加圧マッサージのモニターも今日が終了日。
でもこの後も続くんだけど…
当面(一ヶ月ほど)は仕事がない。
その後、調整とか、新薬のモニターで呼ばれるかもしれない。

「今日で終わりだね」
「うん」

「思えば長かったような、あっという間みたいな…」
「そうだよね。でも君と出会えてよかったよぉ」

「うん。僕もそれを感じている。
出会っていなかったらどうなんだろうね。
今頃。平凡な人生であきあきしていたのかな?」

「あたしも。普通に日常を過ごしてどこかに出会いがないかを探しているのかも…」

ということを部屋で待っている間、ミミちゃんと話している。
……

「今日は総合検査と、バルーンの安全確認」
僕は安全確認と聞いて、以前バルーンの破裂を実験させられたことを思い出す。

「バルーンの安全確認というのがすごく気になるんだけど…」

「総合検査は、今までに投薬した薬の影響がないかと、
加圧による効果がどれぐらいあったかを調べるもの。
午前中で終わるわよ」

「バルーンの安全確認てのは?」

「じゃ検査するから部屋へ来てね…」
と言い残してスタッフの人は出て行く…

「おい。ちょっと…」
こっちの質問に答えろよ。
きっと何かあるぞ。

「行っちゃったね。あたしもバルーンの安全確認をするのかな?
あたしの場合、総合検査はないよね」

とミミちゃん。

「部屋で休んでいたら?
必要なら声がかかると思うよ」

「うん。何も言われていないもんね。
じゃそうするよ」

とミミちゃんを残して、僕は総合検査のために部屋を出る。

……

「これで検査は終わりよ。
薬の副作用もないし。
あなたの体もだいぶサイズが減ったわね。
体重も-8kg。
おなかまわりも細くなったし。
効果あったわね」

「うん」
だいぶ細くなった。

これもバルーンの加圧効果か。
でもほかにも、新薬の中に体の脂肪を血液に溶けやすくするための効果もまぜてあったらしく、
サラに踏み潰されてぺったんこになったときも、体の脂肪だけが押しつぶされて、
あとで血液を経由して対外に排出されたりという効果もきちんと効いたみたいだった。
それは聞いていなかったんだけど…
脂肪だけが押しつぶされるようにするのが難しかったみたいだ。

「そんな効果もあったなんて…」

「今だから言うけど、かなり実験的だったのよ。
体の脂肪だけが踏まれたときに押しつぶされるようにするのが大変で、
筋肉とか骨とか、神経組織が潰れちゃったら死んじゃうじゃない。
成功してよかったと言っていたわね。
成功確立は8割だったとか…」

「な。なんだよそれ。
失敗していたらどうなっていたんだよ!」

「たぶん、踏まれたときに潰れちゃっていたわね。
筋肉とか、骨だけとか…
元に戻ることなくね…」

「そ、そ、それってひどすぎじゃないか!」

「まあ、いいじゃない。成功したし。
でも、脂肪だけ押しつぶされるようにするのはリスクが高いから、
営業が始まったらその効果は使わないようにすると決定したし。
だから安心していいわよ」

「いまさら言っても遅いよ。もう。
全く。ひどすぎ!
それに、その実験も無駄になったのかよ」

「まあいいじゃない。無事だったんだし…
それに、その分あなたのお給料を割り増しで振り込んであげることになったし…」
と言われ、電卓をはじくスタッフの人。

思ったより多い。
けど。
失敗していたら死んでいたと思えば妥当な金額だ。
ミミちゃんにでも何か買ってあげようかな。

「今後。変な新薬のテストを僕にさせないと約束するなら
許してあげよう。
今後のテストで、変なことをしたと、後でわかったらリカにあんたを生身で踏ませるからな!」

「わかった。わかったわよ。
さてと。次はバルーンの安全確認ね」
と言われる。
すっかり忘れていた。
「何させるんだよ。また前みたいにバルーンを破裂でもさせるのか?」

「破裂はさせないわよ。
破裂しないかを確かめるの。
リカちゃんとミミちゃんの2人がかりでバルーンの上に乗ってたしかめるの。
それから、破裂したときのために、あんたもバルーンの中に入っていてもらうわよ。
安全装置が働くかもついでに見ることができるでしょ」

