もう。
なんで気がついてくれないのかな。
あたしミミはちょっとほっぺたを膨らませている。

美容室へ行って、髪も整えてもらって、いつもよりちょっと高めの香水もつけて。
服もとびっきりのを着て、出勤したのに、彼は気がついてくれなかった。

もう。
鈍いんだから。

ちょっと怒ったぞ。

あたしはちょっといたずらをすることにする。

昼休みを利用してスタッフの人を訪ねる。

ちっとも気が利いたことを言ってくれない。
だからちょっとびっくりさせて、懲らしめてやるんだから…

「ねえ。ちょっとお願いがあるんだけど…」

「めずらしいわね。ミミちゃん。何なの?
ちょっと機嫌が悪いみたいね」

「昨日せっかく、美容室へ行ったのに彼、気がついてくれなくて。
それにこの服も一番いいのを着て行ったのに、何も言ってくれないの。
だからお願い。
明日のバルーンの加圧のときに、ここをこうしてほしいの」

と話す。
ちょっとびっくりさせてやるんだから…
「ねえ。危険はないよね?」

「うん。大丈夫よ。一応安全装置ついているし…
でも面白そうね。
こんなかわいい、ミミちゃんに気をきいたことも言わないなんて、彼氏失格ね。
あたしも賛成。ふふっ。
じゃ準備をしないとね…」

……

次の日。
あたしは2番目にお気に入りの服を着て出勤する。

「ミミちゃんおはよう。
今日もがんばろう」

「うん。おはよう」
じー。
あたしは彼を見る。

少しポーズをとる。

彼は気がつくこともなく。
「じゃ移動だね。また連れて行ってくれる?」
と彼はあたしのポケットに入れてもらおうとして、下で待っている。

今日も気がついてくれない。
もう。

「いいよ」
あたしはちょっと怒っているけど、そんなふりを見せずに彼をポケットの中に入れる。

そして歩き出す。

ずんずん。
いつもより、ずんずん歩く。
ポケットの中の彼が、歩く振動で飛び跳ねてもいいもん。

「ずいぶん急いでいるんだな。
何かあった?」

「いや。べつに…」
あたしは言う。

……

僕は思った。
昨日からちょっと機嫌が悪いのかな。ミミちゃん。
ちょっと雰囲気が違う。

見た目はほわわんとしている彼女。でもちょっと違う。
いつもよりずんずん歩いているし…。

なんだ?
わからない。

「さあ。ついたよ」
ミミちゃんが、ポケットの中にいる僕を手でつかんで床へ下ろす。

「バルーンの中に入っていて…」
と言われる。

その後、ミミちゃんはスタッフの下へと歩いていく。

僕はそれを見ながら、バルーンの中へと続く入り口をくぐる。

「今日は、あなたとミミちゃんの組だから、限界ぎりぎりまで圧力を加えるわね。
ちょっと苦しいかもしれないけど我慢してね」

「えー。そうなの。
わかった。ミミちゃんなら信用できるもんね」
僕はスタッフの人に答える。

他にもアルバイトの人がいるが、なかなか限界ぎりぎりのところまでは引き受けてくれないらしい。
まあ、たしかに怖いもんな。

僕とミミちゃんなら信頼できるし。
サラだったら断っているだろう。

僕はバルーンの中に入る。

ミミちゃんの体型に合わせて小さいバルーンだ。
前は地球人の20倍は大きい彼女に乗ってもらったのだ。

ミミちゃんも僕から見たらものすごく大きい。
バルーンの中から外で立っているミミちゃんを見る。
身長は15メートル以上。
ここからはミミちゃんの足しか見えない。

僕は生身だ。
このバルーンがあるから、潰れないですむ。
バルーンの上にミミちゃんが座ると、その途方も無い重さでバルーンが押しつぶされて
中の空気が圧縮される。
その空気が僕の体を押すというものだ。
重さがすごいので、僕の体を押す空気の圧力が加圧マッサージの力となるのだ。

もちろんバルーンが潰れて破裂してしまうと
ミミちゃんの重さがそのまま僕の体にかかり、あっというまに潰れてしまう。

でもそれはないだろう。
綿密に計算されているし。

ミミちゃんよりも倍は身長が高い子が乗っても大丈夫なんだから。
でもやっぱりすごい。

安産型な体型のミミちゃんのお尻。
下からミミちゃんのお尻を見るとものすごい迫力。

絶対にミミちゃんのお尻の幅は、六畳間の部屋の長い辺の長さぐらいあるだろう。
六畳間ほどの大きさのプレハブ小屋の上にミミちゃんが座ったら、どうなるか。
大きなお尻で天井のほとんどは隠されて、ものすごい重たいお尻が乗ったら
プレハブ小屋はぺっちゃんこに潰れてしまうだろう。

