はじめに
 毎度同じことを繰り返しますが、以下の物語を未成年者が読んではいけません。今回は特に有害な記述のオンパレードなので、重ねて警告いたします。著作権侵害行為もご遠慮願います。以上を遵守の上、物語にお進みください。

薔薇色の夜明け・2
by JUNKMAN

*****

「おはようございます。らふTVモーニングワイドの時間です。今朝は東京に突然現れた巨大な女子高生型エイリアン関係のニュースを中心に時間を延長して放送いたします。では早速、東九条記者に現地の状況を伺いましょう。東九条さん、」
「・・・はい」
「東九条さん、いま、どちらですか?」
「・・・はい。私たちは、いま、ヘリコプターでJR品川駅の上空にいます。眼下に品川プリンスホテル、パシフィックホテルなどが見渡されます。既にJR、京浜急行とも運行は完全にストップしています。通勤途中の時間帯ですが、日頃に比べて人影は多くありません。」
「巨大女子高生型エイリアンの姿は捉えられますか?」
「はい」
画面が切り替わった。青空をバックに白いセーラー服を着た少女の上半身が写し出された。
「これが問題の巨大女子高生型エイリアンです。ええと、長いので以下は巨大女子高生と略します。巨大女子高生は羽田空港から海岸沿いを北に向かって進行中です。こうやって上空から見ると、ちょっと目には全く普通の女子高生と変わりありません。」
「なあんだ、可愛いじゃないですか。エイリアンっていうイメージではありませんね。」
「そうですね。確かに、アイドルにでもスカウトしたくなるような感じです。相変わらず、アイドルがすきねぃ。ですが、はい、カメラさんお願いします。」
画面が徐々に遠景に切り替わっていった。巨大女子高生の全身像が映し出される。その足下に注目すると、見逃してしまいそうなほど小さな家屋やビルや道路などが・・・
「!!!」
「ご覧の通り、とてつもない巨大さです。」
「ひ、ひ、東九条さん!こ、こ、これは特撮ではないのですか?」
「いえ、現地からライブでお送りしています。」

*****

 JR田町駅と浜松町駅の中間点くらいで横転した京浜東北線電車から、ツトムはかろうじて這い出した。
 結構時間がかかった。
 なにしろ車体が完全にひっくり返って、出入り口もひしゃげてしまったのだ。
 いったい何が起こったんだろう?
 地震か?
 いや、何か大きなものが墜ちたらしい。
 南の方角だ。
 羽田空港沖かな?
 凄い衝撃だった。
 飛行機とかロケットとかそんなレベルのものではない。
 隕石か?
 彗星か?
 いずれにしてもろくなもんじゃない。
 わからないけど、原因の詮索は後回しだ。車内にはまだ閉じこめられた乗客がいるに違いない。ツトムは、他の数人の若者たちと示し合わせるわけでもなく協力しあいながら、車内に残された乗客たちの救出作業を開始した。
 そんなとき、誰かが素っ頓狂な声を上げた。
「あ!あれはなんだ?!」
 指さす方角を見る。
 息をのんだ。
「!!!」
 少女だ。
 美少女だ。
 一目でどきっとするほどの美少女だ。
 年格好はツトムより少し下だろうか。
 彼の知っている限り、こんなに可愛い少女は見たことがない。
 ぱっちりした眼、
 眩しいほどに輝く瞳、
 長い睫毛、
 小さくつんと尖った鼻、
 ピンク色に光る丸い唇、
 軽くウエーヴのかかった栗色の髪。
 まるでツトムの夢の中から飛び出してきた天使そのものだ。
 白いセーラー服に身を包まれている。
 ああ、ほんとうに胸がどきどきする。
 ときめいている。
 どうしてこんなに尋常じゃない感情がわき上がってくるんだろうか・・・
 ・・・
 当然だ。
 だって尋常じゃないんだから。
 落ち着いて考えてみろ。あんなに遠くにいるんだぞ。なんであんなにはっきりと見えるんだ?なんであんなに近くに見えるんだ?
 ・・・近くにいるんじゃない。やっぱり遠いんだ。でも、こんなに良く見えるんだ。
 そうだ。
 大きいんだ。
 あの少女はとてつもなく大きいんだ。
 ほら、足下を見てみろ。建物がいっぱい踏み潰されているじゃないか。
 どうしてだよ?
 そんなに巨大な女の子が、いるわけないだろ?
 そんな現実離れした大巨人の女の子が、存在するわけないだろ?
 ・・・どしいいいいいいん・・・
 ・・・どしいいいいいいいいん・・・
 ・・・どしいいいいいいいいいいいん・・・
 地鳴りが近付いてきた。
 立っていられないほどの揺れだ。
 ツトムはバランスを失って、近くの配管工事現場に転がり墜ちてしまった。そこは周囲から4?5メートルほど落ちくぼんだ落とし穴のような場所である。
 身体をしこたま打った。
 体勢を立て直して、この落とし穴の底のような配管工事現場から見上げる。
 ここからでも見える。
 例の美少女の姿が、もっと、もっと、もっと大きくなってきた。
 こっちに向かって歩いて来ているのだ。
 突き上げる衝撃。
 揺れが更にひどくなる。もはや救助作業どころではない。
 地面に伏せて、そして、もう一度こわごわと顔を上げた。
 ツトムは見た。
 ツトムが一目見て心奪われた美少女が、視線の先にいた。
 ・・・
 なんて大きさだ。
 ・・・
 圧倒的に巨大だ。
 周辺に比較に足る大きさのものはない。
 もちろん、人間の建てた建築物など問題にならない。
 神々しいほどに超自然的な大きさの少女だ。
 まるで美少女の姿をした塔・・・
 ・・・いや、山だ。
 こんなに大きな少女が歩いてきたのでは、衝撃が大きかったのも道理だ。
 超巨大少女は、足下の状況など全く意にも介さず歩いてくる。
 そのギリギリになるまで、ツトムはその危険に気付かなかった。
「・・・ふ、踏みつぶされる・・・」
 ツトムのいるJR京浜東北線の線路端は、この超巨大美少女の進行方向にぴたりと一致していた。
 まずい!!
 と、気付いた時には、既に遅かった。
 逃げられない。
 もうこの落とし穴から這い出るゆとりもない。
 上空に引き上げられた長径250メートルのローファーが、うなりを上げてふり降ろされる。
 ツトムの真上にふり降ろされる。
 広い広い漆黒の靴底が、天からツトムめがけて墜ちてきた。
「うわああああああああああ」
 叫びも虚しく、ツトムの姿は、周辺にいた人々や電車ともども、黒いローファーの下に消えていった。

