そして僕は目をあける。
目の前にはどアップのエリィの顔。
「ごめんね。あたしどうかしてたみたい。
トオル君と離れて別の露天風呂に入ってから、
メイちゃんに胸を刺激されて、
その後にトオル君とふれあいたいという思いがつのって、
禁断症状が出たみたい...」
なんだそれ...
僕はびくびくしながらエリィを見る。
また胸に押し付けられるかと思ったからだ。
でももう大丈夫だ。
僕は隣を見る。
ちょうど正人も目をさましたみたいだ。
そして。
「ごわー。こんなガキの胸に抱かれたなんて。
でも一瞬、ときめいちゃったぞ...
ダメージがでかい。
ぐっすん。
ぐよぐよ...」
正人のほうがダメージが強かったようだ。
なんかこれでもう喧嘩はしなさそうだと思った。
強く言い返す気力もないらしい。
「もう。あたしの胸をつるぺたとは言わないよね...
やった。勝った」
メイちゃんが言う。
それが目的だったのか...
僕は思う。
そして十分休んだので出かけることにした。

......

「あたしはいつものとおりにトオル君をここに入れていくね」
とエリィはトオルを胸ポケットに入れる。
「ちえっしょうがない。あたしは正人を仕方がなくここに入れていくか…」
とエリィはトオルと一緒に、メイは正人と一緒に出ることにした。
「正人お兄ちゃん。大人しいね」
「ぐぬっ」
正人は言う。

「ほらっ。あれがナイアガラの滝だよ…」
僕はエリィに言う。
宇宙船の中から見ることしかできない。
地球人だけなら観光用の場所から見ることができるんだけど、
このへんは地盤がそんなに頑丈ではない。
そのため、エレーネ星人が地面に降りて、そこからナイアガラの滝を観測することはできないのだった。
宇宙船を規定の場所に止めて(空中で)そこから見るのなら可能であった。
宇宙船のハッチを開けて、上半身だけを外にだして滝を見る。
どどどっという滝の水が落ちる音も聞こえる。
外気にあてられてだいぶ気分が正常に戻った。
結構音だけでも迫力があるなと思った。
「わー。でっかい。すごいー。
こんなの見たことがない。
自然の力は巨大だね」
とエリィ。
僕もエリィの胸ポケットの中からナイアガラの滝を見て、滝の水が流れ落ちる音を聞く。
「次はあたしね」
ハッチからはエリィ1人だけ上半身を出しているので一人ずつだ。
「あっ。ごめんね。じゃ次はメイちゃんね…」
とエリィが言って宇宙船の中にもどる。
そしてメイちゃんがはしごを上っていく。
「ごわー。すごいなぁ。やっぱり迫力が違うなあ。
お前と一緒でなかったら、あそこから見れたのに…」
と正人の声。正人も回復したようだ。
どうやら地球人用の観測スポットから見たかったらしい。
「なによ。ここまで来れたのもあたしたちのおかげじゃない。
そんなことを言うと。正人はここから、川に捨てていくよ…」
というメイちゃんの声がする。
あいかわらずだなぁと思う。
「おい。やめろ。手でつかもうとするな…」
その口調からメイちゃんが正人を胸ポケットの中からつかみだそうとしているようだ。
「ひっ。ひっ。ここから落ちたらどうするんだ。や。やめろ。
このとおり、俺が悪かった許して…」
正人の声が聞こえる。
落下する感じが相当だめだから正人は必死にメイちゃんに言っているのがわかる。
「ふっ許してあげる」
「お願いだから...」
正人は最初よりずいぶん大人しい。