そんなミミちゃんのお尻がバルーンの上に突き出されている。
「じゃあ座るよ」
バルーン全部を覆いつくし、お尻の幅はバルーンからはみ出している。

ぎゅう。

ミミちゃんが座る。

ぎゅう。
ぎゅう。

ミミちゃんがバルーンの上に座ると、バルーンがぎゅうぎゅう言う。

だんだんバルーンは潰れてくる。
もうミミちゃんのお尻は4メートルぐらい上の距離にまで縮まっている。

ぎゅう。
みしみし。
ぎゅうぎゅう。

まだ大丈夫だ。
苦しくない。

「じゃあ。本格的に圧力をかけてみて」
スタッフの人が言う。

「うん」

ミミちゃんは加減していた重さをバルーンにかけてくる。

ぎゅう。

ぐ。
ちょっと苦しい。

ぎゅう。
ぎゅうぎゅう。

かなり苦しいという感じ。

でもこのぐらいの圧力なら以前にも体験した。

「ちょっと心配だったから腕で支えているけど大丈夫そうだね」
と言うミミちゃん。

横を見る。

ミミちゃんの腕が見える。
床に手をつけて支えているようだ。

支えていたんだ。
今でもかなり苦しいんだけどな。
と思った。

その後。

ぎゅううううううううううううううう。
ものすごい圧迫感。
すごく苦しい。
だんだん苦しいってもんじゃなくなる。
上を見る。

「げっ」
一瞬、頭上50センチ上に迫るミミちゃんのお尻が見えた。

ずん。
ずん。
ミミちゃんはお尻を上下させているようだ。
お尻が一番さがったときにものすごい圧力がかかる。
そのときのお尻までの距離は50センチほど。

ぐえ。
ぐえ。

ぎゅう。
ぎゅう。

ちょっと。
ミミちゃん。

ぎゅう。
ぎゅう。

さらに勢いをつけて座るミミちゃん。

ずん。
ずん。
ぎゅうう。

さっきより近い。
これ以上お尻が下がってきたら潰れるぞ。

ずん。
ぎゅうううううううう。
ぐはあ。
息が強制的に吐き出される。
かなり限界。

「まだまだ。圧力をかけてね」
とスタッフの人が言う。

ち。
ちょっと待て。
もうだめ。

ミミちゃんのお尻までの隙間は30センチしかなかったんだぞ。
これ以上はだめ。

いつの間にか、頭上にせまる巨大なお尻。
ミミちゃんのお尻は頭上50センチまでせまっている。

ぎゅうううううううううううううう。
ぎゅうううううううううううううう。

なんで下がってきているんだ。

ぎゅううううううう。
ぎゅうううううううう。

ち。
ちょっと。
おい。

もうお尻まで20センチしかない。
これ変だ。
絶対変。

またスタッフの人が計算をミスったのか。

だめ。
だめ。
だめ。

ぎゅうううううううううううううう。

さらにバルーンがぎゅうぎゅう言う。
おい。
これはないだろう。

もうお尻まで10センチぐらい。

ものすごい圧力。
もうバルーンも極限まで潰れているようだ。

ぎゅうううううううううううううう。

さらにせまってくるお尻。

お尻が持ち上がる。
なんとかなったと思った瞬間。

ずん。
ぎゅううううううううううう。

ずん。
ぎゅうううううううううううう。

ずん。

ずん。

うぐえ。
今、一瞬お尻が僕の胸に乗ったぞ。

ずん。

ずん。

そして。
勢いをつけて乗ろうとするミミちゃん。

ずん。

どん。
ぎゅ。

どごん。
ものすごい重さが胸の上にかかり、床が下のほうへと下がるのを感じた。
もうだめ。
ものすごい圧力で気を失う…

……

「やっぱりやりすぎちゃったね」

目の前にはミミちゃん。

あ。

どうしたんだろ。
気絶した?

「気がついたわね。でも申し訳ないことをしたわ。
あなた、事故で胸が潰れちゃったのよ。何とか命はとりとめたけど、
あばら骨はぺっちゃんこだったのよ。今は人口の骨を入れたから」

「え」

さらに続けるスタッフの人。

「でも、あんたの下半身はどうしようも無かったわ。
ミミちゃんのお尻の下敷きになって、修復ができないほど潰れちゃったから、切断したの」

僕は青ざめて布団をめくる。

「あれ」
あるじゃん。
僕の足。

その後僕は自分の胸を見る。
潰れていない。

「何本気にしているのよ。なんともないわよ。気絶しただけ。
さっきのはバルーンの加圧中に、もしバルーンが破裂した場合を想定した安全装置が働くか検査したの」

「えっ」

まだ良くわからない。

「ごめんね。ちょっといたずらしすぎたかな。
でも君も悪いんだよ。
せっかくあたしが美容院へ行って髪を整えて、一番お気に入りの服を着ていっても。何も気がつかないんだもん」

