廊下に出ると、昨日と同じく真正面にドアがある。

がちゃ。

ドアを開けた。
どすん。どすん。
今日もLevel4の子が入ってきた。

やっぱりでけえ。
「今日はお尻の刑ね。おしおきだから潰さないようにする。
赤い印のある床に寝て。それ以外のところに寝たらぐちゃぐちゃだよ」

ぐっ

言われたとおりにする。

赤い印のある床はこれか。
仕方がなく寝ることにする。

また、彼女は服を脱いでいる。
全身の服を脱ぎ捨てているところだ。
やっぱり、でっかいし。
真下から見ると結構。お肉がつくところはついている。
ぽっちゃりか。
太ももやお尻は足ととん。と床につくたびにお肉がぶるぶる揺れている。
400トン。
そんなにあるのかと思う体。
じっと彼女の体を見ているとやっぱりそのぐらいの重さありそうだとも思う。

「じゃおしおき。始める」

彼女がおばあちゃん座りになる。
正座する格好で足先を少し幅広にして、お尻を床にくっつけることができる姿勢。
その姿勢のまま、立膝になっている。

やっぱ。でけえ。
ものすごく大きいお尻。
お尻の片方で3メートル以上ある。
両手を広げても、片方のお尻の幅には届かない。
2人がかりで両手を広げてやっと届くかというお尻。

ずずーん。という感じで俺の真上に迫るお尻。
お尻しか見えない。

お尻の上はどうなっているんだろう。
お尻の上は普通に考えて、上半身がある。
上半身の重さもかかるのか。
お尻だけでも、相当な重さ。何十トンはあるだろうし。
上半身の重さを考えると100トン。200トン以上はあるだろう。
俺の上にお尻を乗せて、体重をかけたら200トン以上の重さがかかる。
うぐ。
絶対ぐちゃぐちゃだ。

でも今日はお仕置き。
今日も床が凹むんだろうか。

「じゃお尻で踏む。言っておくけど。今日の床は凹まないから。潰れないように踏ん張ってね」

「おい。ちょっと待て。床凹まないのか…」

お尻が下がってくる。
3メートル。
2メートル。
1メートル。
50cm。
30cm。

「ぎゃー」
お尻が触れた。
死ぬ。絶対死ぬ。
もういやだ。

ぐふ。
ぎゅ。
お尻が俺の体の上に乗る。
ぎゅ。
ぎゅ。
ぎゅう。

「ぐ」
「ぐは」
うぐぐ。
息ができなくなった。

「お尻あげるよ」
お尻が1メートル上がる。

はあはあ。
全く息ができなかった。

「どう。重かったでしょ。でも触れているか、触れていないかというぐらいの力に加減しないとすぐ潰れちゃう。
また乗るよ…」

またお尻が下がってくる。

ぎゅ。
ぐぶ。
一気に重たくなる。
息ができない。
両手は使えるので、超巨大なお尻をぱんぱんと叩く。
ギブアップ。ギブアップだ。
超重い。

お尻を叩くが。

ぎゅ。
更に重たくなる。

「ぐはあ」
息も強制的に吐出される。
ぎゅ。
少しお尻が持ち上がって、重さがかかる。

ぎゅう。
失敗した。
息継ぎをするの忘れてた。
お尻が持ち上がったタイミングで息をしないとやばい。

ぎゅう。
むぎゅう。
くそ重い。
さらに重たくなるお尻。
もう、お尻かどうかわからない。なんかの巨大なお肉と途方も無い重たい物体が乗っている感じしかない。
全体重をかけられたらどれほどのものだろう。

ぎゅ。
重さがかかった後、お尻が持ち上がる。

はあはあ。
はあはあ。
やっと息ができる。

「今度は潰れないように。限界まで重たくしていくから。今のうちに息をしておいたほうがいい」
げっ。
もうやめろ。
潰れる。
死ぬ。

「お」
ぎゅ。
ぐは。
重たい。
ぎゅう。
重たい。
ぎゅうう。
「うぐえ。」
内臓が口から飛び出るんじゃないかと思うぐらいに、お尻の重さがかかる。
潰れる。
肋骨が悲鳴をあげる。
ぜったいぼきっていくぞ。
ぎゅう。
重い。
無理。これ以上重さかけるな。
潰れる。

ちょっと重さが軽減された後。
ぎゅう。
ぎゅう。
ぎゅううう。
ぎゅううううう。
ぐはあ。
死ぬ。
死ぬ。
手でばんばん。お尻を叩く。
もう限界。
潰れる。
胸が潰れる。
ばんばん。
ばんばん。
ばんばん。

