「うー。今日はなんか体がだるいな」
くっそ。
きっとサラから風邪をもらった。

……

「風邪ね。彼女たち用の注射でもうつ?」
と、ものすごく巨大な注射を持つスタッフの人。

「太すぎるよ。その針。
そんなの使ったらこっちは死ぬよ」

「まあ。遠慮しないで使ってみたら、30秒で直るかもよ」

「30秒で死ぬよ」
僕は、その注射を使おうとするスタッフから逃げ出した。

今日は自室で休んでよっと。
薬の副作用もないのが確認できたのでこの後はフリーだ。

いつもの部屋で寝るよりかは安心。
自室だと、サラは入って来ることができないからだ。
まあ、あいつも風邪だろうから今日は来ないだろうけど。

こんなときはやさしいミミにでも看病されたい。
きっといろいろつくしてくれるだろう。

ベッドの上へ横になった。
テレビをつける。

平和だ。

漫画でも読むか。
ここに来るときに、買い求めた漫画数十巻が入っている

テレビの音声をBGMに漫画を読み進める。

……

「ふあーあ」
あくびをした。

少し寝るか。

ぐう。

……

昼寝から目が覚めるとちょうどお昼。

ご飯を食べに行く。
けれども風邪の症状はだんだん強くなってくる。

……

そして午後からは、また漫画を読んだり、昼寝したり、
携帯電話でメールを打ったり、ネットを確認したり。
だらだらと過ごす。
その間、ごほごほとせきも出てくる。

くっそ。風邪め。
明日どうなんだろう。
明日にはひどくなりそうな予感。
まあ、薬も飲んだし、どうなるかだ。
サラは休むのか。
もし来たらこっちは病欠で、帰ってもらうことにしよう。

……

どうも風邪は明日治りそうもないので、薬品は飲まないでも良いかどうかスタッフの人に聞きに言った。

「うーんそうね。明日。無理かも。
でも風邪をひいている人が薬品を飲んだときの検査もしたいから、薬だけ飲んでくれる?
いちおう副作用もないみたいだから」

「うん。わかった。
薬は飲むけど明日休むよ」

「じゃ。そのかわり一日延長ね」

「そっか。しょうがないか」

じゃあ。
と部屋を後にする。

……
次の日。

ぐう。
まだ寝ていた。
「まだ寝ているのね。まあ。風邪だからしょうがないか。
ねえ、ちょっと起きなさい。ミミちゃんが来ているわよ」

ゆさゆさ。
ゆさゆさ。

んあ。
目が覚める。
そして、スタッフの人からミミが来ているのを聞くと。

「わかった。すぐ行く」
僕はだるいけどしたくをした。

ミミならだるくても会いに行くよ。

……

僕は歩いていつもの部屋へ行く。

がちゃ。
ドアを開けた。

あれ?だれもいない。

「ふっふっふ。来たわね」
げっ。

その声。
僕は上を見る。
「げっ。サラ」

そして左右を見る。
足だ。
入り口をはさんで、壁にべったりと背をつけて、仁王立ちのように立っている。

「ミミお姉ちゃんは来ていないわよ」

「えーそんなー。
だ、だましたのか?
ご。ごほっ」
しゃべるとせきがでる。

「あたしは昨日寝ていたら、今日復活したの。
今日は絶好調よ」

「僕は、あんたからうつされた風邪のせいでだるいんだ。
帰る」

僕は入り口を開けて去ろうとした。

ばん。

サラは入り口を乱暴に足で閉める。

「何するんだよ。危ないぞ。
ご。ごほ」
こんこん
しゃべるとせきが出る。

「とりあえずあたし、午前中はひまだから、あんたの仕事につきあってあげる」

「今日仕事はしないよ。今日は風邪だから休むことにしたの!
今日は病欠にするから、さっさと帰れよ」

「だめ。あたしが来た意味なくなるじゃん。
あんたが具合悪いなんてのは関係ないの。
それにあたしは、風邪で具合が悪いのに仕事したじゃん」

「あれはサラが勝手に来たんだろう。
帰れといっても帰らなかったくせに」

「風邪で病欠ってのは認めないわよ。
ほら。今日のメニュー。持ってきたから」

とサラは言う。
けれども無理だ。

「ほら。入り口開けろよ。僕は帰るぞ」

「だめ。あたしが許さない」
とサラは言ってから。

どん。
どん。
と入り口の前に2つほどのダンベルを置くサラ。
表記を見ると5トン、10トンと書いてある。

くっそ。
ドアが開かない。

どうするか。
そうだ。うそをつくことにした。

「昨日は薬品飲んでいないんだからな。
今日が風邪で無理そうだから、スタッフの人に言って休みにしてもらったんだ。
だから。さっさと帰れよ」

「ふっふっふ。
そんなうそ通用しないんだけど。
あたしさっき、スタッフの人に聞いたんだもんね。
あんたが薬品を飲んだの知っている。
今日はどんな踏みかたしようかな?」

