今は寝床の中。
隣にはミミちゃん。
といっても僕は台の上で、ミミちゃんはベッドの中だけど。
距離はある。
僕からは手は届かないぐらいの距離。
でもミミちゃんからしてみれば、手の届く距離。

「えーとあのね」
眠りの前。
ミミちゃんと寝る前におしゃべりしようと思っていたときだった。

がちゃ。
ドアが開きサラが入ってきた。
「お姉ちゃん。ちょっといい?」

「サラ?
何か用があるの?」

「うん。お姉ちゃんじゃなくて。君。
ちょっとだけ借りていくね」

「おい。僕はこれから寝るところだぞ」

「10分もかからないから。
すぐ終わるから…」
と言われ、僕のことはおかまいなしに、寝床から引きずりだされ、
サラの手にわしずかみにされてしまう。

「あ…」
ミミちゃんが何か言いたそうみたいだが、サラはお構いなく部屋を出て行く。

「おい。こらっ」
サラは聞いちゃいない。

……

「ここに置いてっと。
じゃあ、じっとしていなさい。
理由は聞かないこと。
聞いたらおもいっきり握るわよ」
と言われる。
わけがわからない。
夜中なのに…
何か言おうとしたときに、サラは何かを取り出す。
巻尺?

するすると引き出し、僕の胸の周りに巻きつける。
「何するのさ」
「だから、言ったじゃん。理由を聞いたら、思いっきりにぎるって。
また言ったら次はないわよ…」

まったくわからない。
なんでサイズなんか…
「何でこんなことするの?」
再び聞く。
すると、サラににらまれ、サラの手が僕の体をつかむ。
ぎゅうと体全体が握られる。
いてて。
「ぐあ」
締め付けてくる。サラの手。
ぎゅうぎゅう。

「だまっていなさい。
すぐ終わるから…」
とサラは言いサラの手から開放される。

そして。
腕の長さ。
肩の幅とかが、サラによって計測される。

理由を聞きたかったけど、やめた。
だまっていれば、すぐに開放してくれるだろう。
そして、ミミちゃんの元に返してくれるはず…

サラは僕の体の上半身のサイズを記録し、メモしているようだ。
そして。

「終わった。だいたいこんなもんね。
言っておくけど。あんたのためにしているわけじゃないからね。
勘違いしないでよ。
別の人にあげるものの参考にあんたの体のサイズを測っていただけだからね。
じゃあ用事終わったから、出て行っていいわよ…」
と一方的に言われる。

僕はためいきをついた。
「お前なぁ。
自分の用事が終わったら、出て行けっていうのはひどすぎじゃないか?
それに、僕がここから自力で降りられるとでも思うのか?」
下をのぞきこむ。
たっぷり10メートルはありそうだ。

「もー。しょうがないわね。
あたしがお姉ちゃんの部屋へ連れて行かなきゃならないの?
めんどくさい」

「ひどっ。
おまえが勝手にさらっておいて…
ミミちゃんに言いつけるぞ…」
こちょこちょされるぞというふうに、手を動かす。

「わかったわよ」
サラは仕方がないという感じで、僕を手につかむと、歩き出す。

……

「終わったから返すわね。
じゃあ。お休みお姉ちゃん」

「うん。お休み」
ミミちゃんはサラに言い、部屋のドアを開けて出て行く。

「ふう。行ったな。
全くもう」

「何かされた?」
ミミちゃんがうつぶせになって、こっちを見て聞いてくる。
ミミちゃんがうつぶせになったので、胸がぎゅうと、ミミちゃんの体の下敷きになる。
けれども弾力がある胸は潰れることなく、ミミちゃんの上半身がものすごい胸により支えられる。

