「これ。今日の成果。シュークリーム。上手にできたわよ。
あたしは、荷物を置いてくる」

とサラは言い、居間を出て行く。

「ああ。市販品と比べても上手だよ。ほら見て、隣にすごく小さいシュークリームもあるし…
覚えてくれていたんだね」

とミミちゃんはサラ作のシュークリームを見せてくれる。

うわぁ。
でっか。

直径は1メートルぐらいあるだろうか。
焼き色は少し濃い。
上には甘そうな粉がかけられている。

「意外にまともだな。それにこれは僕の分か…」

超巨大シュークリームの隣にはすごく小さく見えるシュークリーム。

「お皿の上にうつすね。君の分のシュークリームは自分で取ってね。
あたしがつまむと潰しちゃうから…」

ミミちゃんはお皿を取りに行く。

うーん。
以外にまともなシュークリーム。
じつにうまそうだ。

それにしてもこの超特大シュークリーム。
体を丸めればこの中に入れるぞと思う。

ミミちゃんが戻ってきた。

お皿の上にシュークリームをうつす。

「あたしが手伝ってあげるね」
とミミちゃんは僕の腰あたりを指数本で握り、シュークリームが入っている箱の中へ入れられる。
僕は宙吊りだ。ミミちゃんの指数本で支えられている。
僕はシュークリームを手に取る。

思ったより大きい。
直径が普通のシュークリームの3倍ぐらいはある。

「うわぁ。それもでっかいね。
でも。これと比べてみる?」

僕はテーブルの上へ下ろされる。

僕は地球人サイズのシュークリームを皿に乗せる。

並べて、テーブルの上から見ると、いかに巨大かがわかる。

きっとこれ、僕が小さい子供だったら夢のような光景じゃないだろうか。
だって、一抱えできるぐらいの巨大なお菓子が皿の上に乗っている。

食べきれないぐらいの大きさ。

「これ押してみて…」
ミミちゃんが、長巨大シュークリームを指さして言う。

僕は超特大シュークリームに手をかけて押してみる。

ぐ。
うーん。
ううーん。
ずり。
かなり力を入れるがほんのちょっとだけ動く。

「持ち上げてみて…」
ミミちゃんは注目して見ている。

超特大シュークリームの底に手を入れて持ち上げてみようとする。

うー。
うーん。
ううーん。
はあはあ。

「全く持ち上がらないよ。これ」
なんて重さだ。
僕より重いなこれ。

「あはは。やっぱり無理だよね。
君だったらこのシュークリームの中に入っちゃうね」

僕はシュークリームの上側をちょっと持ち上げてみる。
これはなんとか持ち上がる。

中にはとっても大量のカスタードクリームとホイップクリームが入っているのがわかる。
きっと1000人分ぐらいの量がこの中に入っているんだろう。
中に入ったらおぼれそう。

……

「あんた。何やっているの?」

サラが戻ってきた。

「シュークリームの中を覗いて…
普通のカスタードとホイップクリームだよ。
あんたのも同じだからね。
あんたの分。作るのすごーーーーく大変だったんだからね。
小さいから、何回も指でつまんで潰しちゃったんだから。
残さないで全部食べるのよ」

地球人サイズのシュークリームを見る。
標準のシュークリームと比べると大きいが、
でっかいサラが地球人サイズのシュークリームを作るのはすごく大変であろうということがわかる。
シュークリームのがわは柔らかいし、中にクリームを入れるのも大変だろう。

僕は手前のシュークリームの上のがわを取ってみる。

僕の隣にある超巨大シュークリームの中身と同じ。カスタードとホイップクリームが入っている。

「いただきまーす」
とミミちゃんは、超巨大シュークリームを手にとって口に運ぶ。
ミミちゃんが手に取ると超巨大シュークリームも普通サイズ。
普通よりちょっと大きめぐらいに見える。

「おいしーよ。このカスタードの甘さとか、ホイップクリームの量とかちょうどいい」

どれ。
僕はテーブルの上に座り込み、シュークリームを食べてみることにする。
(ソファへ移動したいが、ソファとテーブルの間にはすごい峡谷のような隙間があるので移動は無理)

「うん。普通にうまいぞ…
サラにしてはやるな」

「まあ。当然でしょ」

僕はミミちゃんを見る。
最初のシュークリームはすでに食べ終わり、2個目のシュークリームへと手を伸ばしている。

僕も2個目のシュークリームへと手を伸ばす。

そして。
ぱくっ。

「ぐはぁ。
なんじゃこりゃー」

辛い。
これはマスタード?

