努力は報われる
By JUNKMAN

努力は報われる
それが俺の信念だ
・・・
俺は高校在学中にオリンピックに出場して、マラソンで金メダルを取った
それは誰よりも走り込んでいたからだ
練習はウソをつかない
努力が全てだ
でも、まだ努力は足りない
・・・
それで大学に進学し、原子物理学の研究を始めたのだ
すぐに俺は常温核融合に成功し、得られたエネルギーを安全に取り出す技術を開発した
早速ストックホルムから連絡が来て、俺はノーベル物理学賞を受賞した
でもそれは俺の運が良かったからではない
努力をしたからだ
努力
努力が全てだ
でも、まだ俺の努力は足りない
・・・
それで俺は大学を中退すると会社を設立した
あっという間に会社は急成長し、俺は巨万の富を得た
もちろん、それもそうなるように俺が努力をしたからだ
そして俺は妻を得た
彼女はすらりと背が高く、清楚で、気立てが良く、知的な美人だ
彼女を知る男たちの全てが彼女に夢中だった
俺はそのライバルたちを蹴落として、彼女を妻にした
それは俺が裕福だったからではない
イケメンだったからでもない
俺が他の誰よりも、彼女を妻にしようと努力したからだ
・・・
こうして俺は幸せな生活を手に入れた
俺の会社の経営は安定し、黙っていてもどんどん収入が伸びていく
家に帰れば、優しい妻は俺の心を癒してくれる
気づいてみたら子供も5人も生まれていて、みなすくすくと健全に育っている
幸せだ
何も足りないものがない
それもこれも、全てここまで俺が努力をしてきたからだ
そう思っていたのだ
・・・
ところが俺はそこで周囲から指摘された
努力が足りない
自分の幸せだけを求め、社会全体にそれを還元する努力が足りない
・・・
それで俺は国会議員に立候補したのだ
努力の甲斐あって当選すると、俺はめきめきと頭角を現し、あっという間に総理大臣になった
そこで俺は超人的な努力をし、劇的な減税を断行しつつ国家の財政赤字を解消して、福祉を桁違いに充実させることに成功した
それと同時に俺は積極的な首脳外交を行って局地紛争を悉く解決し、その勢いを借りて地球上から核兵器を廃絶させた
この圧倒的な実績を残して、俺は政界から引退したのだ
・・・
努力
努力が全てだ
生まれ持った力に差などない
そこからどれだけ努力するかによって為すことに違いが生まれるのだ
自分にはできない
自分には無理だ
自分には越えられない
そんな弱音は、全て努力をしなかった者の言い訳だ
努力は報われる
努力は必ず報われる
・・・
いま、俺は病室のベッドに横たわり、静かに最期の時を迎えようとしていた
傍らでは、上品に年を重ねた俺の妻と、もうそれぞれ社会で成功を収めつつある5人の子供たち、そしてもはや何人いるか数えることも難しいほどの孫や曾孫たちが、皆心配そうな眼差しで俺を見つめている
でも、俺には痛みも苦しみもない
あるのはやり遂げたという満足感だけだ
努力して、その甲斐があった
思い残すことはない
俺はうっすらと口元に笑みを浮かべながら、ゆっくりと、眼を閉じた
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
そこで、目が覚めた

*****

「・・・いつまで寝てるの?ほら!起きて!」

けたたましい声にたたき起こされて、どろんとしていた俺の意識が瞬時に現実に戻る
ああ
今までの人生は夢だったのか
俺はぷるぷると頭を振る
俺の信念を具現化したような夢だった
そう
人生はかくあるべき
努力して
チャンスをものにして
その結果、成功が約束される
努力だ
努力が全てだ
その向こうには必ず成功がある
努力は報われるのだ
・・・
改めて自分の信念を確かめながら、俺はおもむろに上を見る
その目に映る上空
視界いっぱいに広がるほどに巨大な少女が、しゃがみ込んで真上から俺を見下ろしていた

