闇妹外伝2 ~恵那の愛情物語 その4~

それからわたくしは、世界を滅ぼすために、目についた街や村を全滅させていきました。
しかし、いくら100倍の大きさの巨大娘とはいえ、この広い世界を滅ぼすのは大変そうです。
どうしたら効率的に滅ぼせるかを考えていると、目の前に光の女神ルクスが現れました。
どうやらわたくしの存在に恐れをなした人間と魔族が手を取り合って、彼女の封印を解いたようです。
わたくし、テネブラエとルクスは争う定め、わたくしが戦闘態勢に入ろうとすると、
「さぁ、わたしとひとつに戻りましょう。今こそ世界終焉の刻。」
と女神が囁きました。
同時に、ルクスの方へわたくしの身体が、意識が、存在が、引き寄せられていきました。
いえ、彼女の方も引っ張られて・・・2柱の神が互いに引き寄せられ、その存在が混じり合っていきました。
・・・
「ようこそ戻ってこられました、恵那さん。」
わたくしの頭の中に女神の声が響きます。
ルクスではない、わたくしとお兄様をこの世界に連れてきた方の女神です。
「神に転生して、ここまで人の意識を保っていられるとは、素晴らしいですね。」
あまり褒められていないように感じます。
女神がいるということは、あれで世界が滅びたのでしょうか?
いえ、それよりも、今のわたくしの状態は?
いつものように白い世界に存在していません。
「あなたはまだ、テネブラエとして存在しています。今はテネブラエとルクスが融合して、わたしという存在に戻っています。あなたはわたしの一部となっています。」
ええと、テネブラエとルクスはもともと創造の女神の一部であって、それが今一つに戻ったということ?
「そうです。そしてこのままではあなたの精神は私と混ざり合って消えてしまうでしょう。」
え・・・?それは困ります。まだお兄様と本格的にイチャイチャできていません。
「そこで、あなたに選んでもらいたいのです。テネブラエから出て行って、また新たな転生先を見つけるか、もしくは、わたしの代わりにこの世界の創造と破壊を司る神となるか。」
神に?あなたと立場を入れ替わるということ?
「そうです。あなたはすべてを知り、すべてを思うがままにできるでしょう。ですが、それにあなたの精神が耐えられるかどうかわかりません。人としての感情、貞夫さんへの執着、それらを失ってしまうかもしれません。」
お兄様への愛を失ってしまうということ?
お兄様を見てもなんとも思わなくなってしまう・・・それは、嫌です。
そんなの、もうわたくしではありません。
「ですが、テネブラエとなっても人の意識を保っていられたあなたなら、もしかしたら耐えられるかもしれません。わたしは、あなたがわたしの立場になったとき、どのような選択をするのかとても興味があります。」
それは・・・わたくしが異世界人だから?
「はい。わたしが作ったものであれば、過去も、未来も、全て私は知っています。ですが、あなたと貞夫さんのすることは私にはわかりません。とても興味深いのです。」
そこまで言われると、賭けに乗ってみたくなります。
それに、大きな意識に飲み込まれても、人としての心を切り離して保護する方法を、テネブラエで学びました。
「わかりました。これからは、わたくしが、あなたのかわりに、神となります!」
その瞬間、わたくしの視界がひらけました。

星空を背景として、わたくしは宙に浮いています。
わたくしの手のひらに、小さな円盤が載っています。
海に囲まれた大陸の模型。
それが『世界』だとわたくしにはわかりました。
疑問をいだいた瞬間に、その答えが頭の中に浮かんできます。
模型ではなく、本物の世界。
そこには、10億人近い、人と魔族が実際に住んでいます。
わたくしは、終焉の女神として、途方もない大きさでこの世界に顕現したのです。
その人達からも、わたくしの上半身が空の彼方に見えています。
世界が混乱に包まれていきます。

壊したい。
壊したい。壊したい。
壊したい。壊したい。壊したい。
壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。
壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。
壊したい。壊したい。壊したい。邪魔です。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。
壊したい。壊したい。壊したい。新しい世界のため。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。
壊したい。壊したい。壊したい。古い世界は。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。
壊したい。壊したい。壊したい。滅びてください。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。
壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。壊したい。

心のなかで生まれた破壊衝動が、あっという間にわたくしを飲み込んでいきます。

開いていた手のひらが、知らず知らずのうちに閉じてゆきます。
指が世界の上を覆い、世界中が恐怖に包まれます。
でも、
とめられない。
とめられません。
女神の根源欲求のまま、わたくしは世界を握り潰してしまいました。
にぎにぎしてすべてをすりつぶします。
その一瞬で、世界は滅びました。
10億の人が、わたくしの手のひらで。

必要のなくなった星空が消え、あたりは真っ白な光に包まれました。
ああ、よかった。
これでまた新しい世界を作ることができます。
ですが、そのまえに・・・
わたくしは女神の姿になって、お兄様に会いに行きました。
次はグッティーに転生するので、そのナビゲートです。
・・・あれ?グッティーではなくて、魔族に転生される?
