DLsite:https://www.dlsite.com/maniax/work/=/product_id/RJ364132.html
FANZA:https://www.dmm.co.jp/dc/doujin/-/detail/=/cid=d_220976/

---------------------------------------

 誠也には綾香という幼馴染の少女がいた。二人はもう十年近い長い付き合いがある。どちらかが相手を異性として意識するのも、当然のことだろう。同時に、小さい頃から異性の遊び相手として接してきたので、相手を異性として見れなくなることもまた、当然起こりうることだ。

 それは誠也に恋慕する綾香にとっては残酷なことであった。しかも、誠也の周囲には別の異性の存在がちらつき、いつ彼女ができるとも知れない。もし彼に恋仲の相手ができたらと思うと、綾香はろくに眠れない日すらあった。

 だから彼女は禁忌に手を染めた。
 他の誰でもない、恋して止まない幼馴染を手に入れるために、


「それで、相談したいことってなんだよ」

 数年ぶりに入った幼馴染の部屋で、誠也は用意された座布団にどっかりと座った。その対面に座っている綾香は、そわそわした様子で口籠もっている。
 普段通りと言えば普段通りの様子だが、長年の付き合いがある誠也には、確かに何かしらのことで困っているのだとわかった。

「あのね、その……将来についてなんだけど」

「そんなのセンコーに話せばいいだろ」

「ううん……これは誠也に聞いてほしいの、お願い」

 どうにも不自然なことを言いながら小さく頭を下げて頼んでくる幼馴染に、誠也は溜息をつきながらも「わかったよ」と承諾の意を示した。
 すると一転して彼女は、ぱっと明るい笑顔を浮かべた。これも昔から変わらないなと誠也は内心でごちる。

 綾香は奥手の態度や地味な服装から、周囲にはあまり認知されていないが、きちんと化粧をして服装を整えたらそこらのモデルにも負けないだろうと男の誠也が認める容姿をしている。

 そんな彼女が卑屈さをなくした笑顔をすれば、誠也も少し照れが入る。

「にしても、随分と部屋が女っぽくなったな」

 ごまかすように部屋を見渡した誠也はそう言った。それからもう一度タンスや机の上を見やる。
 数年前、最後に入ったときは少女らしさより子供らしさが目立つような部屋だったのだが、成長による心境の変化か、女の子らしい装飾品などが増えている。

 部屋に続いて対面の少女をよく見れば、綾香の服装は普段に比べると妙に気合が入っていた。
 地毛の茶髪のショートヘアに度が薄い眼鏡をしていて、一見すると地味な印象を受ける彼女だが、実際のところはやはり可愛らしい顔立ちをしている。出かけるときにでも着る類の洋服が、それを際立たせていた。

 昔から度々「コンタクトに変えた方が美人に見えるぞ」とからかい半分で助言しているが、綾香は「これは誠也がくれたものだから」と言って苦笑しながら毎回聞き流している。
 プレゼントした重宝人の誠也からすれば、そんなにこだわることかと疑問に思えるが、彼女にとっては譲れないことであった。

 して、彼女は体も年相応に発達している。ほっそりとは言えないが、それでもくびれがあるウエストとヒップに、バストは豊満寄りで服を盛り上げて存在を主張する程度には大きい。
 子供の頃のようにボディタッチすることはないが、もし触れることがあれば本人の物腰と同じくらい柔らかいのだろうと感じさせそうな印象があった。

 誠也も評価する隠れ美人である幼馴染だが、実際には歳の近い妹を相手にしているのに近い感覚を持っていた。
 昔から自分の後ろをちょこちょこと着いてまわる泣き虫で引っ込み思案の綾香を、誠也は兄貴分として引っ張り続けていた。故に、互いの距離が近すぎて異性として意識し辛い。

「んで将来についてって、進路について何か考えてるのか」

「うん……でも、進学とかじゃないんだ」

「ああ、お前くらい頭が良かったら困らないよな、勉強ができない俺と違って」

「誠也だって、頑張ったらできると思うんだけど……」

「いいだろ別に、それより進学の話じゃないなら将来について何があるんだよ」

「それは、そのう……」

 またも言い淀んでもじもじとし始めた綾香が話出すまでたっぷり十秒待って、静寂に耐えかねた誠也が「あのなぁ」と先に口火を切った。

「そうやってウジウジしてても話が進まねぇだろ、こういうのはさっさと言っちまった方が楽になるぞ」

「そ、それはわかるんだけど、その、恥ずかしくて……」

「恥ずかしいって、今更俺とお前で気にするようなことあるか? 昔は一緒に風呂入った仲だろうが」

「思い出させないでよ……それも恥ずかしいよ」

 顔を赤くした綾香はそれで羞恥に区切りがついたのか、すうと深呼吸をして覚悟を決めた表情で誠也の顔を見据えた。その真剣な表情に誠也も顔を引き締めて応じる。
 昔から綾香の困りごとを解決してきた誠也としては、これから相談されるであろう悩みもきちんと解決してやるつもりだった。

