まじかるリアちゃん

あたしは、椅子に座って足をぶらぶらさせながら係りの人から呼ばれるのを待っていた。
まだかなぁ。40分以上待っている……
「リアさん。3番目のカウンターへお越しください」
と放送がかかる。

「リアさん。調査の結果過去への渡航が許可されました。
カードに時空航行許可のファイルを入れてあります。
期間は15年前の2007年3月21日、14年前の2008年8月3日、11年前の2011年11月3日
となります…」

今は2022年6月15日夜8時だ。
こんな時間から出かけないといけないとは…

「あんたも大変ね。こんな時間から出発とは…」
と船の立体映像が言う。
リアちゃんと比べて妖精サイズの立体映像が、リアちゃんのまわりを飛びながら言う。

「ええと2007年3月21日、14年前の2008年8月3日、11年前の2011年11月3日の3つ。
場所はシベリア中央部、ペルー中部、南部アフリカ」
「了解。カウントダウン開始」
と2人は過去への渡航を開始する。

「ほいっシベリア中央部に到着。これからどうするの?」
と立体映像のルビーが聞く。

「これらの地域で巨大地震が発生するかもしれないという予想が発表されていて
その場合は大規模な地震が発生する可能性があるということが言われていたの。
でもこの場所は過去に地震があった地域。
その地震の影響で大規模な地震が起こるはずだったんだけど、地震のエネルギーが解放された影響で
近いうちには巨大地震は発生しないだろうという結果になった。
でもそのあとそれらの3地帯付近を飛行していた飛行機によって、
その付近の地面に巨大な足跡のような、地面の陥没が見つかったの
だから、なんらかの干渉があったのではとあたしが思って調べていたの…」

「その足跡を付けたのは自分じゃないかと思ったのね?」
ルビーがリアちゃんの顔の高さと並び声をかける。
「そうなの。その足跡を調べてみたら、あたしが履いている靴の形とぴったりだったの。
でも、その大きさは54.6メートル。つまり元の大きさの32倍なの…」
またあたしは大きくなるんだ。
そのときの身長はどのぐらいになるんだろうとリアちゃんは考えた。
身長が14.5メートルだから(10センチ伸びた)その32倍は464メートル。
体重は考えたくないけど…
「身長が32倍だから、そのときの体重は1179648トンね」
とルビーが言う。
「なんであたしの体重知っているのよ。まじかるリンちゃんの秘密その5なのに…」
とリアちゃんはすこし怒る。
うう。体重はメガトン級だ。

幸い今の時間夜遅いし、あたり一帯は住んでいる人が少ないので巨大化したリアちゃんの姿を
見られる心配はない。

「おもいっきり踏めば踏んだときの振動により、地震が誘発するんじゃないかと思うけど…」
そりゃとリアちゃんは元の身長の32倍に巨大化し、片足をあげる。
ずん。
このひとふみであたり一帯の地面がゆれる。なにせメガトン級の体重だ。
「まだ地震は発生しないわね。もう一回…」
ふたたびリアちゃんは片足を上げて、さっきより強く地面に足を踏み下ろす。
ずん。
まだ地震は誘発しない。
「このままじゃだめかなぁ。それじゃ」
とリアちゃんは言ってから、思いっきり上にジャンプする。
ずずん。
「もういっっちょう。それっ」
ずずん。
ぐらぐらっ
地面が揺れる。
リアちゃんは巨大化しているので、地震が発生してもわからなかった。
ルビーから無線で地震が発生したことを聞いてわかったことだ。
これでいいのね。
地面を見てみると靴の形に陥没している。陥没している深さは3メートルぐらいだ。
ここに水がたまったら湖か沼みたいになりそうねとリアちゃんは思った。

「ふう。1カ所は終わったわ。次に移動しましょう」
「了解。カウントダウン開始」
2人はペルー中部に移動する。
「さっさと終わらせて帰りたいな…」
とリアちゃんは言う。
ご飯食べた後はお風呂に入って、その後昼間買っておいたマンガをベッドで
寝っ転がりながら読みたいと思っていたのにとリアちゃんは思う。
リアちゃんは地球人の生活にも慣れて、学校にも通っている。