あぁ!魔族ににどのような駒があるのか確認されるのですね。
転生先は多いに越したことはありません。さすがお兄様です。
転生先が決まり、お兄様の魂は待機状態になりました。
さぁ、いよいよ世界の創造です!
本来ならわたくしの自由に世界を作ってよいのですが、下手に歴史を変えてしまうとお兄様の転生先が生まれてこなくなってしまいます。
仕方ありません。以前の女神が創造したものと寸分たがわぬ世界をわたくしも創造します。
星空の背景と太陽を用意し、円盤状の大地を中心に浮かせます。
大陸を形作ったら上から雨を降らせて海を作ります。
鉱物などの資源を大地にばらまいて、植物や動物、人類を配置します。
そして最後に『時の流れ』を作り出すと、世界がゆっくりと動き始めました。
あっと、忘れないうちにわたくし自身をふたつに分けて互いに封印しあわなくてはいけません。
そうしないと、せっかく創造したこの世界をまたすぐ破壊してしまいたくなってしまうからです。
困った習性ですわ・・・。
ふたつに別れたわたくしたちは体裁を整える程度に争ったあと、互いに封印しあって眠りにつきました。
お兄様が転生して来られるまでは、ルクスとテネブラエの双方とも、前回の世界と同じようにして人と魔族を導かせました。
この世界では、神はサイコロを振りませんので、前の世界と同じ行動をすれば、全て前と同じ結果になりました。
そしていよいよ、お兄様の誕生です。
トカゲ姿のお兄様も素敵です!
わたくしの手足である魔王と一緒になって世界を征服するのも悪くないかもと一瞬思いましたけれど、お兄様にはお兄様の目的がおありですので、邪魔しないよう、前回と同じ行動を心がけます。
お兄様が立派に育たれた頃、魔王継承の儀で前回と同じ乳魔の娘を魔王にしました。
そして、以前のお兄様の転生先の勇者にって・・・あれ?
お兄様、魔王を避けているのかしら?
それでしたら、別の方に人間領への侵攻をお願いすることにしましょう。
さて、お兄様はどうされるのかしら?
あら?お兄様も人間領へ?
何かを待っているのかしら?
えっ?マリエル?
なんと、お兄様はわたくしが最初に転生したマリエルを悪党の手から救ってくださったのでした。
さすがですわ、お兄様!
わたくしが困っていると、いつでも助けに来てくださる。
今回はわたくしはそこにいませんでしたけど、お兄様の愛は十分に伝わりましたわ。
その後も、お兄様は人間領にとどまり続けました。
もう、お兄様のなされたいことは全て済んでしまったのでしょうか?