*****

「それにしても小さな街ねえ・・・」
クリッチは下を向きながらおそるおそる歩いた。できるだけ地球人とかその建造物とかを踏み潰さないようにである。無駄な努力ではあった。だってクリッチのローファーはサイズが250メートルである。靴幅もそれ相応にある。これがすっぽり収まるような空き地など東京には滅多に見つからない。一歩進むたびに多数の家屋や店舗や事務所などが哀れ靴底でぺしゃんこに潰れていった。もちろん、建造物と同時に踏み潰されてしまった人や車も後を絶たない。ただ、クリッチにはそのあたりの状況がまだよくのみこめていなかったのである。無理もない。普通の家屋など、クリッチの感覚では高さが1cmにも満たないのだ。ローファーで踏み潰したところで「ぷちっ」という感触すらも乏しい。罪の意識なんて全然感じなかった。ましてや自分が地球人たちを踏み潰しながら歩いているなんて全く気づきもしなかったのだ。確かに、この星で自分が大巨人であることはわかっている。ただ、自分のサイズと地球人のサイズのギャップが実感しきれていなかったのだ。
「あーあ、こびとの街は狭いわねえ。」
クリッチはPink Fairlyさんのキャッチコピーのフレーズそのままに嘆きながら悪戦苦闘していた。目立つ建物、せいぜい5階建て以上の建物を踏み潰さないように避けて歩くので精一杯だった。それだけでも大変な努力であったが、歩幅を調節したり、ときに爪先立ちしたりして何とかやり抜けていた、つもりだった。こんな自分の姿を、足下から見上げる小さな地球人たちはどのように感じているのだろう?
「もう敵意がないことは明らかでしょ。きっと『頑張ってるなあ』なんて思ってくれているのよ。」
クリッチは足下の地球人たちに向かって微笑みながら軽くウインクをした。そして、いま目の前をぱたぱたと飛んでいる小さなヘリコプターにも。そう、この人たちはきっと報道関係のクルーに違いない。挨拶しなくっちゃ。クリッチはにっこり笑って軽く投げキッスをした。

*****

「東九条さん、東九条さん、」
「・・・はい」
「現地の状況は如何ですか?被害は拡大しているのでしょうか?」
「・・・はい。巨大女子高生は港区の海岸地域を好き放題に蹂躙しています。天王洲、芝浦を滅茶苦茶にして、現在、JR田町駅付近に達しております。ご覧ください。建物だろうが線路だろうが道路だろうが構わず踏みにじっています。容赦なく踏みにじっています。既に被害者は数千人に達したのではないかと思われます。足取りは不自然で、右に左に方向を変えながら、どこかにねらいを定めて踏みおろしているように思われます。明らかに意図的な破壊行為です。ご覧ください。」
画面が靴跡のアップに切り替わった。
「ご覧になれますでしょうか?これが靴跡です。JR京浜東北線・山手線に沿ってくっきりと残されています。これがあの巨大女子高生がローファーで踏みしめた跡なのです。実に広大です。東京ドームが2つくらいすっぽりと入ってしまいそうです。その中に動くものは全く見えません。全てが押し潰されて、完全な平面になっています。この靴跡一つに何人の犠牲者が葬り去られたことでしょう・・・あ!・・・カメラさん、カメラさん、あれ撮って!」
再び画面が巨大女子高生に切り替わった。さっきまでの気難しい表情は消え、にっこりと笑っている。
「笑っています。笑っています。巨大女子高生が笑っています。阿鼻叫喚の街を見下ろして笑っています。残忍な笑みです。これから踏み潰そうとする住民たちを見下ろして、悠然と笑っているのです。」
「東九条さん、東九条さん、」
「・・・はい」
「ということは、巨大女子高生は破壊行為を楽しんでいるわけですね?」
「そのとおりです。友好的な姿勢は全く伺われません。おそらく逃げまどう住民に自分の大きさを見せつけているのだと思われます。あ!」
「どうしました?東九条さん?」
「巨大女子高生がこのヘリコプターを見つけました!じっと見つめています!」
「東九条さん!!」
「こちらに向けて唇を尖らせました。威嚇行為でしょうか?あ!!危ない!!こちらに手を伸ばしました。あ!!あああ!!」
「東九条さん!!東九条さん!!」
ヘリコプターからの画像・音声が中断した。
「東九条さん!!東九条さん!!」
「・・・あ、スタジオですか?」
「東九条さん、大丈夫ですか?」
画像・音声が回復した。東九条記者はメガネをかけ直しながら実況報告を再開した。
「失礼いたしました。乱気流でヘリコプターのバランスが崩れたようですが、もう大丈夫です。持ち直しました。」
「急な乱気流ですか?」
「さっき巨大女子高生がこちらに手を伸ばした際に発生したようです。もう大丈夫です。」
「そちらは巨大女子高生の手の届く範囲内なわけですね。」
「そうです。」
「十分に気をつけてください。相手は巨大女子高生ですからね。ヘリコプターが指先で摘まれて『やだあ、ちょーきゃわゆい!』とか言われたりしたら大変ですよ。」
「いやあ懐かしい。それはあの有名な窓香ちゃんネタですね。そこまであからさまなパクリはないと思うのですが・・・」
「いやいや、この世界、ネタのやりとりに関しては非常に寛容なので油断できません。だってどんな小説を読んでも、GTSがこびとをなぶるシチュエーションなんて似たり寄ったりですからね。ヘリコプターのネタにしてもJUNKMANは平気で使ったことがありますし、他に有名なところではマリア・サントス嬢も使っています。気をつけるに越したことはありません。」
「わかりました。それでは退避することにいたします。」
「どうも有り難うございました。さて、それでは次にカメラを切り替えて、巨大女子高生が向かっている東京タワー方面に犬山倍子アナウンサーがおります。犬山さん、犬山さん、」
画面が東京タワーの下で佇む犬山アナウンサーのバストアップに切り替わった。メタルフレームのメガネをかけた犬山アナは見るからに浮かない表情である。
「犬山さん、犬山さん、」
「・・・はい」
「犬山さん、犬山さん、東京タワーの状況は如何ですか?巨大女子高生はもう到着したのでしょうか?」
「・・・はい」
犬山アナはますます浮かない表情である。いったい何が起こったというのであろうか?