「早く目を覚まして、遊ぼうよ!」

ずどーん
俺の目の前にとても抱えきれないサイズのバカでかい指が突き下ろされる

「ほら、登って!」

全裸の俺は、目の前の巨大な指を呆然と見つめる
夢ではない、現実の世界が、展開され始めたのだ

*****

俺は人間だ
間違いなく人間だ
ただ、俺の種族は、地球上の他のどの種族に比べても遥かに身体が小さい
身長にして1/200
体重で比較すれば1/8000000
でも、それだけだ
見た目は大きな人間たちと何も変わらない
知性だってそうだ
いや、きっと俺たちの種族の方がインテリジェンスは高い
だから間違いなく俺たちは人間だ
人間だから持って生まれてきた力に差はない
同じ能力と同じ権利を持っている
あとはいかに努力するかの問題だ
その機会が均等に与えられるかどうかだ
・・・
ところが、大きい種族はこの真理を認めなかった
彼らは野蛮にも力押しで俺たちの種族をねじ伏せたのである
いきなり真正面から力攻めされたら俺たちの種族は分が悪い
かつてこの国の津々浦々に棲息して平和な暮らしを営んでいた俺たちの種族は、いつの間にかその数を減らし、山や森の奥でひっそりと隠れ暮らすようになった
もちろん、こんな現状は許されるものではない
正義に反している
そこでしばしば俺たちの種族は、巨人種族に正々堂々と理を説いて、その野蛮な行いを改めさせようと試みた
全て無駄だった
道理などまるで理解しない愚かな巨人種族は、俺たちの訴える正論などまるで無視して、そのテリトリーを侵略し続けた
侵略されたテリトリーに棲んでいた者は残らず殺されるか捕まえられる
俺もそうだった
俺の暮らしていた里は侵入してきた巨人に踏みにじられ、勇敢に戦おうとした俺はあっさり摘みあげられ、虫かごに入れられ、巨人の街に連行され、ペットショップに陳列され、はした金で一般市民に買い上げられ、そしてその小学生の娘に玩具として投げ与えられたのだ
その娘が、いま俺の頭上に聳え立っているこの巨大な少女なのである

*****

「何してるの?こびとくん、早くボクの指に登ってよ!!」

重低音で、かつ甲高い巨大少女の声で我に返った
うっすら茶髪の入った癖っ毛のセミロング
切れ長の眼もとが涼しいローティーンの美少女だ
ざっと見た感じ10~11歳くらいだろうか
確か現役小学生のはずである
本来、俺のような立派な大人が相手にすべき対象ではない
ところが、その華奢で可愛らしいはずの小学生の小娘は、しゃがみ込んで俺の上空の視界を占拠するほどの大巨人だ
俺は生まれ育った森の中の里で、こんなに巨大な生物を見たことがなかった
そんな大巨人女子小学生を見上げる俺は、その威圧感に足がすくむ
このだだっ広い空間はその少女の勉強部屋
そうだ
俺はこの巨人少女のペットなのだ
ペットとして飼われているのだ
その現実には納得できないが、受け容れないわけにもいかない
この女子小学生の身体の巨大さは、それだけで俺に文句の一つもいわせない威圧感があった
俺はしぶしぶ目の前の馬鹿でかい人差し指ににじり寄る
そして垂直に切り立つその指腹をよじ登る
・・・
はずだったが
・・・
・・・
できなかった