ぶんぶん。
くびを振る。
胸が気になってしまうけど、見ないふりをして答えた。
「いや。僕の体のサイズを測られただけだ。
でもなんであんなことされたんだろ」

ミミちゃんは少し考えてから
「あ。もしかして…
うふふ。理由がわかっちゃった」

「何なの?」
すごく気になる。

僕にプレゼントとか?
でもそれは絶対ない。太陽が爆発することになってもないなと考えを改める。

「えーとね。
サラが通っている料理教室に、気になる男の子がいるの。
それは君と同じ地球人なんだけど…
その子に何かプレゼントする気なんだ。きっと。
数日前に編み物関係の本を買っていたから、きっとそれね。
その男の子のサイズがわからないから、
きっと参考にしたんだと思う…」

ぶっ。
僕は笑ってしまった。

「あはは。あのサラが?
だからか、理由を聞いたらぎゅって握るって脅されたのはそれか?
恥ずかしかったからか。
ふっはははは」
寝床でころげまわって笑う。
そして台の上から、ミミちゃんが寝ているベッドの上に落ちそうになる。

「おわっ」
2メートルほどの落差があるベッドの上に転げ落ちそうになる。

「おっと」
ミミちゃんはすばやく手をのばしてくれたので落ちずにすんだ。

そして自分の寝床の中に戻される。
「そんなに笑うから落ちそうになるんだよ。
でも。そんなにおかしい?
サラはその子に告白しようとしているみたいなんだけど、
うまくいかなくて悩んでいるみたい」

「そうなの?
あのサラだから、わしずかみにでもして、強制的にどこかへ連れて行って、
付き合ってと強制するんじゃないか?」
そういう光景を思い浮かべる。

「そういうふうな態度をとるのは君だけだよ。
他の子に対してはいい子だよ」

「ふーん」
くっくっく。
面白いことを聞いたぞ。
そうだ。

「明後日も泊まりに来ていい?」

「うん。
いいよ。大歓迎だよ。
でも午前中は用事があるの」

「何時から?」
「役所へ提出するものがあるから、11時ごろに行こうと思っているの」
「じゃあ朝、来るよ」
「うん。そうだね。
じゃあ一緒に行く?」
ミミちゃんが聞いてくるが、ある計画を思いついたのでこう答える。
「すぐに終わる?
だったらそのままここで待っているよ」