その場所は人気がない開けた場所。
巨大化したリアちゃんはあたりを見回す。
夜だから真っ暗だ。
でもリアちゃんはめがねをかけている。
これをかけると真っ暗でもよく見えるようになる。
リアちゃんはちょっと離れたところにレンガ作りの建物が建っているのを見つけた。
その建物は古びていて誰も中にはいない。無人のようだ。

「それっ」
ずん。
とリアちゃんは片足を上げてから思いっきり踏み下ろす。
ルビーから無線で連絡がないところをみるとまだだめだ。

リアちゃんはまた、思いっきり上にジャンプして、片足を地面に踏み下ろす。
ずずん。
もう一度ジャンプ。
ずずん。
さらにもう一度。
ずずん。

「もういいわよ」
とルビーから連絡が入る。
んー今、地面は地震で揺れているのかしら、あたしにはわからない。
あたりを見回すと、ちょっと離れたところに建っていたレンガ作りの建物が崩壊しているのが目にとまった。
ひょっとしてあれはあたしの仕業? あたしが足を地面に踏み下ろしたからその振動で崩壊した?
でもだれも使っていないみたいだからまあいいかとリアちゃんは思った。

「次で最後ね。移動お願い」
「了解。カウントダウン開始」

そこはだだっぴろい草原と川が流れている場所。ここも人の気配はない。

リアちゃんはあたりを見回す。
ちょっと離れたところに動物らしい姿が確認できる。
あれはカバ? そして草食動物の姿がちらほらと見える。

「じゃ早速やっちゃいましょう」

リアちゃんは上に向かって思いっきりジャンプする。
ずずん。

その振動でカバの体が一瞬浮き上がり、カバは転んでしまう。
また草食動物も立って草を食べていたが、その震動によりころんでしまったようだ。
何頭かの草食動物は腰が抜けて立ち上がれない。

無線の連絡がないので、リアちゃんはカバさん、ころんじゃった動物たちに
ごめんねと心の中で思いながら、もう一度ジャンプする。

ずずん。
メガトン級の体重により辺り一帯の地面が揺れる。
「まだね。あなたが足を踏み下ろすたびに、あの辺にいる動物の体が一瞬浮き上がるのよ、
地上で2番目に重いあのカバでも同じように一瞬浮き上がっていたわ」

まだ地震は起きないというので、リアちゃんは反重力制御の付いた羽を動作させて
少し地面から浮き上がることにした。その高さは13メートルぐらい。
「それっ」
その高さから一気に地面へと着地する。
ずずん。
「もういいわよ」
とルビーの声が聞こえる。
リアちゃんが着地した場所を見ると足跡の形が残っていて5メートルは陥没している。
たしかあたしが調べたときは水がたまっていたはず。
ここも今後そのようになりそうねとリアちゃんは思う。
まだ、あたりにいる動物たちはみんな腰を抜かして地面にはいつくばっている。
「ごめんね」

リアちゃんはそのままそこを後にした。

「なんだこれは!!。くそっ衛星がハッキングされたか!!」
とある施設。
衛星から送られてきた映像を見ると、巨大な女の子が写っている。
時間は夜だが、そんな巨大な女の子は存在しない。
一緒に写っている物から推定すると身長は400メートルを超えるようだ。

「すぐにハッキングの形跡がないか調べろ」
「了解」

衛生のカメラにきちんと巨大化したリアちゃんの姿が撮影されていたことはリアちゃんは知らない。

上司が去っていったあと
「これはいい。ギガサイズの娘とは。萌える映像だ。今のうちに別ファイルへコピーするか」
その人はギガサイズ娘萌え。
明後日は休暇の予定だ。自宅からセスナで飛行すればその場所にも行ける。
ビデオカメラももって行こう。
実際にあんな足跡はないと思うが、現実にあんな巨大な娘がいたらたまらないなとその男の人は思った。

そんなことを思われていることをもちろんリアちゃんは知らない。