「異世界明けの巨大娘」Interview with the Giantess

一度書きかけて途中で詰まっていたままPCのHDDと一緒に吹っ飛んだものをもう一度書き直し始めました。
今回は導入的なもので、巨大娘描写は少なめです。



1.病院にて

私の目の前に薄いピンクの病院服を着た少女が座っている。年の頃は10代後半。やや緊張した面持ちで上目遣いにこちらを見ている。肩口辺りまで伸ばされた髪が、軽く内向きにカールし、長めの前髪が野暮ったさを醸し出していた。顔は可愛いのに・・・。
少女の名前は、灰原シホ。ここ数日世間を騒がせている有名人だ。神隠しからの帰還者。彼女は1年ほど前に突如行方不明となり、一切の音沙汰がなかったところが、3日前にこれまた突然都内の公園で裸でいるところを保護されたという。
警察で事情聴取を受けた後、この病院に検査のため入院してきた。幸い体に異常はなかったものの、どこに行っていたのかと聞くとこう答えたという。
「異世界に、行っていました。」
そこで、この病院のカウンセラーである私の出番となったのだ。

「それじゃ、カウンセリングを始めるね。そんなに緊張しなくていいよ。ただ話を聞かせてもらうだけだからね。それと念の為にカウンセリングの様子をビデオで撮影しておくね。なあに、深い意味はないよ。これがないと、ボクがちゃんと働いていないんじゃないかって言い出すやつがいるからね。」
密室に二人っきりになる以上、変なことを言い出したり言いがかりをつけてくるヤバい奴もたまにはいる。録画は自分の身を守るためだ。
「早速、この一年間どこで何をしていたか教えてくれるかな?」
灰原シホはコクリと頷くと、ゆっくりと言葉に出した。
「異世界に、行っていました。」
「異世界?それはどんなところ?」
「ファンタジーの・・・ゲームのような世界でした。中世風の文明で、剣と魔法で怪物と戦う・・・魔法やスキルとかもありました。私はそこでは魔法使いだったんです。」
剣と魔法の異世界・・・思春期特有の妄想かな。でも何かの暗喩という可能性もある。
「異世界に行って・・・何をしていたのかな?冒険?」
「最初のうちはそうでした・・・でも最後は・・・世界を・・・破壊してしまったんです。」
「世界を破壊?どうやって?」
「私は・・・巨大娘になっていたんです。」
「きょだい・・・むすめ?」
「はい・・・山よりも大きな体になって、人々を・・・」

暖かい日差しの中、バザーを行き交う人々の足が急に止まった。
ズズン・・・ズズン・・・
遠くからなにか地響きが近づいてくる。
人々が音のする方を向くと、地平線の彼方から、人影が近づいてきていた。
ズズン・・・ズズン・・・
ゆっくりとした足取りで近づいてくるそれは、少女だった。しかも巨大な。
ズズズン・・・ズズズン・・・
こちらに近づいてくるにつて、ぐんぐんと背丈が伸びてゆく。
ズガガガガン・・・・ズガガガガン・・・
その足音はもはや小さな地震へと変わっていた。
人々は我に返り、一目散に逃げ始める。
ゴゴゴゴゴゴ・・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・
さらに激しく揺れる地面は、人ぴとを躓かせ、四つん這いになった人々は、哀れみを乞うように顔を上げた。
巨大な少女は、灰原シホは、街を見ていなかった。足元に人々がいることに気づかないかのように遠くを見ていた。
せめて人々が、彼女にとって蟻くらいの大きさであれば、気づいてもらえたかもしれない。だが、彼らの大きさはダニ以下だった。立っている人の目の高さから見える大きさではなかった。
そして、大きな暗がりが彼らを覆う。空は一面、足の裏という肌色の天井で覆われてしまっていた。
街一つが、彼女の片足にも満たなかった。
そして、空が、落ちてきた。

はっと気がつくと、意識は病院に戻っていた。
何だ今のは?白昼夢?一瞬眠ってしまっていた?
「えっと、巨大娘・・・だっけ?つまり巨人になって、色々と壊して回ったと。まあ、大きければそれだけで脅威だし、知らずしらずのうちに大事なものを壊しちゃうこともあるかもね。」
私は急に高鳴った動悸をさとられないよう、平静を装いながらコメントした。だが彼女はとんでもないことを言い出した。
「いえ・・・知らずしらずではありませんでした。私は、自分の意志で・・・自分でそうしようと思って、壊しちゃったんです!」
「ど・・・どうして?」
急に語気を強め始めたシホに、狼狽しつつ訪ねた。答えは明快だった。
「気持ちよかったからです!」

人々の頭上のはるか上を、巨大な少女の笑顔が通り過ぎてゆく。何かを期待するような、こちらを嘲るような、複雑な笑みだった。
ただ巨大であるだけでも驚異であるのに、こちらにある種の悪意を向けてきているのである。
しかし、人々には彼女を咎めるすべも、とどめるすべもなかった。
やがてゴウンゴウンと巨大な何かが近づいてくる音が聞こえてきた。
奥の方から巨大な2つの紡錘が、シホの乳房が、街に近づいてきていた。
地の果てへ伸びる2本の腕に支えられた上体から吊り下げられたその球体は、頭上を通り過ぎる頭部の後を追って街に近づきつつその高度をぐんぐんと落としていった。
そしてその尖頭が、ツンと尖った乳首が、外壁上の見張り塔と接触した。
見張り塔はその役目をいかんなく果たした。次にどのようなことが起こるかを、街中の人に示したのだ。自らがあっけなく崩れ去ることによって。
すぐさま肌色の塊が、外壁を押し倒し、家々を飲み込み拡がってゆく。
そして広がりきった状態で、街全体を巻き込みつつ前進する。石造りの頑強な庁舎も、その歩みをとどめることはできない。
「あんっ♪」
反対側の頭上から、大きな嬌声が聞こえてきた。
少女は感じているのだ。
何千という建物を、その何倍もの人の命を、惨めに不条理に奪い去っていくことに、性的興奮を得ているのだ。
大地に深い傷跡を残して、シホの胸が離れていく。
少女がそのたわわなおっぱいで大地をひと撫でしただけで、ただそれだけで、一つの街がこの世界から消滅したのだった。

気がつくとシホが不思議そうにこちらを見ていた。
しまった、また意識が飛んでいたか?
私は慌てて相槌を打った。
「気持ちよかったからとは・・・また、大胆だね。」
姿勢を変えるふりをしながら、その胸元をチラ見する。ゆったりとした病院服を下からぱっつりと突き上げるほどの爆乳だ。白昼夢で見たのと同じくらいの・・・。私はいつから彼女の胸の大きさに気がついていた?意識には登らなかったけれど、視界には彼女の胸が写っていたということか。
「でもまあ、たしかにそんな巨大な存在が実在していたら、国といったものは成り立たないだろうね。」
そういう意味での、世界を破壊した、か。
「そうです・・・人がいなければ国も存在できませんから。」
ん?なんか齟齬があるような・・・まあ、いいか。
「それで、どうしてそんなことになったのかな?」
最近の流行りだと、異世界に転生したボーナスで巨大化スキルゲット!とかだろうか。彼女がそのような話を読んでいるかどうかはわからないが。
「・・・少し。長い話になるのですが。」
「かまわないよ。まだ時間はたっぷりある。」
「わかりました。それでは・・・」
そうして彼女は語り始めた。
・・・数奇で淫靡な物語を。