「もうやだ。
あんたがやれよ」
ミミちゃんがバルーンの上に乗ってバルーンが破裂したときは、ちびるかと思った。
気絶しちゃったし…
それに今日は、ミミちゃんだけでなくリカも一緒に乗る。
途方もなく大きなお尻が頭上に見えるのか。
リカなら地球人の20倍は大きいから、かなりのものだ。
お尻もものすごい大きさ。
天井よりも大きいお尻がふってきたらと思うと、かなりがくがく、ぶるぶるだ。

「だーめ。もう決定事項だから。
契約の最後の日まできちんと使うわよ。
お金払っているんだし。
じゃ、連れて行って」
といつの間にか僕の背後に立っていた男のスタッフ2人にがんじがらめにされる。

「おい。こら。放せよ」

「だめだ」
わー。
くっそ。
油断した。

……

ここに来て最初のころに入ったバルーンと同じ大きさのバルーンが並んでいる部屋に入る。
部屋はものすごく広い。
市の体育館何個分?
端は遠すぎて見えない。

「やっほ。ひさしぶりね」
リカだ。

「やあ」
久しぶりに見るリカ。
かなり大きい。
10倍大きいミミちゃんを見慣れていると、
ミミちゃんの2倍は背が高いリカを見るとものすごく巨大に見える。
ミミちゃんが子供のようだ。
リカとミミちゃんが並ぶとということなんだけど、僕から見れば2人とも、ものすごく巨大。
戦隊ものの隊員が怪獣と戦うために巨大化したらこのぐらいの大きさになるんだろうかと想像してしまう。

「ミミちゃん、かわいいわね。
お人形さんみたい。抱っこしていい?」

「え。うん」
でっかいミミちゃんが、さらにでっかいリカに抱っこされるのか。
見てみたいなぁ。

「よいしょっと。
やっぱ小さいから軽いわね。でも胸はかなりあるみたい」

「そうなのかな?
あたし、ちょっと太めだから重いんじゃないかと思ったんだけど…」

「全然大丈夫。
ミミちゃんなら片腕で持ち上げられるわよ。
ほら…」

ミミちゃんを抱っこしているリカが、ミミちゃんを片腕で抱っこして持ち上げる。

「わわっ」
すげぇ。
50トン以上あるミミちゃんを軽々と抱っこしている。
さすがリカ。

僕はリカの腕とか、お尻を見た。
あらためて見ると、すごくでっかい体のパーツ。

「準備ができたから、バルーンの中に入るぞ」

と男に連れられて入り口をくぐる。
バタン。
がちゃ。

背後で入り口が閉じられて、鍵もかけられる。

ふう。

仕方がなくバルーンの中に入るしかないか…
潰れて死んだら、スタッフの人にとりついてやる。

僕はバルーンの中に入る。

「入ったわね。あなたは特に何もしなくていいのよ。
その中にいるだけ。仰向けでも、うつぶせでもいいけど。
腕を上げたり、ひざを折り曲げないでね。
バルーンが破裂して、リカのお尻が落ちてきたときに、
簡単に折れるから…
腕や足を折りたいのならそうしていてもいいけど…」

「やだよ。
それに破裂しないんだろ」

「まあそうね。
じゃリカ、ミミちゃんを抱っこしてバルーンの上に座ってくれる?
バルーンの上でどすんどすんしていいから。
バルーンを押しつぶすぐらいの勢いでやってね」

と容赦がないスタッフの人。
「彼が中にいるからあまり無茶しないでね。
彼を潰さないでね。
絶対だよ」

「わかってるわよ。安全装置もあるから大丈夫。
普通にやるから…」
とリカ。

リカとミミちゃんのやりとりがそばに置いてあるスピーカーから聞こえる。

バルーンのそばに立っていたリカがミミちゃんを抱っこして、バルーンの上に腰掛ける。

ぎゅうう。
ぎしぎし。

ぎゅうう。
リカが座るとバルーンが潰れてくる。

ぎゅうう。
バルーンが1/3ぐらいの高さになる。

「じゃあ。バルーンが破裂しないか確かめて…」

とスタッフの人が言うと、リカが体を上下しはじめた。

ぎゅう。
ぎゅう。
ぎゅう。

上下するたびに気圧が高くなる。

今日は中の圧力は低めになっている。

で、でもちょっと苦しい。
それにひさびさに見るリカのお尻。

部屋の天井一面がお肉でできているかのよう。
恐竜のおなかを下から見上げたかのよう。
実際に見たことないけど。
それよりも女の子の体らしく柔らかいんだろうけど。

ぎゅう。
ぎゅう。
大きなお尻。
バルーンの上にはリカの体が乗っていると思うと怖い。
地球人の8000人分はある重さのものがバルーンにかかっている。
それにプラスしてミミちゃんの重さ。
ミミちゃんの重さは無視してもいいかもしれないけど途方もない重量。

