金が無い。
 夕方の公園のベンチに座り込みこれからどうやって生きていこうか考えていた。
 多額の借金を抱え、携帯電話も利用料金を払えず解約。アパートも追い出された。
 そんな男の名前は宮治晃 29歳
 十代の頃から、ろくに仕事もせずに遊び呆けていたらこうなってしまった。
実家からは勘当されているし頼れる仲間もいない。 彼女にも愛想つかされて逃げられてしまった。
 今手元にあるのは3000円と小銭がいくらかあるくらいだ。
 「パチンコに賭けてみるか、最悪食い逃げして、警察のお世話になろう」 そう独り言を呟き、公園を後にした。
 近場のパチ屋に行くため繁華街を歩いていると、「お兄さん、ヤバそうな顔してるね。何か困ってるの?」
キャッチのような若い男に声を掛けられた。
 「マジで金無いから、お店とかいけないよ」と適当にあしらう
 「お兄さん、俺は客引きじゃないよ、人生困ってそうな人に声かけてんの、お金ないの? イイ話あるよ。」
 嫌な予感がする、あしらって逃げよう「悪いけど、違法な事とかヤバイ事はやらないよ。 急いでるから行くよ」
 「お兄さん、勘違いしないでよ。死ぬかもしれないけど、完全に合法だよ。 
治験みたいな物で、生き残ると億単位の賞金貰えるよ。興味ない?」
 億? そんなに貰えるのか、でも死ぬかもしれないのか。
 どうする? 今の人生だとどっちにしろ死ぬ確率は高い、それなら賭けてみるか。 話を聞いてみよう。
 「どんな事をするんだ?」
 「おっ 興味ある? 俺も詳しいことは知らないから、ここに行ってみてよ。 じゃあ、俺行くね お兄さん頑張ってね!」
 キャッチのような男は紙を渡してきて、繁華街の人混みに消えていった。
 紙には会場の場所と注意事項が書かれている。
 会場は日本でもトップクラスの高級ホテルだ。 しかもここから近い。 
日時等は書かれてないが、24時間受付中、実験開始までは食事と部屋は提供します。 定員が埋まり次第終了。
 命にかかわる可能性があるので覚悟のある方のみこの紙を持参でお越しください。と書いてある。
 無料の食事と寝れる場所があるのはありがたい、直ぐに向かおう。
 実験って何をするんだ?
 不安があるが、ホテルに向かう。
 しばらくしホテルに着く。
 会場案内等の看板は一切なかったが、フロントに紙を見せるとエレベーターに案内された。
 エレベーターの階数ボタンはB2しかなかったので、地下2階に向かう。
 地下2階につくととても広い会場に着いた、奥には受付のようなテーブルがあり沢山の人が行列に並んでいた。100人以上は確実にいそうだ、スタッフの案内に従い列に並ぶ。
 列をみてみると老若男女問わず様々な人が並んでいた。この人達も俺と似たような境遇なのかと思いながらボーっと列が進むのを待った。
 しばらくし俺の番になった。後ろをふと見てみるとまだ50人位は並んでいた。
 受付自体は簡単なものだった、命に関わるが問題はないか、他言しないか等の事が書かれている誓約書を記入し番号が書かれたプレートを貰った。
378番だった。順番通りなのか、ランダムかはわからないが、そのプレートを持ち別室に案内され薬を2錠渡され、飲むよう言われた。
実験に望むための睡眠薬と疲労回復の薬らしい、少し恐怖心はあったが薬を飲んだ。 その後はベッドが1個だけある個室に案内された。 
腹が減っていたが、薬の効果か強烈な睡魔に襲われたため、すぐに寝ることにした。
 どれ位寝ていたかわからないが目が覚めると眠りに着いた個室とは全く違う場所だった。狭いオフィスのような場所で床にマットレスが敷かれている。
 ふと腹部をみるとシャツに378と大きく印刷されている。ズボンはスウェットのような物だ。
 状況が理解できずに混乱していると外からスピーカーを通しての放送なのかは分からないが、大きな女の声でマイクテストと3回聞こえた。
 「みなさん、おはようございます。 今回の実験をサポートする、鶴藤梓と申します。 
今回の実験は2時間後に詳細は言えませんがとても危険な生物が出現します、
それからはランダムな日数で数時間出現します。 殺されないよう気をつけてください。