「・・・何してるの?・・・ぷぷ、もしかして、登れないの?」

巨大女子小学生の嘲笑が俺の背後に容赦なく襲いかかる
くそ
こんなこと、できなくてどうする!
俺は上機嫌に吊り上る巨大な生意気少女の眼を睨み付けた
・・・
だが
挑んでも
挑んでも
指は俺を拒み続けた
・・・
大きすぎるのだ
小学生の女の子の華奢な指だというのに、その直径は俺の身長よりもある
手をまわしても抱え込むことなど到底不可能だ
里の中では随一の大男といわれているが、こんな小娘の指に翻弄されるとは
・・・
それでも身体能力の高い俺なら、わずかな凹凸を頼りによじ登ることができたはずだ
そう、いつもの俺にならなんでもない課題のはずだった
ところが、この指は、巨大なだけではなく、ぬらぬらと濡れている
それで滑って手がかりが掴めない
唾液だ
唾液にまみれているのだ

「あーあ、ボクの指にも上れないんだあ・・・こびとくんって、ホントになーんにもできないんだね♡」

お前だ!
お前がわざわざ指を舐めたから、それで滑って俺は登れないんだ!
滑るだけじゃない
このつんと鼻を突く酸っぱくさい唾液の臭い
幼稚な甘ったるさと、それでも妙に惹き寄せられる女の子の匂い
・・・
惹き寄せられる女の子の匂い?
こんなガキに惹き寄せられる女の子の匂い?
・・・
・・・
ありえない
認めたくない
認めたくないのだが、そんな俺の意図を無視して身体は暴走していた
勃起してしまったのだ
目の間に巨大な少女の指を付きたてられて
全裸のままその指を登ろうとして登りきれず
酸っぱくさい唾液で全身べとべとになり
その匂いをかがされ
罵倒され
屈辱にまみれ
打ちひしがれ
股間はぎんぎんに勃起した
・・・
これでは身体能力をフルに発揮することなどできない
俺は諦めて聳え立つ指の前で座り込み、頭を抱えた

「んふふ、なんにもできないこびとくん、役立たずだね♡」

役立たず?
俺が役立たずだって?
それはないだろ!
これはでかすぎる
でかいのにしかも滑るんだ
それじゃできないに決まっている!
俺には無理だ!
とても越えられない!
・・・
・・・
そこで俺は我に返った
・・・
できないのか?
無理なのか?
越えられないのか?
では、それは俺の努力不足なのか?
・・・
・・・
・・・
思考に行き詰った俺の身体を、いきなり巨大小学生少女は親指と人差し指の2本だけでひょいと摘みあげた

「!」

上がる
上がる
俺の身体が上空高く持ち上げられる
巨大女子小学生は俺を指二本で摘まみあげたまま立ち上がったのだ
まだ上がる
まだまだ上がる
何度経験しても慣れることがないこの高さ
そして不意に俺を挟みつけた指の力が緩み、俺は肌色の大広間に放り出された
巨大女子小学生の掌の上だ

「んふふふふ、キミってホントに小さいね♡」

俺を掌に載せた巨大女子小学生の切れ長の眼が、至近距離から俺を覗き込む
舐りまわすような巨大な視線
しかし、全裸の俺は身を隠すこともできない
なぜならば、ここはその少女の掌の上なのだ
逃げることも隠れることもできないのだ
とりあえず両手で勃起したペニスを覆い隠しながら、俺は赤面してその場に座り込んだ
その様子をしっかり確認した巨大女子小学生は、切れ長の眼を小生意気に釣り上げながら愉快そうに笑った

「・・・んふふふふ、キミって、こんな状況でその小っちゃなちんちんを勃てちゃうんだ。びっくりしたなあ。小さくて弱くて何もできない哀れなこびとくんだと思ってたけど、それに加えてど変態くんだったんだね。んふふ、恥ずかしいね♡」

「・・・」

反論しようにも言葉が出てこない
・・・
どうして
どうしてこの屈辱的な状況で勃起してしまったのか
この子は確かに美少女だ
それは認める
近い将来にはとんでもない美女へと成長するだろう
でも、それはあくまでも将来の話
いまはせいぜい10~11歳の小学生だ
胸なんかぺったんこ
全然俺のストライクゾーンではない
俺にはロリコンの趣味なんてないのだ
それに加えてこの巨大さ
ガキのくせに俺を遥かに凌駕する巨大さ
そしてその身体の巨大さをかさに着て、俺に対して意地悪三昧やり放題
こんな小娘
こんな幼稚な小娘
ほんとうは知性も教養もある大人の俺がしっかり教育してやらなきゃならないのに
だというのに
この女子小学生は自分の方が巨大だからという理由にもならない理由で俺を玩具扱いする
そんな理不尽な扱いに俺の方も文句ひとつ言えない
それどころか
屈辱のどん底で勃起してしまった
・・・
間違っている!
こんな現実は間違っている!