ずんずん。
リカがお尻を上下させる。

ぎゅう。ぎゅう。

どすん。どすん。
ぎゅうううう。

ずんずん。

普通の部屋の天井の何倍かの大きさのお尻が頭上で上下していると、ものすごいことになる。
途方もない大きさのもので押しつぶされそうな感じがすごい。

どすん。
どすん。
ぎゅう。
ぎゅう。

もしバルーンが破裂したらどうなるか。
一気に400トンはある物体が頭上から降ってくることになる。
安全装置がなければひとたまりもないだろう。
安全装置があってもどうだか。
それに、この床。
リカのお尻が落ちてきた衝撃でひびが入るんじゃないかとも思う。
400トンだぞ。
安全装置もろとも潰れるんじゃないかと考えてしまう。
そんな重さに耐えることできるのか?

ぎゅう。
ずんずん。

ものすごいでっかいものが頭上にのしかかってくる。

それだけでも、普通の子なら気絶しているだろう。

早く終われ。
早く。
もういいんじゃないか。

……

その後
「5分たったからもういいわね。
じゃその隣のバルーンに移動して同じことやってね」

「げっ。まだあるのかよ…」
これで終わりかと思った。

バルーンの下の入り口をくぐり、ドアを開けると男の人がいる。
逃げることは不可能。
再び捕まり次のバルーンの入り口まで連れて行かれる。

はう。

その後バルーン10個分の検査をすることになった。

……

お。おわり。
すごく疲れた。
バルーンは破裂しなかった。
でも頭上でリカのお尻がせまってくるのを何回も見ると、夢に出てきそうだ。

「ふー。終わった終わった。
ミミちゃん、帰ろう。
もうくたくた」

「いや。まだあるみたいだよ。ほら」
とミミちゃんが頭上でゆびを左のほうに向ける。

そっちのほうを見ると、バルーンがもう1つ。

「げっ」
がしっ。
また、背後から捕まえられる。

「今度は古くなったバルーンの試験ね。
今度は破裂する可能性大だからよろしく」

「うげぇ。もうやだ」

「だーめ」
くっそ。

……
まだ終わっていなかった。

ずんずん。

ぎゅう。
ぎゅううう。

再び頭上からリカのお尻がせまってくる。

今は3つ目のバルーン。
まだ破裂していない。

ぎゅうぎゅうう。
ぎゅうぎゅうううう。

いつ破裂するかと思うと、さっきの10倍は怖い。

首を左右にふっても、頭上に見えるのはリカのお尻ばかり。
しかもさっきのバルーンよりも空気の量は少ない。

リカがずんずんすると、2メートルぐらいの高さまでバルーンがへこむ。

ぎゅうう。
ぎゅうう。

「ひっ」
間近にリカのお尻がせまると声が出てしまう。

ぎゅうぎゅう。
ぎゅうぎゅう。

ばきっ。

どこかで音がした。

「ひう」

怖いい。

……

「はい。終わり、次ね」

ううううう。
もうやだよ。

……

そして9個目のバルーン。

「これで最後よぉ」
とスタッフの人が言う。

やっと最後か。
今までバルーンは破裂しなかった。

僕はバルーンの中に入る。
なんかやば。
そう思った。
バルーンの色を見ると一番古そうな感じ。

「遺言はない?
一応聞いておいてあげるけど…」

とスタッフの人が言う。

「んなもんねえよ!」
僕は怒る。

「絶対に安全装置の範囲から出ないでね」
と念を押される。

「わかっているよ!」

今回はだめなのか?
破裂するのか?
いやな予感。

僕はバルーンの中に入る。

「大変だけど。がんばってね」
とミミちゃんの声。

「う。うん」
はぁ。
ため息をついた。

……

ぎゅう。
リカがバルーンの上に座る。

みし。
ばき。
ぎ。

バルーンからいやな音がする。

「じゃあ初めて」

ぎゅうう。
ずん。

みしみし。

ぎゅう。
ぎゅう。

再びリカがバルーンの上でお尻を上下する。