「うん。すぐに終わるよ。
提出するだけだから。
じゃあ。その間、お留守番お願いしてもいい?
サラもきっといると思うけど…
喧嘩しない?」

「うん。大丈夫」

ということで明後日もここに来る約束をしたのだった。

……
日が昇り。
バイト先(モニター)へ2人で出社する。

いつもどおりに、バルーンのモニターをすませる。

だいぶ慣れたな。
それにミミちゃんと一緒だし…
楽しい。

バイトが終わり、ミミちゃんにバイバイの挨拶をして別れる。
明日会おうということで…

……

そして翌朝。

朝9時30ごろにミミちゃんの家へ向かう。

「いらっしゃーい。待っていたよぉ」
とミミちゃん。
出迎えてくれる。

そして、ミミちゃんの手によって拾い上げられて玄関まで連れて行かれる。

居間の中に入り、ソファへとこしかける。
「昨日も泊まっていけばよかったのに…」
とミミちゃんに言われる。

「連泊は禁止みたいなんだ。
その。
モニター業務がいやになって、帰ってこない人も過去にいたみたいだしさ…」

「そうなんだ。
君はいやになった?」

「いいや。全然。
ミミちゃんがいるからすごく楽しいよ」

「えっ。そうなんだ。
あたしがいるからか…
良かった。
実はあたしも一緒」

もうすこしでラブラブな雰囲気になりそうなところに、サラが居間へ入ってきた。

「げ"。
なんであんたがいるのよ」
サラは下着姿。

「こっち見るな。エロエロ星人め」
と言い、サラは急いで自分の部屋へ戻っていく。

そして数分後。
普段着に着替えたサラが入ってくる。
「さっき、見たでしょ」

「何が?」

「あたし、下着姿だったのよ。あんたがいるなんて思わなかった。
お姉ちゃんも言ってくれればいいのに…」

「昨日言ったよぉ。サラがテレビを見ているときに。
彼が遊びに来るよって。
そしたら、サラは『うん』と返事したじゃない」

「ああ。あのときか。
あまり聞いていなかったわ。
そのことだったのね」

「もう。いつもそうなんだから…」

「そうだぞ。きちんと人の話は聞くこと。桃色パンツ娘よ」

「なっ。
やっぱり見たのね。
忘れないと、あんたを床にたたきつけるわよ」

やっぱり怒った。
「おー。怖い。
ミミちゃんかくまって…」
と僕はミミちゃんにしがみつく。

「もー。また喧嘩する。
パンツのことを言ったのは君が悪いかな?
じゃあ、今度は君をこちょこちょするよ!」
ミミちゃんの手がのびてくる。
げっこっちか。
僕はミミちゃんの足の上から飛び降りて、ソファの上を走って逃げる。
くそっ走りにくい。
ソファだから、上を走るようにはできていないか。
ソファの上を走ることになるとは思っていなかった。

「あっ。逃げるわよ」
がばっ。
すばやくのびてきたサラの手によって捕まえられる。

「こらー。放せよ」
じたばたもがくが、力は圧倒的にサラのほうが強い。
いっきに、サラの胸あたりの高さまで持ち上げられてしまう。

「あたしがこちょこちょしてあげようか?」
サラがこっちを見て言う。
そして捕まえられている手とは逆の手がのびてくる。

「やめろー。お前だったら加減なしに、ずっとくすぐり続けるだろう。
そうなったら笑い死ぬぞ。こっちは」

「ふっふっふ」
サラがくすぐろうとしたとき…

「サラはだめ。また喧嘩の原因になりそうだから…
今回はゆるしてあげる。
でも今度サラに変なこと言ったり、
逆にサラが彼をいじめようとしたら、
いつもの2倍くすぐるからね」

それを聞いて、そのことを想像したみたいだ。
「わかったわよ。あたしも許してあげる。
ほら」

僕はミミちゃんに手渡される。
うう。こわい。
足の下から見える床までたっぷり10メートル以上はある。
落ちたらひとたまりもない。
ぶるぶる。

ミミちゃんがのばしてきた手にしがみつく。
「よいしょっと」
ミミちゃんはソファへと座り、
僕もソファの上へと下ろされる。

「さてと」
と言いながら、僕の隣にサラが座ってくる。
うげっ。
声が出そうになる。
巨大なお尻が僕の隣にふってきたからだ。
僕の真上にお尻が乗っかることもなく、隣に座るサラ。
でもびっくりした。
大きいから、こっちの上にのしかかってくるかと思った。

サラはかまわずにテレビをつける。

「そうだ。11時ごろにあたしはいったん出かけるけど大丈夫?」

「うん。あたしも用事はないし。
2人で出かけるの?」

「いや。あたしだけ。
2人でお留守番お願いできる?」

「ま。まあ。いいけど…」
テレビを見ながら答えるサラ。

「じゃ。そういうことだから。
ところで朝ご飯食べた?」

ミミちゃんは僕に聞いてくる。
「いや。まだだけど」

「じゃあ。一緒に用意しちゃうね。
君の分はあたしの分からおすそ分けすれば、足りるよね」

と言い。
ミミちゃんは立ち上がる。
そして、台所へと向かうミミちゃん。

「ふっふっふ。お姉ちゃんは出かけるのか。楽しみね」

「こっちも望むところだ」
2人で勝負する気まんまんだ。

……
「じゃあ行ってくるね。30分ぐらいで戻れたらいいけど。
込んでいたらもうちょっとかかるかも…」

「行ってらっしゃい」
ミミちゃんを見送る2人。

「さてと、喧嘩しても大丈夫ね。
言っておくけど、
このことを告げ口したら、この前あたしに、ごきをけしかけたことをお姉ちゃんにばらすからね!
あの後夢にも出てきたんだから!」