「・・・あーあ、また寝ちゃったよ。こびとくん、サボりすぎだよ。キミはボクの玩具なんだから、ちゃんと遊んでくれなきゃダメだよ!」

打ちひしがれて両手で頭を抱え込んだ俺に向かって、容赦なく巨大少女が言葉を続ける

「サボってばかりいる玩具はお仕置きだよ!」

俺は頭上に異様な雰囲気を感じて頭を上げた

「・・・あーん♡」

「!!!」

なんだこれは!
赤黒くてぬらぬら光る巨大な洞穴が頭上から俺に向かって降臨してくる
その中からひときわ肉厚なピンク色の突起と、さっき嗅いだばかりの生暖かくて酸っぱくさくて幼稚な匂いが湧き出してくる
さっき嗅がされたばかりの匂い
唾液臭
・・・
ということは
・・・
・・・
口だ!
これは口だ!
とてつもなく巨大な口だ!
この巨大なイタズラ少女は、悪ふざけの延長で俺を丸呑みしようとしているのだ!
あんな巨大な口に放り込まれたらひとたまりもない!
さすがの俺も命の危険を感じ、全力を振り絞って大声を上げた

「やめろおおおおおおおお!」

「!」

今度は巨大女子小学生の方が驚く番だった
まさか俺が言葉を発するとは思ってもみなかったようだ
切れ長の眼を丸くして黙りこくった
これはチャンスだ
俺はたたみ掛けた

「いい加減にしろ!いくらお前の身体が大きいからって、大人に向かってその態度は失礼だぞ!」

「・・・ボ、ボクの身体が大きいんじゃないよ、キミが小さいんだよ・・・」

言い返しながらも巨大女子小学生はどこか及び腰だ
意外な俺の剣幕に気圧されたのだ
いくら身体は巨大だからといって、ガキはガキ
大人が本気になって怒ればこんなものだ

「お前が大きいとか俺が小さいとかはどうでもいい!大事なことは、俺が大人でお前は子供だということだ!まだ何も知らない子供のくせに、大人に向かって失礼なことはやめろ!!!これは命令だ!!!」

「!!!」

巨大女子小学生は涙目になる

「・・・で、で、でも、キミは小さくて、な、なにもできないじゃない。何もできないくせに、な、何が大人よ。子供のボクのいいなりになるしかないくせに・・・」

・・・
・・・
勝ったな
俺はそう思った
この巨大女子小学生は反論しているようで、実は追い詰められている
いつも弱い者を攻めてばかりいると、逆に攻められたときに脆くなるのだ
俺は調子に乗っていつもの持論を唱えてしまった

「俺が何もできないなんてことはないぞ。努力すれば何でもできる。俺だけじゃない、誰でもそうだ。持って生まれた力に差などない。努力が全てだ。いいか、小娘、よーく覚えておけ。努力は報われるんだ!!!」

「・・・」

「・・・くすくすくす」

案の定黙り込んでしまった巨大女子小学生に代わって、背後で誰かが忍び笑いした
俺は慌てて振り返る
そこには巨大女子小学生によく似た切れ長の眼差しを持つキレッキレの巨大美少女が立っていた
前髪ぱっつんの黒いさらさらロングヘアーにセーラー服が良く似合うスレンダーボディ
それはあの巨大女子小学生の16歳になる姉であった