うぎゃあ。
かなり近い。

さらに空気が抜けているバルーン。
リカがずんずんすると、頭上1メートルぐらいまでお尻がせまる。

「ひっ」

「ひっ」

ぎゅうう。
ぎゅうう。
みしっ

ぎゅううううう。

「うぎょ」

今リカのお尻まで50センチなかった。
最後までに絶対ちびるぞ。これ。
絶対潰れる。

ぎゅう。
ぎゅうう。

ずんずん。
ぎゅう。
みしっ。

ぎぎぎ。

ぎゅうう。

「ひ」

今はすぐ目の前までお尻が下がった。

「ちょっと。だめ潰れる。
ずんずんしないで…
おい。ちょっと」
何も答えないスタッフの人。
文句ぐらいは言うのに…
変だと思って僕はスピーカーとマイクの配線を見る。

げっ。
スピーカーの配線はつながっているが、マイクの配線がつながっていない。
ということはこっちの声が聞こえない。

「おい、こら。やめろ」
安全装置の範囲内で、めちゃめちゃに暴れてみる。

でも、それに気がつく人はなく。
リカのお尻がぎゅうぎゅうせまる。

ぎゅうう。
ぎゅうう。

みしっ。
ばきっ。

ぎゅう。

「ひっ」

ばきっ。
いやな音。

ずん。
ずん。

ぎゅう。

「はぎゃ」
心臓がばくばくする。
今、リカのお尻が僕の胸に一瞬あたった。
絶対潰れる。
「おい」

「じゃ最後に、思いっきりお尻をどすんとして」

「うぎゃー。だめだ。
それ以上ずしんと乗ったら、僕の体の上にリカのお尻が乗っかるからやめて!」
と言うがマイクの配線がつながっていないから聞こえない。

「じゃいくわよ」
とリカの声が聞こえる。

うわぁ。
だめだあ。

頭上にずん、と乗っかるリカのお尻が見えた後。

ばんー。
という音。
床ががくっと下がる感触と胸に一瞬何かがあたるのが感じた。
うぐえ。
かなりの圧力だった。
ものすごい重さが一瞬だけ胸に乗った。
でも一瞬だけだ。

目の前は真っ暗。
手を動かしてみる。

う。
動かない。

ちょっとだけ動かすと天井にあたる。
さわさわ。

僕の体の10センチぐらい上にある巨大なもの。
さわると温かい。

これはリカのお尻か。
ということはバルーンは破裂したけど、安全装置が働いたのか。

ふう。
助かった。

「バルーン。破裂しちゃったわね。
あたしの装置に欠陥がなければ、無傷のはず。
でも、もし失敗していればもう手遅れかも。
もしそうなら今頃ぺったんこね」
とかすかに聞こえてくる声。
くっそ。スタッフめ。
まだ潰れていないぞ。

僕はぽこぽことリカのお尻をたたく。
すると、頭上の物体が動く。

ぎゅう。

ぎし。
みしっ。

僕の周りの床から音がする。

ばきばき。
ずん。

リカのお尻が下がった。

うげ。
床にひびでも入ったのか?

ずん。

ぎゅ。
「ち、ちょっと待って」

僕の足はもうすでにリカのお尻に密着している。
これ以上、お尻が下がってきたら足が潰れちゃう。

みしっ。
ばきっ。

さらに床から音が聞こえる。

ばきっ

ずん。

僕の胸にリカのお尻があたる。

うげえ。
もうだめ。

今は僕の胸にリカのお尻があたっているだけ。
これ以上下がってきたら押しつぶされる。

ばきばきばき。

音がする。
ひえー。

ばき。
みし。
みしっ。
床から音が鳴る。

ぎゅ。
胸に圧力がかかる。
うげ。
苦しい。

ばきっ。
みしっ。
さらに床から音がする。

ぐわぁ。
だめだぁ。

みし。
ばき。
ばきばき。
と音がしたあと、上から光があたる。
「あっちゃー。ひどいわね。床にひびが入っているわよ」

「ち、ちょっと大丈夫?
ねえ。動かないよぉ」

とミミちゃんの声。

やっとリカが上からどいてくれたようだ。
僕はゆっくりと起き上がる。
そして左右を見る。

???
うげっ。

これが床?

