この作品は2003年の夏に欲望と暇に任せて書き殴り、巨大娘普及委員会に掲載させて頂いたものです。
2007年春に欲望に任せて書き殴った「Nest」をアップロードする際に、久々に読み返しましたところ
あまりにもヒドイ文章だったため、少し改訂してから、反省の意と照れ隠しを兼ねてアップロードし直すことにしました。
とはいえ、あまり書き直すと別の作品になり兼ねないので、当時自分が出したかったであろうアホテンションとエロテンションをそのままにするようにも心がけました。
ので、結局ヒドイ文章です。
つまり今だってヒドイという証拠でもありますね。

欲望のままに書き連ねたこの小説が、今回アップロードしたNestと被るシチュエーションの多さに
自分の成長のなさを感じます。
パラレルワールドとでも思って見逃してやってください。


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「10/10」

注意
この小説には縮小された男性に対しての非常に残酷な表現が含まれております。
スカトロジーな描写もあります。
お読みいただける場合にはご注意下さい。               2007/05/31 AN-J
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【0:20】

9月16日(日曜)

 俺の名前は瀧上修一、17歳の高校2年生だ。
今日は西岸中学校の同窓会。
俺は出かける準備をしながら心をワクワクとさせていた。
この日は俺にとって待ちに待った一大イベントなのである。
理由は・・・、照れるけど・・・「告白」
そう、中学時代片思いだった「居川真弓」に告白をすると決めていたのだ。

中学校時代俺は人に話し掛ける事さえも気軽にできなかった。
内気で、根暗で、根性無しで。
特に一目惚れの真弓には話し掛けるどころか、見ることすらままならないほどだった。

そんな俺は、高校で変わった。
いわゆる高校デビューというやつだが、自分で言うのもなんだが俺の変貌っぷりは凄かったと思う。
春休み中、まずは服装を変えた。コレが正解だった。
服装を流行りのものに変えることで自分の中の性格は変わっていった。
俺はどうも制服的思考ってやつが強かったんだと思われる。

服装を変えた日から俺は全くの別人だった。
元から顔は悪くなかった方らしく、髪型を変えるだけで中々の「いい男」になれた。

すぐにクラスの中心キャラになれた。
人と話すことがつらかった日々が嘘のようだった。
今の、こんな俺を、真弓は受け止めてくれるのだろうか?
いや受け止めてくれるさ。
このために俺は変わったんだ。
そう、このために。


【0:30】


同窓会は母校である西岸中学校校舎、三年五組の教室で行われることになっていた。
さあ、約束の時間。1時だ。
変わったな、なんて言われても今の俺なら照れずに流せる。

ガラガラガラ

「ウイーーッス、久しぶりーー!」
って・・・アレ?
誰もいない・・?
・・おっかしいなー、確かに約束の時間は昼の1時のはず。
誰かいてもおかしくないはずなんだけどな。

教室はガランとしている。
かと思ったら、そうでもなかった。
黒板にはしかっりと「2000年度 西岸中学校卒業生 同窓会会場」と書かれ、早めに来た人用のお茶まで用意されていた。

変だな?5分10分早めに来るやつとか必ずいるだろうに・・・。
マァ、いいか。




俺は席に座り、お茶をすすりながら考えていた。
まず誰が入ってくるかな?
もしかして真弓ちゃんかな?
それとも中学時代唯一の友人、松田か?
全然話さなかった人とかだったら、気まずいか・・・?
いや、今の俺に「気まずい」なんて言葉はあって無いようなもんだ。







1時20分
・・・おかしい。
みんな遅すぎ。・・・って、んなわけないか。
多分俺が日程を勘違いしたんだろうな・・・。
でも、黒板にはちゃんと書かれてるよなあ?

とりあえず、帰るか・・・。

椅子から立ち上がろうとしたその瞬間、教室のドアが開いた。


ガラガラガラ


「!?」

ま、真弓さんだ・・・。

待ちに待っていた真弓さん、あ、いや、真弓ちゃんが来た。
・・・のだが。
「遅っ!・・・あれ、何で中学の制服着てんの!?」

「あ、これ? これは・・・。うん、みんな面白がるかな、って」
「・・・」

でも、悪くない。
スカートはウエストの部分が折り畳まれミニ。
靴下はほんの少しのルーズ。そして黒のローファー。
全くの俺好み!
まあ、原因は真弓ちゃんだろうけどね。

「それより、修一君?変わったね〜!」
「そう? まあ服装とかは変えたけど」
「ううん、すっごいカッコ良くなったよ!ビックリしたもん」
「マジで?やべー、嬉しいなー。あ、それよりさ。みんなはどうしてるか知らない? 真弓ちゃんが来たんだったら、俺が日程間違えた訳じゃないみたいだし」
「・・・」
「? 何か知ってるの?」

「実はね・・・、修一クン」
「ン?」
「他のみんなは・・・、呼んでないの・・・」
「・・・?」

俺は内心「?」と思うより先に、違う展開を想像していた。
まさか、いやまさかそんな・・はは・・・。

・・・俺が告白されるのかも・・・!?

「え? 呼んでないって、まさか主催したの真弓ちゃんなの?」
真弓は少し目線を逸らし、コクリと頷いた。

こ、これは・・・!!

「でも何でこんなことを?」

「・・・それはね・・・・」
よし来い!来い!カモン!恋!

真弓が近づいてきた・・・!

・・・アレ?


居川ってこんな背高くなったのか?
確か中学卒業の時は俺が172cmあって居川が160cmあるか無いかだったのに。
今は・・・。
俺とほぼ同じになってる!?

女子が170cm近くて、う、うそん・・・。

「あれ、真弓ちゃん、背、伸び、たね・・・・?」
気にしてたらまずいかも・・・。

「それは、・・・そろそろ薬が効き始めたからだと思うよ」



【1:22】




訳のわからない事を言う。
薬?いつ飲んだ?
「何言ってんの?薬って?」
「あのね・・・」
真弓の説明が始まった。

「まずね、修一君に飲んでもらった薬は、私のお父さんが作った薬で、型番は『RH-B600』っていうの」

こんな話を聞いた事がある。

居川真弓の父、居川辰三は世界でも有名なマッド・サイエンティストだとか。
何の役にも立たないが、人類学的には画期的な珍薬を作ったりしているそうな。
なにより「副作用の無い麻薬」を作り出すことに成功し、莫大な財産を持ったんだとか・・・。
その資産で今では様々な珍薬開発への情熱に拍車がかかっているだとかなんとか。
・・・。