「ふっ。そりゃ良かったな。
夢の中で仲良くなれたか?」
と僕はサラに言う。

「良くなるわけないわよ。さんざん逃げ回ったんだから。
朝起きたらすごく疲れた気がして、その日は調子が良くなかったわよ!
今日は懲らしめてやろうとさっきから考えていたの」

「なに。このやろ。
それはこっちの台詞だぞ。
いつもバイト先でいじめやがって」
透明な板に挟まれて踏まれたり、こんなに重さをかけなくてもいいんじゃないかという力で踏まれているのを思い出す。

「あたしはいじめていないわよ。
かわいがってあげているのよ」

「ふっ。そんな口を聞けるのも今のうちさ。
今日はまた別のものを持ってきたんだからな…」

「ぎくっ。
な。なによ。
また。あたしの苦手なあの黒いものを持ってきたんじゃないでしょうね」
少し後ずさりながら言う。

「大丈夫だ。それは用意できなかった」
と言ったが「ぎゃあ」と言うであろうというしろものを用意してきたのだ。

「じゃあ大丈夫ね。あたしに勝てると思っているの?
小人さん?」
身長15メートルはあるサラに言われる。
「小人じゃねえ」
と言った後
「じゃ開始だ」
と、僕は鞄から例のものを取り出し、ホバーへと向かう。