「ふっふっふ。あんたのシュークリームにはマスタードをちょっと混ぜたの。
全部食べるのよ」

見ると、手前側だけ、ほんの少しマスタードが入っている。
後半は普通。

僕は飲み物をいそいで飲む。
そして辛さを中和するために後半のシュークリームをほうばる。
後半は普通。
普通のカスタード。

なんとか口直しができた。

「くっそ。油断した。なんでこんなものを入れるんだよ」

「ちょっとした心遣いってやつ?
あんたにはいつもお世話になっているし…」

「心遣いじゃねえよ!
どうかしているぞ、マスタードなんてもの入れやがって…」

3つ目のシュークリームを食べ終わり、4つ目のシュークリームを食べようと手にとったミミちゃんがこっちを見ている。

「ひょっとしてまた喧嘩しているのかな?」

う。
またくすぐられるかも。

「なんでもないよ」
「なんでもない」
どうやら、ミミちゃんはテレビに夢中でこっちのやりとりをあまり見ていなかったようだ。

ふう。
足の裏を刷毛でくすぐられたらたまったもんじゃない。

「お姉ちゃん食べすぎ。もう残り1つしかないじゃない」
サラは残りのシュークリームの個数を確認して言う。

「だって。おいしいんだもん」
最後のシュークリームを手に取ろうと伸ばすミミちゃん。

「あーまた。そんなに食べたら太るよ」
ミミちゃんはぎくっと肩をすくめて
「じゃやめようかな…」
手を引っ込めるミミちゃん。

「最後の1個はあたしが食べる」
サラは手に取る。

「飲み物とってこよっと」
とミミちゃんは立ち上がる。
そして居間から出て行く。

ミミちゃんがいなくなってから僕は
「お前も太るぞ。きっと作っている途中につまみ食いでもしているんじゃないか?」

「していないわよ!」
ぱくぱく食べながら言う。

「わき腹とかつまめるんじゃないか?」
すごい顔でにらむサラ。

「今度言ったら、カスタードクリームの中に埋没させるわよ」

「ひえ。怖い怖い」

とやりとりをしているときミミが戻ってきた。
「戻ってきたよ」
ミミちゃんが戻ってくるのを見て黙るサラ。

「ふう。とってもおいしかったよ。
食べ過ぎちゃった」
ミミちゃんは満足のようだ。

その後、ちょっとの間テレビを見て過ごす。

……

「もうこんな時間だね。夕食のしたくをしないと…
今日はあたしの番だよね」

とミミちゃんはソファから立ち上がる。

「2人とも喧嘩しないで仲良くしているんだよ。
あたしは台所にいるからね」

「うん。わかった」
僕はミミちゃんへ返答する。

そしてサラと目が合う。

ミミちゃんが出て行った後。

「下に下ろしてくれるか」
僕はサラへ頼む。

「飛び降りればいいじゃん」
ソファの下の床まで数メートル。

「無理だ。怪我する。
下ろしてくれないのか。
ミミにいいつけるぞ」

「ちっ。わかったわよ。
ほら」

ちょっと乱暴に捕まれて、床の上へと下ろされる。

居間を歩く。
端のほうにあるホバーへとたどり着く。
そして操作方法を確認する。

簡単。
セグウェイに乗るようなものかとわかる。
上に乗って、ベルトを締めて全身のハンドルを握る。

お。
動き出す。
安全装置もあるので壁に衝突したり、床の上へと落っこちることはない。

地球人用のトイレがある場所へと進む。
これか。

なんか巨大な廊下の横の壁にドアがあるのを見ると、
トムとジェリーを思い出す。
ジェリーが住んでいる住処の入り口のドアが壁についているみたいだ。

僕は中に入る。
中は普通。

故障や不都合があればこちらへ連絡してください。
と言う張り紙がある。
このマンションの管理会社への連絡先も書いてある。

トイレの清掃も地球人の業者がやってくれるみたいだ。
たしかに。
この中へはミミちゃんは入れない。
サラも同じ。

僕はトイレをすませて廊下へと出る。

あれ?
ホバーがない。

くっそ。
サラか。

僕は歩いて廊下を進む。

「おい。サラ」
廊下へ出てくるサラを見つける。

どん。

どん。

どん。

こっちへ向かって歩いてくるサラ。
まっすぐ向かってくる。

まさかこのまま踏まれるんじゃないか?