・・・。
・・・一体何を飲まされたのだろう・・・。

「RH-B600っていう薬はね、お父さんが自信を持って作り出した全く新しい薬なの! 発明した後、実験台が必要になって、でもちょっと危険な薬だから誰も飲みたがらないの! 効果があるのは飲んでから15分後くらい。人によっては20分くらいかも知れないけど」
「そんなことより! ・・・な、何で俺なの?」


「卒業アルバムから適当に選んだだけよ?」



                      はは。



・・・生まれて初めてだ。
こんなに大きなショックを味わったのは・・・。






    あはは。







          はあ。





    ・・・。


・・・俺は考え方を変えることにした。


・・・「真弓のためなら」と。

ちょっとイジョーな考え方かも知れないが、後にも先にも多分、俺の好きな人は真弓だけだ!
その真弓に少しでも近づいた関係になれるのなら・・・。それは本望だ。

真弓はずっと この薬が出来上がるまでの苦労や、お父さんの今までの研究の素晴らしさを語りつづけている。
「・・・一体、どんな効果なの?その薬とやらは待て! ・・・俺そんな薬いつ飲んだ?」
「麦茶に入れておいたの。この薬は無味無臭なの♪ 何も感じなかったでしょ?」
「・・・で、効果は?」
「あれ?気づかない?もうそろそろわかると思うけど」
「わかんねぇよ!」
「この薬ね、別名、というか作用の説明にもなっちゃうけど・・・『人体縮小薬』っていうのよ ウフ♪」
「・・・!!!!」
「気づいた?」

き、気付いた・・・。確かに。

俺はいつのまにか真弓の事を見上げていたのだ・・・。
背丈はいつのまにか真弓の口辺りになっている・・・!

真弓は笑顔で説明を続けた。

「この薬を飲むとね、なんと! 10分につき10%体がちっちゃくなっちゃうの! すごいでしょ! 小さくなっているところを見ると成功なのね!」
「せ、成功したんだろ!?じゃあどうすれば元に戻れるんだよ!」
「ぱんぱかぱーん!ここでチャレンジターイム!」
「!?」
「この薬には解毒薬があってね、それを飲めば縮小化は止まるし、体はちゃんと元に戻りまーす!」
「は、早くよこせってば!」
「でもー・・・、解毒薬「RH-B600C」はココにありませーん!残念でしたー!」

ドンドン真弓のテンションが上がっていく・・・。

「ど、どこにあるってんだヨ!」
「この学校のどこかに必ずあります!安心してね♪」
「・・・んな、何でそんな事を・・・?」
「あ・そ・び・ご・こ・ろ。よ♪」


あ、あきれてきた・・・。

何を言ってんだ一体・・・。


でも・・・。



顔がかわいい。。。。




もうそれだけでいい。。。いいよ、うん。許せるよ。えへへ・・・



・・・あ。

「チャレンジスタート!!」
「ちょっちょと待て! もし見つからなかったら? 俺どうなっちゃうの!? もしかして・・・!」

「心配ないありません!10分につき『10%小さくなる』だから、体が消えて無くなる事は永遠にありませーん!原子レベルまでちっちゃくなるかも知れないけどね!」

「!!!???   そ、そんなことせずにふ、普通に薬のありかをもう教えてくれよ!」

「ほらほら〜、そんな事言ってる間に第三段階まで小さくなってるよ〜♪ もう私の首くらいまでちっちゃくなっちゃった! 子供みたい、かーわいいー♪ 探しやすい体のうちに探した方が良いんじゃないの〜?」

笑顔で見下ろしながら真弓は言った・・・。

「・・・くそ!」
俺は駆け出した。
畜生!どこにあるってんだよ・・・。
走りながら俺は携帯のディズィタオ時計を見た。

【1:42】


1:42って事は、次は52分頃か・・・、くそ。
しかしこうなってくると、今日の服装は正解だったのかも知れない。
Tシャツにハーフパンツ。 少しぐらい体が小さくなっても大丈夫そうだ。
とはいえ既にダボシャツ長ズボンぐらいになっている。

「くそ!」
・・・。
「俺はどこのラッパーだっての!」


ズボンの紐を締めながらまずは、英語課教室に入った。

ガラガラガラ

誰もいない・・・。


その時。
『♪ピンポンパンポーン♪』
ほ、放送・・・?

『はい!チャレンジは開始されました!気分はどうですか? 実験体No.001 瀧上修一クン!』

真弓の声だ・・・。

カッコはラッパー、気分はダウナー。
ってとこかな!!!!くそ!!!


『修一クン!安心してね!今この学校には私と修一クンと、監視してる監視員しかいませーん!存分に探し回ってね♪ それとあたしは放送室にいるから会いたい時にいつでも会いに来てね☆』

ほ、ほう・・・。

『それでは第一ヒント!放送室にはありませーん。それでは一曲目いってみましょう!サザンオールスターズで、「勝手にシンドバット」!』

ば、馬鹿にしている・・・。
無駄に金のかかった遊びだ・・・。

・・・くそ!英語教室にも無さそうだ!

次は!?


・・・。

「くそ!」
卒業した今になってマンモス校だった事を後悔する。





・・・本当にサザンが流れ始めた・・・。


【1:48】


「ああ!もう!」
「慌てちゃだめだ!落ち着け!」

俺は三年生用のトイレを探していた

バタン!
ここも違う!
バタン!
ここも違う!!
バタン!
ここも違う!!!

気は非常に引けるが、女子トイレも・・・フヒヒ

入った瞬間。

『♪ピンポンパンポーン♪』

『えっち〜! ヒント!女子トイレ等、男子禁制の場にはありません!』

・・・。み、見てるのか・・・?

次を探そうとしたその時。グラリと視界が一瞬霞んだ。
かと思うと、景色が高くなった。

だ、第4段階か・・・!


【1:52】


職員室の教員の机に座り、中にあったハサササミで服やズボンボンの丈を切りながらいろいろいろ考える。
落ち着け、こういう場合、闇雲にではなく、隠しそうな、場所に、いや、場所を、探すんだ・・・!