もう何年も同じところにとどまっています。
・・・それでしたら、もう頃合いでしょう。
わたくしは魔王にテネブラエの封印を破壊させました。
そして、復活したテネブラエにすぐに魔王城へと向かわせます。
テネブラエのペルソナは、挨拶代わりに王都を破壊したかったようですけれど、お兄様を待たせてしまっていますので、その気持ちはグッと我慢します。
魔王城でルクスの封印を破壊して、わたくしたちはひとつにまとまり、ふたたび、創造と破壊の女神に戻りました。
前回の終焉のときには大きすぎましたので、少しサイズを調整して世界に顕現します。
一糸まとわぬ恵那の姿で、
およそ100万倍のサイズで、
胸の真下にお兄様が来る位置で、
空中にうつ伏せに寝そべるようにわたくしは出現しました。
空いっぱいに広がるわたくしのおっぱいに、お兄様はとても興奮されているようです。
よかった、喜んでもらえた!
なら、つぎは巨大娘の強大さをお見せいたしましょう。
わたくしはゆっくりと高度を下げ、地面に近づいていきました。
ザリ・・・
乳首の先に砂糖の塊が触れるような感触がしました。
そこに、人間たちの街があったようです。
一気に数万人の方が亡くなりました。
それはただの数字ではありません。
わたくしは、そのひとりひとりの顔と名前、人柄などを思い浮かべることができます。
マリエルだった頃の知り合いも何人もいました。
それが、わたくしのおっぱいの先っぽがちょっと触れただけで簡単に・・・
なんて素敵な力でしょう♪
ああ、でもいけません。
乳首の衝突で生まれた衝撃波がお兄様に向かっています!
あれに巻き込まれたら、お兄様は余計な痛みを感じてしまいます!
ですので、わたくしはとっさに胸をぐいっと地面に押し付けました。
わたくしのおっぱいはむにゅっと広がって大地を覆いました。
200万人!
いくつもの街を巻き込んで大量虐殺です♪
目的どおり、お兄様も苦しむことなくこの世界を去ることができました。
では、もうこの世界も用済みです。
わたくしは胸を地面に押し付けたままどんどん巨大化していきました。
世界が小さくなっておっぱいの下に潜り込んでいきます。
おっぱいと地面との交差でできる2つの円。
その円周上でたくさんの命が失われていきます。
その数はわたくしが大きくなるにつれ加速度的に増えていきます。
大地を形成する円盤が、わたくしのおっぱいと同じ大きさになったところで、世界から生命はいなくなりました。
世界の終わりです。
お仕事完了!
さあ、次の世界を用意しましょう。
おや?お兄様は女神を疑っておられるようですね。
さすがお兄様、ほぼ正解です!
すぐに中身がわたくしであることにも気づかれるでしょう。
お兄様が女神のおっぱいが見たいとおっしゃるので、女神のペルソナは反対していますが、わたくしの横槍で胸を晒します。
お兄様、だらしない顔をしないでください・・・
たしかに、女神の胸は均整の取れた美乳だと思いますが、大きさは今のわたくしの方が大きいのですよ。
早くお兄様に『今の恵那』の姿を見てもらいたいです。
お兄様はふたたびグッティーという勇者に転生して、英雄への道を進まれるそうです。
それなら、英雄にふさわしいシナリオを用意して差し上げなければ。
それに、英雄となったお兄様の傍らにいるのは、わたくしでなくてはなりません。
忙しくなりそうです。
創造と破壊の女神は全知全能ですが、それは世界の始まりと終わりのときだけで、世界が動き出したときにはルクスとテネブラエに分かれて封印されていますので、世界に干渉する手段は限られています。
使えるのは、ルクスによる『お告げ』とテネブラエに選ばれた『魔王』だけ。
わたくしは使い勝手の良い魔王を酷使して、世界を調整していきます。
歴代魔王のペルソナは、なんだかもったいないのでテネブラエの中に残しておきました。
そんなペルソナの数が100を超える頃、いよいよお兄様が誕生されました。
わたくしはお兄様のそばに並び立つため、八方手を尽くしました。
幼馴染の女の子を狂信者集団にさらわせ、魔王の手で魔王城までつれていきます。
途中、ぎゃあぎゃあとうるさいので魔法で精神を破壊しておきました。
どうせすぐにわたくしの分身体を入れるのですから、問題ありません。
そして継承の儀でわたくしの力を入れ込んでから、人間領にとって返します。
人さらいのアジトに戻って、わたくしがいなかったあいだの記憶を改ざんして、元のさらわれた子供の立場に収まります。
ここまで3日。
その日の夜に、お兄様たちがわたくしや他のさらわれた子どもたちを助けに来られたのでだいぶギリギリでした。
こうしてわたくしはリリアナとなってお兄様とともに歩み、その心を支え、癒やしとなってきました。
もちろん、男女の関係も持ち放題です。
英雄の常として、お兄様は色を好まれる性質がありますので、お兄様の眼が他の女性に向かないよう、リリアナの身体で釘付けにします。
魔王の力でほぼ淫魔となっているリリアナの身体は、お兄様にとても満足していただけたようでした。
わたくしとお兄様のペアは、最も優秀な冒険者として、国中に名を馳せることになりました。
お兄様とわたくしですもの、当然の結果と言えましょう。
あとは適当なところで魔王であることを明かし、人と魔族の架け橋として結婚すれば、人と魔族を和解させた勇者として、グッティーの名は歴史に刻まれることになるでしょう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・そういうシナリオでしたのに。
お兄様は何が気に入らないのでしょうか?