さてと次はどこに行く?
僕はエリィに聞いてみた。
そうしたら正人が復活して「オリオン座の馬頭星雲」
「なんだよそれ。地球じゃないだろう」
僕が言う。
「俺はそこがいい。きっとエリィさんも行ったことがないんだろう。
せっかく宇宙船があるんなら、スケールはでっかく違うところも行きたいと思うのが男ってもんだろう。
俺はこんな機会がなかったら宇宙にすら行くこともできないんだ。
ねえ。エリィさんお願いするよ。一生で10個のお願いの1つだけを使うから…」
と正人。
「おまえの願いは10個もあるのか…」
とトオルは言った。
でもそんなところに行けるのか?
僕はエリィに聞いてみた。
「いちおうここから行けるよ。地球だと結構有名な観光スポットらしいね。
地球人のリクエストでオリオン座の馬頭星雲がちょうどきれいに見えるところまでゲートが続いているから、
3時間もあれば行って帰ってこられるよ」
とエリィはコンソールを調べて言う。
まあそれならと僕も思う。
これから先もずっとエリィと一緒なら、地球上のいろいろなところに行くこともできるし…
と僕は思う。
「しょうがない。正人の頼みを聞いてあげてよ。
いちおう正人は僕とエリィが知り合うきっかけを作ってくれたんだしさ…」
と言って僕は正人を見る。
「ありがとう。トオル。俺の初宇宙旅行だ。いやっほう」
と結構正人は喜ぶ。
それを見て、僕とエリィ。メイちゃんが笑う。
そしてエリィがゲートを通過するための手続きをとろうとする。
「あれっ。ゲートの通行に規制がかかっているよ。最大で1時間待ちだって」
「あっそうなんだ。どうしよう」
「正人の頼みならあきらめよう。次にしようよ」
とメイちゃんが言う。
「なにおー。
なぁエリィさん。何とか手続きをしてみてくれない?
その間に違うところに行っていてもいいし…」
「なによ。あんたの宇宙船じゃないんだからね。
決定権はエリィお姉ちゃんにあるんだよ…」
メイの言葉にエリィは。
「いちおう手続きをしてみるね。あたしのIDを入れてと…
あれれっ。画面が変わったよ。
お得意さまの優先コードにより、最優先で手続き中とあるよ…」
エリィは不思議な顔をする。
そういえば、ゲートを管理している会社からゲートの事故で慰謝料をもらっているんだっけ。
きっとそれでかな。
僕は思った。
「あっここの宇宙港に行けば手続きは5分で終了するとあるよ…」
エリィが言う。
「おっ。それなら行こうぜ...」
正人は張り切っている。
「ねえ。オリオン座まで行くのに燃料とか手続きのために必要な経費とか大丈夫?」
僕は心配になって言う。
もし経費が高かったらあきらめよう。
「大丈夫。大丈夫タダだから...」
そうかそれなら大丈夫だ。
「じゃ行こうか」
僕は言う。
僕が言えばエリィは決定するだろう。
僕の言うことにだめとエリィは言ったことはない。

......

いったん宇宙港について僕たちは宇宙船から降りる。
そして手じかなカウンターへと移動する。
エリィのIDを見せると、職員の顔色がかわったように見えた。
「えっ。はい。わかりました」
と他の職員と連絡をとっているようだ。
「なんかあわただしいですね。何かあったんでしょうか」
とエリィ。
「いいえ。大丈夫です。少しゲートのトラブルがあって。
でも大丈夫です。お客さんが使用するゲートとは別なので...
では3番の廊下を曲ってからつきあたりにある個室で待っていてください。
係りのものがすぐに参りますので」
そうですか。
ありがとうとエリィが言うと僕たち一向は個室の中に入る。
そして1分ぐらいたつと。
「いやあ。あなたがエリィさん。そしてトオルさん。メイさん。正人さんですね」
あれっ僕たちの名前を言ったっけ。
僕は思った。
「私はこういうものです」
とカードを差し出した。
すると時空管理局とある。
なんだろう。
「先日は、ゲートの整備の不手際により、事故に巻き込んでしまって申し訳ありませんでした」
「えっ。ああ。いいよ。こうして無事に戻って来られたんだし。
それに散々ゲートの管理会社からお詫びの言葉をもらったから…」
「私たちはあの後にゲートの管理用の人員を10倍に強化しましたので、あんなことは二度とないように
します」
「はぁ」
僕はため息をついた。
なんで個室に呼ばれたんだろう。
まさかこのためじゃないよな。
「あの。
それで、僕たちはオリオン座の馬頭星雲が見えるところに行きたいのですが…」
とトオルは言う。
その時空管理局の人は
「申し訳ありません。
その方面に行くためのゲートは現在使用不能になっておりまして…」
「えー。
さっきゲート管理用の人員を10倍に強化したって言っていたじゃん?」
正人が反論する。
「申し訳ありません。
ここだけの話なんですが、テロが起きまして、
ゲートが数個破壊されてしまったのです。
なので、ゲートの通行に規制をかけているのです。
我々はそのためここに出向いているのです」
「ちえっ。だったらオリオン座。見に行けないじゃん」
正人はぷんぷんする。
「申し訳ありません。埋め合わせはします。
これでどうでしょう」
とその人が出してきたのは
期限無期限の。オリオン座馬頭星雲観光パスだ。
費用はタダ。
豪華宇宙船での半日の航行。
高級なおもてなしがあるらしい。
このパスの値段は0がいっぱい必要だ。
「ま。まぁ。これで許してやるか。
なあ。みんな」
と正人が仕切る。
「わあ。ありがとう」
とエリィはとっても喜んでいる。