げっ。
サラの足はもう頭上。

僕はとっさに床へと伏せる。

ぎゅううううううううう。
うぐえ。

床にめり込む僕。

ぎゅうと踏んだ後。サラはこっちを振り返って言う。

「あ。間違って踏んじゃった。気がつかなかった。ごめんね」
ごめんね。という言葉をとってつけたように言うサラ。

「し。死んだらどうするんだよ。
床にめり込んだぞ。
ひょっとしてこの床は特別なのか?
床にめり込まなかったら潰れて死んでいるぞ」
僕は床を押してみる。
けれども固さは普通。

「ああ。これ?
この床は…」

また足を上げるサラ。
うわぁ。

ぎゅうう。
またサラに軽く踏まれ床にめり込む僕。

「安全性のために、あたしたちが地球人を踏んでも大丈夫なようにできているの。
きちんと床にめり込むでしょ。
でね」
サラは壁のスイッチへと手を伸ばす。

「このスイッチは。床にめり込む効果を制御するの。
これをOFFにしたらどうなるかな?」

ぎゅうぎゅう。
サラの足に踏まれ、床にめり込んでいる僕は見る。

「だめだめだめ。今日は薬を飲んでいないんだから、ぐにーんとは伸びないぞ。
ほんとに潰れてしぬぞ…」

スイッチを見る。
レバー式のスイッチはサラの手によって1/3ぐらい動かされている。

「だめだめ」

もう半分。
そして。

かちっつ
スイッチが倒される。
それを見て「ぎゃー」とさけぶ。

だめだと思ったら排気の音が聞こえ始める。
「何本気にしているの。これは排気のスイッチ。
床の制御をオフにするものなんてあるわけないじゃん。
危険だし…」

と言いながら足がどけられる。

くっそ。

「くっそ。サラめ、覚えていろこんにゃろ。
ところでホバーどこへやった」

「片付けたわよ。
あんたは歩いてきなさい」
と言いながらサラは戻っていく。

くっそ。

でっかい廊下を戻る。
たっぷり50メートルは廊下を進む。

……

ふう。
やっとついた。
家の中を移動するような距離じゃない。

さて。
ミミちゃんはいないな。

仕返し。
僕は持ってきたバッグを手にとって、中にあるものを取り出す。

そしてボンベを使って膨らませ始める。
「おい。サラ。来てみろよ。面白いものがあるぞ…」

サラを呼ぶ。
「何よ。どうせくだらないものでしょ」

サラが近づいてくる。
よし膨らんだ。

僕は後ろを向いていたが、それをサラの前に差し出して手を離す。
軽い気体を入れたそれはふよふよと上昇していく。

「何これ。風船?」

サラはそれを手で叩き落とそうとする。
「サラの大好きなものだぞ」

サラはよく見ようと、じっと見てみる。
「ぎゃー。な。なによ。こ。これ」

サラはあわてて下がる。

どっしんという地響き。
足がもつれてサラはしりもちをついてしまう。

僕はさらにバルーンを膨らませる。
そしてサラのほうへと放り投げる。

巨大なゴキブリ型のバルーン。
アニメチックで結構かわいい。

「ほら。ごきちゃんバルーン結構かわいいぞ。
それと、こっちには本物のように動くラジコンもあるぞ。
地球産のごきちゃんの50倍サイズだぞ」

5体のごきラジコンを、サラへ向かって放つ。

「ぎゃ。やめ。やめなさい。しっし。
ぎゃー」

しりもちをついたままの姿勢で、じりじりと下がるサラ。

「ほらほら。行けあっちだぞ」

リモコンを使ってごきラジコンを操作する。
「ぎゃー」

「本物じゃないぞ。ラジコンだぞ。これ?」

「ラジコンでも。本物でも同じ。どっかへやってよ。それ」
がくがく。
サラはすごく怖がっている。
うっしっし。
成功だ。
「ほら。ごき戦隊。悪者サラをやっつけろ」
ラジコンがサラへと向かって進む。