*****

 ・・・もう・・・大丈夫かな?
 おそるおそる顔を上げてみた。
 ぶるぶるっと首を振って、ゆっくりと眼を開いてみる。
 周囲の景色は一変していた。
 ツトムの周囲、前後それぞれ100メートル以上、左右は40メートルくらいが、その周りから10メートルくらい沈んだ広大な窪地になっていた。窪地の中も平坦ではない。後方1/4くらいは更に深い窪みになっている。地表との段差は30メートル近くに達しそうだ。その前方の急峻な断崖を上ったあたりは窪地全体の中では丘のようになっている。一番高いところはおそらく窪地周囲の地面と高さが変わらないだろう。ツトムはその一番高い地点に這いつくばっていた。ここから前方は、また緩やかな下り坂になっている。
 これが靴跡か・・・
 なんという巨大な靴跡なのだ・・・
 ツトムは眼を見開いたまま、たったいま経験した恐怖の瞬間を反芻していた。
 踏み降ろされた巨大な靴底から逃げる余裕などなかった。ただ、本能的にその場に伏して、眼を閉じた。ずうううううううん、と突き上げる衝撃を受け、背面に何やら尋常ではない威圧感を覚えた。が、しかし、意外なことに、物理的な圧力を受けることはなかった。ツトムはローファーの踵の直前、つまり土踏まずの部分にいたのだ。しかも、伏していたところがもともと周囲よりも窪んだ落とし穴のような部分であったので、前後左右の大地が巨大な靴底の圧力で地中に沈んでいくなか、ツトムの真上の靴底だけはかろうじて地面に触れることなく、命が救われたのだった。
 もう一度注意深く周囲を見渡してみた。さっきまでツトムと一緒にいた若者たちの姿は、一人として見あたらない。電車も、乗客もだ。みんな、あの巨大な靴底の下敷きになってしまったのか。
 いや、僕の他にも一人くらいは生存者がいるかもしれない。ツトムは土踏まずが象った小高い丘から滑り降りるように前方の広い低地に降り立った。
 広い。この低地だけで、十分にワールドカップの会場になれそうだ。がらーんとしたスペースだ。この広いスペースに、人っ子一人いない。やっぱり誰も助からなかったのかな?
 地面に注目してみた。かちかちに固い岩のような、コンクリートのような素材だ。おおむね表面は平坦である。ただし、色合いは一様でない。全体は灰色がかっているが、ところどころに茶色や黒の大きな斑紋がある。縞模様もある。特にこの水色の大きな縞模様は鮮やかだ。幅は5メートルくらいか。ところどころ節状にくびれながら、窪地の後ろ側から中程までを帯のように縦走している。まるで瑪瑙の鉱脈のようだ。どうしてこんなきれいな縞模様ができたのかな?
「!」
 ツトムはふいにその水色の縞模様の正体に気づいて愕然とした。
 これは京浜東北線車両だ。
 さっきまでツトム自身が乗っていた京浜東北線車両だ。
 踏み潰されて周囲の地層と全く一体化してしまったのだ。
 物凄い圧力が加わったに違いない。
 ツトムは試算してみた。地球人の1000倍の大きさの女の子が片足立ちしたときに靴底にかかる圧力は、概算で・・・4000トン/平方メートル・・・4000トン/平方メートル?!しかも歩行運動なので接地面がゆっくり移動していることを考慮すれば、実際に受けた圧力はこれよりも更に大きいだろう。そんな圧力に耐えられるものが地表に存在するはずがない。みんなぺしゃんこに潰されて、人も、車も、電車も、建物も、全部一緒に圧縮されて、そしてこのかちかちのコンクリートみたいになってしまったのだ。人も、車も、電車も、建物も、このかちかちのコンクリートの模様の一つにされてしまったのだ。
 ツトムはへなへなとその場にへたりこんでしまった。これでは他に生存者なんかいるはずがない。
 そんなとき、ツトムに呼びかける声がした。
「おおい、そんなところで何をしているんだ?」
振り返ると、靴跡の窪地の外から、心配そうに覗き込む男がいた。
「無事かあ?」
「は、はい。」
無事な証拠に軽く手を振ってみた。
「こっちに登ってこれるかい?」
「はい・・・あ・・い、いや、どうかな?」
靴跡は地表から10メートルもめり込んでいる。この断崖を素手で登るのは難しそうだった。
「こっちからロープを垂らすぞ。それに掴まって登ってこいよ。」
「はい。」
ほどなくして断崖の上から一条のロープが垂らされてきた。これに掴まって、ツトムはなんとか靴跡の牢獄から脱出した。
「あ、有り難うございました。」
「いや、礼をいうには及ばないさ。こんな非常事態なんだから、助け合うのは当然だぜ。」
灰色のスーツに身を包まれた男が、くるくると手際よくロープを片付けている。年の頃は30歳前後、精悍な顔つきである。それにしても手慣れたロープの扱いぶりだ。
「レスキュー隊の方ですか?」
「俺がかい?ははは、レスキュー隊がこんな堅苦しい服装なんかしてるもんか。」
男は自分の着ている灰色のスーツを指さして愉快そうに笑った。
「ただのしがない国家公務員さ。堀田というんだ。よろしく。」
「ツトムです。こちらこそ宜しく。」
2人はがっちりと握手した。
「でも、どうしてロープなんか持っていらっしゃったんですか?」
「商売柄、必要なんだよ。一口で国家公務員っていっても、いろんな仕事があるんだぜ。ところで、君こそどうしてこんなところに落ちたんだい?」
「いえ、落ちたわけじゃないんです。」
「じゃ、どうしてこんな中にいたの?」
「横転した電車から外に出たところを、上から踏まれちゃったんです。でも、運良く潰れずに済みました。」
堀田は目を丸くした。
「踏まれたのに潰れずに済んだ?凄い強運だね。奇跡の生還だ。」
「はあ・・・」
この話を聞きつけて、あっという間にあたりに人だかりができた。みんなが口々にツトムの生還を讃えている。ツトムだけが未だにそのインパクトを実感できない。そんなに凄いことをしたんだろうか?というのが正直な気分だ。
「はいはい皆さん、こんなところで立ち止まっていないで!」
いつのまにか群衆整理の警官までやってきた。
「巨大エイリアンは通り過ぎていきましたが、このあたりではまだ危険です。交通も遮断されている。さあ、みなさん、国道15号を銀座方面に向かって、どんどん避難してください。」

*****

 右に左にふらふらとしながら、漸く目標にたどり着いた。真っ直ぐに歩いてくればほんの十数歩で着けたはずだったのに、随分手間取ってしまった。さて、これはいったい何なんだろう?つんと尖った赤い塔である。周囲の建造物に比べれば抜きんでて高いが、それでもクリッチの膝よりは下だ。この星の住人は悲しくなるほど小さいのだ。
「さて、とりあえず・・・」
跨いでみた。両手を腰に当てて、真下の塔を見下ろしてみる。この塔は、おそらく地球人たちにしてみたらたいへんな高層建築に違いない。でも、私の膝にも届かない。私はそれを楽々と跨げちゃうのだ。地表から見上げるこびとたちはどんな気持ちだろう?クリッチは想像してみた。見上げる高い高い塔の更にその上を、悠々と跨いでいる女の子。圧倒的な大きさ、圧倒的な力強さ。なんだか優越感がむくむくと沸いてきた。いい気分だ。赤い塔を跨いだまま、小さな街を見渡した。この全部が、自分のものになったような気がしてきた。あ、いけない!なんだかノーパンの股間がじんわりと滲んできちゃったわ。ふう、巨人になる、というのは思いのほか気分が良いものね。うーん、なんか刺激が欲しいわ。指でこっそりくちゅくちゅいじったりしちゃって。でも、これって下から丸見えかしら・・・
「おっと、そんなこと考えている場合ではないわ。」
そう。クリッチがわざわざここまでやってきたのは、そんな優越感を味わうためではない。おじさんたちを歓ばせる秘策を披露するためだったのだ。