突然、本物のリリアナを出せとおっしゃいました。
この身体はリリアナのものですし、リリアナの魂もわたくしが飲み込み、継承の儀よりも前の記憶も感情もすべて持っておりますのに、わたくしをリリアナと認めないとは、どういうことでしょうか?
お兄様はわたくしの言葉に耳を貸さず、わたくしを敵だと誤解されたようです。
仕方ありません。ここは予定を変更して、プランB『邪神復活阻止』シナリオにいたします。
今まで勇者を騙し、人間領に潜んで邪神復活の準備をしていた魔王を、すんでのところで勇者が阻止するという流れです。
愛し合う二人が殺し合うという悲しき物語、わたくしは好みです。
お兄様にあらすじを伝え、わたくしは王都にテレポートしました。
大神殿の封印の間に潜入して準備をします。
ここに来るまでに壊した罠を修理しました。
封印が壊れかかっているように見せかけるため、ウェザリングをしました。
実際のところ、今回はルクスとテネブラエの両方ともわたくしですので、封印は見た目だけのもので、いつでも中から破って出られるのです。
もちろん、そのような状態では女神の破壊欲がたまって来ると、すぐに外へ出て行って世界を終わらせたくなるのですが、そこはわたくしのお兄様への愛で欲望を抑え込んできました。
さて、準備は万端。
お兄様、いつでもいらしてください。
・・・
・・・
お兄様のつれてきた方々を見て、わたくしは少し驚きました。
かつてのグッティーさんの仲間やお兄様が以前転生した英雄や魔族の方。
みなさんが王都に集まっているなんて。
これがお兄様の運命を手繰り寄せる力なのでしょうか。
ですが、お兄様、淫魔を相手にするのに男性だけで挑むのは、あまりに無謀というものです。
ほら、リリアナのテンプテーションでみなさんメロメロになってしまいましたわ。
まったく、殿方というのは♡
・・・あら?横槍?
魔王候補だった子たちがどうしてここに?
マリエルまで!?
流石はお兄様!その運命を手繰り寄せる力は本物です。
みなさんで力を合わせてリリアナに刃向かってきまた。
男性たちはおっぱいをちらつかせて応援する乳魔にハッスルしてしまっています。
まったく、殿方というのは!!
さらにはリリアナのペルソナが勝手に浮かび上がり、体のコントロールを奪っていきました。
ああ、お兄様の魅力は神の予想をも上回ります。
時空を超えて失われたはずの記憶さえ蘇らせました。
流石は、わたくしのお兄様です。
お兄様の一太刀にリリアナは倒され、めでたくハッピーエンドです。
これで、勇者グッティーの名は人と魔族の力を結集し、邪神の復活を阻止した英雄として、末永く讃えられるでしょう。
これで、おしまい。
これで・・・おしまい?
わたくしの中で、テネブラエのペルソナにフォーカスが集中していきました。