「先に誠也に確認したいことがあるんだけど、良いかな?」

「別に良いけど、なんだよ」

「誠也って、今は彼女、いないよね?」

「……うん?」

 想定外の質問が来て、誠也はしばし硬直した。そんな彼を無視して、綾香は話を進める。

「前に付き合ってた人とはもう別れてるし、今はその、フリーってやつだよね?」

「うん、まぁ、そうだけど」

 誠也としてはそれなりに悲しい出来事だったことなのだが、数ヶ月前から独り身であることには違いないので肯定する。その返事を聞いて、綾香は安堵するように息を吐いた。

「良かった……私としては、その方が嬉しいから」

「何が嬉しいんだよ、俺としてはすごく傷付く話なんだが?」

「あ、ごめん……」

「で、俺がフラれたのとお前の悩みって関係あるのかよ」

 少しブスッとした不機嫌顔になった誠也に、綾香は呆れたような表情になった。ここまで言ってもこの幼馴染は綾香の気持ちに気付いていないのである。
 朴念仁なのか、やはりこちらを異性として見ていないのか、どちらにせよ少なからず存在した少女としてのプライドは傷付いた。

 これはもう、先に誠也が言ったようにずばっと本題を伝えた方がいいだろう。綾香はそう判断して意を決した。

「私はね、誠也のことが……」

「俺のことが?」

「好きなの、ずっと昔から……」

「いや、知ってるけど」

 思いもしていなかった返答に「へ?」と間抜けな声を漏らしてしまった。鈍いように見えて、誠也は自分の想いに気付いていたというのだろうか? 事実を確かめるために口を開こうとしたが、それより先に誠也が残酷な一言を告げた。

「幼馴染としてだろ? 俺もお前のこと好きだぜ」

 にっと、いつもかっこいいと思っていた笑みをして言った誠也の言葉で、綾香は自身の心にぐさりと鋭い棘が深々と突き刺さった感触を覚えた。

 結局のところ、相手を異性として意識していたのは綾香だけだったのだ。誠也からは恋愛対象とすら思われていない。

 いや、正直に言えば綾香も薄々そうだろうと察していたのだ。それでもその現実を認めたくなくて、僅かにでもそうではないという可能性に賭けて今日、彼を部屋に呼んで告白した。

 結果として綾香の懸念は見事なまでに的中していて、誠也はまだ「それが何か関係あるのか?」と首を傾げている。その態度を見て、怒りを通り越した感情から綾香の中にあった最後のタガが外れた。

「……うん、すごく関係あることなの」

 平坦になった声音に、誠也は何かまずいことを言っただろうかと顔に疑問符を浮かべる。その間に彼女はすっと立ち上がり、タンスの棚を引いて中にしまわれていた道具を取り出した。

 それは表面に何も書かれていない銀色の筒だった。上についている噴霧用の器具からして、何らかのスプレーだとわかる。殺虫剤かヘアスプレーくらいのサイズで、誠也はそれが何らかの化粧道具なのかと予想した。

「なんだそれ、悩みってそれに関係してんのか?」

「違うよ……これは悩みを解決するために使うの」

「じゃあ、俺いらねぇじゃんか」

「それも違う、誠也がいないとダメなの」

 どういうことだよ、そう尋ねようとして顔を向けた誠也目掛けて、ぷしゅっという擬音と共に白い煙が塗布された。突然のことで煙を思い切り吸ってしまった誠也は咳き込み、むせた。

 突然の幼馴染の暴挙に、誠也は戸惑い半分と怒り半分で声を荒げる。

「な、何すんだよ!」

 対し、綾香は何も言わない。ただ座っている誠也をじっと見下ろしているだけだ。
 それがなんだか酷く不気味に思えて「も、もう帰るぞ!」と誠也は部屋を出るために立ちあがろうとした。途端、がくっと姿勢が崩れた。

 なんだと考えるよりも先に、身体に異変が起こる。着ていた服がみるみる内にだぼつき、何が起きているのか理解するより先に身体が巨大化した服に埋もれる。同時に、自分よりも一回り背が低かったはずの綾香が、どんどん大きくなっているような錯覚を覚えた。

 否、それは錯覚ではない。服が巨大化したのでもない。では何が起きたのか、混乱する頭で考えようとした誠也は、頭上から伸びてきた腕に捕まって持ち上がる。

 あっという間に自分の身長よりも高い位置に上がった誠也は、動かしても空を切る足の感覚で浮遊感を実感し驚いた。下を見ればまるで建物の屋上に立ったかのように床が遠くに見えた。