*****

「犬山さん、犬山さん、」
「・・・はい」
「どうですか、現地では具体的にはいま何が起こっているのでしょうか?被害の状況とか?」
「・・・」
「犬山さん、犬山さん、聞こえますか?」
「・・・はい」
「どうしたんですか?いま、そこから何が見えるんですか?」
「・・・いいんですか?」
「はあ?」
「何が見えるか言っちゃってもいいんですか?」
「どうぞどうぞ、見えたままのものを報道してください。」
「・・・そうですか。では」
画像が切り替わった。
「見ての通りです。巨大女子高生は、いま東京タワーを跨いで立っています。さっきまでは移動中だったので、このあたりはたいへんな揺れに見舞われたのですが、もう大丈夫です。巨大女子高生は立ち止まって、両手を腰に当てて、東京タワーを跨いでいるのです。かれこれ5分以上もこの姿勢のまま佇んでいます。何か物思いにでも耽っているのでしょうか?それにしても凄い大きさです。東京タワーの頂上が、ほぼその両脇のルーズソックスの高さくらいです。結構だらしなく垂らしているので、明らかに膝よりは下です。圧倒的に巨大です。その巨大さを我々に見せつけています。ええ、私たちは東京タワーの下に立っています。ご覧になれますでしょうか、左右にはこの巨大女子高生の黒いローファーがそびえ立っています。巨大なローファーです。それだけでもちょっとした丘のようです。その向こうは全く見えません。」
「犬山さん、犬山さん、」
「はい」
「それでは犬山さんはいま、巨大女子高生の足下にいるというわけですね。」
「はい、そうです。」
「先ほどから靴しか見えなくて、巨大女子高生自身の身体の映像が少ないのですが、そちらからは見えないのですか?」
「いえいえ、真上を見れば視界いっぱいが巨大女子高生の身体です。」
「それを放映していただけませんか?」
「・・・いいんですか?」
「はあ?」
「・・・本当にカメラで真上を映してもいいんですか?」
「いいですとも。」
「私、個人的には避けたいんですけど・・・」
「いやいや、それは困ります。是非とも映してください。事実をありのままに伝えることが我々マスコミの使命なんですから。」
「・・・そうですか・・・そこまでいうならわかりました・・・知らないですよ・・・じゃ、カメラさん、あれを撮ってください。」
カメラマンの雪風氏がぎょっとした表情で振り返った。
「い、いいんですか?あんなものを撮って?」
「いいのよ。キャスターがいいって言っているんだから。」
犬山アナはやけくそになっている。
「さあ、早く撮って!それとも撮れないの?」
「いや、と、撮れないことはないですよ。むしろこういうあおりのアングルは得意なんですけどね。それでもあれを公共の電波に流すのはなあ・・・せめてYahoo Clubに出して閲覧者を限定するってのはどうですか?」
「そのギャグはもう前回やったわ!さあ、早く撮って!!」
雪風カメラマンはしぶしぶ真上を向いてカメラを廻し始めた。テレビの画面が切り替わる。ものすごい光景が全国のお茶の間に飛び込んできた。
「お待たせいたしました。カメラはいま真上に向いています。ご覧のとおりです。これはPOVフォーラムではありません。ああ、カメラさん、フォーカスいいですか、はい。ああ、そのう、申し上げにくいのですが、この巨大女子高生は、実は、そのう、いわゆる・・・ノーパンなのです。そんなわけで、はい、ここからは所謂その、もろ見えなわけなんですね。それで、」
「犬山さん、犬山さん、わかりました。はい、よくわかりました。悪うございました。それではカメラをスタジオに・・・」
「だめです!!!」
犬山アナウンサーが一喝した。目がいっている。その尋常ならざる勢いに押されてスタジオは黙りこくってしまった。
「事実をありのままに伝えることが我々マスコミの使命です。いかなる妨害にも屈しません。実況を続けます。ご覧のように私たちの頭上約900メートルの上空にばっくりと陰部が開いています。やや前付き気味です。長径・・・そうですね、50メートル強というところでしょうか。身体のわりには小ぶりだといえます。主に前方からよくカールのかかった栗色の陰毛で縁取られています。毛量は決して多くありません。しかし一本一本は比較的軟らかめでふわふわした印象です。」
「犬山さん、犬山さん、わかりました、もうやめてください!」
「ダメです!まだ実況は終わっていません!続けます!!ええ、大陰唇のもっこり感は、ご覧のようにやや物足りません。まだまだ若いということでしょうか。おっと、いま指でくちゅくちゅといじくり始めました。気持ちよさそうです。全体がしっとりと湿っています。あ、クリトリスです。指の陰からクリトリスが伺われました。、決して大きくはありません、せいぜい直径7?8メートルくらいでしょうが、まるまると膨れあがっています。十分に興奮しているようであります。あ、いまお汁が漏れました。一滴つうっと漏れました。糸を引いています。おっとっと危ない、いま照明さんのすぐ脇に落ちてきました。粘りは十分、酸っぱい納豆のような匂いです。はい、カメラさん、じゃ、また上を。はい、ぬらぬら濡れて艶やかな小陰唇はやはり小ぶりでピンク色です。しかも淡いピンク色です。あーあ、いけません。いけませんねえ、淡いピンク色ですよ。どうやらこの巨大女子高生はまだ男の味を知らないようです。いつもせいぜいこんなふうに自分の指でオナニーでもしてるんでしょう。どうせ練習するんだったらバイブといわずとも茄子やキュウリがお役に立つんですけどね。特にキュウリはあの表面のトゲトゲ感が病みつきになってしまいます。まあ、経験がない悲しさといいますか、巨大とはいっても場数を踏まなきゃまだまだしょんべん臭い小娘ですわおーほほほ!!!ちゃんと使い込んでくればほら、ほらほらカメラさん、ここ良く撮って。」
犬山アナはやおらスカートをまくりあげてパンティを丸出しにすると、マイクを持たない右手でそれをずいと引きずりおろし、おっぴろげの局部を雪風カメラマンに見せつけた。
「ほら、ここよ、ここ。もちろんアップでよ。はい、視聴者のみなさん、おわかりいただけたでしょうか?使い込んでくればこのご覧の私のもののようにずっしんとリビドー着色で黒ずんで大人の香り漂うワインレッドというかどどめ色に、あ!きゃあ!な、何をするの!?」
ついにたまりかねた雪風カメラマンが犬山アナウンサーからマイクを取り上げた。犬山アナはいっちゃった目つきのまま口を尖らせる。
「ちょっと待ってよお!まだまだ言いたいことがあるのよお!」
「だめですよ!公共の電波でそんなもの流しちゃいけませんよ。」
「どうしてダメなのよ?あんただってさっきまで言われるままにアップで撮ったくせに。」
「いや、それは流れというもので・・・」
「だいたい、あんなしょんべん臭い小娘のだったらいいのに、どうしてアダルトな魅力あふれる私のはいけないの?大きけりゃいいってもんじゃないわ!!」
「仕方ないでしょ。所詮それだけのお話で、読者もそっちに期待してるんだから。ノーマルなアダルトの下半身に興味があったら、わざわざこんなホームページなんか覗きませんって。」
「きいい!!くやしいい!!こうなったら、この続きは同人誌に詳しく描いてやるわ!!」
犬山アナウンサーはまたまたぶち切れたJUNKMANの奥さんのようにぎりぎりと歯がみして白眼をむいて拳を握りしめるという物凄いリアクションを見せた。慌ててついに画面が切り替わった。
「あ、げ、現場からの映像が乱れましたので、ここでいったん映像をスタジオに戻します。犬山アナウンサーの局部につきましてはコミケに出品されるの某同人誌上に詳述されるということですので、どうぞそちらをご覧ください。それでは本日の経過についてもう一度まとめておさらいいたします。本日早朝6時20分ころ、羽田空港沖の海上に・・・」