・・・。

・・・落ち着け。

とりあえず、パンツはもう履けないので、ノーパンで行く事にした。
「俺、こんなデカイパンツはいてたのか・・・?」
ハーフパンツのベルトをキツクキツクしめ、修一こと俺は立ち上がった。
「・・・体育館だ」
そうひとり言を言って、俺こと修一は走り出した。


体育館、ここの舞台裏の二階に放送室がある。
放送室からは体育館内が見渡せるようになっていた。
人は物を隠すとき、自分の生の視点から見える場所に隠す。と、何かのTVで見た気がする。
体育館に入る。
『逢いに来てくれたのね!嬉しい!』と真弓が茶化してきた。
俺は無視するように体育館倉庫に入った。
真弓はかわいい、スキだ。しかし、今は割り切って敵対するしかない。
さっきまでは正直遊んでいる気分だった。すぐに終わるだろうと思っていた。
けど、この様子ではそろそろマジにならないと命が危ない。
そう心の奥で思い始めていた。

体育館ではないだろう、隠すとしたら、ゴチャゴチャとした、体育館倉庫だ。
まず中をざっと見回す。
・・・無い。
部員のロッカーらしき物を片っ端から開けていった。
ココにも無い。
次にボール入れからボールを全て出した
無い。
畜生!

・・・!!

まてよ・・・。
隠した場所を知っている人間がいるんだ。
すぐ近くに・・・!
もう真弓から直接聞き出そう。そろそろ終わりにしないと命が持たない、と説得もしよう。
聞かなかったら・・・無理矢理にでも・・・!






バタンッ!
「・・・? 見つけたの?」
放送室のドアを開けると真弓は椅子に座って何枚かのCDを開いていた。
次にかける曲でも考えていたのだろうか・・・。
「・・・解毒薬のありかを教えろ」
俺は肩を怒らせながら言った。
「何言ってんの〜?それじゃチャレン−−−」
「いいから教えろ!! ・・・さもないと、俺は無理矢理にでも聞きだすことにする!」
俺は助走をつけて思い切り飛び蹴りをした!!
「キャア!」

ドン!


・・・机を蹴って脅かすだけのつもりだった。


それが、逃げようとしたのか、ふいに動いた真弓の腹に直撃してしまった・・・。
「・・・だ、だいじょ、うぶ?」

【2:01】


「ご、ごめんな、俺、机蹴ってちょっと脅かすつもりで・・・」
真弓はおなかを抑えてうずくまっている。
「大丈夫か?ホントにごめん、な。でも、こんなおふざけいつまでも−−−」
「わかって、ないよね・・・」
「・・・え?」

真弓はゆっくりと立ち上がった。

・・・高い・・・。

もう既に俺の身長の倍近くになっている・・・。
・・・俺が小さくなっているのだが。
慌てて携帯を見る。
「2:03・・・す、すでに第五段階なのか・・・」
真弓はおなかの所に出来た俺の足跡をはたきながら、俺のすぐそばまで歩いてきた。
本当に・・・高い・・・。
普通に視線を真っ直ぐにしたら、ちょうど服とスカートの間ぐらいの場所が目に入る。
なんか直視すると照れてしまう。
俺は慌てて視線を上に戻した。

真弓は、少しムッとした、不機嫌な顔でこちらを見下ろしている。
「本当に・・・わかってないよね!!」

ブンッ! ドカッ!!

ドン


「ぐ、ふ・・・」
真弓に思い切り蹴られた・・・。
蹴られたと言っても尋常な痛さじゃない。
それと、吹っ飛んだ反動で後ろの壁に頭をぶつけ、頭も痛い。
・・・鼻血が出た。
「ご、ごめんなさい、で、でも、そ、そ、そんなに怒らなくても・・・」
いつのまにか敬語だ。

真弓がズンズンと近づいてきた、
「ひっ・・・」
思わず声が出た。情けない・・・。
本当に、怖い・・・。

その様子を見た真弓が少し口を歪ませ、ニヤついた。
笑顔で俺の前にしゃがみこみ、俺の頭に手をのせ。
「解毒剤のありかを『教えろ』ですって?」

「う・・うぅ・・」
す、スゴイ迫力だ。
笑顔がかわいいはずなのに・・・。

「わかってないよね〜、自分の立場?ていうのが。あたしに逆らおうとしたわけ?その体で?」

パシ

軽い平手を食らった

「ま、コレも作戦のうちなんだけどね」
「・・・?」
「同じくらいの背丈の時なら、あたしに無理矢理聞き出せたかもね?」
「!!!」
最初に、ノせられて・・・。
後悔した、後悔したが、今となっては・・・もう・・・。

真弓はゆっくり立ち上がりこう言った
「今どう?勝てる?あたしに」

勝てない・・・。

「ほら、立ち上がんなさいよ」

グイっと腕を引っ張られた。痛い。
いつのまにか腰がすくみきり、座り込んでしまっていた。
立ち上がると、その体格の差をまじまじと見せ付けられる。
「どう?勝てる?」

勝てない・・・。

もう、だめだ・・。
もう遅いんだ・・・。

ニヤニヤした顔で見下ろしている真弓。
脅えきった表情で見上げる俺。

・・・自分が小学1年生だった頃を思い出して欲しい。
その時の、年上の高学年はどう見えていただろうか?
物凄く大人の、別格の人間に見えなかっただろうか?
あんな、あんなに大きく見えた高学年の小学生。

中学生なんて、見ただけで「いじめられる」なんて被害妄想まで沸いた。
自分がその中学生になった時はどうだっただろうか?
たまにみかける小学生なんて、どれも本当に子供にしか見えない。
いじめるどころか、全く眼中に無いのだ。
あの不思議な感覚。
体の大きさとは、思っている以上の影響を与えるのだ。

まさに今、真弓は修一の事を小さく、ホントに小さくしか見えていない。
反対に俺は、真弓の事が、絶対に、絶対に逆らえないあの『子供の視点の大人』にしか見えない。
駄目だ、逆らえない・・・。

「勝てるのか?って聞いてンの!!」

ドカッ!!

また蹴られた。
さっきより軽めなのだろうが、充分に痛い・・・。

殺される。

そう感じるくらいだ。

真弓は、笑っている・・・。

「う、うわぁぁぁーー!!」
「あ!」

俺は放送室から逃げ出した。
必死に逃げた。走って、どこまでも走って逃げた。

しかし忘れてはいけない。
解毒剤を見つけ出さなければ、どちらにせよ命は危険なままなのだ。

学校からは、出られない・・・。

【2:05】


「待ちなさいよーー!」

待ってたまるか・・・!
もし捕まったらまた何をされるかわからない!
早く、早く解毒剤を・・・!

体育館の入り口付近まで辿り着く。
その時、真弓が物凄い大声で。

「まだわかってないようねーー!!」



物凄く不安になった。
おとなしく、戻った方がいいのだろうか?
・・・いやだ。
もう、もうあんな目には会いたくない!