僕の足元のほうの床がかなり陥没している。
50センチぐらいか。
ひびも入ってひどいありさまだ。
そして、僕のまわりの安全装置がある付近。
安全装置ごと、床にめり込んでいる。

安全装置の外を見る。
潰れた何か。
スピーカーか。
プラスティックはべきべきに割れている。
中身も箱から出て、割れた破片が床に広がっている。
周りの床はひびだらけだ。
良く助かったな。

「怪我はない?
骨。折れていない?」

「うん。どうにか…」

僕は立ち上がる。

それにしてもひどい。
ここまで床が陥没するとは…

「この床。もろいわね。
あたしがちょっとしりもちついたぐらいでこうなっちゃうんだから。
もっとしっかり工事しておいてね。
でもあたし、ショック。
こんな床を見ると、
まるであたしがものすごく重いみたいじゃない」

「ものすごく重いわよ。
しかも最近太ったわよね。
最初から20.7トン増えたでしょ?」

「うげっ。どうしてそれを…」

「わかるわよ。あなたのデータ見ているもの。
あんたのお尻重すぎ」

「そ。それは。この床が手抜き工事だからよ。
あたしのしりもちの1つや2つぐらい耐えるように作っておきなさいよ」

と言いあいをしているのを聞きながら、僕はミミちゃんに抱き上げられる。

「大丈夫?」

「うん。なんともない。
でも最後は、リカのお尻が僕の胸にあたったんだ。
良く潰れなかったと思うよ…」

ミミちゃんに持ち上げられて、10メートルぐらいの高さから見ると良くわかる。

床にひびが入っている。それも放射状にだ。

「ねえ。ミミちゃんもそう思うでしょ」
とリカの声。

そして、さらに空中に持ち上げられる僕達。
リカがミミちゃんを抱っこしたみたいだ。

20メートルぐらいの高さ。
さらに上。
ミミちゃんの足が床を離れてるのがわかる。
うわぁ。

僕の背中にミミちゃんの体があたっているから、この状況が良くわかる。
僕はミミちゃんに、
ミミちゃんはリカに抱っこされている。

「ごめんなさい。あたし聞いていなかったの。彼の無事を確かめていたから…」

「言いあいしている場合ではなかったわね。
彼。大丈夫?」

「うん。平気。
大丈夫だ。
これでよく助かったもんだよ。
この床めちゃくちゃ」

「あんたまでそんなこと言う。
これはこの床が手抜き工事なの。
あたしのしりもちの1つや2つで壊れるなんて…
あたし、服を取り替えてくるわね。
じゃ、ミミちゃんあとでね…」

とリカは言い、ミミちゃんごと床の上に下ろされる。
「ごめんね。この床がこんなになるなんて、思わなかった。
でもあたしの設計した安全装置は完璧ね。
安全装置ごと床にめりこんでも、中にいる彼は大丈夫なんだから…」

