巨鎮隊 インターミッション1

ある日、巨鎮隊支部の一室で、遊撃隊の男たちはダラダラと過ごしていた。そこへネリーが慌ただしく駆け込んできた。
「みなさん、ニュースですよ!大ニュース!」
「なんだよネリー。いくら声を大きくしても背は大きくならないぞ。」
ハサンがめんどくさそうに体を起こしながら言った。
「それ関係ないですよね?つながってないですよね?今ネリーのこと無意味にディスったですよね?」
「まあまあネリーくん、君の体のように些細なことは気にせず、その大ニュースとやらを教えてくれないかい?」
「え、あ、うん・・・えっと、新しい装備が納入されたですぅ。」
ウォルターの丁寧な言い回しに毒気を抜かれて、ネリーはおとなしく答えた。
「それで、博士が呼んでるですよ。」
「ノーラ博士がお呼びとあれば行かないわけにはいくまいの。」
ギャランが声を上げると他の面々も重い腰を上げた。

4人が倉庫兼トレーニングジムに着いたとき、部屋の真ん中に置かれた木箱の周りに隊員たちが群がっていた。彼らは皆、手に何やらブーツのようなものを抱えていた。だがその形は奇妙であった。普通のブーツの靴底のさらに下にリンク機構があり、その先に地面と接する真の靴底があった。真の靴底とブーツのスネのあたりは弓のように反った細い板で繋がれていた。
遠巻きに隊員たちを眺めていてノーラ博士は、遊撃隊の面々を見つけると軽く頷いた。
「これで今日ここにいる隊員は揃ったみたいね。それでは、説明を始めるわ。」
博士はそう宣言すると、手に持っていたその奇妙なブーツを掲げた。
「これはジャンプシューズという、ヒトの走破能力と跳躍力を飛躍的に高める道具だ。テストでは、時速30km/hで走り、3mの高さのジャンプができたと言う。」
隊員の間から「おぉ~」というどよめきが上がった。
「これをうまく使いこなせば、直立した状態の巨女の胸部や首筋にマジックハンドで手を触れることができるようになるだろう。もう、歩き回る巨女を指を加えてみているしかない、なんて状況はなくなるわ。」
博士の言葉にどよめきが歓声に変わった。
「これでネリーも速く走れるようになるな。」
「えぇ~。いやですよぅ。これって速く走れるかわりに倍以上疲れるってやつですよねぇ。ネリーは使わないですよぉ。」
「そうか?それじゃまた俺が運んでやろうか?」
ハサンが手をワキワキさせながら言った。
「ヒッ。せ、セクハラですぅ!」
そこへウォルターがジャンプシューズを携えてやってきた。
「まあまあ、ネリーくん、君もこれを履いてみて、我々と同じ目線から物事を見てみるのもいい経験になるんじゃないかな。」
「ネリーはそこまでちっちゃくないです~!この靴を履いたらみんなよりももっとずっと背が高くなります~!・・・ところでウォルターせんぱいは靴どうするんですか?」
「まあ、私はすでに空飛ぶ魔法の靴を使っているからね。こっちのシューズは要らないかな。」
ウォルターの靴、エアステップは空中でジャンプできるという魔法の靴だ。空中で勢い良く足を踏み込むと、エアステップが空中にとどまり上体を上に押し上げることができる。ただし、反発力を生むのは勢い良く踏み込んだときだけなので、空中に居続けるには激しく足踏みする必要がある。普通の人間なら数秒間空中にいることができるかどうかというところだった。しかし、ウォルターはフィジカル・アデプトであり、普通の人を超える脚力を持っているため、あたかも空を駆けるように空中を移動することができるのだ。
フィジカルアデプト、それは魔法の力で肉体能力が強化された人間である。ネリーの使うような通常の魔法を行使する能力は持たないが、先天的に魔法の力が肉体の強化に流れており、常人を遥かに超える能力を持っている。遊撃部隊の他のメンバーもフィジカルアデプトであり、ハサンは腕力、ギャランは耐久力(頑丈さ)が強化されている。
一方で、ネリーもただの白魔法師ではない。ネリー自身の魔法力はそれほど大きくないが、魔力晶を用いることによって、強力な大魔法を矢継ぎ早に行使することができるのだ。特に蘇生魔法(レイズアップ)を軽々と使いこなせるのはネリー以外にはほとんど居なかった。これがネリーが遊撃部隊に配属されている理由でもある。
「さて、今回届いたのはこれだけではない。もう一つ届いている・・・コレこそ、本物の兵器だ。」
ノーラ博士が自分の後ろにある白い布がかけられた巨大な物体を指差しながら言った。それは巨大な台車に乗った細長い物体だった。高さ2mほど、長さ7mほど。広いトレーニングルームだがその物体のせいで狭く感じられた。
「博士、それはなんですかぁ?」
「ふっふっふ・・・コレはこの私自らが発明した新兵器だ!」
博士がパチンと指を鳴らすと、傍らに居た事務員たちが白い布を剥ぎ取っていった。その下には、真っ黒な鋼鉄でできた巨大な円柱が横たわっていた。
「これは・・・大砲ですぅ?あの人間大砲よりもおっきい・・・」
ネリーが呆然と呟く。
