということにしておいてやるから、
俺も一緒に泊まっていい?」
「なんだよ。それ、僕が正人の所に泊まったという証言ができなくなるじゃないか」
「一晩じゅう。カラオケで歌っていたってことにすればいいじゃん。
ところでお前はどうするの?
やっぱりここに泊まるのか?」
と正人は上を見上げながら言う。
「あ。あたし?
あたしも泊まるところを決めていないんだ。
もし良かったらエリィお姉ちゃんのところに泊めてくれる?
正人お兄ちゃんは追い出してもいいからさ」
「あ。あたしはかまわないよ。
だれでも大歓迎だよ。いちおう正人君は追い出したりしないから安心して…」
「くー。エリィさん。いい子だよ。
こんなガキとは大違いだ。
エリィさんを見習ったらどうなんだ」
「むー。
あたしは正人以外だったら親切だよ。
正人お兄ちゃんなんか、星のかなたへ飛ばされちゃえばいいんだ。べー」
「くー。生意気なガキだなぁ。
なんとか言ってやってよ。トオルよ」
「えっ。僕に言われても。メイちゃんはいい子だよ」
「えへへっ。ありがとうトオルお兄ちゃん。
正人お兄ちゃんはしっし。あっちいけ」
とメイちゃんは正人を手でつかむと、床に下ろす。
「うわっ。なんだよ。急に床に下ろしやがって。
くっ」
と正人は言うが、上を見上げる。
そしてだまってエリィのほうをじっと見ている。
もしや…
「あー。正人はエリィのぱんつを覗き見ているよ。
早く踏んで駆除したほうがいいよ。その害虫」
「あっ。もしかしてそこからだと見える?
あたし、他の服に着替えてくるね…」
と言ってとたとたと歩いていく。
「こんなの。踏んじゃえ…」
とメイちゃんは正人の3メートルぐらい離れたところに足を何回か踏みおろす。
「ごわー。やめろー。
本当に踏んだらどうするんだー」
と正人は言う。
「へっへー。こんにゃろ。こんにゃろ」
メイちゃんは十分な距離を保って足を踏みおろす。
「わかった。わかった。ごめん。ごめん。あやまる。謝る。
だから。もうやめてくれっ。
下から見ていると。とっても怖いんだ」
メイちゃんはエリィと比べると小さいけど、地球人と比べるととっても大きい。
怪獣みたいだ。
「わかった許してあげる。
いちおう以後踏み潰さないように、あたしのここに入っていること。
そうすれば下からパンツを覗き見することもないだろうし。
って、そういえば、あたしが足を踏みおろそうとしているときも、
あたしのパンツを見ていたんじゃないでしょうね。
その返答によっては私刑にするんだから…」
「いや。見ていない。見ていないぞ」
正人は必死だ。
「よろしい」
とメイちゃんは正人を手でつかんで元のポケットに入れる。
「あっ。本当に怖かった?
正人お兄ちゃんの心臓。ばくばくいっているよ」
「本当だ。死ぬかと思った。
頼むからもうしないでくれ…
俺もパンツを見ることはしないから…」
「そう。その言葉忘れないように…
エリィお姉ちゃんを泣かしたらあたしが許さないんだから…
でもエリィお姉ちゃんだったら、トオル君になら見られてもいいんじゃないかなぁ」
「えっ何?」
僕はその言葉をあまり聞いていなかった。
「いや。なんでもない」
とメイちゃんは言う。
ちょうどエリィが部屋に入ってきた。
「おまたせ」
さっき買い物に出かけたときに買ってきた服に着替えたようだ。
エリィはその場でくるっと回転する。
エリィの服はステージにかかっているカーテンより大きいんだけれど
エリィの動きによってそんな布地がひらひらとめくれる。
「エリィ。似合っているよ。かわいいと思う」
「えっ。えへへっ。ありがとうトオル君」
エリィはそれを聞いてとってもにこにこ顔になる。
そんなエリィと僕を、メイちゃんと正人は見ている。
「いやっ。その。エリィの姿を見て、普通にかわいいと思ったから言っただけだよ」
「ラブラブだなぁ」
「ラブラブねぇ」
正人とメイちゃんはにやにやしている。
エリィもそれを聞いて顔が赤くなる。
そんなエリィを見てかわいいなぁと思う。
「ねえ。なんかしない? ゲームとか?」
と正人が言う。
「ゲームねえ。そんなのはあるのかなぁ。正人はどんなのがいいの?」
「あれだ。ツイスターゲーム」
「なあにそれ?」
「あたしも知らない。でもひょっとして正人お兄ちゃんの考えることだからきっとエロいんだよ。
もしエロかったら私刑だからね」
「うぐっ。さぁてどうだろうな…」
と正人は言うが重大なことに気がついていない。
「あのさ。この面子だとできないんじゃない?
体のサイズが違うんだし、僕たちの体にあわせた大きさだったら、エリィ達が小さすぎるし、
エリィ達の体の大きさに合わせたら僕たちは無理なサイズになるし…」
「うっ。そういえばそうだ。それはだめ。
じゃ王様ゲーム」
「それはどんなの?」
「ランダムに王様を決めて、王様が出した命令をランダムに決めた人が実行するというものだ。
王様の命令には逆らえないぞぉ」
「また。えっちぃこと考えているんでしょ。
だめ却下。正人お兄ちゃんの言うことはろくなものがないんだから…」
「ちっ」
と正人は舌打ちをする。
「じゃあ。せっかく地球にいるんだから。世界中を観光しようよ」
トオルは提案した。
幸いエレーネの子が地球に来るのにパスポートはいらないし、国の間を行き来するのに検査もいらない。
地球人は同伴なら面倒な入国検査もいらなくなる。
そこで、これを機会にいろいろなところに行ってみたいと思ったのだ。
「お。俺も行きたい。ところで何で行くんだ。金ならないぞ」
「エリィの宇宙船で行けるんじゃないかな。丁度修理から戻ってきたばかりだし…」
「ということはタダか。でも行くのに時間がかかるんじゃないのか?」
「いったん衛星軌道まで上がってからなら、そんなにかからないよ。いろいろまわっても明日中には帰ってこられるよ」
「おっ。いいなそれ。一度海外に行ってみたかったんだ。トオルも行ったことはないよな?」
「うん」
「じゃきまりだな。そういえば、おやつや食べ物を持っていかないとな。
でも俺は金欠だから出せないや。
トオルに全部おごってもらうか?」
「えっ?」
「ああ。大丈夫だよぉ。あたしはゲートの事故のときにゲートを管理している企業からいっぱい慰謝料をもらったから。
あたしが出してあげるね」
「おっ。いいのか?
ありがとうエリィさん」
「ありがとうエリィお姉ちゃん」
「いいの。こういうときに使わなくっちゃ」
ということで出かけることになった。