そのまま校舎の方へと走った。





とりあえず、用務員室に逃げ込み息を潜めていた。

・・・真弓は追ってくるのだろうか。
来て欲しくない。

携帯を見た。
「くそ!もう2:09だ!」
携帯電話もずいぶんと大きくなった。
学校の机なんてもう目線の高さだった。
椅子も腰の高さだ。

・・・俺はまだまだ小さくなるのか・・・。

『♪ピンポンパンポーン♪』
・・・!!

『用務員室で携帯を見ている修一クン、至急放送室まで来なさい』

全部お見通しだ・・・。
・・・それより、来いっていうのか?
い、いやだ!

『もう怒ってないから早く来なさーい、あと1分以内に来なかったら、あたしが直接出向いてお仕置きに行きまーす。1分あれば来れるはずでーす。60ー!』

カウントダウンが始まった、
『59ー、58ー、57ー、56ー』
い、行くべきか?
『55ー、54ー、53ー、52ー、51ー、50ー』
でも何で呼んでるんだ?
別に行く必要は無いだろう!?

そうだよ、解毒剤を見つけさえすればいいんだろ?
なんで放送室に行かなきゃならないんだ?
なんで行かないと怒るんだ?
『49ー、48ー、47ー、46ー、45ー、44ー、43ー、42ー、41ー』
嫌だ!
『40ー、39ー、38ー、37ー、36ー、35ー・・・来る気は無いみたいね。また修一クンは私に逆らいました。今からお仕置きに行きまーす。待っててね♪』

・・・!!
逆らったから・・・!?
そ、そんな馬鹿な話・・・。
・・・マズイ。
もうココにはいられない!

用務員室を飛び出した。

【2:10】


・・・・。

・・・。



どれくらい探しただろうか?
ドコを探しても見つからない解毒剤・・・。

既に時間は2:50を過ぎようとしていた。
もうすぐ第9段階・・・。
「ハァ・・ハァ・・・、ゼェ・・、ゼェ・・・」
もう、階段を、上がるのも、一苦労、だ・・・。
と、とりあえず、水・・・。

水道台をなんとかよじ登り、蛇口を・・・。
・・・!!
蛇口をひねって驚いた。
水が、水が出ない・・・!

「そ、そんな!」

その階の水道を全て調べたが、どれ一つ出て来ない。
焦れば焦るほど喉が乾く・・・!

「うわ・・・、うわああああ!」
下の階の水道も!!
ドンドン喉が・・・・!!

・・・!!

お、落ち着け、今、足音が聞こえた気が・・・!

・・・真弓か?




コツ・・・コツ・・・

ローファーの音だ。
確実に真弓だ・・・。
階段を上ってくる・・・。

俺は一番近い教室、二年二組の教室へ入り、奥の生徒用ロッカーに身を潜めた。

教室はどの教室も同じ作りだ。
ロッカーは木製で、教室の後ろに縦3段 横16段で並んでいる。

一つ一つが20㎝の正方形で、前面に扉は無く、空洞となっている。


そう、もうこんな生徒用のロッカーに、体を曲げれば入れてしまうほどにまで小さくなってしまったのだ・・・。

コツ・・コツ・・

真弓が入ってきた。
・・・!!
半端じゃなくデカくなっている・・・!
さっきとは比べ物にならない。

「修一クーン、いるー?」
物凄い音量だ・・・。
・・・返事をするわけが無い。
「返事しないとお仕置きヒドくなるわよー」
・・・・。

その時・・・!

ピロピロリー♪ピロピロリー♪ピロピロプツ・・・

俺の携帯が鳴ってしまった



「・・・ココにいるみたいね。よく返事しました♪」

う・・・。

・・・クソ!なんで鳴ったんだ?この馬鹿デカい携帯め!

・・・メールか。

高校のトモダチの木村からだ。

『今日遊ばない?』
遊べる状況じゃねぇんだよ!くそ!

・・・メール?

そうか!助けを呼べばいいんだ!

「教卓も、全員の席も探したけど、いないってことは・・・ロッカーね」

やばい、どうすれば・・・!

真弓が俺の視線から見える一番奥のロッカーの前に立った。

「今の修一クンの大きさから考えるとー。・・・一番下の段に隠れてるかな?」
これは・・・見つかるのも時間の問題だ・・・。

ドンッ!

物凄い音がした。

見ると、真弓が、向こうから順番にロッカーの一番下の段に蹴りを入れている

ドンッ!

だめだ、あんな蹴りを入れられたら。


・・・死ぬ・・・。



ドンッ!
うわあ・・・



ドンッ!!
あ、あと3つ・・・!



ドンッ!!!!
音が大きくなる・・・・。



ドンッ!!!!!!

「早く出てくればいいのに・・・」




ドンッ!!!!!!!!

くっ来る!もうだめだ!




真弓が脚を後ろに振り上げた瞬間。

「ご、ごめんなさいいいい!!蹴らないで下さい!!」

土下座だ。

真弓がピタッと脚を止める。
ブワッと風が通った。

「あ、修一クン みっけ〜♪ やだ、裸? はずかしくないの〜?」

もう服など着れる体ではない。


「っご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいい!!」

同級生の女子に、裸で、必死に、謝りつづける。
俺。
・・・情けない・・・。


ふと、上を見上げる。

真弓はこっちをあのニヤニヤした顔で見下ろしていた・・・。
その時、視点からいって、パンツが丸見えだったのだが・・・。
そんなことはどうでもいいことだった・・・。

「・・・ちょっと、あたしのうしろにまわって来なさい?」

「は、ハイ・・・!」


真弓の後ろにまわる際、見えた物。

恐ろしかった。

何て、デカイ、脚だ・・・。
お、俺の体くらいある・・・。

・・・こんなのに蹴られていたら・・・・。


教室の時計を見ると 2:59
既に第9段階は過ぎていた。



真弓は振り向き、俺の隠れていたロッカーを背にする。
「・・・ドコ見てんのよこのヘンタイ!!」

ドガッッッ!!!







どうでもいいことではなかった。

思いっきり蹴られた・・・。
骨の2,3本は、折れただろう。
もう容赦は無いのだろうか・・・。

ズザザザザザザザと教室のドア付近まで体が滑る。

真弓にとって俺はサッカーボールくらいの大きさ。

「ぐ、グボ、・・・オエェェェェ」
吐いてしまった。
気絶はしなかった。


・・本当にさっきと同じくらいの力で蹴られたのだろうか?
何百倍も強くなっている。
当たり前なのだろうか。

・・・ドアが近い。


逃げろ!


俺は最後の力を振り絞り廊下へ走り出した!