……

そして。
僕達はそれを受け取り、席から立ち上がったときだった。
「あの。ちょっとよろしいでしょうか。
我々はオリオン座の馬頭星雲観光パスを渡す他に、
あなたたちに会う目的があってここに来ました」
「えっ?」
確かに、僕たち全員の名前を知っていたのが気になった。
しかも急遽遊びに来たメイちゃんのこともだ。
僕たちはそれを聞いて、この人のことを少し警戒する。
僕たちに何の話があるんだろう。

……
その人は、どこかと連絡をとっているようだ。
そして数分後。
テーブルの上には数々のスイーツ等のとってもおいしそうなものが並べられた。
「遠慮なさらないで。現地から特選のスイーツをあつめてみました。
みなさんのお好みに合うと思います。
食べながらでいいので聞いてください。
この後に話すことは機密事項です。
事が終わった後。適切な処置をみなさんにします」
「適切な処置って。俺たち皆殺しとか。刑務所に送って一生そこから出られないとか?」
正人は顔をしかめながら言う。
「はっはっは。
いや。違いますよ。
我々が使っている記憶を操作する装置で、関連する記憶を消去するだけです。
心配はしなくてもいいですよ。
長年使っている技術ですし、とっても安全ですから」
「ふーん。信用ならねえなぁ。
トオルどうする?」
「まあ。話だけでも聞こうよ」
と言ってみた。
後で思ったことなんだけど、話だけを聞くという選択肢はなかった。

「ところでよ。これ食べてもいいのか?
有料じゃないよな」
正人はずうずうしくお菓子に手を伸ばしている。
「無料ですよ」
「そう。じゃいただきっ」
正人は一番値段がはりそうなものに手を伸ばす。
「ぐぉー。なんじゃこりゃー。うめー」
なんか大げさだなぁ。
僕はエリィを見る。
エリィも僕のほうを見る。
2人で見つめて微笑みあった後に僕たち2人は同時に目の前のスイーツに手を伸ばす。
ほんとだ。
とってもおいしい。
僕はエリィを見る。
あ。エリィの顔がとろんとしている。
とってもおいしいらしい。
「あー。これ。口の中でとろけるよぉ」
とエリィが言う。
「良かった。
お口に合ったようですね。
それでは。お話します」

……

30分ぐらいその人は話を続けた。
携帯用のプロジェクターとかも使用して説明をしていたので内容はわかりやすかった。
どうやら、最近起きているゲートの事故やテロと関係があるらしい。
それに過去のエレーネの母星。
エレーネ星人が母星を離れて、宇宙を航行するようになったきっかけもテロと関係があるらしい。
最近わかったことだった。
一通り話しを聞いた後。

「うーん。そんなこと急に言われてもなぁ。
帰ろうぜトオル。
こんなことをする義理もないし…」
そうだな。
危険みたいだし。
僕はエリィを見る。

「もしあなたたちがこれを辞退した場合は歴史が大幅に変わってしまいます。
これは決定事項なのです。
これを見てください」

と僕たちが協力をしなかった場合の歴史をシミュレートした映像を見せられる。
それは過去。
エレーネ星人がエレーネの母星を脱出するところの場面からだった。
エレーネの母船いくつかがエレーネの母星から脱出できずに相当数の死者が出ること。
脱出できずに遭難したエレーネの船の名前にトエールミナという名前の宇宙船が含まれること。
地球人とエレーネ星人は出会わないこと。
さわりだけでこの影響がある。
その他、他の星系での貿易や他の種族達の惑星間戦争の終結の手伝いもすることなく
いくつかの星系の生物が滅びること。
いろいろ影響があるとのことがわかる。

