「う。うーん」
あたし、メイは最初に目が覚めた。
うーんどのぐらい寝たんだろう。
そして、隣で寝ているエリィお姉ちゃんの姿を見る。
まだスースーと寝息をたてているところを見るとまだ寝ているようだ。
そして、反対側の正人がいる付近を見る。
あれ? いない。
布団はもぬけのからだ。
もしかして、抜け出してエリィお姉ちゃんの近くに行って布団にでももぐりこんだんじゃないかと思った。
メイは起きたばかりなんだけど、念入りに調べる。
でもそのような形跡はない。
もしかしてあたしの布団にもぐりこんだ?
いやまさか。
あの正人はあたしより、エリィお姉ちゃんの方に行くはず。
それとも普通にトイレにでも行っているのかなぁ。
メイはしばらくそのまま待ってみる。
けれども正人がトイレから戻ってくる様子はない。
もしかして、あたしの体の下でぺったんこになっているんじゃないか?
以前にエリィお姉ちゃんと一緒に寝たときに、
寝相が悪くてエリィお姉ちゃんの上に乗っかって寝ていたことがあったっけ。
寝ている間にごろごろころがって、正人お兄ちゃんを押しつぶしちゃった?
メイはそっと正人お兄ちゃんの布団をめくってみる。
メイは潰れた正人がいたらどうしようかとどきどきしていた。
けれど布団のしたには何もなかった。
ああ良かった。
でもあたしの背中や布団のしたにぺったんこになった正人がいたらどうしよう
と思いながら背中を手でさぐってみたり、自分の布団をめくってみたりする。
ここにもいない。
どこにいったんだろう。
もしかして、エリィお姉ちゃんの布団の中にもぐりこんでいる?
どうだろう。
でも。今調べるとエリィお姉ちゃんを起こしてしまうんじゃないかと思った。
もう一度正人の布団を見てみる。
そういえば毛布がない。
メイはテレビがあるちょっと高くなった台のところを見てみる。
あっ。正人がいた。
1メートルぐらい高くなったテレビのそばの台の上に毛布と、
毛布に包まった正人が寝ているのがわかった。
なんであんなところにいるんだろう。
メイはそっと正人のそばに寄る。
「くーすー」
正人は素直な表情でかわいく眠っている。
毛布を抱きしめている。
なんかにやにやしている。
きっとエロエロな夢でも見ているんだろう。
メイはその表情を見て毛布を指でひっぱって、正人を台の上からころげ落とそうかと思った。
でも寝かせておいてあげよう。
寝顔はかわいらしい。
ミニサイズなので特にそう思うのだ。
メイは以前、人形遊びをしたことを思い出していた。
エリィお姉ちゃんも人形が好きだったっけ。
起きて口を聞くと悪口しか言わないし、憎たらしいし、でも本気で嫌っているというのでもない。
腐れ縁というか本気では憎めない、嫌いにはならないという感じだ。
それに正人にぺったんことか幼児体型とか言われたのが気になっていた。
そんなにぺったんこではないと思うんだけど。
なので、昨日の夜は正人に見せてみたのだ。
正人はメイからしてみればミニサイズでたいして気にもしていなかった。
でも体型のことで言われるとむかつく。
正人めと思う。
でも正人にあたしの体を見せ付けて、ぺったんこではないということを証明したかった。
正人がどきっとした表情を見せたら勝ちなのかなと思った。
そんなことを思いながらメイは正人の寝顔を見ていた。