「・・・はァ? 逃げられると思ってんの?」
真弓が半分呆れながら追いかけてきた。


!! はっ速い!!?

幻覚か、真弓は歩いているように見える。
しかし、今俺が怪我を引きずりつつ進むスピードより断然速い。

・・・当たり前なのだろうか?

「ハァ・・、ハァ・・、ゼェ・・」
もう、追いつかれる・・・! 


ああ!もう真うし

ドガッ!!


あの脚で、後ろから再び蹴られてしまった。

さっきよりも激痛が走った。
さっきの蹴りは本気では無かったのだろうか。

ズザザザー・・・・ドカッ!

廊下の一番奥まで体が飛んだ。

向こうから真弓が歩いてくる。


ちょっと不機嫌そうな顔つきだ・・・。

もう・・・駄目だ。

「ご、ごめんなさい・・・・、ゆゆ、許してください、もう、逃げません・・・」
泣きながら土下座した。

もう、これ以上蹴られないのなら、どんなにプライドを捨ててもいい・・・。
かわいかった真弓の顔は、もう、怖い。

真弓が目の前まで来た。
「ひっ・・、ゆ、許して・・・・!」






「・・・何言ってんの?これからお仕置きするんじゃん♪」

真弓はニヤついた笑顔だった

【3:00】



「お仕置きって言っても、もう蹴ったりはしないから安心してねー」
真弓がしゃがみ込んで言う。

俺の視点から見える映像は、その、かなり、いやらしい、もの、なのだが・・・。
真弓は怒らない。
さっきのパンツを見たことでの怒りは嘘で 蹴り飛ばすための口実だったのだろうか?

しかしどれだけスケベな視点であろうと、俺にとっては恐怖以外のなんでもない。

・・・しゃがんだ真弓より俺のほうが背丈が低いのだ。
しゅがんでも見下ろされている・・・・。
屈辱と同時に、恐怖だった。



「さて、どんなお仕置きしようかな? まだ考えてないのよね〜」
真弓が言った。
しないでくれ・・・。


「修一クンは今までどんな所を探してきたの?」
「・・・え、と、英語科教室と、」
「そこらへんは見てたから知ってるわよ。そうじゃなくて、あたしが修一クンを探し始めてから!」

声が少し大きくなった。
ますます腰がすくんだ。

「えと、一階の、教室全部と、ト、イレと、ハァ・・・、二階は、えと・・・」
「もっとハッキリしゃべってよ」
「う、うう・・・、け、けど・・」

「何?」
「ノ、喉が渇いて・・・」

嘘じゃなかった。
さっきから喉は渇いていた。
加えてそのあとのアノ緊張感と激痛だ。

もう喋れない程だった。。

「喉乾いてんの? 水飲めばいいじゃん。・・・あ、そうか、水止めてあるんだっけ?」
俺は何も言わずブンブンと頷いた。

「そう、喉が渇いたんだ・・・。・・・ふふ、そう。喉が渇いたんだ?」
何を・・・。

「・・・ん? なーに?また小さくなっちゃうの〜?」

小さくなり始めた。
とうとう第10段階目のようだ。

「もう10段階目かぁ〜、ずいぶんちっちゃくなったね〜♪」
改めて言われると、悔しくなってくる。


「ちょっと立ってごらん? あたしも立つから」
真弓が立ち上がった。

「う、うう・・・。」
体が痛くてあまり動かない



「・・・早くしなさいよ」

真弓は右脚を後ろへゆっくりと振り上げた。

俺は体をバキバキいわせながら無理矢理立ち上がろうとする。
「ぐ・ぅ・・・」

痛みによる声がでたものの、なんとか立ち上がることが出来た。

「あはは、立ち上がってそれなの? もうあたしのスカートにも手届かないんじゃないの〜?」
上から響いてくる言葉は物凄く胸に突き刺さった。

「えっとー・・・、あは、膝小僧と同じ高さだ♪」

本当だった。

前を見ても膝小僧と靴下しか見えない。
・・・。
今になって大きさの違いが痛いほど辛い。

屈辱だ・・・。

「もうわかってると思うけどさ、もうあんたはあたしのスカート以下の存在なのよ?」
そんな言い方・・・。

屈辱だ・・・。


「そうそう、おチビちゃん。喉渇いてるんだよね?」
既に名前で呼ばれなくなっている・・・。

「飲み物、あげようか?」
「・・・え?」
そ、それはありがたい・・・けど・・・。

「じゃー、ちょっと待っててね」
そういうと真弓は俺を持ち上げる。

・・・片手で・・・。


どんどん精神がボロボロになっていく。




真弓は廊下の隅に俺を置く。

廊下の隅。
後ろは壁、もちろん左右もほとんど壁。

そして前面は巨大な真弓・・・。
それが廊下の隅だった。


「・・・さて、とー」
そういうと真弓は・・・。

!!!
パ、パンツ・・・を・・・脱ぎ・・・始めた!?
「え!ええ!?」


「あ、さっきはごめんねー。もうなんかおチビちゃんなんかにパンツ見られてもどうでもよくなっちゃった♪」

そこまで落ちたのか、俺・・・・。

で、でもパンツを脱いでいるとか、そ、それ以前に、た、大変なモノが・・・・。
う、うわ!!

真弓がそのまましゃがんだ!!!!


「もう全然恥ずかしくないな〜。なんでかな?」
多分俺の事を人間とも思ってないのではないだろうか。

「さっきからガマンしてたのよね〜。さ、たくさん飲むのよ?」
「!!!!!」


そ、そういう事か・・・。
う、薄々は、気付いていたん、だが・・・。
でも・・・!

「い、嫌だ!!!!俺は、そこまで落ちぶれてない!! しかもそんな趣味は無い!!」

「じゃあ、そこのモップの入りバケツの水でも飲む?」
「どっ、どっちもいやだ!!」


「何刃向かってんのお? どっちにしろあたしはー、あんたなんかに意見求めてなんかないの。おしっこを出すだけ」
「!!!」
人間をなんだと思ってるんだ!!


真弓は俺の頭を掴む。

俺を寝かせ、自分の股間の方向へと・・・顔を・・・向け・・させ・・・。

自分の頭の倍くらいの大きさの「女性器」


そして・・・その時が来る。

ッジョ、ジョ、ジョロロロロロロ

バシャバシャと俺の顔面に向けて発射される。
俺には滝のようなドドドドドドドという音が聴こえる。

黄色い滝が、自分に容赦なくぶちまけられる。

「んぶ! ・・・ブッ、ぷは、ブ・・・・!」
息が出来ない。
とてつもなく痛い。

鼻、耳、水圧で開いてしまう口、全てに真弓のおしっこが無理矢理入ってくる。

「結構たまってみたい。もっと出すよ?」
真弓は腰に、局部にグッと力を入れる。

「ブブブブブブ!!!ガバ!」
し、死ぬ! 息も出来ない、傷口に激痛が走る!
き、気絶してしまいそうだ・・・!