「・・・そのこびとさん、面白いことをおっしゃるわね♡」

巨大小学生妹は、黒髪の巨大女子高生姉に向かって俺をのせた掌を付きつけながら、涙目になって言い立てた

「面白くなんかないよ!このこびと、生意気だよ!全然可愛くないよ!」

「あなたにはちょっと扱いきれないみたいね、くすくす。このこびとさん、わたしがいただいても良いかしら?」

「あげるよ!お姉ちゃんにあげるよ!ボクはこんな生意気なこびとなんていらないよ!お姉ちゃんの好きにしていいよっ!」

「そう、どうもあ・り・が・と♡」

巨大小学生妹は、差し出された巨大女子高生姉の掌の上に俺を無造作に放り投げる
咄嗟に受け身を取りながら見上げた俺に向かって、巨大女子高生姉は悪戯っぽくウインクしてみせた

「・・・じゃ、こびとさん、続きはわたしの部屋で、ね♡くすくす」

*****

かちゃり
黒髪の女子高生姉は、俺を掌の上に載せたまま自室に戻ると、丁寧に鍵をかけた
他に誰も中に入れないという意思表示だ
ごくり
俺は唾をのみこんだ
・・・
・・・
正直に言おう
俺はこの女子高生姉にある種の好感のようなものを抱いていた
断っておくが決して性的興味ではない
もちろんこの女子高生姉が飛び抜けた美貌の持ち主であることは認める
まさにキレッキレの美少女だ
妹と違って16歳という年齢がストライクゾーンにかすっていることも確かだ
しかし
何といっても巨大すぎる
身体が巨大すぎて性愛対象とはなりえない
タテマエの上では
もちろん、さっき巨大小学生妹に嘲笑されて勃起した俺は、このタテマエがどこまで本物なのか自信がなくなっていた
それにしても、これだけはいえる
俺がこの黒髪の女子高生姉に抱いた好感の根源は性的魅力ではない
知性だ
俺にはわかる
この娘は頭がいい
この娘はちゃんと考えている
その切れ長の眼に宿る静かで落ち着いたインテリジェンスが俺の好感を掻き立てるのだ
この娘は頭が切れる
だから俺の話も理解してくれるに違いない
・・・
そんな女子高生姉と二人きりで部屋に閉じこもることになったのだ
俺がついつい緊張してしまったのも無理はあるまい
・・・
・・・
そんな俺の緊張を打ち破るかのように、巨大女子高生姉はしゃがみ込むと、フローリングの床に手をおろし、俺はそこに振り落としたのだ

