ある女の子が
公園のベンチに座っていた

野球の練習の帰りなのだろうか
または、ただ単に野球のファンなのだろうか
半袖短パンの野球のユニフォームを着て
一人、ベンチに座っていた


クチャクチャ

その女の子は
ガムを噛んでいた
甘いミックスフルーツ味で
その女の子の大好きなガムだった

そのガムは女の子に
クチャクチャと噛まれるたびに
女の子の歯型に形を変えていった

ガムのほうは、なすすべもないのである
ただひたすら、その野球少女に噛まれ
ぐちゃぐちゃと、いろんな形に噛み潰されるしかないのである

さらに、同時にそのガムは
鋭い悲鳴もあげていた

女の子がぐちゃりと噛む度に

「ぎゃあ!」とか「やめて!」とか
悲痛の叫びをあげていた

もちろん、女の子は噛むのをやめない


逆に、女の子は
悲鳴を心から楽しんでいた

だから、悲鳴を聞くために
しっかりと、強く、ガムを噛み
ガムを痛めつけていたのだった

強く噛めば噛むほど、ガムの悲鳴は大きくなり
彼女はより強い快感を得られたからである


しばらくガムを噛んでいた彼女は
ガムがあまりに苦しそうに、いろいろと叫ぶので
彼女は笑顔で、かわいい声で
ガムに向かってこう言った

「ばかだなぁ、このオレに噛まれているんだよ?だからさ、もっと幸せそうにしてよぉ」


ちなみに
そのガムはさっき彼女が
たまたま町で見つけた男だった

男は、彼女の魔法で、ガムに姿を変えられ
そのまま、すぐに口の中に入れられたという
哀れな男なのであった

彼は、女の子に必死でお願いをした
「もう許してください・・・」と
でも彼女は
「ばーか、許すわけないじゃん、あんたはこのままオレの口の中で死ぬんだよ」
そういって、ガムを噛みつづけた
そして、彼の悲鳴は、彼女に噛まれるたびに
どんどんと、小さくなっていったのだった・・・



クチャクチャ

かわいい女の子が
ガムを噛んでいた

そして、彼女は、ガムの味がしなくなったのか
ガムを、公園の地面に吐き出した。そして

「もう、死ぬの早すぎるよ。もうちょっと噛んであげようと思ったのに・・・」

と言うと、彼女はガムを、元の人間の姿に戻し
全身がはれ上がって、真っ青になって転がっている男の死骸を
思いっきり踏み潰した

ガムだった男は、彼女に何度も踏み潰されて
そして、何度も踏みにじられて
きれいに、地面と同化してしまった

そんな男のことを、大して気にすることもなく
女の子はまた次のガムを探すために
町へ出かけていった

ちなみに、残念なことに
次のガムは、彼女が一回噛んだだけで
息絶えてしまったそうだ