ドドドドドドドドドドドドドド、ドドドド、ドド
ジョボボボボボ・・・・・、ジョ、ジョロ、・・ジョ・・・




「あー、スッキリ♪ あ、ティッシュない・・・・」


俺はボンヤリとした意識から真弓の声を聞いていた。

「そうだ!おチビちゃんで拭いちゃえ♪・・・って、おしっこまみれで意味無いか。 口でなめ取らせる、っていっても・・・。その口じゃなめきれないか・・・」
なんてことをさせようとしてたんだ・・・。

「そうだ!さっきそこで拾った服でいっか♪  ねえ? 聴こえてる? おチビちゃんの服で拭いてあげるからね♪」

そこで意識が無くなった・・・・。


【3:04】


ハッと目が覚める。

放送室だった。




放送室の机の上に、タオルで寝かされていた。

やはり体のサイズは小さいままだった。
時計を見ると、3:24

もう、・・・第12段階か・・・。



しかし不思議だ。
服を着ている。少しきつめの。

ガチャ

巨大な真弓が入ってきた。


「あ、目覚めたの? よかった・・・」
「こ、この服は?」
「事前に用意しておいた物。これだけ小さくなるだろうという事も考えてあったみたい」

変な感じがした。


「さっきは・・・ごめんね。・・あたし、テンション上がっちゃうと・・・。その・・・自分でも何するかわかんなくなっちゃって・・・。」

昔から知っていた。
真弓のその異常な感覚。
一度興奮し始めれば、たちまちに我を忘れてしまう。
欲望の赴くままに・・・。

きっと、酒なんか飲んだら・・・。
いや、真弓の我の忘れ方は「酔い」レベルのものじゃない。


「ご、ごめんね・・。その、蹴っちゃったりして・・・」
「いいんだよ、最初に蹴ったのは俺なんだし」

「で、でも!その・・。そのあとの・・・こと・・・」
「?何が? 蹴られて、気絶して・・・・?」

「・・・覚えてないの?」
「うん・・・、まぁ、いいよ、聞かない。聞くと自分も辛そうだし」
「・・・」



そういう事にしておいた。

【3:26】


「さあ!」
「・・・?」

「チャレンジの続き♪」
「・・・は!? まだやるの!?か、勘弁してよ!」
もう我を見失い始めたか!?


「修一くん、実はね・・・」


嫌な予感がする・・・。

「実は、あたしも場所を知らないの・・・」
予感はあたった・・・。

「・・・ゴメン。で、でもでも!全力で協力する!」
「お、お父さんに聞いてよ。携帯とか持ってない?」
「あたしは・・・今持ってない。でも、どっちにしてもだめなの」
「な、なんで?」

「さっき実は、修一くんの携帯を借りて頼んでみたんだけど・・・。『10:00までだめだ』っていうの」
「そんな!人の命がかかってるのに!」

「お父さんって、一度言い出したら絶対に動かない人なの。平気で実験中に人を何人も死なせるし・・・。何言っても聞いてくれないと思う」
親父に似たんだな・・・。真弓・・・。

「たとえあたしが泣いて頼んでも、聞いてくれない・・・」
・・・絶望的だ・・・。

「でも、絶対に探し出そうよ! ね!」






久しぶりに真弓の顔が「かわいい」と思えた。



「・・・わかった。・・・じゃあ急ごう! まずはどこか・・・」
「ちょっとまって!」
「?」
「あたし、といってもお父さんだけど。用意しておいた隠し場所のヒントがあるの!」
「なるほど、放送で言ってたやつだ?」

「5時の分まで用意されたヒント、全部言うね!」



1、放送室にはない
2、女子トイレ等、男子禁制の場には無い
3、○年○組、というような「教室」には無い
4、校庭には無い
5、屋上には無い
6、3階には無い
7、1階には無い
8、4階には無い
9、体育館には無い
10、2階の廊下には無い

「これで全部」
「なるほど、2階の特別教室にあるって事か」
ウチの学校は4階建てなのだ。

「そして」
「ん?」
「このヒントは体が小さくなっている事を前提にあるわけだから、2階のうんと低い場所って事ね」
真弓は地面より少し上に手を泳がせながら言った

「・・・なるほど」
真弓の頭が切れている。
これも親父に似たのだろうか。

・・・さっきも違う意味でキレてたが・・・。


【3:29】



「そうとわかったら、2階に行こう!」
「うん!」
すぐに放送室を出ようとする真弓。

「待った!」
「うん?」
ピタっと止まった。

「・・・それで、頼みというか、まあ、しょうがないんだが・・・」
「うん・・?」

「俺を持っていってくれ」

「あ・・・。そ、そっか・・・」

真弓は俺の体をヒョイと持っていってくれた。


・・・やっぱ俺、軽いんだろうな。

なんでこんなことになったんだっけ?

手にもって運ばれていると、自分が真弓の人形にでもされたかのような気分になってくる。

これは、きっと真弓もそんな風に感じているんじゃないだろうか。
・・・さっきまでビビっていたとはいえ、また舐められるのは危険だし、ちょっと癪だな。








2階に着く。

「さ、どの部屋から探そっか?職員室から行く?」
「俺職員室は最初探したから、違うと思うぞ」
「そうかなあ?今みたいにチビじゃなかったんでしょ?」

チビとか言う。
やはり手で運ばれることで、また見下され始めてるのではないだろうか。
それはまずい。

「・・・いや、俺探したんだって」
俺の探し方が甘いとでも思っているのだろうか?


「んー、じゃあ音楽室!音楽室からにしよっか!」
「ん」

「・・・」
俺たちは音楽室に入った

音楽室の床近くにあるものといったら、
段差、コンセント、空気オルガンの送気ペダル。

くらいだった。


音楽室を探してるうちにもう第13段階まで小さくなってしまった。
間に合わないんじゃないかとイライラしてくる。

「ココには無いみたいねー」
「やっぱりか、音楽室は無いと思ってたんだよ」
「・・・なにそれ、どういう根拠で?」
「いや、なんとなく、な。ごめんな。まあ次いこうぜ」
「・・・」



「次はドコ?」
「うーん、図書室かな・・?」
真弓は何も返事をせずに図書室のドアを開けた。

バンッ!!