「だ。だめだ。こっちは具合が悪いのに。
それに、風邪のときにきちんと薬品が効くかどうかを検査していないんだぞ。
効かなかったらどうするんだよ」

「そんなの。あたしの責任じゃないし。
なおさら試してみる価値あるんじゃない?
そのためのモニターだし。
商売が始まってから、事故が起こるより、
あんた自身で実証しておくべきじゃん?
ほら。
最初は加減して踏んであげるから。
せいぜい数トンの重さしかかけないようにするから」

「そんな重さがかかったら死ぬよ。
僕が潰れて死んでもいいのかよ」

「まあ、あたしの人生じゃないし。
でもなるべくなら死んでほしくないわね。
踏んだときの感触が気持ち悪いし。
じゃわかった。
ものすごく加減して踏んであげる。
500kgまでにしておくから。
目分量だから誤差があるかもしれないけど」

「普通は、500kgでも死ぬよ。ご
ごほん」
こんこん。
だめだしゃべるとせきがでる。

「わがままね。それっぽっちで死ぬの?
あたしが指で押してもそのぐらいの力がかかるんじゃない?
じゃしょうがないわね。
ほら、これ飲みなさいよ」

人間サイズのペットボトルを僕の前に置くサラ。

しゃべるとせきが出そうなので、じっとにらむ僕。

「何疑っているのよ。
それは一番効果がある風邪薬。
あんたが飲んでも大丈夫よ。
きっと風邪がうつっていると思ったから、持ってきてあげたんじゃない」

まあ。
飲んでも死なないだろう。
あっても、とってもしょっぱい食塩水だったりというのも考えられる。

僕はペットボトルを手にとった。
そして、ちょっと口をつけた。

うえ。
普通に苦い薬みたいだ。

「苦いぞ」

「当然よ。あたしもそれ飲んだらすっきりしたんだから」
サラはそれを飲み終わるまで待っている。

「飲んだわね。
それ、本当に風邪薬だと思った?
実はね、青酸カリがごく微量に入っているの」

僕はそれを聞いて青くなった。
ごほん。
ごほん。
吐き出そうとする僕。

「何、本気にしているのよ、本当に風邪薬」

「びっくりするじゃないか。言っちゃいけない冗談だぞ。
ごほん。ごほん」

あーびっくりした。
サラなら本当にやりかねない。

「さてと、この後どうするかなぁ。
あんたを踏んでから帰るか」

だめだ。
それに今薬を飲んだ。

「だめだよ。今薬を飲んだから、きっと今、サラに踏まれたら飲み物が逆流して口から吹き出すぞ。
そして、気管に飲み物が入ったらどうするんだ」

「あっ。そっか。
でも、あたしがあんたのお腹を踏んで、口から飲み物が逆流して噴出すのを見てみるのも面白いわね」

「だ。ごほん。ごほん」
だめと言おうとしたけど、最後まで言えなかった。

「ほんとにつらそうね。
じゃあつまんないから帰るわね。
あんたがそんな調子だったら、
あんたを踏めないし、指で押したり、ぐにょーんと伸ばしたりもできないじゃん。
せっかくローラーで引き伸ばしてやろうと思ったのに。
じゃ、明後日来るから。
それまでに治しておきなさい。
治っていなかったら強行するから」

という言葉を残して出て行くサラ。

ふう。

結局何しに来たんだ。
薬を渡しに来たのか?

……

2日後。
風邪はすっきり治った。

さて今日は普通に仕事だ。
僕はいつもの部屋へ行った。

がちゃ。

どん。
わぁ。
僕はその衝撃でしりもちをついてしまった。

いきなり目の前に踏み下ろされる足。
「お。おまえなぁ」

「ふっふっふ。びっくりした?」

「びっくりするもなにも、死ぬかと思ったぞ」

サラはじっとこっちを見てから。
「どうやら風邪はすっきり治ったみたいね。
口答えもするし」

「お前が悪いんだぞ」
僕はそのまま歩いていく。

「じゃあ。加減なしでいじめることできるわね」
「それが目的かよ」
サラは細い目でこっちを見てる。
いたずらをしたいような顔。
僕はためいきをついた。

「ねえ。昨日は違う薬品をもらったでしょう」
「そういえばちょっとラベルの色が違っていたな。でもそれが何か?」
なんだ?
変なたくらみか?