「ぎゃあ。来ないで。しっし」

どん。
どすん。
どっすん。
かかとを床にうちつけて、じりじり下がるサラ。

「進め。進め」
5体あるごき戦隊ラジコンが進む。

どすん。
どすん。

「こないでよ!」
めちゃめちゃにかかとを床へうちつけて暴れるサラ。

僕もサラのもとへと近づいていく。

ちょっと近づきすぎか。
ごき戦隊の1体が前へ出すぎている。

どん。
サラのかかとが、ごき戦隊のうち1体を破壊する。

どん。
どん。
どすん。

暴れるサラ。

どん。
ぐちゃ。

どん。
どん。
ぐちゃ。

めちゃめちゃに暴れているサラのかかとが3体目のごきラジコンを破壊する。
残り2体。

「くっそ。退却だ」
僕は後退の指示をラジコンに出す。

どん。
僕の真横に、サラのかかとが振り下ろされる。

ぎえ。
どん。
どん。
どん。

僕の体の幅の1.5倍はあるかかとが、はるか頭上から振り下ろされてくる。

どん。

足の大きさも2メートルを超える。

どん。
どん。
あのかかとに直撃されたらひとたまりもない。
何トンか、何十トンかの衝撃があるだろう。

ひ。
た。退却。
僕は腰が抜けそうになりながら、あわてて退却する。
ラジコンのコントローラーも手放してしまう。

どん。
どん。

「いや。ギャー。速くどっかへもって行って!」

めちゃめちゃに暴れるサラ。

目を瞑っている。

どん。
ぐちゃ。

最後の1体もサラのかかとの餌食になる。

「わかった。おちつけ。片付けてやるから、暴れるな。僕が近づけないだろう…」

そう言うとかかとをどんどん打ちつけていたサラがおとなしくなる。

「早く片付けて!」
ぶるぶる。
肩を震わせて、ちょっと涙目になって、ぎゅっと目をつぶっているサラ。
本当に怖いんだな。

もうこのぐらいでいいか。
ごき戦隊もすべてサラのかかとの餌食になったし。

完全にひしゃげてしまったラジコンを手に取る。

サラのかかとを見る。
動きはない。

僕の体よりも大きな、サラの足へと近づく。

「絶対に足を動かすなよ。今片付けるから…」

僕はかがむ。

「早く片付けてよ!」

どん。

目の前50センチでサラのかかとが、どんと音を立てる。

ひっ。

「危ないから動くなって言ったのに…
あ。足あげろ。
ちょっとじゃまだから。
ぜーったい。足を下ろすなよ。
下にもぐるから…」

僕はごくりとつばを飲み込みながら言う。

サラのかかとは1メートルほどの頭上にある。

その下。

ぐしゃぐしゃになったラジコンのコントローラーがある。

僕はかがんでそれを拾う。

頭上を見上げる。

ひえー。
怖い。

真上にはサラのかかと。

あれが落ちてきたらと思うとちびりそうだ。

前を見る。

あう。
サラはスカート。

奥のパンツまで見えてしまう。
ブルー色のパンツだ。
クマさんパンツとかだったら笑ってたところだ。

サラはまだ、目をつぶっている。
ばれていない。
僕はいそいでその場を離れる。

……

やっとすべてを回収し、バッグの中へ片付ける。

「もういいぞ。全部片付けたぞ」

「ほ。本当?」

サラは目を開ける。
あたりを見回す。

「はあ。ほーーーーーーーーーんとうに怖かった。
もう二度とあんなものあたしの前に出さないでよね」

「どうかな?
サラが今後、二度と僕をいじめないと約束するならいいが…」

「うー。くー。
し。しょうがないわね。
わ。わかったわよ。
あんたもそれを守るのよ。
ぜったーい。
絶対だからね!
もし守らなかったら、ひどいんだからね!」

「サラは立ち上がる」
そして疲れたような表情でどかっとソファへ座る。

「こっちも約束だからな。いじめたら、ごきちゃんをけしかけるからな。
それも本物を…」

「ひっ。
だ。だ。だ。だめ。絶対だめだからね。
そんなことされたらあたし、死んじゃうからね!」

相当苦手のようだ。
よし。
今後は変にいじめられることもないだろう。

「じゃ。ソファの上に上げろ。これ命令」
僕は言う。

「あたしに命令するの?」

「ごき…」

「わ。わかったわよ。ほら」

サラによってソファの上へ移動する。
はあ。
らくちん。

「うう。我慢。我慢…」
つぶやくサラ。

うっしっし。
