そして数日がすぎ、あの後からはその巨大な少女をみることがなかった。
外からの帰り道やビルやマンションの屋上。
テレビの中継。
あらゆるものを目をこらしてみていたが、あの後は会っていない。

そして2週間ほど過ぎたある日。
ふと、2Chの書き込みを眺めていてあるものが目にとまった。

「巨大な女の子がテレビに映っていたんだけど、見ていた人いる?」

僕の書き込みかと思ったが、違う。
僕の書き込みを見た人のあらしかと思った。

けれども、俺も見たという書き込みがところどころに書かれている。
うーん。
これはどういうことなんだろう。
単なる荒らしか、それとも本当に見たんだろうか?
僕はすごく気になった。

そしてある日の休日。
道を歩いてると。

「わ。あ。あ。あ」
と言って、地面にへたりこんだ人がいた。
僕は近くを歩いていたんだけど、なんだろうと思った。
その人はビルの上を見ている。
そして僕も見た。
巨大な女の子。
ビルの屋上に座っている。
そしてこっちを見ている。
その子は僕が見た子とは別人のようだ。
けれども僕にも見えている。
地面にへたり込んでいる人に声をかけてみる。
「ね。ちょっと。あの子が見えるの?」
「えっ」
その人はかたまった。
その人は僕と屋上の女の子を交互に見る。
そして。
「あ。消えた」
その声につられて屋上を見ると、巨大な女の子は消えていた。
「ねえ。立てる?」
僕は声をかけた。
「...」
僕はその人に手を貸して立たせてあげた。
そして、僕はその人を引っ張って、そばのベンチに座らせた。
まだ放心状態だ。
「ねえ。君も見たんだよね。あのビルの上の女の子」
「え。あ。うん」
「やっぱり。見間違いじゃなかったんだ」
「え。それって。君も見たの?」
「うん」
「なんだろう」

その後に、ファーストフード店に入り、いろいろな話を聞くことができた。
最初はテレビで。その後は僕と同じように何度かテレビで見かけたあと、実際に見たようだった。
もっと他にもいるのかもしれない。
僕はそう思い始めた。

……

3ヶ月後。
さらにどんどん見える人は増えていった。
見えない人もいる。
けれども有名人からの目撃情報も増えたおかげで、新聞やニュースの記事も出てきた。

さらに2ヶ月後。
僕のマンションの屋上に座っている巨大な女の子を見た。
走った。

ふうふう。
ふうふう。
エレベーターのボタンを連打で押す。

そして屋上。
まだ巨大な少女はいる。

彼女の後姿。
とてつもなく巨大なお尻が見える。
僕はそっと近づいていく。
そしてその巨大なお尻に触ってみようとする。
すかっ。
やっぱり触ることはできない。
でも、手を重ねているとお尻の弾力やあたたかさが伝わってくるような気がした。
きっと、実際に触ることができたなら、そのとてつもない巨大なお尻は
ぽよんぽよんしているんだろうか。
あたたかいんだろうか。

そのとき、少女が少し動いた。
少女が動き、お尻が少し持ち上がる。
少しといっても3メートルぐらいだ。
そしてお尻が落ちてきた。
うわ。

とてもびっくりした。
けれどもそれは見た目だけ。

お尻の下敷きになるかと思った。
ぎゅ。と押しつぶされるかと思った。
こんな巨大なお尻。
彼女のお尻の幅は歩いていって十数秒かかるぐらいある。
近くで見るとすごい重量感が感じられる。
そんなお尻の下にしかれたらぎゅーとなってしまうだろう。
でもやわらかそうなお尻だから乗っかられても大丈夫なんだろうか。
でも何トンもありそうだし。
何トンじゃきかないか。

とそんなことを考えていた。
このお尻の中に入っていったらどうなるんだろうと思った。
どうせ実体はないんだし、死ぬこともないだろう。
それにマンションの屋上には柵があるので、端に到達しても落ちてしまうことはない。
よし、入ってみよう。
僕はそのとてつもなく巨大なお尻に手をあてて、それから中に入っていった。
「う。うわ。何も見えない」
たしかに目で見えるのだから、目の前はお尻の中身を構成している肉体?のせいで
屋上の床も空も何も見えなかった。
自分の手すら見えない。
僕は手を前に出してそろそろと前に進んでいく。
しばらく進むと、急に視界が開けた。
「なんだ?」
すぐ真横には何か巨大な壁。
布みたいなものだ。
あ。
こ。
これは彼女の太もも?
僕は上を見上げた。
ぐお。
はるか上に彼女の顔が見える。
こっちのほうは見ていない。

でも。
なんて巨大な体なんだろう。
横の太ももの高さはすごい。
手を伸ばしても上には届かない。
それと、ものすごい重量感。
彼女が動くと壁のような太ももが動く。
ちょっと動いても、ずしんと屋上がゆれそうな感じがする。
そして真後ろ。
彼女の大事なところが見える。
彼女の体の縮尺から見て、僕はこおろぎとか、そのぐらいの虫の大きさに相当するだろう。
なんともまあ、巨大な体だ。
僕はどきどきした。
ばれないだろうか。
ばれたら簡単に殺されてしまいそうだ。
でも実体がないので触ることができないけど。
僕は目の前の大事なところに釘付けとなって、しばらく見てしまった。
そして、顔が赤くなり、恥ずかしくなったので前を向いた。
前にはマンションの屋上に座っていて、足をぶらぶら投げ出しているかのような足が見える。
とてつもなく太い。

そのとき彼女が動いた。
両方の壁(太もも)がせまってくる。
「うわ」
思わず声を出して手でおしのけようとした。
けれども手はすかっと、かすってしまう。
また視界がさえぎられてしまう。
前のほうに移動した。
やっと首だけ、彼女の体から上に出た。
両方には彼女のやわらかそうな足の壁。
実体があったら、彼女がちょっと動いただけで
何十トンかの力でぎゅっと押しつぶされてしまうだろう。

そしていきなり両側の壁が持ち上がりはじめる。
そして彼女の両足が僕の体の左右に踏み下ろされる。
彼女はマンションの屋上で立ち上がったようだ。

これはひょっとして。
僕は真上を見た。
はるか上には彼女の股が見える。
ズボンみたいなものをはいているせいで、残念ながらパンツは見えなかった。
そして、そのまま空中へ解けるように消えていく彼女。

ああ。
消えていく。

それにしても彼女は何をしていたんだろう。
どこか、違う世界では彼女の体には実態があるんだろうか。

彼女がいなくなった屋上はとっても広く感じる。