「ふっふっふ。詳細は聞いていないでしょ?」
「まあな。同じようなものと思っていたし」

「あたし、さっき聞いたんだ。
今回のは、あんたの体がある程度の力まで耐えるようになるんだって、
そして踏まれている間は、押しつぶされ続けている感覚があって、
苦しいみたい。
で。閾値を超えたら、ぼきぼき音がして、体もぐしゅっとなるってさ」

「なんだよ。それ。
ぼきぼきって鳴って、ぐしゅっと潰れるのは、それ死んでいるだろ」

「大丈夫なんだってさ。
そこまで潰れないけど、形状記憶で体が元に戻るんだってさ。
あたしもそこまで潰れちゃうんだったら、乗りたくないし。
でもぼきぼき、鳴るのは本当みたい」

「大丈夫なのかよ。それ」
本当にやるのか?
大丈夫なんだろうな。
変に潰れたりしないだろうな」
僕はこの部屋を出て、スタッフの人に文句を言いにいこうと考えた。
そしてそのまま逃げると。

「だめよ。逃げることできないわよ」
サラはすたすた歩いていって、入り口にまたダンベル(トン単位)を入り口に置く。

くそっ。
出られない。

「本当に大丈夫なんだろうな」

「大丈夫だって。
でも、人体実験はあんたが初めてみたいだけど」

「ちょ。ちょっとまて、冗談じゃない。
やめだ。やめ。
危険すぎる」

……

サラは思った。
ふっ。本気にしている。
本当はきちんと安全が確認されているんだよ。
ぼきぼき鳴るのは本当だけど、体はぐしゃっとは潰れないし。
うっしっし。
もっと怖がらせちゃお。

……

「そうだ。あれ持ってこよう」

サラは歩いていく。
入り口はふさがれているので逃げることはできない。

何するんだ。

サラは手に量りを持ってきた。
大型で薄型のだ。

それを床の上に置く。
さらに、丈夫そうな箱のようなものをその上に置く。
3メートルぐらいの高さがありそうだ。

サラは目を細めてこっちを見てから僕をつかむ。
そして、量りの上に置かれた箱の上にべちっと置かれる。
「痛てえよ」

その言葉はサラに無視される。

僕は仕方なく下を見る。
そして、量りの数字がよく見える。
今は159kgのところ。
100kgは箱の重さ?
だったら元から減っている。
と考えていたらサラがしゃべり始めた。

「ふっふっふ。これは量り。
kg単位から200トンまで量ることできるの。
そして、今回の薬品は30トンまで耐えるんだって。
あたしがあんたの上に足を乗せて踏むの。
踏んだときの重さがあんたにわかるように。
それと、30トンをもう少しで超えそうとかわかるじゃん。
超えたらぼきぼき鳴るから」