「え。あ。そうなんだ。
ちょっと変わったかなと思ったけど。
たしかに今みるといつもよりかわいいよ。ミミちゃん」

「いまさら言っても遅いよぉ。
でも言ってくれるとうれしいよ。
もう許してあげる。
あたしもやりすぎたし」

「そうだったんだ。
あー。よかった。
でも。
さっきの言葉本気にしたぞ。
ミミちゃんのお尻が僕の胸の上に乗ったときは、もう潰されて死ぬと思ったよ。
さてはスタッフもぐるだな」

「あはは。安全装置の検査だれもしてくれないんだもん。
あの安全装置は、あんたの体の下にある圧力計が350kg以上の重量を感知したら、
床がへこんでそれ以上押しつぶされないようにするものなの。
今日はデータによると、あんたの胸には一時的に500kgぐらいの重さがかかったけど、なんとも無いみたいね。
あばら骨にひびは入ってるかもしれないけど…」

「ちょっと待て。あてて」
大きな声を出したときに胸が痛むのに気がついた。

「こ。これ。ほんとにあばら骨にひびが入っているんじゃ?」

僕は胸をさする。

「これぐらいなんともないわよ。
すぐに治るわよ。若いんだから。
一瞬だけど生身でミミちゃんのお尻の下に敷かれても、ひびで済んだんだからいいじゃない」

「よくねえよ」
僕は言う。

「えー。それ本当?」

ミミちゃんが半分涙目になりながら聞いてくる。

「大丈夫。ちょっと痛いけど、折れていないと思うから」
僕は言う。
けれども胸は痛い。

……

その後で検査をしてもらったら骨一本にひびが入っていた。

ちょっとやりすぎ。
あとで抗議したが、これもモニターだからと言われる。
あんたの胸の骨が完治したら、またやるからねとスタッフの人に言われる。

「床に取り付けてある圧力計の重さを調整しないとね。今の350kgじゃいつか潰れるわね」

「おい。ちょっと待て、今潰れると言ったか?」
僕はくわっとスタッフの人をにらむ。

「そうねえ。ミミちゃんだから良かったんだけど、もっとどすんとバルーンの上に乗ったり、
もっと大きくて重たい子が乗った場合は、床がへこむ前に1トンを超える重さが、
体の上にかかってそのまま潰れちゃうかもね。
あんたで試しておいてよかったわ」

「間違っていたら死んでいたのかよ」

「大丈夫だと思っていたわよ。現にあんた生きているし。
ミミちゃんとあんたの組だからこの実験をしたのよ。
他に引き受けてくれる人いないし」

「そういう問題じゃないだろ」

「じゃ後はよろしく」

と捨て台詞を残してスタッフの人は部屋を出て行く。

「おい。こら。待て」

僕はおいかけようとする。
けれどもやさしく、ミミちゃんの手によってベッドの上に戻される。

「絶対大丈夫って言っていたから、あたし。これを引き受けたんだよ。
ひどいよね。
おわびに今日はずっとそばにいるね。
そうだ。あたしの胸の谷間に入れてあげるね」

というミミちゃん。

僕が返事をする前に、僕は持ち上げられ、ミミちゃんの胸の合間に押し込まれる。

ぎゅうう。
ぎゅうう。

このぎゅうぎゅうは好きだ。

すごく柔らかいし。
死なないし。
あたたかいし。

この部屋にはだれもいない。

されるがままにする僕。

ミミちゃんのほうから、押し込まれたのだ。
嫌がって逃げるのはもったいない。

すごく恥ずかしいんだけど。

すごく柔らかくて、ぷにぷにしていて。

とっても幸せ。

ぎゅうぎゅう。

ミミちゃんが体を動かすと、左右からとっても重そうなお肉で押し付けられる。

ぎゅうぎゅう。

「ここで寝てもいいよ」

とミミちゃんが言って、こっちをみている。

ぐああ。
いいのかな。

いいんだよな。

僕はそのまま目を閉じる。

ぎゅうぎゅう。

ミミちゃんの胸で押し付けられる僕。

まあ。
いいか。

今。
心地よい。

とろとろになりそう。

ミミちゃんの胸の間で目を閉じた。

……

その後、スタッフの人がくれた薬と異星のテクノロジーの治療により3日で感知した。

ふう。
明日もバルーンのテストか。
でも新しいバイトの子が来るんだよな。

2人でバルーンのテストになるという。
一応先輩だしなぁ。

がんばるか。