ぎゅう。
ぐは。
更に重たくなる。
ぎゅうううううう。
だ。だめ。
力を抜くと絶対潰れる。

ぎゅう。
と重さがかかったと思ったらお尻が持ち上がる。

「まだ。潰れてないよね。今日のお仕置きは終わり。この後Level4の処刑が急にきまったから。出口はあちら」

女の子が立ち上がる。

俺はよろよろと立ち上がる。
はあはあ。
はあはあ。
まだ。胸が圧迫されている感じ。
胸を触ってみた。
少し平べったくなっているんじゃないか。

そのとき。
がちゃ。

男が3人入ってきた。

「おい。やめろ。悪かったよ。反省するよ。Level4の死刑は嘘だよな。う。やだ。ぎゃー」
男の人はたしか、354番。Level2の処刑の罪を言われてた人。
「あばれるな。脱走をしようとしたからだ。お前はLevel2の刑だったが、脱走をしたことによりLevel4の刑となった。
今日は踏みつけの刑と処す。10回踏まれるが、10回のうち3回は床が凹まない。そのときがお前の最後だ」

「いやだー。俺が悪かった。今後悪いことしないから。許してくれよぅ。やだ。やめろー」
ものすごく騒いでいる男。

所定のところに連れて行かれる。
男はどんと突き放されて床に倒れる。
そこを、両手。両足に手錠がかけられる。
そのまま両足。上半身を2人の人に持ちあげれれて、ちょっと移動させられる。
あの位置は、俺が昨日踏まれた場所だ。

「じゃ踏むよ。10回のうち3回は床が凹まないから。ぺっちゃんこだね。10回のうち。どこで床が凹まないかはあたしも知らないから。
ちなみにあたし473トンあるから。公式には400トンだけど。じゃ始めるわ」
73トンも重かった。
でも、途方も無い重さなので関係ないが。
「ぎゃー」
やめろ。と叫んでいる男。
その処刑場面を俺は見ている。

足が男の真上にかかる。
一瞬男の声がやむ。

足がゆっくり下がりはじめる。

「ぎゃー。俺が悪かった。許してくれ。ミチコ。ぎゃー」
足がさらに下がる。

「うぎゃ。潰れるー。やめろー」
足はまだ下がりきっていない。
でももう時間の問題。

ごくり。
中止にはならないのか。
やっぱりこれはお仕置きだ。と言って。ぎりぎりのところで中止になるんではないか。
俺はそう思っていた。

足が下がりきる。

「ぎゃー。やめろー。ぐ。ぎ。ぎゃー…‥ごぼごぼ…」
悲鳴の最後は声になってなかった。
彼女を見ると。
ぎゅ。
体重をかけて踏んでいる。
さらに。
ぎゅ。
ぎゅう。
にちゅう。
何かが潰れる音。
とうとう彼女は片足で立つ。
全体重が男だったものの上にかかっている。
にちゅ。

音がする。
ちょっと血のにおい。

やっと。彼女が足を上げる。

ぐちゃ。
彼女の足の裏にへばりついていた何かが床の上に落ちる。
べちゃ。
という感じ。
30、40kgぐらいの物体。
赤かった。

うぐ。
気持ち悪くなった。

あれが処刑か。
膝ががくがくする。

立っていられない。
早く戻ろう。



ベッドに倒れこむ。

床にべちゃっと落ちた赤い塊。
あれが、頭に浮かぶ。
絶対いやだ。

10回踏むと言ってたが、床が凹むタイミングはランダムだ。
最初の1回で死ぬとは。運が悪いやつだ。

ぶるぶる。
体の寒気が止まらない。
あんなのを見たせいだ。
食事も用意されているが、食べる気にはまったくならない。

絶対いやだ。
俺はLevel2の刑だが、体重がものすごい。
Level4の子から見ればかわいいものだが。トン単位の子に踏まれればぐちゃぐちゃだ。
そんな最後はいやだ。
真っ当な人間になるにはどうすればいい。
真剣に考えることにした。

まずは引っ越そう。
そして誰もいない土地でアルバイトをする。
工場でもいい。
どんな辛い作業でも。この処刑になるよりはましだ。
お金をだまし取ろうと思ってたやつには、家のポストにお金を入れた封筒を入れてから。
街を出よう。
幸い、俺の面は怖くはない。
警察にも目をつけられなければ大丈夫だろう。
よし。
そうしよう。
でも。

どうなるんだろう。

……

俺は考えながら横になっていた。

ビー。

ブザーが鳴る。

「呼び出しだ。廊下を出て右に曲がって行け」
と放送がかかる。

眠ったが。まだ胸がむかつく感じがする。
昨日の処刑を見たせいだろう。

また。食事は用意されているが手はつけない。
でもミートパイは4つある。
それを2つポケットに入れて、部屋を出ることにした。

右にまがって行くと部屋のドアがある。

部屋に入るとおっさんがいた。

「351番。お前はようやっと改心したようだな。我々の観測だと、お前は今後犯罪を起こすことがないという判定になった。
よって。今日で開放される。
だが忘れるな。我々はお前を監視し続ける。悪いことをすれば。またここに戻ってくることになるだろう。
そのときはLevel4の刑だぞ」

