[T.K.B.C.]_03

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   る可能性があります。18歳未満の者が以下の文章を認識することを禁止します。
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「え……じゃ、じゃあ、私が小人さんをもらっちゃうっていうのは……だめ?」

 絶望に打ちひしがれている俺に、再び沙織から助け舟がよこされた。どうやらこの沙織
という少女には、真希と違ってごく普通かそれ以上の優しい感情が備わっているようだ。

「もらっちゃうって、沙織、このお兄さんを飼ってみたいの?」

「う、うん」

 沙織はこくこくと頷いた。

 二人のやり取りに、前向きな期待をせずにはいられなかった。“飼ってみる”という響
きに若干の抵抗はあったものの、この際贅沢は言っていられない。ここで砂粒のように縮
小されて野垂れ死ぬよりは、自由を奪われたとしても沙織のお世話になった方が億倍マシ
だ。

「そ、それで良い! それで良いから、命だけは!」

 必死になって自分からも要求、というか命乞いをした。理不尽で屈辱的なシチュエーシ
ョンではあったが、背に腹は代えられない。

「あは……自分から飼って欲しいだなんて熱心なことね。じゃあ、これは沙織にあげるか
ら、しっかり面倒を見てあげて。もし新しいのが欲しくなったらいつでも言ってくれて良
いから……」

 冷ややかな視線でこちらを見下ろしながら、真希は優しく沙織に語りかけた。

「え、新しいのって……う、うん。ちゃんとお世話するよ」

 真希の発言に少し引きつつも、しっかりと返事をしてくれた沙織に安心した。色々と引
っかかる部分はあったものの、これでなんとか生命の危機から脱することができた。

「それじゃ、沙織の初ペットが手に入ったところで帰ることにしましょ。シャワー浴びた
くなってきちゃった。ほら沙織、早くお兄さん拾って帰るよ」

「うんー。暑いもんねー」

 再び沙織の体が上空から迫ってきた。今度はちゃんとスカートに左手が添えられており、
俺の眼前に下着を晒すことはなかった。と、沙織の挙動に気を取られている間に、俺の体
は沙織の右手が作り出す陰にすっぽりと覆われていた。この状況から察するに、これから
右手に乗ることになるのだろう。

 だが、俺の予想は外れた。沙織の手はそのまま降下し、頑丈そうな指で俺を包囲すると
そのまま締め上げたのだ。自分の身を拘束しているのが女の子の指先だとは思えないほど
に力強かった。

「がぁっ!?」

 簡単に説明すると、頭からつま先まで全身を握られた状態になった。脚から上は自由で
ありながら安定しているのだが、膝の関節にとんでもない力がかかっている。おそらく指
の位置から考えて小指か薬指だろう。あまり力の入らない類の指であるというのに、これ
だけの力をもって締め付けてくるとは。力のベクトルは本来膝が曲がる向きとは逆方向へ
と向かっていた。このままの状態で移動などされたら腱が切れてしまう。そんな俺の不安
は的中し、そのまま体が宙に浮き始めた。

「ぐあああああっ!」

 まるでプロレス技でも食らっているような激痛に、手の平だか指だかわからない肉の壁
を無我夢中になって叩いた。すると、すぐに体を締め付けていた力が緩んだ。ただ締め付
けていた力が緩んだだけだったらこれで一件落着といったところなのだが、手の平は随分
傾いていたのだった。沙織の右手は地面から浮上していた。この二つの要因から、固定を
解除された俺の体は沙織の掌をずり落ちて、公園の地面へと激突する羽目になった。

「ふおぉ……!」

 激痛の連続で声らしい声が出ない。こんな風になったのは小学生の頃車に跳ねられて以
来のことだ。あの時は骨折もしたりで色々と大変な思いをしたが、今もそれに負けないく
らい色々と大変な思いをしている。

「だ、大丈夫? 持ち方悪かったかな……」

 その通りだ。と言い返したかったが、声が出ないので不可能だった。例え声が出たとし
ても、今の立場では強く抗議することはできないが。

「あは、あはははははは」

 俺達の間抜けなやり取りを見ていたのか、真希は大きな笑い声を上げた。こっちにとっ
ては笑い事ではないというのに。おのれ。

「ほら、さっさと行くよ」

 俺が恨めしそうに睨みつけている間に真希の体が急接近し、俺の胴体を親指と人差し指
でうまく挟み込み、沙織の制服の胸ポケットへと放り込んだ。あっという間のできごとだ
った。

「ひゃっ」

 急に胸ポケットへ俺を放り込まれて驚いたらしく、上の方から沙織の悲鳴が聞こえた。
真希に持ち上げられている間は少し苦しかったが、ことが済んだ後は何の苦しさも無かっ
た。随分小人の扱いに慣れている気がした。

「手で持って歩いたりバッグに入れて移動しない方が良いよ。何かの弾みで死んだりする
かも知れないから。しっかり世話をするつもりなら、制服みたいな胸ポケットのある服を
着ないとね」