・・・かなり乱暴に。

カチン、とくると同時に恐くなってくる。

・・・しまった、怒らせるのは・・・。
まずい、か・・?



図書室の床近くにあるものといったら
コンセント、ストーブの元栓、本棚の一番下の段。

ぐらいだ。
「ココにも無いみたいよ?次は?」
「え?おい。まだ向こうに本棚が・・・。あ、ああ、いや、そうだな・・・。うん。えーと次は・・・」

・・・。
マズイ。

残るのは職員室とさっき調べ忘れた音楽"準備"室だ・・・。
調べ忘れたのを真弓に言い忘れていた。

職員室は調べたはずだからもう調べたくない。
が、「音楽室準備室に行こう」なんて言ったら「やっぱ音楽室じゃない!」と怒らせてしまいそうだ・・・。
・・・仕方ない。

「職員室だ!やっぱり、そう。うん!調べ忘れたところがあるかも知れないしな!」
「そうよね!あたしずっと職員室調べたかったんだ!」
「・・・な、なんで?」
「だって『職員室』だよ?もう名前からして怪しいじゃん♪」

意味はわからなかった。


ま、これで機嫌が直るなら・・・。




職員室

職員室は広い上にゴチャゴチャしているので調べるのに時間が掛かる・・・。
ふと時計をみると既に・・・3:45分!
いつのまにか第14段階に・・・・!
焦りが生じてきた・・・。
同時にかなりイライラとしてくる。

結局職員室には無かった。
その結果に、真弓は納得いっていないような顔つきでムスッとしている。
難しい性格だ・・・。

・・・段々本当に腹が立ってきた。


「真弓?」
「・・・何?」
「音楽室」
「音楽室はさっき調べたじゃない」
「いや、まだ準備室があるんだよ」
「じゃあ、やっぱり音楽室にあるんじゃない。なによ、音楽室は無いと思ってたとか言ってたくせに?」

ズケズケと言ってくれる・・・。



「職員室にも無かったけどな」
音楽室に向かっていた真弓の足がピタリと止まる。

言ってから「言い過ぎたか」と思ったが、時既に遅し。


真弓は俺を足元に置いた。

「な、なんだよ・・・」
こちらを見下ろしている。

「・・・自分で探せば?自分の探したいようにさがせばいいんじゃない?」
「おい、ちょっと待て・・・」
「大体、ムカついてくんの。あんたみたいにちっちゃい奴にボソボソボソボソ細かい事言われてると!!」

俺もとうとう頭にきてしまった。

「じゃーいーよ、自分で探せばいいんだろ?早く放送室帰れ。サザンでも流してろよ。な」
俺は高校デビューの反動で口が悪くなりすぎるようになった気がする。

言い過ぎた。
と思ったが、もう別にいいのだ。
あとは音楽準備室だけなんだし。


【3:49】



「早く帰れよ?」
俺は吐き捨て、そのまま音楽室に向かった。

このまま音楽準備室にあるはずの解毒薬を見つけて、元の大きさに戻って早く家に帰ろう。
もう真弓には飽き飽きした。
あんなベタ惚れだった自分だったが、今は不思議でしょうがない。
帰る時放送室に行って、真弓を一発殴ってから帰ってもいいかも知れない。
あんだけ蹴られたんだ。
そのためには早くこの音楽室の中の解毒薬を飲んで

ドォォォォン!!!

真弓が後ろから俺の目の前に思い切り足を踏みおろした。

見上げた俺に一言
「・・・誰に向かって言ってんの?」




俺は最後の賭けに出た事を。

心の底から後悔することになる。




【3:50】


「ねえ、誰に向かって言ってんの?おチビちゃん?」
すでに真弓はあの顔だ。
ニヤニヤとし、笑顔なのだが、なぜだか恐怖を感じるあの顔・・・。
その豹変した顔をみた俺は、その場から動く事が出来なかった。


真弓は乱暴に俺の体を掴むと、顔の前まで持ってきて
「また逆らったんだから、またお仕置きしなくちゃね〜♪」

目の前に口がある。
その、今にもガブリと自分の頭を食べてしまえそうな口に、俺は血の気が引いた。

「あ・・・あ・・・う・あ・・・」



口に脅えている事に気が付いたのか、真弓は面白がって食べようとする仕草を始める。
「あーん。 このまま口に入れて噛み潰しちゃおうかなー?」

本人はちょっとした冗談交じりで言ってるのかもしれない。

そう思う余裕など全く生まれない。
本当に・・・怖い。

も、うだめだ・・・



失禁してしまった・・・。


「・・・。あは、そーんなに怖かったのぉ? アハハハハ!情けない男! 女子に口開けられただけでおもらしだって!キャハハハハハ!!」
屈辱では、ある。が、とにかく今は。
笑ってはいても、この開いてる巨大な口に脅えるしか俺には出来なかった。

男が失禁するほどの迫力と恐怖。
それは物凄い事である。


目の前にある、握りこぶしよりも少し大きいくらいの歯が。
ひとつひとつの歯が。
本人の意思以上に俺の事を脅す。

「噛み潰すぞ」 と。

「あはは、食べちゃうぞー食べちゃうぞー♪」

ガチッ!ガチッ!

目の前で歯を鳴らす真弓

もうだめだ、意識が遠のきそうだ・・・。
気絶してしまう・・・。


う・・・!
ま、また体が小さくなってきた・・・。
よりによって、こんな時に・・・。

「・・・あれ?またちっちゃくなっちゃったのぉ?オチビちゃん?」
気付かれた・・・。
「じゃあまた背比べしよっかー?」

真弓は足元に俺を置いた。
「あ、あたしの靴下と同じ高さだね♪ ん?あたしの靴下の方が高いのかな?」

正確には、俺のほうが少し高い。
まだ俺のほうが背が高い。


「ちょっと上げちゃえ♪」
真弓は靴下をクッと少しだけ上にあげた。

・・軽く背丈を越されてしまった・・・。

「はい、これでオチビちゃんはあたしの靴下以下の存在だね♪」
言われると判っていたが、いざ言われるとやはりつらい・・・。

「ほら、あんたは靴下以下の存在なんだから、あたしの靴下に頭下げなさいよ?」
訳のわからない注文だ。

「・・・早くしなさいよ!」
真弓はその場で片足を上げ

ドォォォォン!