……

「うーん」
とエリィは目を開けた。
もうだいぶ寝たんだろうか。
とエリィは目の焦点が合わないまま目をこすった。
そして自分の胸元を見る。
わわっ。
トオル君がこんな近くに…
と思ったら自分の尻尾でトオルをぐるぐる巻きにして大事そうに自分の胸元に引き寄せていたのに気がついた。
あたしったらなんてことをしているんだろうと思った。
でも良く見たらトオル君もすっかり寝ているようだ。
くーすー。
という寝息からしてまだ起きそうにもない。
ばれていない。
きっとばれていない。
エリィはそっと。
とっても慎重にトオルを隣の布団の上に乗せる。
そして、トオルの体を動かさないように自分の尻尾を根元から、トオルの体からくるくるっとはがす。
その間もトオルが目を覚まさないように慎重に尻尾を動かす。
そして、ほんとにそっとトオルを大事に布団の上に下ろして、静かに布団を上にかける。
「ふー」
これで大丈夫。
あたしが寝ている間にトオルを尻尾でぐるぐる巻きにしてあたしの胸元に手繰り寄せたという事実は
葬り去られたということになる。
と安心をしていると。
「エリィお姉ちゃん。起きたの?」
とメイちゃんの声。
「わわわっ」
と途中まで声を出して口をふさぐ。
そして後ろを振り返る。
「おはよう。エリィお姉ちゃん」
「う。うんおはよう」
エリィはメイちゃんを見る。
どうやら今までのことはばれていないらしい。
よかった。
「どうしたの?」
エリィは聞いてみる。
「いや。正人がいなかったから、エリィお姉ちゃんの布団の中にもぐりこんだんじゃないかと思っていたんだけど、
正人はあそこの上でまだ寝ていたから予想と違ったと思っていたところだよ。
夜中に正人お兄ちゃんはエリィお姉ちゃんを襲おうとしなかったよね?」
メイちゃんは聞いてくる。
多分それはなかったと思うとエリィは思って、
「いいや。なかったよ」
心の中であたしはトオル君を尻尾でつかんで胸に引き寄せちゃったけどねと付け加えた。
「ふーん。あたしはてっきりなんかしそうだと思っていたのよね。
意外と紳士だわ。
でも正人は猫かぶっているかもしれない。今日も注意しておいたほうがいいよ」
とメイちゃん。
「う。うん」
エリィは返答をする。


……

正人は寝返りをうったときに、台の上から落ちた。
「ごわっ」
いてててて。
死ぬかと思った。
今丁度ナイアガラの滝の上からダイブして落ちる場面の夢を見ていたところだった。
あまりにも落ちる感覚がリアルだったと思ったら実際に落ちていたのか。
正人は頭をふって、頭をさすりながら起き上がった。
すると。
「あっ。寝返りをうって落ちるなんて、
ばっか。ばーかだね。
きっとどこかから落ちる夢でも見ていたんじゃない?」
とメイちゃんがにやにやしながら言う。
「くっそ。ここで俺が寝ていた理由を知っているか?
こんにゃろめ。
お前の寝相が悪いから、あそこで寝ていたらぺったんこになりそうだったから、
ここに非難してきたんだぞ。
夜中にどすんと音がして、たたみがゆれたから目が覚めたんだ。
そしたら、俺の真横にお前の腕が投げ出されていたんだ。
このままだと次に目を覚まさないかと思って、毛布を持って安全なところに非難したんだ。
どうしてくれる。
このたんこぶ。
たんこぶの高さ1mmにつき100億円の慰謝料を払ってもらおうか?
ええ?。
この怪獣が」
とメイをにらむ。
「ふっ。正人お兄ちゃんの日ごろの行いが悪いんだよ。
正人お兄ちゃんがいい子だったら、こんなことにはならないんだよ。
もし正人お兄ちゃんがあたしの腕の直撃で即死しても自業自得だよ。
むしろあたしが悪を成敗したということになるんじゃない?」
くっそー。生意気なガキが。
「くー。この体のサイズが10倍でかかったら、お前なんかひとひねりなんだがな。
今にみてろ。いつか機会があったら成敗してくれる」
「やってみろってんだ。べー」
とメイちゃんは舌を出す。
「くー。むかつく。
お前の親にいいつけるぞ。
こんなことを言っているぞって」
「あたしの親の話を出すとは卑怯な。
さすが極悪人の正人。
でも告げ口をするとわかっていたら、一瞬で正人お兄ちゃんを地獄まで送ってやるからね。
この指で。というか小指だけでひとひねりだよ。べー」
くっ。小生意気ながきが。
と正人は思った。
でも大人気ないことに気がついた。
「ふっ。俺は大人だからな。ここで許してやる。
寛大な正人さまの言葉としてありがたく受け取っておくが良い。
お前の親にも告げ口はしないでおこう」
「くっ。偉そうに。
でも。喧嘩してばかりというのもエリィお姉ちゃんに悪いし、
休戦してもいいよ。
少なくともみんな一緒にいる間はそうしない?」
メイはエリィお姉ちゃんの困った顔を見てそう言った。
「ふむ。良かろう」
正人はメイに言った。