「う、うお、ちょっ」

「……誠也が、可愛くなっちゃった」

 声につられて前を向けば、いつも見るよりも二倍ほど大きくなった幼馴染の顔があった。眼鏡の後ろにある丸い瞳はどこか虚ろに感じ、正気ではないように思えて、誠也は高所にいるのとは違う恐怖を感じた。

「なんだよこれ、何したんだよ! 降ろせよ!」

 震える声で抗議した誠也だが、綾香は返事をしなかった。無言のまま、誠也の身体を自分の胸元にぎゅっと抱きしめた。平均よりもやや大きく膨らんでいる胸が顔に押し付けられ、異性らしい柔らかさと匂いに誠也は戸惑って口を閉じた。

「私ね、誠也のことが男として好きなの、ずっとずっと一緒にいたいって思ってたんだよ? だけど、誠也は私のことを女の子として見てないんだよね?」

「だ、だってお前と俺は幼馴染で、そういうんじゃないだろ」

「本当にそう思ってるの?」

 埋めた顔の上から尋ねられ、今まさに異性としての感触を押し付けられている誠也は一瞬返答に詰まった。淡々とした口調に対する怯えがあったのもある。
 それでも、彼の口から出たのは「当たり前だろ」という、綾香の好まない返答であった。

「お前は大切な幼馴染だけど、その、女として見れるかって言うと……」

 なんだか恥ずかしいことを言わされているようで、口籠もりながら言い訳のようなことを話す誠也の頭頂部を見下ろす綾香の顔には、感情が抜け落ちたような表情が張り付いていた。

「そっか、それじゃあ」

 くるりと、綾香が身体を回転させて部屋にあるベッドの上に勢いよく誠也を投げ捨てる。突然のことに「うおっ?!」と声をあげた誠也の身体が、マットのスプリングで弾む。

 仰向けになった状態から身を起こそうとした誠也が見上げた先には、無表情でこちらを見下ろす#がいて、体格差もあいまって気圧される圧迫感と迫力があった。

「な、なんだよ……何するつもりだよ」

「何って、ここまでされたら、鈍い誠也でも見当がつくでしょ?」

 普段の大人しい口調からは想像もできなかった平坦な声で、

「これから、えっちなことをするんだよ」

 そう宣言した。あの地味で色気もなかった幼馴染がしたとは思えない宣告に「え? は?」と混乱する誠也の前で、綾香は手際良く衣服を脱いでいく。元から脱ぎやすい服装だったのもあって、すぐに純白の下着が露わになった。

 こうして見上げる形になるとよりわかりやすいが、色白な肌と年相応以上な凹凸がある肢体は、若々しいエロスを誠也に想起させる。思わず生唾を飲んだ誠也の反応と表情を見て、綾香はくすりと微笑を浮かべた。

「ふふ、誠也って嘘が下手だね……ちゃんと私の身体で興奮してくれてる」

「ば、ばか! そんなわけあるか!」

 事実を指摘されてもなお強がる誠也を、慈しむように見下ろす綾香が、ゆっくりとベッドに両手をついて迫った。
 下着に抑えられても揺れる乳房に目が釘付けになっている誠也の方へ、じわじわと近づき、見せつけるように垂らした胸をわざと揺らして見せる。

「誠也って結構えっちだよね……おっぱい大好きだし、前の彼女さんも大きかったもんね」

「そ、そんなこと……」

「あるでしょ? 素直になればいいのに、そしたらいっぱい触らせてあげるよ? 誠也になら、私の身体を好きにさせてもいいんだよ?」

 もう至近距離にまで来ていた綾香の胸が、誠也の鼻先でまた揺れた。強い女性の乳臭さが鼻について、誠也の劣情を煽る。思わずそれに手を伸ばそうとして、だが、

「っ、しねぇよ! そんなの!」

 誠也は顔を背けて頑なに拒否してみせた。彼にとって綾香は異性である前に本当に大事な幼馴染なのだ。こんな勢いだけの状況で手を出すのは、意外にも義理堅い彼の信条に反している。

「こういうのは、もっと段階を踏んでだな──」

「そっか、これでもダメなんだ、それじゃあ」

 諭すような、自分への言い訳のようなことを言おうとした誠也の声を遮って、綾香が両腕の肘を曲げてシーツへ、正しくは寝転がっている誠也へ向けて身を投げ出した。

 誠也の顔よりも大きくなった双丘が自由落下し、誠也は悲鳴をあげる間もなく少女の巨体に押し潰された。
 自身の肢体の下で混乱と驚愕と窒息の恐怖からくるもがきをする幼馴染に向けて、綾香は再度宣言する。

「無理やりでも、えっちなことをするからね」

 もう、綾香の中では誠也を自分の体でめちゃくちゃにすることが決定付けられていた。伝わらない愛は憎しみではなく強い情念と化して漏れ出し、一人の男子を文字通り押し潰さんとしているのだった。