ホバーへと乗り込み浮かび上がらせる。
そしてサラのほうへと向かう。

「ほう。空中戦というわけ?
じゃあたしが叩き落としてあげるわね」

とサラは腕をこっちに向けて振り下ろしてくる。

「くっ」
僕はホバーをあやつって、上昇させる。

サラの頭より上。
腕が届かないぐらいの高さまで上昇する。

「卑怯よ。正々堂々と戦いなさい。
それじゃ届かないわよ」
ぶんぶん腕を振り回すサラ。

「じゃ爆弾投下。きっとこういうものも苦手だろうと思って、苦労して探してきてやったぞ」
ばらばらばら。
緑色のものを投下する。
いっぱい。

緑虫型の模型。
巨大サイズ。40センチぐらいのもの。
ぐにゅぐにゅしていてよくできている。

それをばらばらと投下する。
「ちょっと何まいているのよ!」

サラの髪の上に乗っかるそれらのもの。

「何なのよこれ」

サラは自分の頭をはたき、ぶんぶん首をふる。

僕はサラの前へとホバーを進ませる。
サラの手が届かないぐらいの距離。

「ふっふっふ。今。上にまいたのはこれだ」

ボタンをつける。
テレビにはどこかの農園。
事前に用意しておいた映像。

果物の栽培。
害虫を駆除するために、ついた虫を取っているところ。

「お前の上にまいたのは、その緑色のものだ」

サラは無言でテレビ見る。

そして。

「ひっ。
ま。まさか。あれをまいたって言うんじゃないでしょうね」
サラは肩をすくめて、身動きひとつしないまま、ぎぎぎと首だけまわして聞いてくる。

「そうだ。あれだ。あれを袋いっぱい」
模型だけどな。と心の中で付け加える。

「ぎゃー」
悲鳴をあげるサラ。
ざまみろ。
「お。サラの服にもいっぱいついているぞ…」
と追加で言ってあげる。

「ひー」
やっぱりだ。

「取って。取って」
サラはパニックだ。
そしてサラは、パニックになりながら自分の服を脱ぎ始める。
上着。
ズボン。
そして下着に手をかける。

それを見て、ちょっとやりすぎたと思った。
「おい。サラ」

「ひー」
サラは下着をつかんで全部脱ごうとしている。
半分パニックになって。
下着も脱いでから、脱いだ下着で、自分の体をたたいている。

ぶんぶん。
振り回している下着が、ホバーをかすめる。

「おわっ」
回避。

ぶんぶん。
「み、みず。シャワーで流せば…」

どたどたと出て行くサラ。
突進してきたサラにホバーごと突き飛ばされる。

「ごわっ」
がっしゃん。

ソファの上に墜落する。
クッション素材の上だったので怪我は無かった。
シートベルトもしていたし、どこかへ吹っ飛ばされることもなかった。

でもやりすぎた。
サラの頭の上にふりまいた後、模型だと言おうとした。
けれども予想外にパニックになってしまい、言えなかったのだ。

……

「ふー。ふー。ふー。
あんた。良くも…」

かなり怒っているサラ。
短パンにTシャツという姿。
シャワーでもあびてきたんだろう。

「模型だったのね」
サラは手に持っているものを床にたたきつけて、それを踏みつぶす。
でもぐにょんぐにょんしている模型だから、サラが踏んでも潰れないはずと思っていた。

でも。

ぎゅううううう。
思いっきりそれを踏んで、踏みにじる。
そして、踏んだ後拾い上げ、僕の目の前に突き出す。

潰れないはずの素材なんだけど、潰れて、各部がちぎれてしまっている。
サラが思いっきり踏んで踏みにじったからだろう。

「あんたもこうなりたい?」
潰れて、あちこちちぎれている、緑虫だったもの。

うげっ。
ぶんぶん首をふる。

「怒るなよ。すぐに模型だと言おうとしたんだからな…」
「あんたを、踏んで踏みにじりたい気分よ。
謝りなさい。
土下座で」

かなり怒っているサラ。

僕はやりすぎたのだ。
だから謝ることにする。

「ごめん。このとおり」

正座して頭を下げる。
「足りないわね。もっとべたっとなるぐらいに頭を下げなさいよ」

くっ
でも。しょうがない。
「ごめん」
床につくぐらいの高さまで頭を下げる。
しばらくそうしている。
サラが目の前に立っているので、踏み潰されそうで怖いんだけど…と思う。
すると、僕の体のまわりが暗くなる。

げっ。
真上にはサラの足。
足の裏が見える。
僕の体は完全にサラの足の下。
サラの足の裏までの距離は80センチぐらい。

「このまま踏んじゃってもいいんだけどな」
くっそ。
「おい。やめろ。潰れる…
絶対踏むなよ」

ぎゅう。
僕の背中にサラの足の裏があたる。

ぎゅう。
「今度。あたしの頭の上に何かふりまいたら、次はないわよ。
本当に踏み潰すから」

とサラは言い。
僕の背中から足がどけられる。

ちょっとサラが体重をかけただけで、十トン単位の重さがかかるだろう。

本当に踏み潰されるかと思った。


「こ、こっちも悪かった。
でも人を踏み潰そうとするなよ。
本当に死ぬぞ」
目の前の2メートルを超えるサラの足を見ながら言う。

「大丈夫よ。ものすごく加減して踏んだから」
「そっちから見れば、小人みたいなサイズだからって、人を踏むことないだろう。
その性格直せよ。
だから、誠一君に告白できないでいるんだぞ」

「な。な。な」
かなりびっくりしている。
ふっふっふ。
「なんで。あんたが知っているのよ!」

「なあに。ミミちゃんから、聞いたんだ。
それと…
ふっふっふ。
これを聞いたら、今後僕に対する態度がかわるぞ」

「な。何なのよ」
サラはじっとこっちを見ている。

「僕は、誠一君を知っているんだ。
その。誠一君の兄貴と親友でな。
顔見知りだ」

「えー」
サラはものすごくびっくりしている。

「誠一君に、君のこと言っちゃおうかな?」

「そ。そ。それ。本当なの?」

「本当だ。ミミちゃんから聞いてひょっとしてと思ったんだ。
昨日、家に電話して、誠一君が料理教室へ通っているかを聞いたら、
お前と同じところに通っているというのがわかった」