そして、そのころに丁度トオルが起きてきた。
「ああ。おはよう。みんな起きていたんだね。
そういえば、ついさっきまでエリィの尻尾にぐるぐる巻きにされていたような気がしたんだけど…」
とトオルが言う。
「えっ。えーと。きっと夢だよぉ。あたしはそんなことしていないよっ!」
エリィはあわてて言う。
「きっとそうだよね。エリィが隣にいるから、そういう夢を見てしまったのかな。
エリィごめん」
「えっ。いやいや。あたしは全然気にしないよ!。あっ。あははっ」
とエリィはすっかりあわてている。
でもそれは気にせず。
「ちょっとトイレ…」
とトオルは歩いてトイレの方に行く。
「お。俺も…」
一緒にトイレに行こうと思い、トオルの後をついていく。

……

「それじゃ。あたしはご飯を頼みに行くね。
ここに持ってきてくれるみたいなんだ。
エリィお姉ちゃんは今のうちに、布団を片付けて、窓を開けて空気を入れ替えてほしいんだ」
「う。うん」
エリィお姉ちゃんの返答を聞いてから、あたしは立ち上がって入り口のドアを開けて廊下に出る。
そしてすたすたと廊下を進んで廊下を歩いていた、ここの人に聞いてみる。
「あの。あたしたちはさっき起きたばかりなんですけど、
起きたら食事を用意してくれるというのを昨日聞いていたのでお伺いしたのですけど…」
「まあ。お嬢さんしっかりしているのね。
えーと。15号室のお客さんね。
ちゃんと用意してあるわよ。
そこの廊下を曲ったところに食堂があるからそこの人に聞いてからワゴンを部屋に持っていってね」
「うん。ありがとうございます」
とメイは返事をしてから歩き出す。
そして食堂でワゴンがどれかを聞いてからそれを押して歩く。
どうやら見たことがない食材だなぁ。
でもこれは何かの卵?
そして汁物。
そして白いつぶつぶがいっぱいお椀に入っていて湯気がたっている。
そのほかになんかの魚とか。
こういうのが一般的なんだろうか。
それに、何かわからないけど茶色い粒粒の豆みたいなものがあって、なんか糸を引いているようだ。
これは腐っているのかなぁ。
でもトオルお兄ちゃんに聞いてみたらわかるかなぁと思いながら廊下を歩く。
ワゴンにはエレーネ星人サイズの食事の御前と地球人サイズの御前が乗っている。
地球人サイズの御前も内容はまったく同じだ。
でもよくこの量で足りるわねとメイは思った。
ほんのちょびっと。
あたしなら舌の上に乗せたら一口でペロリと平らげてしまえそうだ。
トオル君や正人から見たらあたしが食べる食事の量はきっと怪物並みの量に見えるだろう。
正人が何か言ったら、あたしは正人の御前を取り上げて一口で食べてやろうとメイは思った。