「そんなのやだ。人をおもちゃにするなよ」

僕は反論する。
そしてそこから降りようかと考えた。

でも怖い。
下まで3メートルはある。
くっそ。
だから箱の上に乗せたのか。

僕はおとなしくする。

「じゃあ。さっそくこれの出番ね。
椅子持ってこよっと」

サラは椅子を持ってきて置いてから、かばんから例の、足で踏んでぐりぐりするローラーを取り出す。

「ふっ。このローラーでぐりぐりしてあげる。
そして最後におもいっきり踏んであげるから」

「ぐりぐりも、おもいっきり踏まんでもいいから」

サラは僕の背中の上にローラーを置く。

ぐっ。

「さあて。あんたの背中をローラーで伸ばしてあげる」

とサラがそっとローラーの上に足を乗せた。

うぐえ。
ぎゅうううううとなるが、常識的な範囲での潰れ方だ。

そして目盛りが動く。
4.2のところ。
つまり4トン。

でも、まだぐちゅううと潰れてはいない。
ローラーに押しつぶされてへこんでいて、とっても押し付けられているが耐えている。

「おっ。耐えているわね。さらに重さをかけてみるか」
というサラの言葉。

うぐえええええ。
さらに苦しくなる。

目盛りは14トンを超えた。
まだぐちゅうとは潰れていない。

ぐええええええ。
苦しいぞ。

力を抜いたら、ぐしゃっといきそうな感じ。
でも、普通だったら圧死している。

ぐえええ。
苦しい。

「じゃ。目分量で25トンぐらいまで増やすか」
増やさんでいい。
サラはめいっぱい重さをかけてくる。

ぎゅううううううううう。
ぐええええええ。
苦しい。

24トンを超えた。
そして目盛りの数字が一瞬30トンを超えたとき、
みしっ。
ぼきっ。

僕の体から音がした。

げっ。
本当にぼきって鳴った。

だめだめだめ。
やめやめやめ。

だめ。
僕は手を振る。

「あっ。ちょっと踏みすぎたね。
ぎりぎりにしようとおもったのに…」

「もうちょっと踏み踏みしてあげる。その後は容赦なく踏もうっと。
きっとぼきぼき鳴るわね」

だめだめだめ。
ぼきぼき、だめ。
元に戻らなかったらどうするんだよ。
本当に、体の骨がぼきぼき折れて戻らなかったら死ぬぞ。
おい。
言えないのでサラにはこの言葉は届かない。

「踏み踏み。それそれ」
というサラの声と同時に踏み踏みされる。
量りの目盛りは数トンから20トン以下の数値を上下している。

重さをかけるたびにぐえ、ぐえとなる。

……

「さてと、このぐらいかな。
じゃ覚悟はいい?」

だめだめだめ。
ぼきぼき反対。

僕は腕を振り回す。

「そうか。OKだね。
じゃいくよ」

OKじゃない。
だめ。

ぐぉ。
痛。苦しい。
目盛りは5トンだったのがいっきに、20トンまで増える。

ぐええ。
ぐるじい。
そしてさらに34トンまで増える。

ぼきっ。
ぼきぼきっ。

音がした。
ひえー。
これ。本当に折れている音じゃないよな。
目盛りが37トンになったとき。
ぼきっ。
音が鳴った後。
がくっと、サラの足が一段さがる。
そして。

ぼきぼきぼき。
ぐちゅううううううう。
やっとというか、とうとう潰れてしまった。

潰れた後は、今までと同じ。

「これで限界か。じゃ降りる前に全部の重さをかけてみるか」

もう降りろよ。

ぎゅうう。
むちゅううううううううううううううう。
となってしまう。
そのとき目盛りは44トンぐらい。
あ。45になった。
冷静に目盛りを見ている場合でもないか。
もうぼきぼきとは言わない。

降りろよ。

「さてと。もうこれ以上は潰れないみたい。
でも以外に耐えたわね。
30トンぐらいの力で踏んでも、聞いていたとおり潰れなかったわよ。
さて、元に戻るか見てよっと」

見物かよ。
一応大丈夫みたいだ。
こうしてつっこめるし、死んでいないし。

みしっ。
音がした。

みし。
みし。
ばきん。
ひえー。へんな音が体中からするよ。

みしみし。
がこ。
ばき。
みし。

うえええ。
なんかやだ。
骨が元通りになる音か?

みしみし。
がこがこ。

体のほうも元通りになっていく。
うえええ。
なんかやだ。これ。
変だとっても変だ。

「あははっ。面白い。
良く聞いていると音もしているし、
どうやらきちんと元に戻っていくわね。
これ面白い。
何回でも踏んで遊びたいな」

遊ぶなよ。
こっちは、元に戻る感じが非常に気持ち悪いんだから。

……

ふう。
やっと元に戻った。

「もうやだあんなの。
自分が踏まれて、体じゅうからばきばき音が鳴っているのは絶対やだ。
もう踏むなよ」

「元に戻ったし、面白いじゃん」

「こっちは面白くないの。踏まれた後、体が戻っていく感触がいやなんだよ。
お前はそんなに踏みたいのかよ」

「そうね。あんただったら踏み潰したいと思ったことが何度あるか、
数え切れないわよ」

「やっぱり怪獣だな。
前世は巨大怪獣だったんじゃないか?
首が何個もあるような凶悪で、生き物をすぐ踏み潰すようなやつ。
それにその背で45トンはないよな。お尻にお肉つきすぎじゃないか」

「もう怒った、あんたを踏んでぼきぼきにするわよ」
サラはバックから何かを取り出す。

なんだ?
スリッパのようだが。

それでぺちっとたたくのか?
でもサラは、スリッパの裏についている紙をはがす。
(べりっつ)
なんだあれは。
サラがはがした紙はなんか、両面テープについている紙に似ている気がするが。