食料や飲料水は今みなさんが目覚めた場所に、3日分の蓄えがあります、毎日3回10台のヘリからの場所はランダムですが投下もあります、
ただこれは2日分しかありません。 危険生物や周りの人間からの食料強奪等に気をつけてください。では幸運を。」
 放送が終わる。 2時間後どんな危険生物が出てくるのだろう。
 周りの人間とチームを組めないだろうか。武器になるような物はないか、食料は隠さないと、色々とやることをやる。
 直ぐに時間が経ってしまった、後30分で危険生物が出現する。武器はオフィスに突っ張り棒があったので拝借した、周囲の偵察もしたかったので棒を持ち外にでる、
狭いオフィスは5階建ての雑居ビルの3階にあった、雑居ビルの他の階をくまなく探索したが他に人はいなかった。雑居ビルからでて周囲をみてみる、ビルや飲食店などが並び、
路駐している車も数台ある普通の都会のイメージの様な町並みだったが、人が一人もいなくシーンとしていた、ここは高台になっていて遠くの風景も見える。
とりあえず周囲を探索するが、人の気配は無く、まるでゴーストタウンだ。飲食店に入っても食料も全く無かった、雑貨屋に双眼鏡があったので持って行くことにする。
 とりあえず、雑居ビルに戻ろうとすると急にスピーカーからサイレンが鳴り始めた。危険生物が出現したのか、急いで雑居ビルに戻り、
3階のオフィスでは無く周囲を伺いたかったため5階にある他のオフィスに息を潜め窓から周囲を警戒する。
 サイレンが鳴り終わり、シーンと無音になる。自分の心臓のバクバクと鼓動している音がとても大きく聞こえる。
 ずしぃーん ずしぃーんと遠くから地響きの様な音が聞こえる。
 少しずつ音が大きくなり、軽く建物が揺れてきた、窓からは何も見えなかったため、注意しながら屋上に上がる。
信じられないが、遠くにビルと同じ位の大きさの人間が見えた。
双眼鏡でみてみると、黒いスーツを着た黒髪ロングの巨大な女性だった。美人でスタイルも良い。
 そんな巨大な美女が二車線の道路をモデルのような歩き方で歩いている。
 パンプスを履いた巨大な足は片足だけで一車線と同じ位の幅がある。
 巨人の進行方向に路駐している軽バンがあった、巨人は立ち止まり長い脚を上空に上げ軽バンの真上に持っていき踏み潰した。
 一瞬で軽バンは巨大な足の下に消えてしまった。 巨人が足をあげると軽バンはペチャンコになっていた。
 巨人は微笑みながら口を開いた。
 「みなさん、先程ぶりです。
 鶴藤梓です、遠くにいる方はスピーカーで聴いてると思いますが、近場の方は私の姿を確認出来たと思います。 私が危険生物です。
今日はお披露目程度なので、多分死亡者は出ないと思います。」
この巨人がさっき放送で喋ってたやつなのか、確かに声は同じだがこんな巨人が実在することが信じられない。
 「みなさん勘違いしてると思いますが、私は巨人では無くみなさんが小さくなったんですよ? 建物や車も研究所で作った特殊なミニチュアです。 
強度はみなさんの様な小人なら触っても実際のビルや車と同じだと思います。」
 「ですが、私のような小人からみた巨人だと」と言いながら膝丈位の飲食店の上に巨大な尻を乗せていく。 
グシャガラガラガラガラドーーーンと大きな倒壊音と地響きが聞こえる。
 「脆すぎますね。まぁこんな感じです。」巨人の巨大な尻は飲食店だけでは収まらなく、両隣にあった建物の1部も破壊し、結果的に3棟の建物が壊れてしまった。
 「228番の方が亡くなりました。
 残り499人です。」
 急にスピーカーから機械音声が流れた。
 今ので、1人死んだのか? 500人のサバイバルなのか?
 「1人亡くなってしまいましたね、初日は殺さないつもりだったんですが」巨人はそう言いながら立ち上がった、スカートから瓦礫がボロボロと落ちてきている。
 「では、今日は帰ります。
 次回からは数を減らすことを視野に入れているので、みなさん気を付けて下さい。」
 というと巨人はワープするように一瞬でどこかに消えた。
 巨人に対するとんでもない恐怖心が、込上がってきたが他の人間にも気をつけないと。