メイは部屋のドアを開ける。
「おまたせ。エリィお姉ちゃん。トオルお兄ちゃん」
そしてその後
「おい。俺はどうしたんだよ」
と正人。
「そういえば。正人もいたね」
くっと正人は我慢する。
さてと、御前をあたしとエリィお姉ちゃんの座布団の前に運ぶ。
そしてあたしの隣に正人お兄ちゃん、エリィお姉ちゃんの隣にトオルお兄ちゃんの御前を並べる。
ほんとにちっちゃい。かわいらしい。
「いただきます」
と一向は手を合わせる。
メイはきちんと日本人の習慣を学んでいたのだった。
でも使われている食材はわからない。
しかもこれは何?
二本の棒のようなものが目の前にある。
「これはどう使うの?…」
メイはエリィお姉ちゃんに聞いてみる。
「うーんとね。これは手にもってこう使うの…」
エリィお姉ちゃんは箸というものを持つ。そして食材をつまんでくちに運ぶ。
「あははっ。ちょっとこぼれちゃった。でも大丈夫。だいぶなれたから…」
エリィの動作は少しぎこちないけど箸を使って食事をする。
でもだいぶ使いこなしている。
じゃあたしも…
メイは箸を手にとると、目の前の豆みたいなものをつまむ。
それを見ていたエリィお姉ちゃんが。
「それは難しいと思うよ…」
という。
「とりゃ」
メイは豆をつかもうとする。
「あっ」
メイは豆をつかもうと苦労するが豆とつかめず、そのときに箸を落とす。
その箸は正人のそばに落ちる。
「ごわー。あぶねえ」
正人にはあたらなかったようだ。
「えへへっ。ごめん。落としちゃった。てへっ」
その言葉に
「てへっじゃねえよ。こんなものが落ちてきて当たったら即死だろうが…」
正人は顔を引きつらせながら言う。
その表情を見て笑おうとしたが、メイは正人の隣に落ちた箸を見る。
箸の大きさは正人と比べてもかなり大きい。
もしかして危なかった?
あたったら怪我をしてしまう?
メイは。
「ご。ごめんね。次は落とさないように気をつけるから…」
と箸を拾う。
正人は
「うーん。ここで食事をしていたら今度は、メイが落とした箸で即死かも…
ということで俺はトオルの横に移動するわ」
と御前をかかえて正人は移動する。
それを見てメイは少し悪いことしたかなと思う。
そして。メイは箸を使う。
「とりゃ。とりゃ…」
でもなれないのでなかなかつかめない。
「これを使うといいよ」
とエリィお姉ちゃんは自分のカバンからスプーンのようなものを出す。
これなら使える。
「ありがとう。エリィお姉ちゃん。まだあたしには無理みたいだね…」
「そーだ。そーだ。がきにはまだ使えないんだよ…」
と正人の声が聞こえる。
その声を無視してあたしはスプーンを使う。
なんか異文化交流も難しいかもと思った。