「ふん」
サラは指で僕をはじく。
その衝撃で2メートルぐらい吹っ飛ばされ、うつぶせに倒れてしまう。

「なにすんだよ」
と言った直後。

ぎゅうう。
何か巨大なものが上から押し付けられる。

ぎゅうううとさらに押し付けられた後。
巨大なものごと持ち上げられる。

「ふっふっふ。きちんとくっついたわね」

「何すんだよ。こんにゃろ」

「これはスリッパ。
裏に粘着テープがはってある。
それをはいて、絨毯の上を歩けばゴミが取れるってやつ。
水で洗えば何度でも使えるから。
で、さっきまではこれを使う予定はなかったけど、むかついたから。
あんたをスリッパの裏面に貼り付けてから、あたしがこれを履いて歩き回ってやる。
あんたは何度も、何度もあたしに踏まれることになるんだからね。
いまさら謝ってもだめよ。許さないんだから。
最初の一歩は、一気に歩かないから。
だんだん体重をかけていくから」


「おい。ちょっと」
言いかけたとき、サラはスリッパを床の上に落とした。

どてっ。
痛てえよ。
と文句を言おうとしたとき。

ずん。
ぎゅううう。
サラはスリッパを踏んだ。
そして足を入れた。

ぎゅううううう。
ぐええええええ。
重いいいいいいい。

ぎゅうううううううう。
ちょっとずつ重さが増大してくる。

ぎゅうううううううううううううう。
ぎゅううううううううううううううう。
ぐええええええええええええ。

まだ30トンには満たないんだろう。
ばきばきとはならない。

やめろよ。
と言いたいが、上から押し付けられているのでいえない。

ぎゅうううううううう。
ばきっ。
みしっ。
体から音がする。
もうそろそろ限界か。

「やっぱめんどくさい」
と声が聞こえた後。

ぎゅううううううううう。
ばきばきばき。
急に全体重をかけてきた。

いっきに潰れる。
ばきばきぼき。
ぐちゅううううううう。

と潰れた後に、サラが歩き出した。

ぎゅうううううう。

ぎゅうううううう。

むちゅううううう。

むちゅうううううう。

何度も踏まれる。

ぐええええええええ。

ぐえええええええええ。

元に戻る間もなく、踏まれる。

何度も何度もぎゅうぎゅう踏まれる。

床とスリッパの間で押しつぶされる。


むちゅうううううううう。

むちゅううううううううう。

むちゅううううううううう。

「ただ歩くだけじゃつまんないわね。もっと潰れろ」

サラはジャンプした。

どん。

ぬちゅううううううう。

もう潰れないと思ったのにさらに潰れる。

どん。

どん。

ちょっとやりすぎ。

もうやめて。

どん。

どん。

どん。

ばん。

ばん?

違う音がした。
ひょっとしてやばい?

と思ったとき。

「サラ。何やっているのよ。いじめているんじゃないかと心配になって見に来て見れば。
もうやめなさい。やりすぎよ!」

???
これはミミの声?

何度も踏まれて意識がもうろうとしているけど、ミミだ。

ミミはサラを怒っているようだ。
でも、その間。僕はサラに踏まれたまま。

ぎゅうううううううううううううう。
重さで潰れる。

気を失うぞ。これ。

……

「ねえ。大丈夫?」
というやさしい声。

天国か?

ゆさゆさ。
ゆさゆさ。

「んあ?」

目を開ける。

目の前にはとっても心配な顔をしているミミの顔。

「良かった。気がついた」

「ここは?」

「医務室。気絶しちゃったからあたしが運んだの。
もう安心していいよ。
サラには今日帰ったら、きつくしかっておくから。
それに、サラはバイトをやめてもらうからね。
ごめんね。
あたしが気がつかなくって」

そうだ。
スリッパで何度も踏まれたんだった。
さすがにあれはやりすぎ。
こっちも悪口を言ったのは悪かったけど。

ふうう。
すごくほっとした。
目の前にはミミ。

やっぱり癒される。
ミミにあまえようと思った。
今日ぐらいはいいよな。

「ねえ。お願いがあるんだけど。ミミの胸のところでぎゅっとして」

「え。ああ。いいよ。
これぐらい、ならいいよ」

許可してくれた。

ミミにやさしくぎゅっとされる僕。

ミミの使っているボディソープのほのかな香りか何かがする。
ほわわ。
いい。

とろけそう。

「明後日から一緒にまた、仕事できるね」
とミミは言う。

「うん」

しばらくこうしていたいと思った。