今日は早めに目覚めた。
うきうきする。
今日はミミと一緒に仕事。
はやる気持ちを抑えながら、部屋へ向かう。
いつもより15分は早い。
まだ来ていないんじゃないかな。
僕はドアを開けた。
だれもいない。
「ふっふっふ。あたしのときと違ってずいぶん早いわね」
げっ。
その声。
僕は上を見る。
「げっ。サラ」
ばん。
サラは足を使って乱暴にドアを閉める。
前にもこんなことがあったな。
「なんでお前がいるんだ。今日はミミちゃんが来るはずだろう。
それにお前はくびになったんじゃ?」
まさか、復讐に来たんじゃないだろうな。
サラはこっちを見て。
「残念?
人手不足ということで厳重注意だけうけた」
「そ。そんなぁ。今日は帰る」
僕はドアのほうを向いた。
僕はドアを開けて出て行こうとするが、
ドアの前にはサラの足。
ドアは開かない。
「ふっ。帰ってもいいの?
今日はミミお姉ちゃんが来るんだよ」
「えっ。来るのか?」
「そう。あたしは今日休みだから…」
「なんで来たんだよ」
「一応謝っておこうと思ってさ。
あの後。ものすごくお姉ちゃんに怒られたんだ。
スリッパの裏に貼り付けて、それを履いて歩くのはやりすぎって。
だからごめん。
でもあたしがあんたに謝るのはこれっきりだからね。
もともとあんたが悪口を言わなければする気なかったんだから」
「まあ。こっちも言い過ぎた。
でも、もうあんなのはごめんだな。
何度も踏まれるのがあんなにつらいなんて、最後は気絶したし」
「まあ。あんたみたいなちっぽけな人間が、あたしに何度も踏まれたらたまらないわね。
普通なら姿、形は残らないわよ」
そりゃそうだ。
「ということで、もう少しでミミお姉ちゃんが来るからあたし帰る。
2人で会ってたら、またいじめているとか思われたくないし」
「そっか。じゃ元気でな。たっしゃで暮らせよ」
「もう会わないみたいじゃない。次も来るわよ。いつも一言多いんだから」
と言ってサラは出て行った。
ふう。
びっくりした。
またいじめられるのかと思った。
その後少し待つとミミちゃんが入ってきた。
やっぱいい。
暖かそうなセーターを着ている。
胸は窮屈そうだけど。
ほわほわな雰囲気がいい。
癒される。
でも巨大だ。
15メートルはある女の子。
でも怖くない。
やっぱりミミはやさしいからな。
「久しぶりだね。一緒に仕事するの」
「うん」
とってもうれしい。
ミミも笑顔。
「今日はね。違うものを頼まれちゃった。
加圧マッサージのほうも人手が足りないからそっちだって。
あたしがバルーンの上に乗るんだって」
「そうなんだ」
ミミちゃんに乗られて、加圧されるのか。
それもいいな。
しばらくしていないし。
……
場所を移動する。
あれ?
いつもの部屋を通り過ぎる。
「こっちじゃないよ。さっきのドアのところだよ」
「違うの。あそこ。別の部屋だって。いつもの加圧マシーンはメンテナンス中。
今回のはあたしの体サイズにあわせて、いつものより小さいんだって」
小さいのか。
僕から見たらミミもすごく巨大なんだけど。
……
がちゃ。
ドアを開けて入る。
やっぱり最初の加圧マシーンに比べると小さい。
ミミが座るとちょうどいい大きさだ。
「来たわね。こっちよ」
スタッフの人はさらに奥へと進む。
あれ?
そのマシーンじゃないのか。
さらに歩いて進む。
「今日はこれ。これ使ってくれる人だれもいないのよね。
だからちょうどいいと思って。あんたたち2人なら大丈夫よね。
信頼関係も高そうだし…」
「げっ。普通の風船みたいじゃないか」
人間サイズに例えると、普通に膨らませた風船ぐらいの大きさのものがそこにある。
「見た目はそうみえるけど、丈夫よ」
「で。これでどうしろと」
ミミを見る。
なんかとっても不安そうな顔をしている。
「あんたが中に入って、上からミミちゃんが足で踏むの。
その後はお尻で乗ってもらうわよ」
「えー。そんなのだめだよぉ。
あたしが乗ったら絶対破裂するよぉ」
「破裂しないって。
他の身長が30メートルを超える子が乗ったら破裂するけど。
ミミちゃんなら大丈夫よ」
「えー。でもぉ」
「そうだよ。安全を確かめたのかよ」
「確かめたわよ」
なんかスタッフの目がおよいでいる。
じー。
じー。
見つめてみる。
「計算上では完璧よ。物理的な検証はまだだけど」
「だめじゃん」
「大丈夫だって。そうだ最初は足で踏んでみてなんともないのを確かめてみたら?