「そ。そ。そんなことを俺たちに言われてもなぁ」
と正人は動揺しながら言う。

「それでも。あなたたちにやってもらわないといけません。
でも安心していいですよ。
あなた達なら、きっとやりとげることができる。
それにあなた達みたいな協力者が他に2組います。
それと決定事項として。
あなた達は必ず成功します。
その理由として、今があるからです」
「今?」
「はい。
このことはエレーネでも一部の人しか知りません。
ほんの数名でしょう。
あなたとエリィさん。
正人さんとメイさん。
あなた達が今ここにいるという事実から、
過去のエレーネ星からの脱出は無事に終わっているということです。
ということは、あなた達のミッションも必ず成功する。
でもこれは完全とは言えません。
我々に敵対する組織の妨害が考えられるからです」
と話したところでメイちゃんが言う。
「ねえ。ちょっといい?
さっき、あたしたちの他に協力者が2組いるって言っていたよね」
「はい。言いました。
きっとあなた達が知っている人でしょう。
現地に着くまで詳細は言いません。
信頼ができる人達です」
「ねえ。僕はすごく気になるんだけど、
あなたたちに敵対する組織の妨害って何?」
と僕はその人に聞いた。
「それは。最近起きているテロと関係があります。
でも安心してください。
我々は地球の政府機関とも関係がありますし、
未来の情報も限定的ながら得ることができるのです。
なので、事前に阻止できる事も多いのです」
「そう言ってもなぁ。危険だろ」
僕たちはあまり気がのらない。
「ねえ。ちょっと気になるんだけど。
さっきの映像。
もしあたしたちがこのミッションにかかわらなかったときのことで。
トエールミナの宇宙船も脱出できないってあったけど。
それは確実なの?
もし。
もしそうだったら、あたしのご先祖さんが死んでしまうってこと?」
エリィはとっても心配そうな顔をしている。
「さっきの映像は過去のことを調べた結果。
そうなる可能性が高いことを映像化したものです。
だから確実ではないのですが、
エリィさん。そしてメイさんの両名にはかなり影響があると思います。
もしかしたら、エリィさん。メイちゃんはこの世に生まれてこないという
可能性も考えられます。
そうなると、エリィさんはトオル君と出会うこともないでしょう」
その言葉を聞いて、エリィはなみだ目になる。
「そ。それは絶対いやです。
トオル君と出会わないというのは考えられない」
そしてエリィは言った。
「あたしやるよ」
僕も同じ気持ちだ。
エリィに関係があるのなら協力しないという回答はない。
正人とメイちゃんもお互いを見つめている。
「しょうがない。俺様がやってやるか」
と正人は言うがちょっと声がふるえている。

……

僕たちはその人と一緒に別の宇宙船に乗り込んだ。
そして何個かゲートをくぐる。
そして2時間ほどたったあと。
とある惑星にある基地に案内された。

「ここは。われわれの基地の一部です。
他の一般人からは絶対にわからない位置にあります。
では。こちらへ…」

……

その人に案内される。
2時間ほど移動が続いたので疲れる。
案内されたところはカプセルのようなものが並んだ部屋だ。
どうやら。リラクゼーション用のカプセルで、長旅でのつかれを癒すためのものだ。
それと、ミッションの目的、達成方法等を映像で流す。
実に合理的だ。
僕は地球人サイズのカプセル。
それよりもっと小さいサイズのカプセル
エリィサイズのカプセル。
さらにその倍ぐらいの大きさのカプセルも部屋に並んでいるのを見た。
きっといろんな種族用のものなんだろう。
それにしてもエリィより大きな人達がいるんだろうか。

僕たちはそのカプセル内に入る。
そして1時間後にカプセルから出た。
疲れもとれ、非常にすっきりしている。
それにミッションの内容もすべて理解できた。
すごくわかりやすい。
もう知識レベルもかなりのものだ。

「私の案内はここまでです。後はよろしく頼みますよ」
とその人が言ったときだった。
「びーびーびー」
けたたましいほどの音量の警報が鳴る。
「ごわっ」
正人もびくっとしたようだ。
びっくりした。
なんだろう。
警報だ。

