ズドォォォン……

 突如首都圏を襲った激しい揺れ。緊急速報の類いが一切反応しない不意打ちの地震に人々がパニックになる。

ズドォォォン……

 またしても激震が街を襲う。ようやく流れてきた速報を目にした人々は言葉を失った。

-震源地、北海道東部 マグニチュード、測定不能-

 北海道最東部の街根室市…いや、根室市が存在していた場所は信じられない状態になっていた。突如街がこの地上から消え去ったのだった。街一つが消滅…とても信じられないことではあるが人工衛星が映した衝撃的な映像が世界中を恐怖に陥れた。
 成層圏を優に超える超巨大な生物…それも人型、もっと言ってしまえば身長500キロメートルにもなろうかという超巨大女子高生が日本を見下ろして仁王立ちしているのだった。それも彼女はまだ上陸すらしていない。爪先が軽く陸地に乗っただけで根室市周辺が瓦礫すら残らない程に破壊し尽くされてしまった。

『おぉーあったあった、この小さな島にたくさん小人住んでるんだね〜♪』

 鼓膜がつん裂けんばかりの爆音が北海道中に響き渡る。近くの人々はもはや何を言っているのか聞き取れない。

『それじゃあ早速〜、踏み潰しまーす♪』

 そう宣言した彼女は足を雲より高いところまで持ち上げそれを雄大な北の大地めがけて一揆に踏み下ろした。

ドゴォォォン……!!

 尋常じゃない揺れが道央を直撃した。最初の一歩が釧路を、次の一歩が帯広を、そして僅か3歩目にして札幌の街々が彼女の足に押し潰され、大地がめり込み巨大なクレーターと化していく。もう数歩歩いたらあっという間に函館まで制圧完了だ。

『わ〜あっという間に無くなっちゃった♪ 今のでどのくらい小人さん踏んじゃったんだろうな〜。小さすぎて見えないや、あはは♪』

 数百万人の命を一瞬で奪った彼女は涼しい顔をして次の目的地へ向かう。

『次は一番大きな島だね♪』

 ズドォォォン…ズドォォォン……ドッスゥゥゥン……津軽海峡を軽々しく跨いで青森市を消しとばした彼女は悠々と東北地方を南進する。政令指定都市も小さな田舎町も関係なく皆平等に彼女の足によって踏み固められ大地と同化する。空港から逃げ出そうとした飛行機も彼女の膝すら越えることなく追いつかれ爆散したが気づくことはないようだ。
 右足で宇都宮を破壊し、左足で水戸を踏みつける。既に日本の北半分は彼女の深い深い足跡クレーターだらけである。

『お〜ここが首都だね〜♪』

 さいたま市を踏み躙りながら視線は都内中心部を覗き込んでいる。最も彼女からすればスカイツリーですらごま粒以下の大きさだ。地面の色が緑から灰に変わっただけにすぎない。そしてここも直ぐに土色に変わってしまう。

『よいしょっと…それー♪』

左足で房総半島を、そして右足を三浦半島に置いた彼女は勢いよくジャンプし、そしてお尻を東京目掛けて自由落下させるのであった。


ズガガガガァァァァン……!!

 地球が割れんばかりの衝撃が日本中を襲い、関東一帯は尻もちの衝撃波で何もかもが吹き飛んでしまった。そればかりか関東から新潟にかけて亀裂が入り、文字通り本州が分裂してしまう。

『あはは、ちょっとやりすぎたかな…♪ もしかして小人さんもうみんな死んじゃった?』

 数千万の命を奪い、国家の中枢を破壊し尽くした彼女、もはや日本は彼女に滅ぼされるのを待つだけになってしまった。立ち上がって蹂躙を再開する彼女。国内最高峰の霊峰も彼女の爪先が当たっただけで溶岩を噴き出しながら醜く崩れてしまう。海沿いの工業地帯は踏み固められ、爆発の炎すら上がらない。日本の衛生写真がどんどん彼女の足跡型の土色に塗り替えられていく。
 国内第二の都市も念入りに踏み躙って破壊し尽くしたところで彼女が立ち止まった。右足を上げてぷらぷらと動かしている。


『どっちを踏んづけちゃおうかな〜♪』

 にやにやと笑いながら彼女は右足を中国地方か四国どちらに下ろすか悩んでいた。どの街もすでに都市の機能は喪失しているがあの足でクレーターになるのだけはゴメンだと人々が必死に命乞いをしている。足が自分の他に来るたびに街が真っ暗になる。助かりたい一心で叫び声も大きくなるが彼女にそんな声は当然聞こえていない。

『決めた、潰れちゃえ♪』

 彼女は右足を高知県目掛けて踏み下ろす。一瞬で四国の街も山も圧縮され、海よりも深いクレーターと同化されてしまう。しかし彼女の悪戯な目は四国を向いていなかった。 ズシャァァ……そのまま右足をずり動かして中国地方を山陽から山陰へ一気に削り取る。太平洋から日本海まで一気に新たな海溝を作った彼女、そして同時に地球から瀬戸内海の名が消え去った瞬間でもあった。

『残念でした〜誰も助かりませ〜ん♪』

 上機嫌の彼女はそのまま九州を何度も何度も踏みつけ徹底的に蹂躙しあげていた。ようやく満足したのか後ろを振り返るとかつて1億人以上が生活していた日本列島は原型が見えないほどぐちゃぐちゃに踏み躙られ、大地は裂け、あちこちに土色のクレーターが出来ていた。

『あー楽しかった〜♪ 明日はとなりのもっと大きな島で遊ぼっと♪』