「さっきサラが廊下で僕を踏んだ分と、ホバーを勝手に片付けた分の命令を聞いてもらうからな」

「くー。わかったわよ。さっきはあたしが悪かったし…」

「じゃ。マッサージしてくれ。背中。
さっきさらに踏まれたときになんかおかしくしたみたいだ」

「くー。あたしも悪かったからしょうがないわね。
今日だけよ」

僕は横になる。

いきなり、サラは僕の体の下に手をあてがって、僕の体は持ち上げられる。
今はサラの手のひらの上。

「こんな感じでいい?
潰しちゃっても知らないからね!」

ぎゅう。
ぎゅう。

手のひらで押される。

ちょうどいい。

「こんぐらい」

ぎゅう。

ぎゅう。

以外にうまいな。

「もうちょっと下」

「下?」

ぎゅう。

「違う。いきすぎ。もうちょっと上」

「じゃ。このへん?」

「違う。上へいきすぎ…」

「くー。どこなのよ。
むかつくぅ。
なんか。おもいっきり、ぎゅーって押し付けたくなるんだけど…」

「ごき…」

「くー。はいはい。
じゃこのあたりかな?」

「そこだ。そこ。もっと押して。
ぎゅーと。でも力入れすぎるなよ」

「はいはい」

ぎゅう。

ぎゅう。

……

しばらくサラにマッサージされ続けていると。

「ねえ。ちょっと来てほしいんだけど…
あれ?
意外に仲良くしているね…」

「ん?
あ。どうしたの?」
ミミちゃん。
エプロン姿。
くう。いいなぁ。かわいい。

「今日の夕食。うどんにしようと思って、さっきまで踏み込んでこしを出していたの。
それでね。君の分量はどのぐらいかなって思ったの。
多すぎると食べきれないでしょ。
それと麺の太さとか…
一度見てもらいたいなーって思ったの…」

「わかった。じゃいくよ。
サラ。どうもありがと。もういいよ」

「え。う。うん」
ありがとうと言われると思っていなかったのかきょとんとした顔をしているサラ。

僕はミミちゃんのエプロンのポケットの中に入る。

……

夕食も終わり。
テレビを見ているところだ。

サラはお風呂なのでいない。

やっと2人っきり。

……

「お姉ちゃん。お風呂空いたよ。
また2人でラブラブしている…
お風呂一緒に入ったら?
地球人用のお風呂の清掃依頼をするのもめんどくさいし…」

僕はそれを聞いて顔が赤くなる。
「なっ」

そうなったらうれしいけど、さすがにそれは遠慮したほうがいいよな…
僕はミミちゃんの顔を見上げる。

「そうだね。じゃ一緒に入ろうよ。
いやじゃないよね?」

「いやっていうよりもむしろ…」
と言いかけたとき、ミミちゃんのポケットへと入れられる。

「わー。ほ。本気?」

「あたしはいいよ。一緒に入ろう」
恥ずかしい。
ポケットの中で立ち上がり下を覗き込む。
はるか数メートル下に床がある。
逃げ出すのは無理。

うう。
本当にいいのか。
怒らないのか。

すごくどきどきしてきた。

ミミちゃんとお風呂。

すっぱだかになっちゃうんだぞ。

うう。
ミミちゃん。

で。
でも…

がらっ。

浴室の前にある脱衣所へと僕達は入る。

とん。

洗面台の横に下ろされる。

「ここで脱いでね。えーと服は、この上においてね」
と温泉の素が入っていたと思われる空き箱が前に置かれる。

地球人サイズのものはどこにもない。
すべてが巨大。

その箱の高さは40センチぐらい。
程よい高さ。

いいのか。
と考えていると。
するすると音がする。

げっ。
本当に入る気まんまんだ。
ミミちゃんは服を脱ぎ始めている。
もう下着姿。

うう。
えい。
決めよう。
この洗面台の高さだと飛び降りて、脱衣所から逃げ出すこともできないし…
そもそもドアが開かないだろう。
ドアの開閉センサーはだいぶ上にある。

僕は服を脱ぎ始めた。

「これ。タオル。でっかいけど…」
バスタオルぐらいの大きさ。

僕はこしに巻きつける。

ミミちゃんを見上げる。

ぐああ。

何も着ていないミミちゃん。
大事なところを隠そうともせずにいる。

「あ。あのさ。隠したほうがいいと思うんだけどな…」

ぷりんぷりんのお乳を見ないようにしながら言う。

両手を広げて、やっとかかえることができるぐらいのお乳が頭上にある。

「大丈夫だよ。2人しかいないし…
用意できたら入るよ…」

僕は覚悟をきめた。