「次からはやらないからな。
二.度.と。
安全装置が働くかの実験は、自分自身の体をはってやれよ。
もうたくさんだ」

と僕はスタッフの人に怒ってから

「ミミちゃん帰るよ」

「うん。ここ。片付けなくていいの?」

「いいんだよ。スタッフの人が1人で片付けるから。
僕は手伝わないからな。
リカにでも手伝ってもらえば、すぐに片付くだろう」

「ほら。行くよ」

「うん。それじゃね」

と僕達は部屋を出る。

「医務室に寄らなくていいの?」

「いいんだよ。なんともないし…
どこか悪かったら、ミミちゃんに検査してもらう。
そのほうがとっても安心できるよ」

「あたし。検査の方法知らないよ」

「大丈夫。指でちょっと押して、骨にひびが入っていないかを見るだけだから…」

「あたしが指で押すと余計骨にひびが入るよ。
加減が難しいし…」

「大丈夫だよ。
それにミミちゃんにだったら指で押されて、骨が折れても文句言わないから…」

「そんなこと言われても。
あたしが気にするよぉ」

「大丈夫。どこも折れていないから…
それに、折れていたら今頃ぺちゃんこだ」

「まあ。そうだよね。
リカさん大きいもんね。
あたしも軽々だっこしちゃうぐらいだし…」

ミミちゃんのポケットの中。

帰り道。

やっと終わり。

バルーンの破裂が一番つらかったな。

良かったのがミミちゃんと一緒に仕事できたこと、出会えたこと。
サラに踏まれたのもきつかったし。

ミミちゃんに踏まれたのは、つらくはなかったけど。

「今日のご飯はなににする?」

「ミミちゃんの好きなものでいいよ」

「じゃあ奮発して天然の海鮮丼。
あたしたちのサイズの天然の材料はものすごく高いの」

ミミちゃんはどこかへ電話する。

……

「1時間ぐらいで届けてくれるって。材料の手配はできたよ。
他に何かない?」

「じゃワイン。
高いやつ。
ミミちゃん飲める?」

「うん。じゃそれも…」

……

「ただいま」

「おかえり。お疲れ様。
なんか、彼ぐったりしているわね。
帰ってきたらいじめようと思っていたのに…」
とサラ。

「だめだよ。いじめちゃ。
サラをこちょこちょするよ」

「冗談よ。
そういえば今日のご飯はどうするの?」

「うん。帰り道で注文しちゃった。
海鮮丼。今日はふんぱつして天然ものだよぉ」

「うわ。すごいよ。
お姉ちゃん。
ものすごく値段高いんじゃない?」

「うん。今日は気にしないで。
給料も振り込んでくれたし…
北海道から直送だって。
あと1時間ぐらいで届けてもらう予定だから…」

「そっかー楽しみだなぁ」
とサラ。

僕達は2人で見つめあって微笑む。

……

「なんじゃこりゃー」
と僕はさけんでしまった。

うに。
いくら。
シャケ。
えび。
イカ。
その他もいろいろな食材がどんぶりの中に入っている。

それも地球人サイズのもの。
ミミちゃんと、サラの前に置いてあるどんぶりの中にも満杯になるぐらい入っている。

「やっぱり、具はちっちゃい。
でも量は十分なぐらいあるね」

とサラはどんぶりの中をみて言う。

すごすぎ。

地球人1000人分の食材が、1つのどんぶりの中に入っている。
ウニだけでもものすごい量。というかものすごい値段。
1000倍の量だから1000倍の値段。

こんな贅沢は普通できねえ。
と思いながらどんぶりを見る。

僕の分のどんぶりにもてんこもりの海鮮が乗っている。
「これ、結構いいものなんだよ。奮発したんだから…」
そりゃそうだろう。
直送だしな。

このつや。
色。とても新鮮。

さてと、醤油。
醤油を手にとって、小皿にあけて。
わさびと混ぜて。
とやっていると。

「いただきっ」
とサラが僕のどんぶりを指でつまんで持っていく。

「何すんだよー」

「ちょっと味見…」

と言って、サラはどんぶりを、自分の舌の上で逆さにする。

ぺろっとひとなめで終わり。
「人の取るなよ。こらー」

せっかくの海鮮丼。
いい感じのわさび醤油を混ぜ込んでいたところだったのに…
涙目になりそう。

サラは。
「少ないから良くわからないけど、いいんじゃない?」
と言って、空になったどんぶりを僕の前に置くサラ。

「サラ。ひどいよぉ。
人のを取るなんて…
後でおしおきするからね。
彼の分はあたしのから分けてあげるから…」
とやさしいミミちゃんは、僕のどんぶりを指でつまんで、自分のどんぶりから、
小さいスプーンを使用して、分けてくれる。