「何?。
はい。
はい。
わかった」
その人は僕たちに言った。
「急いで、7番格納庫にある宇宙船に向かいなさい。
どうやら、敵にここが見つかってしまったようだ。
でも。
どうして。
ここは絶対ばれないはずなのに…」
敵?
テロ組織だろうか。

…………

ここはその惑星の衛星軌道上
「くはははは。
やっと見つけたぞ。
基地を叩き潰せ」
指令は言った。
「はっ」
総勢20名ほどの部下がいっせいに、格納庫へ向かってかけていく
(種族はさまざまだが地球人より小さいサイズの人達がほとんどだ)

その中に地球人もいた。
ロボット機械の設計者。
敵の施設に侵入するときに役に立つ対人用の殺戮ロボットの設計をしている。
自慢のロボットを20体持っていくことにした
(それは人の腰ぐらいの高さで蜘蛛みたいに足が数本生えている)。

「新型のロボットの威力を思い知るがいい。
これを地球の都市の真ん中に1つでの放してみろ。
砲弾を受けても破壊は不可能。
ノコギリ状の武器をあたりいちめんにまきちらし、半径50メートル以内の人を無作為に殺戮する。
毒ガスも装備している。
ぐははははっ」
と機械の設計者はひとりごとを言って笑う。
そうとうの自信家だ。

基地に降り立った後に、ロボットのスイッチを入れる。
くそっしまった。
毒ガスを充填するのを忘れていた。
まあいい。
これで十分だ。
そして、俺はここから20体のロボットを指揮することにした。
命令しなければ無作為に殺戮するが、今回はターゲットが決まっている。
地球人だ。
だから効果的にターゲットを排除するために自分は基地に潜入せず、少し離れたところから安全に指揮をすることにした。
他の仲間は基地に潜入し設備を破壊する班、情報を盗む班に分かれている。
地球人の殺戮は俺に任されている。
失敗は許されない。
でも大丈夫だろう。
自慢のロボットがあるのだから…。
「よし。行け」
それらのロボットは基地の中に潜入していく。
先に他の班の人達が潜入済みなので敵はいない。
あたりに人が倒れている。
倒れている人の数は圧倒的に敵が多いが、仲間も倒れている。
もうすでに絶命しているだろう。
血が大量に流れている。
ふっミスったな。
こっちはロボットを使って潜入させている。
頭を使わないとな…

……

しばらく廊下を進む。
そして見つけた。

「わわわっ。あれなんだろう」
「気持ち悪い。何あれ。見方じゃないよね」
という声がする。
ん?
げっ。
エレーネ星人。
地球人がターゲットではなかったか?
俺はロボットに搭載されているカメラを操作してズームする。
くっ。
あのエレーネ星人の胸あたりに地球人がいるのが確認できた。
くそっ。
あんなところにいやがる。
地球人だけという情報だったのに…
知っていたらもっと大きなロボットも持ってきたのに…
まあ。いい。
武器を飛ばしてあの地球人に当てるか、
あのエレーネ星人を倒してしまえば、
あの地球人もエレーネ星人の体の下敷きになって死ぬだろう。

ロボットを操作してもう少し近づく。
そして5体のロボットを先行させてから、ノコギリ状の武器を発射させる。
ひゅんひゅん。
どんどん武器が発射される。
いくつかは横に飛んでいき、壁にささる。
そして何個かはエレーネ星人のほうへ飛んでいく。
けれども、エレーネ星人が持っている何かにノコギリ状の武器は阻止された。
くそっ。盾か?
ならばこれでどうだ。
爆発する飛行物体。
パソコンを操作してロボットに命令を出す。
ひゅるひゅるひゅる。どどーん。
ばらばらと壁が壊れ壁の構造物が落ちてくる。
「きゃー」
という悲鳴が聞こえる。
けれども、彼女たちにしたらロケット花火が爆発したぐらいの威力しかないみたいだ。
くっ。
体のサイズが大きいとこっちに不利だな。
「わ。トオル君大丈夫?」
「うん。平気。それ使ったら」
と声がする。
カメラを操作して見やすくする。
何かを構えている。
そしてびゅん。
何か粘性のものが発射される。
びちょっ。
こっちから操作をしているロボットの半数は粘性のものに捕らえられて身動きが出来なくなる。
「くそっ。
生意気な。
もう役に立たないな」
パソコンを操作して、捕らえられて役割を果たせなくなったロボットに命令を出す。
自爆装置。
ぴ。
ぴ。
ぴ。
10数えたところでいっせいに爆発する。
どどーん。
廊下が瓦礫に埋まる。
先は通れない。