地面に思い切り踏み下ろした。

俺を力で従わせるには充分な脅しだった。
俺はすぐに言われた通り靴下に頭を下げる。



そして、少しだけ、本当に自分が靴下より下の存在に思えた。
目の前の靴下のロゴが、なんだか光っているように見えた。

見上げると・・・。
オーロラのようなミニスカートがひらめいていた


そういえば俺にも、あのスカートより背が高い時があったっけ・・・。
・・・いや元は真弓よりデカかったはずだ!


・・・今じゃ、あのスカートの裾にも手が届かない・・・。

最初はあのふとももあたりの「脚」に恐れていた。
しかし今はこの靴下のある、ふくらはぎあたりの「脚」に恐れている自分がいる。
自分の地位がドンドン下がっていっている気がした・・・。。



「・・・。・・・どこ見てんのよ!!」


ドガッッッッ!!


「!!!!!」

ズザッガッドザザザザザザザザザ!!


トラックに思い切り激突されたのと、そう変わらないだろう。

10メートル程の距離を軽く蹴り飛ばされてしまった。



痛いなんてものではない。
・・・が、もうそろそろ痛みにも麻痺がかかってきた。

痛みに悶えてると、向こうから真弓が普通に歩いて来た。

ズン! ズン! ズン!

そしてしゃがみ込み、俺の頭を掴み、空中に持ち上げる。

「何勝手に人のパンツ覗き込んでんのぉ?」
「違、、、偶然、、見え、ただけ・・・で、す・・・。見るつもり、は・・・」
「あの位置で上見たら見えるに決まってんでしょ? このヘンタイチビ虫。なんとか言いなさいよ? チビ虫の分際であたしのパンツ見ていいと思ってんの?」

もう、ボロボロだ・・・。
何で俺はあの時真弓に逆らったんだろうか・・・?

こんな目にあうかも知れないのに、何で逆らっちゃったんだろう・・?



・・・。
もう俺、死ぬのかな・・・?

「あれ、チビ虫ちゃん?寝ちゃったのかな?」

・・・。


もう

だめ だ・・・・




【3:55】






・・・目が、覚めた。

ここは・・・。

二階だ。

真弓の姿は・・・・。


見当たらない。

良かった・・・。


・・・・のか?


ふと気付くと、自分は何かの紙の上に寝ていた。
紙に何か書かれている。

【お嬢様は一度ああなられるともう何を始めるかわからないお方なので。ここまで被験者に攻撃を加えるとは私たちにも予測できませんでした。もし、起きてこれを読んでいたのなら、このあとは貴方の思うように行動して下さい。薬のありかは私たちにもわかりません。とりあえず、音楽準備室ではございません。それと、貴方が元々時着ていた衣類を置いておきます。RH-B600Cを見つけられましたら、どうぞそのままお帰りください。それではまた10:00に。・・・会えましたらお会いしましょう。 監視員一同】

くそ、勝手な事いいやがって。
こんな巨大な服を置いて、薬勝手に見つけて勝手に着ろってか?


・・・治療のあとなのか、包帯がまわりにばらまかれていた。
多分、包帯がほどけるほど体が縮んだのだろう

俺は手前の教室に入り時計を見た。
4:46
・・・・・という事は・・・。
20段階目。

こんなに小さくなったのか・・・。

もう薬を探す気力が無い・・・・。
音楽準備室にも無いんだったら、もうこの階に探してないところはないってことじゃないか。
だとしたら・・・あるのは、ここからはるか遠く離れた場所だけだ・・・。
そんなところ、この体じゃ何時間かかるかわからない・・・。

もうあきらめるしかない。
この階にもう調べるところがないのだ・・・。

特別教室でもない・・・。
普通の教室でもない・・・。
廊下にも無い・・・・はん、どこにも無いじゃないか・・・。
どこにも・・・。
・・・・。

・・・・。

・・・あ。



・・・だ、男子トイレか!!



【4:49】


ここに、ここに無ければ、もう死あるのみだ・・・!

2階男子トイレに駆け込む。
運良く、目が覚めた場所のすぐ側にトイレ入り口があったのだ。

まずは入口、・・・何もありそうに無い。
中に入り、小便用の便器の周りにも・・・何も無い。
掃除用具入れの周りにも・・・何も無かった。

・・・となると。大便用・・・。

・・・こんなドア、どうやって開けろっていうんだ・・・。


くそ・・・。
これまでか・・・・。

・・・・・・・。

上げっぱなしだった目線を降ろしていく。


・・・大便用トイレのドアには・・・やっぱり!隙間があった!!

そして楽々と通れる俺の体。
ふたつあるうちの、右側の方にまず入った。

なんて、でかい、和式便器だ・・・。

何の変哲も無い。大きさ以外は。

中も一応のぞくが、・・・何も無い。
水が溜まっているだけだった。

・・・クソ!もう片方!

第21段階が来た。

便器が少し巨大化したように見えた、が、たいした違いは生まれなかった。

もう一つの和式便器。
パッと見、さっきと一緒だった。



嫌な予感がする・・。



便器の中を見る。



喜びとも悲しみともつかない感情が湧いてきた。
便器の中には水が溜まっているだけだった。

が、その水が薄い青色だったのだ・・・。



まさか・・・。しかし・・・。いや・・・。でも・・・。

・・・コレしか可能性が無い・・・。

俺は便器の中に入る事にする。



便器の段差ってこんなに高かったのか・・・。


なんとか中に入る事が出来る。

もうすることは一つだった。



・・・どうにでもなれ!
溜まっている方の奥に飛び込む。

ドボ、ン


和式便器の水中。

やはり・・・、飲まなければいけないのだろうな。

「ゴボ!ゴボ!」

これほど直接な薬の飲み方は初めてだ。

・・・
・・・早くっ
早く薬よ効いてくれっ!!

「グブ!ガボガボ!」

もう駄目だ!おぼれる!

「ガボガボガボ・・・・」

やっぱり、 薬じゃなかったのか・・・・・!・・・・?

「ゴボゴボゴボ・・・・ゴボッ!・・・・・・・・・」





【4:57】


目が覚めると、和式便器に片足を突っ込んでいる自分がいた。

意識が朦朧とする。


助かった、のか・・・・?

助かったのか・・・?

助かったのか!!

うおおおおおお!!!
俺は生き延びたんだあああ!!!
元の大きさだああああ!!!



【6:21】



ボロボロの、少しアンモニア臭がする服を着て家に帰る。

「ただいま」

親がすっとんきょうな顔と声で言う

「しゅ、修一、!
そ、その傷とボロボロの服は何!?どうしたの!?」

「ああ、これ・・・?」

・・・。


「同窓会で、ちょっと喧嘩しちゃったんだ」



【6:50】

==END==