メイが豆みたいなものを見る。
「おっそれを食うか。おいしいぞ。それはご飯の上に乗せるといいんだ」
と正人。
メイはそれをスプーンですくってご飯と呼ばれるものの上に乗せる。
そして一口食べる。
「おー。食べたな。実はなそれは腐っているんだぞ…」
正人は言う。
ぶーと噴出しそうになった。
「正人。メイちゃんに変なことを言わないでほしいな。
メイちゃん。それはそういうものなんだ。大丈夫だよ…」
「なんだよ。正人め。
変なことを言うから吐き出しそうだったじゃない?
あっエリィお姉ちゃんどうしたの?」
メイはエリィお姉ちゃんを見る。
エリィお姉ちゃんもその納豆と言われるものを食べようとしていたところだ。
「はははっ大丈夫だよ。ほらっ」
トオルが納豆を食べてみせる。
それを見て。
「トオルが大丈夫と言うんなら大丈夫ね。
でも糸をひいているからこれは大丈夫なんだろうかと思っちゃった」
エリィはきように箸を使って納豆をご飯の上に乗せるとそれを食べた。
「うーん。意外においしいかも。この醤油という調味料がいい味をだしているね」
正人は。その後に。
「メイ? この小皿に乗っている赤いしわしわのものもご飯と食べるといいぞ。
甘いからおいしいぞ…」
正人は梅干を箸で指し示す。
「むー。正人の言うことは信じられないな。
トオルお兄ちゃんどうなの?」
とメイは聞く。
「正人ひどいなぁ。これは甘くはないんだ。とってもすっぱいんだけど。
日本人以外の外国人とかが食べるととってもびっくりするよ。でもご飯とはとっても合うよ」
と言いながらトオルは梅干を食べる。
そして口をすぼめる。
「トオルお兄ちゃんが言うのなら…」
とメイは食べる。
それを見ていたエリィも同時に食べる。
「うんーん。すっぱい」
「そうだね。とってもすっぱい。でもおいしいよ。ご飯と合うね」
とエリィはご飯を箸でつまんで食べる。
ご飯が進む。
「くー。もう少しでだまされるところだった。正人め。
今度エレーネにある食べ物を、あたしが手でわしづかみにして、強制的に食べさせてやる…」
と正人に言った。
「なんだよ。それ」
「ふっふっふ。覚悟しておきなさい。次に来るときに持ってくる」
「そんなのは。子供だましだ。お前こそそれを食えるのか…」
正人め反論するか。
「あ。あたしは平気だよ…」
ちょっと苦手。
でも正人が食べたらごめんなさいと謝るに違いない。
それを思うとくっくっと笑いそうになる。
「きっと。あれだよね。正人に食べさせるのはやめておいたほうがいいよ。体が小さいんだし。強力すぎるよ…」
「なあに。大丈夫。大丈夫。死んだらそのときだから…」
「なんだよ。それそんなに危険なのか?」
と正人。
「そんなに危険なの?」
トオルもエリィに聞く。
「うーん。なれないとあまりトオル君は食べないほうがいいと思う。
この梅干より強力だから…」
「えっそれはすっぱいの?」
「いや。違うの。少し体がしびれるの…
あたしたちの体のサイズなら、そんなに影響はないんだけど。
小動物に食べさせないようにといわれているの…」
エリィが説明する。
「なんてものを食わそうとしているんだ。メイめ…」
「大丈夫。大丈夫。死にはしないよ。せいぜい1時間ぐらい体の痺れがとれないだけ…」
「ひどっ。立派な殺人犯だな。どう思うトオルよ」
「はははっ。僕は遠慮しておくよ。
でも正人が変なことをメイちゃんにしたら。僕がそれを正人に食べさせてもいいよ。僕が許可するよ。
いつも喧嘩ばかりじゃエリィも困っちゃうだろうし…」
「くっ。トオルめ。エリィちゃんという強力な人がついているもんな。まあいいさ
さっさと食べて、ナイアガラの滝へと行こうぜ…」
正人はご飯をかっこむ。
「ふっまあいいでしょう。
あたしも次のところに行きたいし…」
とメイもご飯を食べ始めた。
エリィが一番最初に食べ終わり、エリィがトオルが食べ終わるところをじっと見ているようだ。
エリィはにこにこ顔でトオルを見ている。
きっとエリィはトオルにラブラブなんだろう。
ミニサイズのトオルが一生懸命ご飯を食べているところをみてかわいらしいとか思っているのかなとメイは思った。
そしてあたしが、正人のほうをみると正人も食べ終わってあたしのほうをじっと見ているところだ。
「なによ」
あたしは言う。
「いや。怪獣だなぁと思って、山みたいなご飯を次々と平らげていくところなんか怪物みたいだと思って…」
くー。正人め。
でも正人とは喧嘩しないようにする。
「ふっ。あんたがミニサイズなんじゃない。
ぱくぱくぱく…」
正人の言葉を無視してメイは食べる。
「ちっ。そんなに食べると太るぞ…
ますますぽっこりお腹が大きくなるぞ…」
正人の言葉にぶち切れそうになる。
顔を引きつらせながら。
「あたしは大丈夫運動するから。それに正人みたいにオジサンではないから。少しからだを動かせばすぐに消費されるんだから…」
メイは言う。
「まあ。どうなんだろうな…」
正人は相変わらず悪口を言う。
ふんだ。無視しよう。