そして残ったロボットを彼女たちの足元にしのばせて
足元で爆発させるという作戦に出た。
「行けロボット達。爆発に巻き込むのだ」

と前進させたときだった。
準備に気をとられていたというのもあるが、
カメラにはとっても太い2本の棒が映っている。
しばらく見て彼女たちの足だということに気がついた。
彼女たちはいつのまにかロボットのそばに立っている。
そして急に7番ロボットの機能が停止した。
13番、4番、3番、8番のロボットも時間差を置いて機能を停止する。
なんだ。
どうした?
俺はロボットのカメラを真上に向ける。
すると、彼女達を下から見上げるようなアングルになる。
彼女のパンツも見えるぐらいの真下からの映像。
彼女は足を振り上げる。
これはもしかして…
足の裏がカメラの画面いっぱいに映った後、
そのロボットは機能を停止した。
踏み潰されたようだ。
くっ。
すべて踏み潰される前に爆破しないと。
あわてて自爆の命令を送る。
でも爆破の命令が届くまえにロボットは次々と機能を停止していった。
そして最後のロボットのうち1体だけ自爆がきかなかった。
くそっ。
故障か。
そのロボット一体だけ後退させる。
「あっ。逃げるよ。踏み潰して」
と声がする。
「逃がさないんだから」
という声がする。
彼女はかけてくる。
そして真上にジャンプして両足でそのロボットの上に着地する。
ザー。
その最後のロボットのカメラからの映像が途絶える。
一瞬パンツも見えたな。と思ったが。くそっと言う。
ロボットの強度を強化しないといけないな。
踏み潰せないぐらいにしておかないと。
というわけで、任務に失敗したわけだが、
衛星軌道上に停泊している宇宙船に戻ってからその策を考えようと思った。
そしてロボットからの映像と、ロボットが破損される直前に記録されたステータスを解析することにした。
ロボットが破損した後、破損の原因とロボットにかかった圧力の情報は
近くのロボットに送信するようになっていた。
そして最後のロボットが破壊された後はそのロボット単体で破損前の情報を送ってきていたのだった。
衛星軌道上の宇宙船が付近に来るまで1時間はある。
余分な武器も持っていなかった。
小さい銃があるだけ。
こんなものであの巨大な体のエレーネ星人に立ち向かうのは無理だ。
それに他の班がその施設を爆破するために爆薬を設置しているころだろう。
うまくいけば爆破に巻き込まれ、地球人も死んでしまうだろう。
だから、1時間ほど待っている間に解析をしておこうと思った。
それにその男は踏まれることに興味がある。
女の子数人に踏まれたことがあった。
巨大な女の子に踏まれたらどうなるかを考えたら興奮してきたのだ。
カメラに映像があったな。
それと踏まれたときにかかる重さ。
カメラに記録されていた、踏まれる直前の映像を呼び出す。
彼女が足を振り上げる。
その足は3〜4メートルほど上にあった。
8メートルぐらい上に彼女のお尻。
パンツも見える。
解像度が高いのではっきり見える。
頭の位置は13〜14メートルは上だろう。
地球の電柱の天辺より高い位置にある。