「ごめんね。てんこもりにしておいたから…」
とミミちゃんが僕の前にどんぶりを置く。
かなりの大盛。

「今度。やったら30分はこちょこちょし続けるからね!」
とぷんぷん怒る。

「わかった。わかった。
良かったね。
お姉ちゃんからもらえて…」

「くっそ。サラめ」
と言い。僕はどんぶりを手元に持ってくる。

そして、わさび醤油をかける。

「いただきます」

うま。
とても新鮮。
イカも柔らかい。
ウニもふわふわ。

「やっぱ。違うね。
サイズがミニミニサイズだから、食感はあまりないけどおいしいよ」

「そうだね。おいしいよ」

みんなで食べる。

ものすごく贅沢だ。
地球人1000人分はある天然の食材がどんどん無くなっていく。

……

「食べた食べた。もうぽんぽん」
とサラはおなかをさすっている。
ものすごい食べるな、2人とも。

「そうだ。チーズとワインもあるよ。
サラも飲む?」

「サラは、まだ子供だろ。だめだ」
僕が言うけど。

「べーだ。地球人とは体の構造が違うのよ。
もうあたしはお酒が飲める歳なのだ」
と言うサラ。

「そうなのか?」

「うん。そうだよ」
とミミちゃんが言うのだから本当らしい。

……

これまた贅沢だな。
安くはないワイン。
グラス一杯で、これも地球人に換算して1000人分の量はある。

「おつかれさーん」
と乾杯する。

「ぷは」
んまい。
なかなかいいワインだ。

……

15分ぐらいたったとき。

「もうちょっとこっち来てくれる?」

「うん」
僕はミミちゃんの近くに移動する。

でも。

「そんなところじゃなくて、こっち」
とミミちゃんは自身の胸をたたく。

そこか。

僕はその場で困っていると…

むんずと、ミミちゃんの手によって捕まる。

そして胸の谷間へ。

「ミミちゃん。酔ったんじゃない?」

「まだ、酔っていないよぉ」
とミミちゃんは、胸のほうにぎゅーとする。

「ちょっとミミちゃん…」
ふくらみにうずまってしまう。
でも。ほどよいぎゅーだ。

「今日は一緒に寝る。絶対ねる」
とミミちゃんは言う。

「だめだよ。そんなの…」
僕は言ってみるけど。
どうなんだろうと想像してみる。
人の10倍は大きい、超特大の胸の子と一緒に寝る。
人形さんのように抱かれて寝るのか?

下手をすればミミちゃんの下敷き。
うう。
すごくいいんだけど、あぶないかも。

ミミちゃんの体の下敷きになったらどうなるかは、モニターで体験済み。
ものすごい重さで圧迫されるのは確実。

あたりどころによって、運が悪ければ
すぐにぼきぼきと体の骨が折れてしまうだろう。

でもすごくいい。
危険をおかして一緒に寝るか。
断るか。
迷う。

そして、安全のため断ろうと思ったとき。

「じゃ決めちゃうね。
あたしと一緒に寝ること。
もし断ったらこちょこちょだよ」

「えー」

「らーめ。一緒に寝るの。
もう眠くなってきたし…」

とミミちゃんは立ち上がる。
そして、僕を見る。

うう。
その目。かなり真剣。
ミミちゃんの手がのびてくる。

僕はそのまま逃げることができずに捕まってしまう。

「もうそうなったら、覚悟をきめて一緒に寝なさいよ。
下敷きになって死んでも知らないけど…」

「絶対潰さないよ。
もし下にしいても、潰れないように加減するから…
ものすごく気をつけるから…
ということで部屋へ行こうね」

とミミちゃん。
半分酔っぱらっている。
結構飲んでいたみたい。

僕はミミちゃんの手の中でもがいてみる。

だめだ。
僕がミミちゃんの手の中でもがいても気がつかないし、
ぎゅっと握られている。

そして。
「ここで待っていてね」

と明かりが置いてある台の上に置かれる。

ひえ。
床まで10メートル以上はある。

絶対逃げることはできない高さ。
ミミちゃんひどいなあ。

着替えおわったミミちゃん。

「一緒に寝ようね」

とミミちゃんは僕をつかんでベッドの中へと入れられてしまう。

「本当に一緒に寝るの?」

「うん。だめ?」

「そりゃだめだろう」
と言うが。

「今夜は絶対一緒に寝るの。
あたしの顔のそばで寝てね。
あたしの体のほうに近寄らなければ大丈夫だから…」

と言われる。

どきどき。
ミミちゃんの布団の中。
ミミちゃんのにおいと体温でいっぱい。
ふかふか。
でも身長が10倍で重さが50トンを超える子が添い寝しているというのはどきどき。
間違ったら潰される。

でも。
そのリスクを十分おかしてでも一緒に寝たいと思ったことはある。

「くー」
そんなことを考えていたらミミちゃんの寝息。
もう寝たのか。

結構飲んだし…

僕も覚悟をきめて寝るか。

ミミちゃんの体のほうに下りなければ危険はないみたいだし。

でも、ミミちゃんの頭の下敷きになったら死んじゃうのか。
ミミちゃんの手でべちっと叩かれて、ベッドの下まで落ちたらどうなるんだ。
とか。
ミミちゃんが寝ぼけて、僕を食べちゃったりしないかとか。
いろいろ考えてしまう。