なんなら、お尻でぎゅっとバルーンの上に乗ってもいいから」
「どうしてもやらなきゃだめ?」
「そう。仕事だから。
最初はあんたは中に入らなくていいから。安全だというのをミミちゃんに確かめてもらってから入ることね」
ミミはバルーンに近づく。
「じゃ踏んでみるね」
ミミちゃんはバルーンを踏む。
ぎゅううううううううううううう。
バルーンは半分ぐらいに潰れる。
いまのところ大丈夫そうだ。
ぎゅうう。
ぎゅうううう。
ミミちゃんはバルーンを何回か踏んでみる。
「以外に丈夫だよ。これ」
ぎゅうぎゅう。
ぎゅうぎゅう。
2メートルを超える足が、バルーンを何回か踏む。
そのたびにバルーンは半分ぐらいまで押しつぶされる。
けれども破裂はしない。
「ほらね。大丈夫でしょ」
「うん。そうみたい」
「じゃ今度はお尻で座ってみなさいよ」
「えー。座るの?
本当に大丈夫?
あたし結構重いよぉ」
「全然大丈夫だって」
「じゃあ座ってみるよぉ」
ミミちゃんはバルーンの上にお尻をつきだす。
そして。
ぎゅううううううううううううううううう。
バルーンの上にとっても大きなミミちゃんのお尻が乗っかる。
ぎゅううううううううううう。
ものすごい重さだろう。
バルーンはさっきより潰れる。
ぎゅうううううううううう。
バルーンは破裂しそうだ。
「これ以上重さをかけたら破裂するよぉ」
「大丈夫だって。以外に伸びるからそのバルーン。
お尻を上下させても破裂しないから。やってみなさい」
「えー」
「ほらほら。検証検証」
スタッフの人が催促する。
どすん。
どすん。
ぎゅう。
ぎゅう。
ミミちゃんがとっても大きなお尻を上下させるとバルーンはものすごく潰れるが破裂はしない。
ここから見ているとものすごく頼りなさそうに見えるバルーン。
バルーンの大きさと、ミミちゃんのお尻の大きさを比べるとミミちゃんのお尻がはるかに大きい。
ぎゅう。
ぎゅう。
「あっ。以外に平気。
大丈夫そうだよ。
これ」
ぎゅうう。
ぎゅうう。
ミミちゃんの巨大なお尻が上下する。
ぎゅう。
ぎゅう。
どすん。
どすん。
「すごいよ。これ全然大丈夫だよ。
ほら。勢いをつけてお尻を落とすと、あたしのお尻が床にあたるよ。
それでもバルーンは破裂しないよ」
どすん。
どすん。
ぎゅうう。
ぎゅうう。
たしかに。
バルーンは破裂しない。
けれども今の言葉にちょっと引っかかりを覚えた。
すごく巨大なお尻がバルーンの上に乗っかって、
ミミちゃんが、ぎゅううううとバルーンを押しつぶしても破裂はしなさそうだ。
???
でも待てよ。
僕はきっとあの中に入るんだろう。
ということは、ミミちゃんがバルーンに乗ったとき、
お尻が床にあたると言ったか?
「ねえ。ミミちゃん?
さっきお尻が床にあたると言った?」
「うん。勢いをつけると、あたしのお尻が床にあたるの」
「おい。だめじゃん。僕はあの中に入るんだろう。
それで、ミミちゃんのお尻が床にあたったらどうなるんだ?」
「あ"」
スタッフの人は何か気がついたようだ。
「そ。そうだったわね。計算に入れるの忘れていたわね。
バルーンと床の間の距離が近すぎると、お尻と床の間に挟まれて圧死しちゃうわね。
あはは。
良かったわね。
事前にわかって」
僕は見た。
バルーンの上に乗っかっている巨大なミミちゃんのお尻を。
このまま実行していたら、50トン以上あるミミちゃんのお尻の下敷きになっていたところだ。
がくがくぶるぶる。
危ない。
「今日はいいわ。別の入り口のほうにあるマシンでやりましょう。
あれだったら大丈夫だから」
と急いで去っていくスタッフの人。
「おい」
「今のことは忘れて」
「忘れるかよ。おいこら」
……
僕はためいきをついた。