……

そしてみんな食べ終わる。
メイちゃんが片付けてくるねと言って部屋を出て行った。
「さてと。お腹もいっぱいになったし、あたしはさっぱりしてこよっと」
「おっ。もしかして温泉か?
俺もエリィさんと一緒に行きたいな...」
その言葉に
「残念でした。地球人とエレーネ星人は別だよ。ましてや混浴ではないし...」
「そうなんだ。がっかり。あたしはトオル君となら一緒でもいいんだけど...」
「だめだよ。エリィお姉ちゃん。規則はきちんと守らなきゃ。
トオルお兄ちゃんもがっかりした?」
その言葉にトオルは。「えっ。いや。なんというか。その...」
急に話をふられて答えが出てこない。
「いちおう。場所は隣なんだけど、絶対に覗けないようになっているって。
だから安心だね」
「う。うん。あたしはトオル君になら覗かれても文句は言わないんだけど...」
とエリィが言う。
けれども少しエリィの顔があかい。
僕もそれを聞いて恥ずかしくなる。

「途中まで一緒にいきましょう」
と各自必要なものを持って部屋を出る。
胸ポケットがないのでエリィの手によって運ばれる。
手は胸元に添えられているので振り回されることはない。
でも頭上でたゆんたゆんゆれる胸が気になる。
かああっとトオルは顔が赤くなり、どきどきしてくる。
なんか浴衣姿のエリィも色っぽい。
頭上の胸のボリュームも相当ある。
「はい。ついたよ。ここにおろすね。
帰りはここで待っていてね。
2人でこの廊下を歩いて帰っちゃだめだよ。
下を歩いていたら危ないんだからね」
とエリィは僕たちに注意する。
「う。うん」
トオルはエリィの胸のことを考えていて返答が少し遅れた。
じゃ行こうぜ。
と正人は入る。

「なんじゃぁこりゃー」
と正人が言う。
物はでっかいままだ。
でも床に矢印が書いてある。
ここをたどっていくことになるらしい。
そして、ものすごくでっかい湯船が見えてきた。
でも使用禁止。
矢印は外に続いている。
蛇口もでっかい。
そしてはるか上にある。
「なんだこれ...」
僕も言う。
スケールが全部10倍サイズ。
そして外にでる。
たっぷり歩いて5分。
でっかいサイズの岩がつんであるような形の湯船。
そこのはしには地球人が丁度通ることができるくぼみがある。
矢印はそこまで続いている。
そして下を見てみる。
「ごわっ。深っ」
向こう側までは100メートルぐらいはあるだろう。
しかも底までは7,8メートルはある。
そんな底に必要な一式のものが置いてある。
上から見てみると、いかにも簡易的に設置したであろうと思われるシャワー、
蛇口、

などなど...
そして湯船も岩一枚をくりぬいてつくったようなものが中央に置いてある。
どうやら、日によってエレーネ星人用と地球人用の露天風呂は入れ替わるらしい。
底までは湯船の端に地球人サイズの階段が続いている。
まあ。これも面白い。
「おもしろいなぁ。こんなの見たことがないや。
どう?正人」
「くっそー。メイめ。
絶対覗けないというのはやっとわかったぜ。
あそこの壁の向こうがエリィ達がいる露天風呂らしいが、
壁が30メートルもあるなんてよ...
下にも隙間はないし。
だめだな...
まあ。次はだれか他の女の子と来よう。
そしてこっそり、となりに連れて行ってもらおう。
きっとエリィみたいにいいよと言ってくれる子がいるに違いない。うししっ」
と正人は言う。
そんな言葉を聞きながらお湯を体にかけて湯船の中に入る。
岩をくりぬいて作った湯船。
設置するのもエレーネ星人なら簡単なんだろう。
無造作においてあるように思う。
するとエリィ達の声が聞こえてきた。
「わー。誰もいないよ。
そしてここに入ったら気持ちよさそう。
ね。メイちゃん」
「うん。そうだね。さっそく入ろうよ」
とじゃばじゃばとお湯をかけるような音が聞こえてくる。
普通なら距離が離れているのと壁があるので音は聞こえないんだけど、
隣にいるのが巨大な人だから音が聞こえるんだろう。
そして
「あー。気持ちいい」
「うん。若返るようだよ...」
「まあ。メイちゃんったら、まだ子供なのに...」
「メイは立派な大人だよ。心は...
それにメイの胸は結構成長しているんだよ。ほらっ」
「あっほんとだね。メイちゃんの胸もおっきくなってきているよ」
「えへへっ。でも...
エリィお姉ちゃんの胸も相当でっかいよ...
ちょっと後ろにまわって。
とりゃ。それそれ。ふにふにしてやるぅ」
「ひゃん。メ。メイちゃん何するの...」
とばしゃばしゃという水音とエリィが抵抗するような音がする。