へたっ。
俺は床に座り込んだ。
やった。
終わった。

あれ。
涙が出てきた。
安心したのか。

「これを飲め。眠くなるだろう。目が覚めたらお前の部屋だ」
コップとくすりを渡されて。俺は飲む。

……

「んあ」
俺は目が覚めた。
いつもの部屋。
そう。
俺の部屋だ。
なんだ。夢だったのか。

でも。
でも。この胸がむかつく感じと。胸が押しつぶされたかのような圧迫感。
ちょっと肋骨にヒビが入っているんじゃないか。

ポケットに手を入れた。

「あっ」
右のポケットからは、ミートパイが2つ出てきた。
左のポケットからは、あのスプーン。
警備員が踏み潰してまっ平らになっているスプーンだ。

スプーンを見ると。体ががくがく震えてきた。
やっぱりあれは本物。

くっ。
真っ当になろう。

まずは、お金か。
引っ越し準備。
お金をいれる封筒も探さないと。
くそっ。封筒はないか。
コンビニで買ってくるか。

外に出た。

まぶしい。
空が青い。
道路を行き交う人達。

久しぶりに見た。
普通の平和な日常。
がんばろう。

男はコンビニに入った。

……

「さすがですね。チーフ」
従業員は言った。
チーフと言われたのはあのおっさんだ。
「当然だろう。今回も4人。全員改心して元の場所に帰ったぞ」
「あっしの縁起もすごかったと言ってくれないと……」
あっしと言った人。354番だ。
Level4の刑で踏みつぶされたはずの人。
実は裏の真相があった。

時はちょっと遡る。

……

「351番から354番はあそこから次の部屋に行け。Level1のお仕置きがある。
そして350番、お前はLevel3の刑の予定だから、俺についてこい」
と言われる。
俺は350番。
俺だけLevel3の刑だ。
やだ。
Level4の刑の後をなんで俺だけ見せられるんだ。
きっとぐちゃぐちゃだ。

俺は周りを見ないように、おっさんの背中だけを見てついていく。
行かないと、警備員に踏まれると思ったからだ。

「みろ」
おっさんが言う。

絶対いやだ。

「みろ」
警備員に踏み潰させるぞ。
とおっさんが言う。
目を開ける。

うわ。
ぐちゃぐちゃだ。
潰れて厚みがなくなって、体の一部が飛び散っている死体。
でも死体ではなかった。
体液というか血液が緑色。

「これは、Level4の刑の予行演習だ。4人の体はダミー人形だ。
でも精巧に作られている。骨もある。筋肉もある。内臓もある。身体の強度も同じだ。
もし、本当に400トンの彼女にお尻で踏まれたらこうなるぞ」

ぐちゃぐちゃ。
1人のダミー人形は少し離れたところに落ちている。
彼女のお尻の裏にへばりついた1体だろう。

「見ろ。全身の骨がくだけているぞ。頭も潰れている。Level3の処刑もこれほどではないが、こんなものだ」

ひっ。
想像したら悲鳴がでそうになった。

本当に全身の骨がくだけている。
400トンの彼女にお尻ぺったんの刑になっただけ。
お尻はプリンとしていて、すごく柔らかそうだったが。
400トンの重さが途方も無い破壊力だ。

「あと。これは内緒だ。他の奴らには演習とは思わせないでおけ。もしばらしたらLevel4の刑になる」
「うぐ」
「では戻れ」
おっさんが言う。

……

354番の刑のとき。
354番は別の部屋にいた。
別の部屋で、マイクを片手にこう言っている。
354番に似せた人形は2人の人に抱きかかえられて運ばれている。
「いやだー。俺が悪かった。今後悪いことしないから。許してくれよぅ。やだ。やめろー」
ものすごく騒いでいるダミー人形の動作に合わせて男が言う。
マイクから入力された音声はダミー人形の口から発せられる。
「ぎゃー。俺が悪かった。許してくれ。ミチコ。ぎゃー」
「うぎゃ。潰れるー。やめろー」
「ぎゃー。やめろー。ぐ。ぎ。ぎゃー。助けてくれ。悪かった…‥」
としゃべる。
でも最後はごぼごぼという音になってしまった。
ふっ。ちょうどいい。臨場感が出るだろう。

人形は踏み潰された。
人形の体液は赤いものになっている。
男から取った血液をもとに作ったものだ。
血のにおいもするだろう。

354番はもともと、ここに連れて来られた受刑者だったが、ミートパイの味が気に入って、
元の世界に帰ることをこばんだ。
ここの手伝いをして暮らすことになった。
連れて来られた受刑者として縁起をして。
最後にLevel4の踏まれ処刑や、お尻ぺったんの刑の縁起をする。
それを他の受刑者に見せて改心させる。

ミートパイを作っているのもここの従業員。女性だ。
354番は、刑人としていたころから、ミートパイを気に入っていた。
ミートパイは女性の従業員が趣味で気に入った人にだけ出していたものだ。
心優しい。
そんな彼女が気に入り354番は残ることにしたのだ。
元のところに帰ってもいいことないし。

それにでっかい女の人とお尻が好きな354番。
彼女たちの体重も測ったことがある。
お尻のサイズも図らせてもらった。
それが354番がここにいる理由。

また。ちょっとすると新たな受刑者が来るんだろう。

ちょっと休憩するか。
354番は休憩室へと歩いて行った。