*****

 足下の東京タワーの、更にその下で繰り広げられる犬山アナの痴態など、クリッチの知ったことではない。尤もクリッチの方も、それはそれでトンチンカンな決意を固めていたのである。
「さ、うまい具合に濡れてきたことだし、そろそろおじさんたちを歓ばせてあげる究極のサービスをしてあげちゃいましょ。」
大きく深呼吸した。なんだか恥ずかしい。でもこの星では女子高生が公衆の面前で堂々と恥ずかしくはしたないことをすればおじさんたちが歓んでくれるらしいのだ。脛に傷持つクリッチとしては、率先して恥ずかしい行為をせざるをえない。
「じゃ、いきまあす。」

*****

 随分と遠くまで避難したような気がする。ほら、もうすぐ新橋だ。わき目もふらずに走り続けたので、そろそろくたびれてきた。
 もう大丈夫だろう。振り返ってみた。
「!!!」
 全然遠くになんか来てはしない。
 巨大美少女はすぐ斜め後ろに立っている。
 いや、すぐ斜め後ろということはない。あれは東京プリンスホテルよりも向こう側、ちょうど東京タワーのあたりだ。ここからはかなりの距離があるはずだ。
 でも、こんなに近くに見える。
 ・・・
 改めてその大きさに驚いた。
 彼女ならほんの数歩でここに達してしまうだろう。
 僕らとはスケールが違うんだ。
 ・・・
 所詮、逃げても無駄なんだ。
 ・・・
 足を止めて、巨大美少女を見上げた。
 大きい・・・
 ・・・でも、きれいだ。
 ほんとうにツトムの夢の中から現れたように、愛らしく、美しい。胸がどきんどきんとときめいている。もしかしたら、夢の中から現れたんじゃなくて、まだ僕は夢をみているのかもしれない。

「じゃ、いきまあす。」

 ふいに轟き渡った声で、ツトムは我に返った。
 巨大美少女の声だ。
 重々しく、世界を震わせるほどの大音量だ。
 が、同時に甘美で、心地よい音楽のようでもある。
 圧倒的なパワーと、心惹きつける魅力を兼ね備えた声だ。
 見上げると、巨大美少女は両脚を広げ、両手でスカートの裾をたくし上げていた。
 むき出しの下半身が、これ見よがしに曝け出された。
 ツトムは眼を見張って、ことの成り行きを見守った。
 巨大美少女は、真下を向いた。
 ぺろりと下を出す。
 眼は笑っていた。
 まるでこれからいけない悪戯をするおてんば娘のようだ。
 ゆっくりと腰を落とし、跪く。
 前のめりになって、左手を地面について、そして自由な右手で真下の東京タワーをむんずと掴んだ。
 手をついた瞬間に、大地がまたずうううんと重く突き上げて、ツトム同様にこの様子を見上げていた群衆から悲鳴が上がった。
「!!!」
 まさか、思った通りだった。
 彼女は、ほんとうにこれからいけない悪戯をするおてんば娘だったのだ。
 巨大美少女は、東京タワーを握りしめた右手の方に腰をにじり寄らせ、少し浮かし、そしてその真上に再び沈めたのだ。
 右手を放す。
 東京タワーの赤い姿が、先端から、むりむりと呑み込まれていく。
 巨大美少女の局部の中に消えていくのだ。

「あ、ああ、あ・・・」

 再び巨大美少女が声を漏らした。
 さっきよりは小さな声だ。
 東京タワーはもう根本近くまでずっぽりと呑み込まれている。
 かろうじて挿入されずにいる部分、あの水族館や蝋人形が展示されているあたりは、真上から絶え間なく注ぎ込む大量の愛液で溢れかえっている。
 そして、その東京タワーをまるまる内部に収めてしまった巨大な腰が、ゆっくりと前後左右に揺れ始めた。
 彼女の腰の揺れに合わせて、大地がぐらん、ぐらんと揺れ動く。
 彼女自身は上を向いているので、ここからはなかなか表情が伺い知れないが、どうやら今は眼を閉じているらしい。

「ああ、ああ、ああああ、」

 時折声がもれる。
 声量はだんだん大きくなった。
 腰の揺れる方向はいつのまにか水平方向から上下方向に変わっている。
 そして小刻みにスピードを上げてきた。
 ・・・
 信じられない光景だ。
 とびきり美しい女子高生が、局部にオモチャを挿入して、自慰行為に耽っているのだ。
 眼を閉じて、頬をほんのり上気させている。
 誰もが心奪われる官能的な光景だ。
 だが、そんなことよりも何よりも、あの股間に挿入しているオモチャは「東京タワー」なのだ。
 あの少女は、日本が世界に誇る高層建築である東京タワーを股間に挿入してしまったのだ。
 膝を曲げ、腰を落として、それでやっとこ挿入したのだ。
 なんという大きさだ。
 ツトムは子供の頃に東京タワーに昇ったことを思い出した。
 あのタワーの中程にある展望台に昇ったのだ。
 どこまでも、どこまでも見渡せそうな、見晴らしの良い展望台だった。
 自分が巨人になったら、こんなふうに下界を見下ろすことができるんじゃないかと思った。
 本物の巨人は、いや、巨人の女の子は・・・そんなものではなかった。
 あの展望台も含めて、東京タワー全体を股間に入れてしまったのだ。
 オモチャにしているのだ。
 オナニーの道具にしているのだ。
 壮絶なスケールのオナニーを見つめながら、ツトムの中の大きい、小さいという概念が、根底から崩れてきた。
 そんなイマジネーションを超えるほど、あの少女は巨大なのだ。
 ・・・
 いま、あの展望台に人がいたら、どんな気分だっただろう?
 建物のまま少女の局部に挿入されていく。
 それをどうすることもできない。
 抗うこともできない。
 気づいてすらもらえないまま、愛液に溺れて死んでいくのだ。
 ツトムは、想像の中で、巨大美少女の姿とその股間に挿入された展望台の中にいる自分の姿を重ね合わせて、その大きさのギャップに気が遠くなりそうになった。
 彼女から見たら、自分たちはノミかシラミくらいの小ささだ。
 そのままでは彼女のオモチャにもなれないほどに小さいのだ。
 もしかしたら、こんな悪ふざけをすることで、彼女は自分の大きさを僕たちに見せつけようとしているのかもしれない。
「ほら立ち止まるな!危険だぞ!走って!走って!」
呆然と立ちすくむツトムを見かねて、また交通整理の警官がやってきた。もっと見ていたいような、もう見たくないような、相反する思いを引きずりながら、ツトムは促されるままに国道15号線を再び北東に向かって走り始めた。所詮、逃げることに意味がないのはわかっていたが。

*****

 熱い股間に、ひんやりとした金属製の尖塔が侵入してきた。とんがって、ごつごつして、独特の感触である。さっきから濡れていたので、問題なくつるりと入ってしまった。奥まで入れたら、ぴくっと感じて、ちょっと声を出してしまった。

「あ、ああ、あ・・・」

これははしたない行為だ。その事実は認識している。それでも敢えてやっているのだ。尖塔を股間に挿入したまま、腰を軽く揺らしてみる。尖塔の高さはこういう目的に使うにはまずまず。太さは足りないかな。でも膣粘膜を介して感じるこのごつごつした肌触りが新鮮だ。