「な。な。な…」
サラは後ずさりし。

「ご。ごめん。今までのこと。全部ごめん。
もう。絶対いじめないから。
だからお願い。黙っていて!!」
サラは土下座する。

「ふっふっふ。どうしようかな。
今までわざと踏まれたこともあるし、
一輪車で轢かれたこともあったっけ」

「おわぁ。そ。そんなこともあったわね。
ごめん。
全部ごめん。
本当にごめん。
絶対にいじめないから。
だからこのとおり」
15メートル級の女の子が、土下座して謝ってくる。
なんでも言うこと聞きそうだ。

……

「で。今のことは本当なのね?
もし嘘だったら、ひどいわよ」

サラに聞かれる。
「本当だ。次の料理教室のときに聞いてみたらどうだ?」

「う。
じゃあそうしてみるわね」
とサラは言う。
けれども今までのことはすべて本当だから心配はいらない。

そして。
時計を確認する。
サラも時計を見る。
「そういえば、もうちょっとでお姉ちゃんが帰ってくる時間ね。
そうだ。
のど渇いたでしょ。
ソファの上で座って待っていてね」
ものすごく丁寧な態度になるサラ。
そっと、サラの手によってソファへ下ろされる。

……

「これ。とっておきのジュース。おいしいわよ」
見たことの無い色。
トロピカルな色だ。

「これ高いのよ。だからもったいなくて、ごくごく飲めないのよ」

「ふーん。どのぐらい?」
「一杯10円ぐらいかな」
「なんだ。たいしたことないじゃん」
僕は言う。

サラはぶんぶんと首をふって。
「そっち。君が持っている分の量で10円。
あたしの持っているコップの量だとものすごい値段になるわよ」
とサラが言う。
そのコップを見る。
あきらかに、ドラム缶より分量は多そうだ。
たぶん1000倍はあるだろう。
「ということは、1000倍として…
サラのコップ一杯で1万円?」

「まあ。そうなるわね。天然の素材なの。
今お姉ちゃんがいないから飲んじゃおう」
ごくり。
僕だったら十分な量だ。
サラのコップに入っている量ならば1000杯にはなる。
「そりゃ。ごくごく飲めないわな。
でもずっと飲まないで取っておくことできるのか?」

「いや。だめ。賞味期限があるから…」
少しずつ飲むサラ。
僕も飲んでみる。

たしかに天然の素材でできているような感じ。
ちょっと粘り気があるような、でも飲みやすい。
「これなんだろ。今まで飲んだことのない味」

「そうよね。これは地球産の果物で作ったものじゃないの。
各惑星の名産フルーツをブレンドしているの」

「ふーん」

僕は飲み終わってサラに言う。

「ずいぶん。態度がかわったな。
こんなとっておきのジュースを出してくるなんて…」

「ま。まあ。そんなことないわよ…」
とサラが言うけど。

絶対気を使っているぞ。
「サラの恋愛の手助けをしてほしいのか?
そんなものは却下だぞ。
今までの仕打ち。忘れないからな…」

「べ。別に、そこまでしてもらおうとは、お、思っていないわよ。
せっかくだから、あんたにもジュースを飲んでもらおうと思っただけ…」

「ふーん。今までと態度が全然違うんだけどな…
じゃあ交換条件だ。
ミミちゃんのこと教えてよ。
そのかわり、こっちも誠一のこと教えるから…」

「わ。わかった。じゃあ言うわよ。
お姉ちゃんは青い宝石が好きなの。ブローチとか、イヤリングとか
そういうものをプレゼントするととっても喜ぶわよ。
それと、肩こり解消ぐっつとか。胸大きいし。
最後に、お姉ちゃんは太ももの付け根を触られると感じちゃうの。
そのときになったらそこを攻めるといいわよ…
それだけ…」

「おい。最初のはいいけど。そんなことまで言っちゃっていいのかよ…」

「いいの。
あたしが言ったことは内緒。
さぁ。
教えてよ誠一君のこと…
でもその前にメモ用紙をとってくる…」
サラはメモ用紙を取りに行く。

ミミちゃんの感じるところ。か。
想像すると、すごくどきどきしてくる。
あのミミちゃんの体だから、肉付きが良いだろう。
そんなミミちゃんの巨大な体。
すごく巨大な太もも、ふにふに。
ぶっ。