そしてこま送りで映像を流す。
だんだん彼女の足が大きくなってくる。
そしてカメラ全体に足がうつる。
踏み潰される寸前だ。
そしてそのまま進めていくとカメラからの映像が、足の裏だけになり、
そして、ばきっという音が何回か聞こえた後に映像が途絶える。
ロボットにかかった重さがどれぐらいになったかの情報も記録されていたので見る。
踏まれたときの最初の1秒は0kgからいっきに7000kgまで荷重が記録されていた。
次の1秒で23000kg。それ以上は記録されていなかった。
これは無理だな。
20トン以上だ。
そんな重さに耐えることができる素材は手に入れるのが難しい。
別のロボットのカメラからの映像も見る。
同じように足が振り上げられるが、今度は体が小さいほうのエレーネ星人のようだ。
足を振り上げたところで映像を止める。
こっちのパンツも丸見えだ。
かわいらしい柄のパンツをはいている。
足を踏みおろし、カメラの映像が足の裏を映し出す。
そして3秒後に映像が消える。
荷重は最初の1秒で0kgから4000kg、次は17000kgであった。
まあ小柄だからな。
それでも17トンだ。
そして最後に踏み潰されたロボットの映像を見る。
思いっきり踏み潰そうとしている映像が見える。
ジャンプしたので両足の裏がカメラに映っている。
そしてカメラいっぱいに足の裏が映り、これも2秒でカメラの映像が消えた。
荷重はと、
最初の1秒で0kgから17000kgにまで増大していた。
そして次の1秒で94000kg、最後に113000kgの重さが記録されていた。
ジャンプして思いっきり踏んだのでそれぐらいの重さがかかったんだろう。
この宇宙船もあんな重さがかかったらぺったんこだなと思った。
あのロボットが自分だったらひとたまりもないだろう。
100トンオーバーか。
ロボットの予算を増やしてもらおう。
それでも軽く触れただけで数トンの重さがかかりそうだ。
普通に踏んだら少なくとも10トン以上の重さがかかるらしい。
ものすごい痛いだろうなというか、あっというまに潰れてしまうだろう。
そこまで考えたとき
どどどという音が聞こえる。
とうとう基地が爆破されたか。
どどど。
どどど。

しばらくたった後も地響きが聞こえてくる。
それも定期的にだ。
なんだろう。
ずずーん。
ずずーん。
これはまるで巨大な何かが歩いているような音。
船外のカメラをとおして外を見るが何も見えない。
「なんだ?」
ずずーん。
ずずーん。
振動も強くなってくる。
そして見た。
なんて大きさなんだろう。
さっきのエレーネ星人の倍ぐらいの身長はあるだろう。
尻尾や獣のような耳が特徴の異星人だ。
それがこっちに向かって近づいてくる。
思ったより早い。
歩幅がすごく広い。
1歩歩いただけでぐんぐん近づいてくる。
そして真横まで来た。
とっても太い棒が見える。
なんて太さの足首だ。
さっさとあっちに行ってしまえ。
思った。
息をころす。
そして、ぎしっ。
宇宙船がきしむ。
まさか。
この宇宙船を踏み潰そうというのか。
待て。
宇宙船のきしみが止まり、少し宇宙船が上に動く。
ちょっと踏まれていたらしい。
さっさとあっちいけ。
ぎゅ。
みしっ。
ぎゅー。
ばきばき。
「おい。やめろ。こらっ」
宇宙船がゆれ床に倒れてしまう。
そして、さっき見た踏み潰されたロボットのことを思い出した。
今度は俺か?
さっきのエレーネ星人の身長の倍はあるから、
きっとこの宇宙船にかかる荷重も相当なものになりそうだ。
きっと100トンはゆうに超える力がかかるに違いない。
「やばいよな」
みしみし。
ぎゅ。
そして3秒の時が流れた。
その後はいっきに宇宙船の天井が落ちてくる。
ばきばきばき。
「ぎゃー」
5秒ほどすると、その宇宙船はかなりコンパクトになったというか。
踏み潰されてぺったんこになった。

……

その宇宙船を踏み潰した人は基地から脱出してきた時空管理局の職員だ。
体のサイズは一番大きい。
ここを設置したエレーネ星人の2.2倍はある。
脱出後、あやしい宇宙船(とっても小さいサイズ)があったので、
敵の物かを確認した後踏み潰すことにしたのだった。
今宇宙船は、その子の足のしたにすっぽりと隠れ、ぺたんこになっている。
強度はたいしたことない。
軽く踏んだだけで潰れた。
念のため全体重をかけて踏んでおくことにした。
ぎゅ。
ぎゅ。
これ以上はもう潰れない。
中に誰かいたのかはわからないが、悪人のものだ。
もう他にないよな。
あたりを見るがもうない。
「あたしも脱出しようっと」
その子は言った。