「そう、これはかつて攻城砲として使われていた世界最大の大砲を改造した兵器よ。」
「大砲にしては形が・・・なんだかゴツゴツしてるですし・・・あれ?さきっぽに穴が空いてないですよ?」
ネリーが興味深そうにソレの周囲を見回し、その先端に手を触れた。その様子を男たちはニヤニヤしながら見つめていた。
「そう、これは大砲と違い弾を打ち出すのが『主な』目的ではない。この『形状』こそがこの兵器の役目なのだ!」
「かたち?」
博士に言われてネリーは改めてソレを見回した。ややテーパーがかかり先端に行くにつれ細くなっていく主軸、そこにランダムに散りばめられたゴツゴツとした突起、先端部分は一度段差がついて太くなりその後なめらかな半球面となっている。
「ていうか、ネリーはこの前散々見ただろ?」
ハサンが呆れたように言った。
「え?えっ?・・・あ!まさかっ!?」
それに気がついたネリーは慌てて後ずさった。
「そう、コレは対大型巨女用の超巨大ディルドだ!!」
「せ、セクハラです!超巨大なセクハラですぅ~!」
「何を言っているのかしら?巨大化した女性を速やかに気持ちよくさせるのが私達の使命よ。そのためには、女性を気持ちよくさせる器具を巨大化させるのは、当然の帰着。何も不自然なところはないわ。よって、コレはセクシャルハラスメントには当たらない。」
「う、う~~~!!!」
博士にかんたんに丸め込まれたネリーは、ただ唸り声を上げるだけだった。
「じゃが博士、こんな巨大なイチモツ、どうやってあそこにブチ込むんじゃ?」
ギャランがその巨大なアレをバンバンと叩きながら言った。
「心配ないわ。巨女自身も気持ちよくなりたくてたまらないのだから、通り道に置いておけば自然と使用するに決まっているわ。」
「そんなわけないです!そんなわけないですぅ!・・・ネリーだって・・・あ、いや、女の子が全員ソレを使った経験があるわけじゃないですぅ!」
「まあ、ネリーの言うことももっともだわ。もちろん、この私に抜けはないわ。こっちへ来てみなさい。」
そう言って博士はギャランとネリーを巨大ディルドの根本へとつれて行った。そのディルドの底の部分には、下の部分にステップが、手の高さの位置に取っ手が2つ付いており、人が張り付くような形で乗ることができるようになっていた。
「この取手の部分から魔力を送り込むことで、コイツを浮かせられるわ。そしてこのレバーで動きをコントロールすることができる。それほどスピードは出ないけれど、アソコに押し込むにはちょうどいいくらいよ。」
そう言って博士は、取っ手とステップの中間ぐらいの位置にあるスティックを指差した。
「えっ?なんだか位置が低くないですか?それに両手が塞がっていたらレバーを動かせないですよぅ。」
「だから、男だったら太ももで挟み込んで、女だったらアソコにくわえ込ん・・・」
「セクハラですぅ~~~!!!」
みなまで言わせずネリーが突っ込んだ。
「いえいえ、これも必然なのよ。繊細なコントロールが必要なので、繊細なところでコントロールする、何もおかしいところはないわ。」
「嘘です!嘘です!大嘘です!もうだまされないですよっ!」
「まあまあネリーくん、こういうのはセクハラとは言わないよ。」
激昂するネリーをウォルターがなだめた。
「じゃ、じゃあ、なんていうんですかぁ?」
「こういうのは、お下品、というんだ。」
「変わらないです!違わないです!同じです!・・・もうっ、とにかくネリーは絶ッッ体にコレを使いませんからねっ!」
ネリーは腕を組んでプイッと顔を背ける。
「大丈夫。コイツはそれほど魔法力のないものでも動かせるから心配は要らない。まあ、このレバーの高さはネリーのに合わせてあるけれど・・・」
「な!ななななな・・・・」
ネリーがぎょっとした顔で口のあたりと股のあたりを手で抑えた。
「なんで知ってるのかって?ふふん、私の眼力を持ってすれば、そのゆったりとした服の上からでも体型を推測することは可能だわ。股下の寸法から、小柄な割に意外と大きなその胸のサイズまで、ね。」
「あ、やっぱりか。道理でこないだ持ったときに意外と弾力があるなと・・・」
男どもの好奇の目線がネリーに向けられた。
「セクハラァ!!」
とりあえず、ネリーはハサンを殴りつけた。

「ところで、一気に装備が充実したですね。あのケチな指令にしては珍しいですぅ。」
数日たって落ち着いたところで、ネリーは気になっていたことをノーラ博士に訪ねた。
「それはね、先の男爵様の遺族が気前よく遺産を寄付してくれたからよ。・・・くくく」
「ふ~ん・・・て、なんで悪い顔してるですかっ!」
ネリーの方を見ながら博士はにやりと笑っていた。
「始めのうちは渋っていたのだけれど、男爵のせいで被害が拡大したと書いた報告書を見せたら急に態度が豹変したわ。」
「わっ。それで最終報告書では、男爵が美化されてたんですかっ!・・・大人って・・・大人って・・・」
まだ幼さの残るネリーにとってこの巨大化女性鎮圧抑制特殊部隊での性活、いや、生活は、初めてのことばかりなのであった。

つづく