でも。
定期的なミミちゃんの寝息と。
ふわふわのシーツ。
ミミちゃんの体温。
そういうものを感じていると心地よくなってくる。

そしていつのまにか寝てしまう僕。

……

んー。苦しい。
苦しいなあ。
僕は苦しさに目が覚める。

どこだここ。
苦しいのと暑さ。
と思ったら、ミミちゃんがいつのまにか僕をつかんで胸に押し付けられている。

ぎゅ。

ちょっと。
僕はもがく。
結構もがく。

なんとか、ミミちゃんの胸から脱出する。

ふう。

いつの間にこんなところに…
きっとミミちゃんが無意識に僕をつかんだんだろう。

ふう。

僕は元の位置に戻って寝ることにする。

……

くう。

……

苦しさによってまた目がさめる。
ここはどこ?

暗くて見えない。

手を伸ばすと、繊維質の物。
そして、ミミちゃんの体温。

どうやらミミちゃんの寝巻きの中のようだ。

自分でもぐりこむには、無理がある。
ということは、ミミちゃんが無意識に自分の胸にでもおしつけて、
僕が中に入ってしまったということだろうか。

……

やっと出た。
ミミちゃんが寝返りをうったので、下敷きになるかと思ったが助かった。

下に飛び降りると、固い感触。
ベッドの上のようだ。

このまま、いそいで反対側へとはいでる。

やっと布団の外に出た。
ふう。

僕はミミちゃんの頭のほうへ進む。

……

ふう。
やっともとの位置に戻ってきた。
疲れるなあ。

でもなんでミミちゃん。
無意識に僕をつかむんだろう。

一緒にくっつきたいんだろうか。
きっとそうだろう。

でもミミちゃんに潰されちゃうのはごめんだな。

ふう。
今度はゆっくり寝ることができるといいけど…

目をつぶった。

……

僕は何か、髪に触られている感じがしたので目をあける。

「うふふ」
ミミちゃんの声。

頭を後ろにそらして見てみるとミミちゃんが見つめている。

ここはどこ?

ミミちゃんの顔の位置からすると、
まさか。

僕は、背中に感じる高めの体温と、ぽよんぽよんする感じ。
とってもやわらかくて、幸せな気分から考えるとひとつしかない。

ミミちゃんの胸の谷間。

左右を見ると、僕の体をつつみこむようなもりあがったふくらみ。
やっぱり。

こんなところで寝ていたのか。

「目がさめた?
すっごく幸せな顔をして寝ているんだもん。
あたしが目をさましたら、そんなところにいるんだもん、
びっくりしちゃった。
でも、いやじゃないよ。
君の寝顔を見ていたら、目がさめるまでこのままにしておこうと思っていたの…」

「う。うわぁ。
ごめん」

僕は急いでそこから出る。

「いいよ。別に。いそいで出なくても…」

「いや。だって…」

ミミちゃんの胸の谷間で幸せそうな顔をして寝ていたところを見られていたんだぞ。
恥ずかしくなってしまう。

サラには聞かせたくない。

「じゃあ。起きようか。
もうそろそろ朝ご飯のしたくをしないと…」

と言われる。

「う。うん。そうだね…」

恥ずかしくて顔は赤いと思うけど。
すごく寝心地は良かったなと思った。
ふかふかでとても温かい。
それにミミちゃんのにおいもするし…
とってもおちつく…

ふう。

「じゃあたし着替えるから…」
と言われる。
けれどもこっち見ないでとは言われない。

信頼されているのか、
小さいから気にならないのかわからない。

でも。

ミミちゃんかわいいなあと思ってしまう。
10倍サイズがでっかいけど、とってもいい子だし…
好みだし。

幸せだなぁと感じる。

「サラも起きたかな?」

「さあ」
きっとこの時間なら起きているだろう。

これからこんな日が続くんだろうと思う。
幸せだなぁ。

「下におりるよ」

「うん」
ミミちゃんが手をだしてきたので僕はそれに乗る。

今日は何しようかなと考える。