「ああ、ああ、ああああ、」

気持ちよくなってきた。ついつい声が出てしまう。しかも、感じるごとに大きな声になってしまう。

「ああ、ああ、ああああ、」

身体が火照ってきた。もういいかな?両膝を視点にして今度は腰を小刻みに上下に動かす。この赤い尖塔を抜いたり、入れたり。ピストン運動だ。

「ああ、ああ、ああああ、」

もう汗だくだ。股間を中心にして、身体全体が熱い。炎に包まれたようだ。でも、気持ちいい・・・

「ああ、ああ、ああああ、」

どうしたの?すっごく気持ちがいいじゃない。こんなとんがってるだけのオモチャだっていうのに、今までに経験したことがないほどの快感だわ。これって、結構よくできているのね。

「ああ、ああ、ああああ、」

違う。違うわ。視線よ。大勢の視線よ。大勢のこびとたちが、私のこのエッチな遊びを見ているのよ。なすすべもなく見上げているのよ。ああ、その視線を感じるわ。ぴりぴりぴりぴり感じるわ。

「ああ、ああ、ああああ、」

来る。視線が来るわ。見られている。見られているからこんなに興奮するんだわ。さあ、みんな見て!もっと見て!私をもっとぴりぴりぴりぴりさせてちょうだい!

「ああ、ああ、ああああ、」

さて地球のみなさん、この赤い尖塔は、あなたたちのご自慢の高層建築なんでしょ?私はそれを使ってひとりエッチしてるのよ。さあ、よく見て!眼を逸らさないで!どう?信じられないでしょ?こんな塔なんか、私にはただのオモチャよ。だって私はこんなに大きいんだもの。びっくりした?それとも悔しい?止められるものなら止めてごらんなさいよ。ほらほら、視線を逸らさないで。見て。もっと見てよ!ああ、いったい彼らはどんなことを考えながら私を見上げているのかしら?ぴりぴりぴりぴりぴりぴりぴりぴり・・・

「ああ、ああ、ああああ、あああああああああ!!!」

*****

 警官や群衆たちにせき立てられて、ツトムは銀座に到着していた。轟き渡っていた巨大美少女はの咆吼は、いつの間にかもう止んでいる。ちらりと振り返ると、巨大美少女は東京タワーを局部に差し込んだまま、腰の動きを止めていた。どうしたんだろう?ツトムは交通整理の警官たちの眼を盗んで銀座の四つ角を左に折れ、人混みに逆らいながらJR有楽町方向に走り出した。
 数寄屋橋の手前から東京タワー方向を見る。巨大美少女は汗まみれになって恍惚の表情を見せていた。壮絶なスペクタクルショーも一段落である。
「凄いことになっているな。」
「え?あ、は、はい・・・」
いつの間にか、背後に堀田が立っていた。彼も同様に様子を見にきたらしい。
「これから、何が起こるのかなあ?」
「・・・」
二人は声もなく巨大美少女の姿を見上げていた。

*****

「ふうう、気持ちよかった・・・」
体中がじんわりと汗ばんでいる。ほんとうに気持ちよかった・・・
「・・・けど・・・恥ずかしい・・・」
オルガスムスが過ぎると、急に理性が帰ってくるので、羞恥心が沸いてくるのである。行為もさながら、その最中に頭を駆けめぐったいろいろな妄想がまた恥ずかしい。ひとりエッチというのは、燃えれば燃えるほどにこのギャップが激しくなって、その異様な余韻がたまらないのである。それもまたいいんだけど。
 気を取り直して、腰を浮かし、赤い塔を引き抜いた。べとべとに濡れ、酸っぱい匂いが染みついいる。上半分くらいはぐにゃぐにゃに変形してしまった。倒れずに立っているだけでも上等である。相当粗っぽく、はしたない遊びをしてしまった。クリッチは、恥ずかしさのあまり、頬から耳たぶまでが真っ赤になった。
「ここまで恥ずかしいことをしたんだから、もうこの星のおじさんたちは大喜びでしょ。ふう、良かった。ファーストコンタクトは無事成功したわ。」
百歩譲って「おじさんたちが歓んだ」という点が事実であったとしても、しかし、だからといってそれでファーストコンタクトが成功したと考えるのは、少なくとも我々地球人の常識とは甚だかけ離れている。この思考パターンの違いが地球と白鳥座ε星のカルチャーギャップからくるのか、それとも単にクリッチのキャラクターのなせるところであるのか、現時点での判定は難しい。いずれにせよ、クリッチの関心はもう別のことに向けられていた。
「そうと決まれば、後は私の実習をするばかりだわ。」
そう。もはや忘れてしまった読者の方も多かろうと思われるが、そもそもクリッチは地球に鉱物採集の目的でやってきたのである。その課題をクリアしないことには帰星することができない、というか、わざわざこんなところまでやってきた甲斐がない。クリッチは立ち上がって、衣服の汚れをぽんぽんと払うと、胸ポケットからくしゃくしゃになったサンプル採集用カップを取り出した。くしゃくしゃのカップは手のひらの上で透き通った薄いピンク色のお椀に形を変える。このお椀を目標とするサンプルの上に被せると、自動的に底面が形成されて、サンプルが伏せたお椀の中に密封されるという仕組みなのである。密封された内側のスペースでは、サンプル採取時の大気組成・温度・湿度が厳密に維持され、しかもショックアブソービングも施されているので、貴重なサンプルの採取・保存・運搬にはもってこいの優れものである。このようにB級SFたるもの困ったときには便利なアイテムを考案しちゃえばいいのだから誠にお気楽である。その良い例が十年一日が如くにポケットから新アイテムを出しまく・・・(以下自粛)。
 さて、準備はOK。よさそうなサンプルは、と見回してみたが、残念ながらこの辺り一帯は人工建築物がびっしりと並んでいて、自然の地層が露出しているところはあまり見受けられない。
「しようがないわね。」
 プランを変えることにした。せっかくファーストコンタクトしちゃったんだし、しかもそれはもう隠しきれないことなんだから、それだったらいっそのことこの星の知的生命体の建造物を持って帰っちゃうのもいいかもしれないわ。そういうことなら、むしろ大きめな建物がたくさん入った方がいいくらいだ・・・でも、その場合また別の問題が生じてくる。大きな建物やその周囲には、地球人たちが大勢いるのだ。
「・・・ま、いっか」
どうせファーストコンタクトはしちゃったんだから、何人かは白鳥座ε星までご招待しちゃってもいいかもね。怒ることはないと思うわ。さっきあれだけ歓ばせておいてあげたんだから。カップを強く押しつければ、地面までえぐり取られるから内部に捕らえられた地球人たちだって安全なはずよ。
 方針が決まったら気が楽になった。ちょっと離れた位置にはほぼ無傷の建物がたくさん残っているし、じゃ、あれにしよう。クリッチは目標を見定めてにっこり笑った。