 真希が自分の左胸を親指で突いていた。突付くたびにシャツの内側で、ぷるぷると何か
丸いものが揺れていた。その動きを見て、俺は何かを思い出しそうになった。

「う、うん。そっかぁ。ごめんね」

 こちらを覗き込んでいる沙織は、申し訳無さそうな、照れ臭そうな顔をしていた。

「それにてしても、はー……私も沙織のおっぱい触りたいなぁ……ポケットに入っている
お兄さんが羨ましいわー」

「え!? な、何言ってるの!?」

 真希の発言に吹いてしまった。そうだった。思い出しそうになっていたのはそれだ。こ
こは女の子にとって大切な部分のすぐ外側だったのだ。急展開に次ぐ急展開のおかげで、
そういった性的な感情を催せる余裕がなかったのですっかり忘れていた。
 沙織の胸は真希と比べるとかなり小さい。とはいえ、それなりに膨らんでいてなかなか
に立体的である。カップ数で表すなら、Bくらいといったところか。意識し始めた途端に
愚息が成長し始めた。我が息子ながらなんて現金な奴だ。

「ほらほら、ペットをプレゼントしてあげたんだからちょっとくらい触っても良いよね?
ね?」

「え、ちょ、ちょっと」

 真希は困っている様子の沙織を無視し、且つ返事を待たずに沙織の胸を揉みしだいた。
それはもうぐにぐにと……俺の体ごと。柔らかい真希の手の平と、それよりもずっと柔ら
かい沙織の胸に挟まれて、すっかり虜になってしまっていた。ここで言う虜とは魅了され
た状態のことではなく、拘束的な意味の虜である。必死に抵抗したが、やはり全くの無駄
だった。指どころか乳にさえ敵わないとは。どんどん惨めな気持ちになってくる。

「も、もう良いでしょ? こんなところ見られたらお嫁にいけなくなっちゃうってば……」

「それはむしろ好都合。私が沙織をもらってあげる」

「えー……」

「そんなあからさまな嫌がり方をする子は……こうよ!」

「あうぅ」

 などと百合っぽい展開が進行している間にも、俺の体は柔らかい肉の布団に埋められて
いた。このままでは沙織の胸と一体化してしまう。実際のところはシャツやブラジャーに
阻まれているので単にミンチと化すだけなのだが。

「とー……このままじゃ体が火照ってきちゃうからやめてあげる。早く帰ってシャワー
浴びないとね」

 ようやく満足したらしく、俺の体も沙織の胸も真希の手の平から解放された。シャツを
透過した沙織の汗で、全身がべったべたになっていた。

「う、うん。私も汗かいちゃった……」

「感じてたからかしら? 乳首立ってたし気持ち良さそうにしてたよね」

 また吹いた。言われてみれば、シャツとブラジャー越しに何か硬い物が存在していたよ
うな気がする。

「う……あんな風にされたら誰だって立つってばー」

 股間を刺激する単語が飛び交って、居たたまれぬ気持ちになっていた。疲れてポケット
の底に座り込んでいる俺の頭の少し上には、ブラジャーの頂点がシャツの内側から存在を
アピールしており、更にその向こう側からはいわゆるヘブン状態になったTKB様が生地
を押し上げている。
 俺も年頃の男なので、こんなものを目の前にぶら下げられていては、悶々としてしまっ
てしょうがない。エロゲなら揉むか揉まないかの選択肢さえ出現しそうなシチュエーショ
ンだ。勿論ここでは揉まないが。

 と、俺がもやもやした気分に陥っていると、誰かの携帯電話からメロディが流れ出した。
沙織は一瞬反応を見せたものの、それ以上何をしようという動作は見せなかった。着信し
たのは真希の携帯電話だったらしく、ポケットの口から様子を窺うと、何やら真希が携帯
電話のディスプレイに見入っていた。せわしなく十字ボタンを連打していることからメー
ルを着信したのだとわかった。

「ごめん。急用ができちゃった。駅まで送ってあげたかったんだけど、ちょっと難しいか
なぁ……沙織、一人で帰れる?」

「え、大丈夫だよ。私そんなに方向音痴じゃないから、ここからだったら駅までちゃんと
戻れるよ」

「そう? もし道に迷ったら電話してね。用事が済んだらマッハ3で助けに来るから」

 生身の人間がマッハ3で移動したら体が持たないだろうとツッコミたくなったが、俺の
体を縮めるなどという芸当をやらかした真希なら何らかの方法で実行しかねないとも思っ
た。

「あはは。大丈夫だよぅ。絶対道になんか迷わないから!」

 後になって、この発言が一種のフラグであったことに気が付いた。自身満々で言う奴ほ
ど致命的なミスをやらかすというのはどうも本当のことらしい。要するに、道に迷ったの
だ。それも地元住民である俺がフォロー不可能な場所にまで移動してしまっていた。

「うう、ここどこ……?」

 こっちが聞きたいくらいだった……。


03. —— 女同士のスキンシップは、想像以上に激しいものがあった。 ——  了


                                   04に続く