やばっ。
これ以上想像するのはやめよう。
どきどきしてくる。

「なーに想像しているのよ…」

「な。なんでもない」

「さてといろいろ教えてよ…
こっちはとっておきの情報を教えたんだから…」
らんらんと輝く目。

「誠一の誕生日からな。
9月15日。
でも、もうすぎているから次だな。
家族構成は父、母、姉が一人、
好物はマンゴー、鯖の味噌煮、秋刀魚
趣味はお菓子作り。
そういえば将来は有名なパティシエになるんだとか、言っていたな。
好みの女性のタイプはかわいい子。
おとなしいような感じの子だったな。
そういう子にあこがれていたっけ」

「ふ。ふーんそうなんだ」
すこしがっかりしているサラ。

「であれば、好みのタイプはお前と全然違うな。
おしとやかにしないと嫌われるぞ」

「くっ。今は好みが違うかもしれないじゃない。
で、他には?」

「そうだなぁ。あいつのメールアドレスを教えてやる。
でももう知っているのか?
あいつの電話番号とか、メールアドレスとか…」

「まだ知らない。
聞こうとは思ったけどうまくきりだせなくて…」
もじもじするサラ。

「なんだ。そうなのか。
お前のことだから、かまわずにわしづかみにでもして、
無理やり聞いているのかと思ったが…」

「で、できるわけないじゃない。
そんなことしたら嫌われちゃうし…
それにうまく声をかけることすらできないし…」

「そうなのか?」

「うん」

「じゃとっておきの情報だな。
僕からアドレスを聞いたことにして、メールでもしろよ。
明日、12時に公園で待っています。大事な話があるので。とか」

「そ。そんなこと急にできるわけないじゃん。
メールするだけでもどきどきするのに…」

「ふーん。お前も女の子なんだな。
怪獣かと思っていた」

「か、怪獣とはなによ!
ぐっ。いけない。今怒ったら告げ口されるわね。
我慢。
我慢。
で、他には。
何プレゼントしたら喜びそう?」

と聞いてくる。

「うーん。そうだな。
語学学習の本とかかな?
どこか海外で学びたいとか言っていたし…」

「そう。そうなんだ。語学っと」
メモしているサラ。

がたん。

玄関のドアが開く音。

「ただいまだよ」
ミミちゃんが帰ってきたようだ。

「じゃあ。ありがと。このぐらいで十分」
とサラは言い、自分の部屋へと戻る。

「ごめん。すこし遅くなっちゃった。
もうお昼だし。あたしが作るね。
オムライスでいいよね」

とミミちゃん。

「うん」

今日のミミちゃんもかわいいなあ。と見る。
ソファの上から見ているので、目線は見上げるような感じ。
ミミちゃんはスカートだ。
ここから見上げると、太ももがちらりと見える。
奥までは見えない。
ひざより少し上までは見える。
ひざあたりは太くないが、それより上は結構肉付きの良い感じで、
上にいくにしたがって急に太くなっていく足。
そのさらに上は暗くて見えない。

ぶんぶん。
首をふる。
そして、さっきのことを思い出す。

どきどき。
どきどき。

余計に意識してしまう。

テレビでも見よう。
でもスイッチがつけられない。

「テレビでも見る?」
ちょうど戻ってきたサラが聞いてくる。

「うん」
サラはスイッチをつける。

すべてのものが巨大だと生活も大変だなと思ってしまう。

だんだんオムライスのいいにおいがしてくる。

いいなあ。
こういうの。

今は、サラもいじめてこないし。
ミミちゃんはほわほわで、かわいいし。巨乳だし。

幸せだなぁと思ってしまう。

今はまだお昼だ。
午後は何をしようと思った。