*****

 巨大美少女はゆっくりと腰を持ち上げて、股間から東京タワーを引き抜き、そしてすっくと立ち上がった。
 地面がまたずしんと揺れた。
 大きい。
 ほんとうに大きい。
 再び立ち上がった巨大美少女を見上げて、ツトムは改めてその大きさに驚嘆した。
 周囲の群衆も同じ思いだったのだろう。
 一斉に、ほおっ、というため息が漏れた。
 また、踏まれるかもしれない。
 今度はほんとうに踏み潰されるかもしれない。
 確かにそんな危険が迫ってきた、はずだ。
 が、ツトムに恐怖はなかった。
 そびえ立つ巨大美少女の大きさ、美しさ。その超然とした姿を、呆けたように見つめていたのだ。
 巨大美少女が下を向いた。遙か高みから下界を右に左にきょろきょろと見渡している。まるで何かを探しているようだ。可愛らしい顔の周囲には薄く雲がかかっていた。おそらく暖かい呼気が上空で急に冷やされて雲ができるのだろう。その雲を軽く片手で振り払っている。
 神話のような光景だ。
 相変わらず下界をきょろきょろと見下ろしながら、巨大美少女は胸ポケットから小さな袋を取り出した。小袋は、彼女の手の中で直径20cmくらいの半球型に形を変える。もちろん、ほんとうはたったの20cmなんてはずはない。実際は直径200メートルくらいだろう。東京ドームよりも2まわりくらい大きいドームなのだ。それが逆さになって片手の上にのっている。
 「!」
 視線が合った。
 下界の一点に固定された巨大美少女の視線と、真っ直ぐに見上げながらその表情を伺うツトムの視線がぴったりと一致した。
 にっこりと笑みがこぼれた。
 巨大美少女がツトムや堀田らの立っている周辺に笑いかけたのだ。
 ツトムは、ごくり、と、唾をのんだ。
 ツトムの方を見つめたまま、巨大美少女がずしん、ずしんと歩み寄る。
 そして真上に覆い被さるようにしゃがみ込んだ。
 上空が巨大美少女の姿で占められている。
 もう、逃げることもできない。
 周囲の群衆から悲鳴があがった。

「地球人のみなさん」

急に、彼女が大きな声で話しかけてきた。明らかに、ツトムやその周囲の群衆に対して話しかけてきたのである。

「ちょっとだけ、私と一緒に、白鳥座ε星までつきあってくださいね。」

そして、彼女は、片手を振り上げた。例のドームの球面を鷲掴みにした手だ。笑みを絶やすことなく、ツトムへの視線を片時として切ることもなく・・・
 ずしいいいいいいいいいいん
「うわあああああ!!」
片手で振り下ろされたドームが、ツトムたちの立つ数寄屋橋周辺半径100メートルの街並みを、一瞬にして外界から完全に遮断した。激しい衝撃で、伏せられたドームの内側に閉じこめられた群衆はその場にばたばたと倒れ込んだ。
「あ!」
「閉じこめられた!!」
何人かがあわてて立ち上がり、ドームの厚い内壁を狂ったように叩いた。透明な薄いピンク色の内壁は、そんな抵抗にはびくともしない。透けて見える外壁の外側を巨大な手が押さえつけていた。巨大美少女の手だ。一本一本の指ですら、高層建築のような大きさだ。こんな手で押さえ込まれたのだ。ツトムたちは完全に袋のネズミだ。文字通り、掌中に落ちたのだ。そして、ドーム全体に強烈な重力加速度がかかり、ツトムを含む群衆はふわりと浮き上がった地べたに押しつけられた。

*****

「現地から新しいニュースが入りました。羽田空港から上陸し、品川、芝浦、芝方面に多大な被害を与えた巨大女子高生型エイリアンは、午前8時37分、羽田空港おきに停泊していた宇宙船に帰還し、ほどなく離陸したとのことであります。離陸した宇宙船は上昇を続け、間もなく大気圏外に達する見込みです。繰り返します、巨大女子高生型エイリアンは、午前8時37分、宇宙船に帰還し、離陸いたしました。間もなく大気圏外に達する見込みです。地球の危機は、ひとまず回避されました。あ・・・いま入ったニュースです。巨大女子高生型エイリアンは、宇宙船に帰還するにあたって、有楽町マリオン、西武、阪急を含む数寄屋橋周辺半径200メートルの円形の区画を、まるごと持ち去ったとのことです。エイリアンに持ち去られたと見られる区画は、地表が約10メートルほど剔られています。何も残っていません。半径100メートルの円形の領域が、すっぽり空っぽになってしまいました。このときこの領域の中にいた人たち、およそ5000人ほどと予想されますが、この人たちの行方も全く不明です。未確認情報ですが、巨大女子高生型エイリアンが、区画もろとも行方不明になった人々を宇宙船に持ち込んだと見られています。繰り返します・・・」