「お。おい。なんか隣はすごいことになっているようだ。
トオル静かにしろよ。覗けないのならじっと聞いて想像してやる...」
と正人はじっと聞き耳をたてている。
「やっぱり。おっきー。あたしの手に余るぐらいの大きさだよ。
それそれ...
やっぱりやわらかいー
もういっちょ。とりゃ」
「ひゃん。やめてメイちゃん。
おかしくなりそう」
ばちゃばちゃと暴れる音が聞こえる。
「きっとこの声は向こうに聞こえているよ。
やっほー。トオルお兄ちゃん聞こえる?
エリィお姉ちゃんの胸すごいよー」
「ひゃー。恥ずかしい...」
エリィの顔が真っ赤になっているであろうと僕は思った。
「エリィお姉ちゃんの胸気持ちいいから。もうちょっとふにふにしてやるー。
それっふにふに...」
「あうっ。だめ...」
くっ。それを聞いてトオルは鼻血が出そうになる。
「おっ。トオルも想像していたんだな」
「い。いやちょっとのぼせただけ。
出る」
と僕は湯船から出る。
刺激が強すぎる。
もしエリィ達と一緒に入っていたら鼻血を噴出していたにちがいない。
その後もしばらくばしゃばしゃと水の音が聞こえてくる。
でも誰かほかの人が入ってきたみたいで、水の音が聞こえなくなり大人しくなる。
「ちっ」
と正人の声が聞こえる。

......
「おまたせ...」
とエリィとメイちゃんが出てきた。
「長いんだよ。ミイラになるところだったぞ...」
「むー。
女の子はいろいろすることがあるんだよ。髪も長いんだし...」
「そうそう。でもトオル君待ちくたびれちゃった?」
「いや。そうでもないよ...」
「あはっ。トオル君ごめんね。
じゃ一緒に行こうね...」
と僕はエリィに持ち上げられる。
そしていきなりエリィの胸にぎゅーと押し付けられる。
「うわっ...」
と言おうとしたけど、言葉が出てこない。
エリィに押し付けられているからだ。
そしていったんおしつけられていた胸から離れる。
「いったい。なにを...」
僕はエリィのむにむにしている胸(温泉に入ったばかりで湿っぽい)の感触に驚く。
「あたし。我慢できなくなっちゃって。もう一回こうしたいの...
それっ」
とまたエリィによって胸に押し付けられる。
ぎゅ。ぎゅっ。
トオルはエリィの胸に埋没する。
「ち。ち。ちょっと。エリィ」
僕は半分パニックだ。
「あー。いいなトオルばっかり...
エリィさん俺にも...」
と正人の声がする。
見られた...
でもメイちゃんの声がする。
「あたしも押し付けてみよっと。それっ」
とメイちゃんのほうを見ると、正人もメイちゃんの胸に押し付けられている。
「ぶっ」
正人も動揺している。
「こらっなんてことするんだよ...」
「正人お兄ちゃんの息遣いがくすぐったいよ。それになんかいい感じに胸が刺激されるぅ」
「こらー。め。メイやめろー」
と正人の声がする。
けれども僕もなんだか、わけがわからなくなる。
エリィの胸に押し付けられるたびにいいにおいがする。
そしてとてつもない巨大な胸のお肉の感触が体全体で感じることができる。
ぽよんぽよん。
むぎゅ。
もうどうでもいい。
トオルはへろへろになった。
まるで天国にでもいるみたいだ。
そして胸に押し付けられる力が弱くなる。
「なんかあたしもおかしくなりそう...
メイちゃん。あそこの休憩室で休んで行こうね...」
「う。うん」
メイちゃんも、とろんとしている。
僕ももちろん、とろんとしている。
そして正人もだ。
なんでこんなことになったんだろう...
僕はエリィのやわらかい胸に包まれながら目を閉じた。