*****

「それでは今回の巨大女子高生型エイリアン来襲にについて総括いたしたいのですが。」
既にそのエイリアンが去ってしまった後であるので、拡大政府首脳会議出席者たちの表情にもややゆとりが伺われていた。司会を務める内閣官房長官だけが未だに緊張の面もちである。
「幸いエイリアンは自ら退却してくれたわけでありますが、この間、我が国の防衛力はエイリアンに対して全く無力だったわけであります。結果として数千人が犠牲となり、また、数千人が有楽町の一区画ともども行方不明になりました。おそらくエイリアンに連れ去られたものと思います。」
「結局、エイリアンの目的はなんだったのですか?」
総務大臣が口をはさんだ。
「我が国の防衛網をやすやすと突破し、首都に侵攻して、いよいよこれから破壊活動か?と思ったら、東京タワーで、その、まあ、なんというか・・・」
「要するにオナニーがしたかったんじゃないですか。」
女傑で名高い外務大臣が単刀直入に補足した。
「まあ、あれだけ大きな身体なんですから、東京タワーくらいないと満足できなかったんでしょ。」
「そ、そんなあ・・・たかが、じ、自慰行為のために、わざわざ地球までやってきたというんですか?」
「あのくらいの年頃はいわゆる性の目覚めといいますか、耽ってしまうことが多いんです。」
外務大臣は自信たっぷりだ。
「私もそうでした。」
「しかしそれでは身も蓋もない。」
官房長官はやれやれという表情で首を横に振った。
「今回お集まりいただいたのは、このたびの経験を、今後どのように生かしていくか検討していただくためです。何か得られた教訓などは・・・」
「教訓はありましたよ。」
今度は東京都知事が口火を切った。
「そもそも国民は防衛意識が希薄すぎたのです。いわゆる平和ボケですな。実に嘆かわしい。このままではテロリストやテロ支援国家の思いのままでしたな。ところが今回の事件で国民は防衛の重要性をいきなり目の当たりにしたわけです。これを一過性のブームにしてはいかん。このまま継続性を持った国防の増強を目指さないと・・・」
「ということは、今回のエイリアンはいわば黒船だったとおっしゃりたいわけですか?」
野党第1党の党首が聞き返す。東京都知事はぷいと横を向いて答えた。
「ふん、そんなふうにネガティヴな捉え方ばかりする姿勢が国民の自虐的意識を煽るんだ。」
「ネガティヴということはないでしょう。あなたの偏狭なナショナリズムこそ問題です!」
「まあまあまあ」
うんざりした表情で官房長官が割って入った。東京都知事は意にも介さず自説を述べ続ける。
「揚げ足をとるのは構わないが、僕はネガティヴな捉え方ばかりするのは良くないといっているんだ。むしろ今回のエイリアン襲来は国民に大きな『国防意識』というプレゼントを残していってくれた、と解釈すべきじゃないか。だから黒船というよりは、ううん、すなわち、プレゼントを持ってきたんだから・・・」
「すなわち?」
「・・・ううん、巨大なサンタクロースというか・・・」
「巨大なサンタクロース?」
会場を一瞬だけ異常な沈黙が支配した。官房長官は即座にその意味を悟って頭を抱え込んだ。だめだ。この会議はもうおしまいだ・・・案の定、出席者たちの眼がぎらぎらと輝き始めた。
「巨大なサンタクロース!!」
「巨大サンタさん!!」
「おお!巨大サンタさん!!」
「元スッチーの仲谷かおりさん!!」
「いい乳でしたなあ・・・」
「地球に素晴らしいプレゼントを携えて。」
「メルヘンだあ・・・」
「いや、私は許せない。」
その中で独り行政改革担当大臣が毅然とした態度で立ち上がった。
「あんな絡みひとつないものは妄想特撮とはいえませんよ。看板に偽りあり!河崎監督ともあろうものが、全くもって駄作の極みです!!」
「そこまでいうことはないんじゃ・・・」
「お父さん、甘いですよ!!!」
行政改革担当大臣は、なだめにかかった東京都知事を一喝した。
「みなさんは現状認識が甘すぎます。実際あの巨大サンタさんはさっぱり売れなかったではありませんか!路線が甘かったんですよ。絡みもなんにもない。もう何やってんだか・・・」
「先生のお考えこそ甘いんじゃないんですか?」
またまた外務大臣がダミ声を張り上げた。
「先生のお考えはGTSフェチに立脚しているようで今ひとつノーマルから脱却できないでいるんですよ。」
「どういうことでしょう?」
行政改革担当大臣が太い眉毛をつり上げて気色ばむ。外務大臣はたじろがない。
「絡みなんてのはあくまでもノーマルなエロの目で見てこそ美味しいもので、真のGTSフェチはそんなもの望みません。フェチはあくまでもフェチ、アブノーマルであることをお忘れなく。ええ、トイレ行かせてください。」
しゃべるだけしゃべると、外務大臣は意気揚々とおしっこしに行ってしまった。あっけにとられた会議室の沈黙を破ったのは国土交通大臣である。
「ええ、わたくしも外務大臣と同じ女性の立場から申し上げますが、必要なのは絡みじゃくて。オナニーだと思いますね。これがGTSエロの王道でございますことよ。」
こうなるともう次から次へと各者入り乱れて参入し声高に自説を吹きまくる。
「そのご意見には必ずしも賛成できませんな。GTSフェチにとっても絡みは重要なおかずネタですよ。」
「いやいや、与党の考え方はどちらも間違っています。そもそもエロはいらないんです。可愛い女の子が大きけりゃそれで十分じゃないですか。」
「それは極論ですね。野党の皆さんは反対するばかりで相変わらず現実が見えていらっしゃらない。エロは絶対に必要です。」
「じゃ、あなたたちは『踏み』や『喰い』もエロに含めるのんですか?」
「エロですよ。立派なエロです。破壊も含め、そうした行為にしか真のエロチシズムを見出せないとすら言えます。」
「ちょっと待ってください!エロチシズムというならスカトロを避けて通るわけにはいかないでしょう。」
「だからあんたみたいな学者上がりには世間のことがわからないっていうんだ!!」
「なんだと!!」
「お待ち下さい!文民の先生方は論点がずれております!そもそもあんなハイティーン以上の女優を使ってしまっては、エロを入れようが入れまいが何の意味もないではありませんか。」
「そんなことはない。熟女だって乳が大きければ・・・」
「ええと、私から、その・・・」
ここで黙りこくっていた官房長官がおずおずと口をはさんだ。たちまち国土交通大臣が凄い形相で睨みつける。
「またあなた、皆さんの討論が白熱してくるとすぐにそうやって水を差そうとなさる。困ったものですわ。」
「い、いや、この論争は、その、不毛というか・・・」
「不毛ですと?!」
野党第3党の党首が声を荒げた。
「皆さんが理念について意見を闘わせていることのどこが不毛だというのですか?」
「いや、その、理念、といいますか、その、そういった抽象論を展開しているばかりでは、その・・・」
助けを求めるように傍らの首相に視線を送る。首相はぷいと横を向いた。官房長官はあきらめて答弁を続ける。
「ですから、その、問題を解決するためには、具体的な企画のようなものがないと、その・・・」
「具体的な企画?」
全員が一斉に官房長官を注視した。官房長官はいよいよもじもじしながら、下を向いた。
「じゃ、官房長官にはなにか腹案のようなものでもあるのですか?」
「は、はあ・・・」
官房長官はメガネを外して拭きながら、ぽつぽつと自説を展開し始めた。
「・・・確かにその、私としても巨大サンタさんはいかがなものかと思われまして、その、ですからその教訓を踏まえますと、その、ここはひとつミニモニ。のメンバー4人に巨大化してもらって街を破壊しまくる『メガモニ。ランページ!ズンズンズン』という企画などはどうかと・・・」
「ほう・・・」
会議室に一斉にため息が漏れた。
「『メガモニ。』ですか・・・」
「発想が加護亜依から飛躍できてない感もありますが・・・」
「妄想としてはまずまずですな。」
「長官、やればできるじゃないですか。」
「いや、どうも。」
官房長官は嬉しそうに頭をかいた。
「その企画なら応用もききますぞ。第2弾としてプッチモニ。の3人が巨大化する『ビッグモニ。』とか。」
「あ、私はそっちの方がいいな。」
「モー娘。系に拘泥するのも考えものですよ。深キョンの26cmの足が巨大化するのなんか、想像するだけでもうたまりませんわ。」
「いい!それいい!踏みフェチにはこたえられません!!」
「そしてお金を贅沢に使いながら奇想天外な方法で数々の難事件に・・・」
「またそうやってすぐに色あせてしまいそうな時事ネタを絡ますし。」
ここで満を持して与党第1党の幹事長が発言を求めた。
「こほん、私が個人的に最も巨大化してほしいのは、こほん、『りなちゃん』なんですけど・・・」
「りなちゃん?」
「誰ですか、それ?」
「ほら、あの隠れた高視聴率番組『いないいないばあ』に出ている女の子ですよ。」
「ひええ、マニアック!!」
「そんな番組、普通の人は視てないって。」
「そんなことありませんよ。『りなちゃん』はいずれブレイク間違いなしです。実際にもう一部好事家の間では人気沸騰中なんですから。」
「ちょっと待ってください。実は私もこの場だけでこっそりとおすすめしたい女の子がいるんですが・・・」
この日の会議はいつになく盛り上がり、予定時間を大幅にオーバーして白熱した議論が闘わされたそうな。具体的な企画もまとまったとかまとまらなかったとか・・・

薔薇色の夜明け・つづく