*****

「いたたたたた・・・」

不意にフローリングに振り落とされたのでは、さすがに受け身をしても身体をしこたま打ち付ける
俺は腰をさすりながら真上を見上げた

「・・・」

言葉もなく息をのんだ
黒髪の女子高生姉がそこにすっくと立ち上がっていた
両足の間を少し取り、まっすぐに立ち上がっていた
・・・
・・・
何という
巨大さだ
・・・
・・・
・・・
俺は里でいちばんの大男だった
その俺が背伸びをしても、この娘の足趾の爪に届かない
拇趾などは、高さが優に俺の身長の三倍もある
そんな家レベルのサイズを持つ足趾を5つも付設させた巨大な生足は、酸っぱいような、汗臭いような、それでいて間違いなく思春期の女の子のような、生暖かい独特の臭気を放散させていた
きっと靴下を脱いだばかりなのだろう
あるいは、俺にその足を生で見せつけるためにわざわざ脱いでくれたのかもしれない
それにしてもでかい
この足だけで里の集会所を5つくらい一気に踏み潰してしまえる大きさだ
俺は、この巨大な女子高生の生足が、侵略者を撃退しようと立ち上がった俺の里の防衛軍の屈強な男たちを全員まとめて一足で踏み潰してしまう光景を妄想した
こんなに巨大なのに、でもこれは単に彼女のパーツでしかない
足だって、同じ大きさのものが向こうにもう一つ鎮座している
更にその上空にどーんと伸びる脚
遥か上空に伸びている
俺の棲んでいた里にはあの足に匹敵する大きさの建造物もない
ましてや、その上に伸びるこの脚のような超高層建築物は想像することすらできない
そう、これは見たことも想像したこともない巨大な塔だ
遠くから見ているとスリムで華奢な女の子の脚なのに、真下から見上げると圧倒的な力強さが漲る雄大な塔だ
だってこの脚は、このありえない巨体を二本で支えているのだ
もの凄い力を秘めているに違いない
その更に上空で、二本の巨大脚は、これ見よがしに曝け出されたパンツに向かって合流する
更にその上にはスカートが天蓋のように広がって、もうその向こうは見えない
見えないが予想はつく
女子高生姉は笑っているに違いない
その巨大なボディを足元の俺に見せつけて、「どう?わたし巨大でしょ?」と俺に思い知らせて、その現実の前でショックを受ける俺を嘲笑っているに違いない
俺は悲しい気持ちになった
・・・
俺がちょっと好感を抱いていた女子高生姉は、実はこんな超絶大巨人だったのだ
俺はこの娘の前では一匹のありんこに過ぎない
圧倒的な大きさの差だ
いくら努力してみたところで、生まれ持ったこの大きさの差を乗り越えることなどできるのだろうか?
・・・
・・・

「・・・くすくす、自分の小ささがおわかりになりましたか?」

そのとき、俺に視線を合わせようともせず、上空から呟くように巨大女子高生姉が話しかけてきた

「これね、背比べのつもりなんですよ。ほら、同じ平面上に立ってるでしょ?公平になるように、わたし靴下を脱ぎました。ほらほら、ちゃんと比べてみてくださいよ。どうですか?うーん、ちょっと差があるみたいですね。デートしても、わたしたちあまり釣り合いは良くないかしら?くすくす」

「・・・」

「で、真下から見上げるわたしは如何ですか?わたしみたいな普通の女の子が、あなたには山のような大巨人に見えちゃうんじゃないですか?失礼しちゃいますね。ま、わたしにはあなたなんかありんこにしか見えないんですけど、くすくす」

それだけ言い放つと、再び巨大女子高生姉はその場にしゃがみ込み、足元の俺を見下ろしながら言葉を続けた。

「・・・わたしたち、まるで大きさが違うんですよ。生まれ持った力が全然違うんです。それでもまだ、あなたは努力すればなんとかなると思っていらっしゃるんですか?」

「・・・」

巨大な、しかし同時に圧倒的に美しい女子高生姉の視線に真上からロックオンされ、俺はまたしても言葉に詰まっていた
その通りだ
この持って生まれた大きさの差、力の差は、圧倒的だ
この差を超えることなどできるはずがない
この巨大女子高生姉が立ち上がってその姿を余すところなく俺に見せつけただけで、俺の今までの信念はぐらりと揺らいだ
それだけの説得力があった
俺は巨大な人間には到底及ばない
俺は哀れなこびとだ
俺は人間では
ない
・・・
のか?
・・・
・・・
・・・
ぶるぶるぶる
俺は頭を振った
負けないぞ
こんなことでは負けないぞ
自分の信念を失ったら、俺には生きている価値などない
俺はすうっと大きく息を吸い込むと、渾身の力を込めて反論した

「当たり前だ!」

「?」

「人間なら、持って生まれた力に大きな差はない!俺たちの種族には、お前たち大きな人間の種族と同様に生きていく能力と、権利がある!重要なのは努力だ!人間は、努力をすれば、越えられない壁などないのだっ!」

「・・・くすくすくす」

黒髪の巨大女子高生姉は、切れ長の目をさらに細めて含み笑いした

「何が可笑しい?」

「ホントにあなたのようなこびとさんも努力すれば報われると思っていらっしゃるんですか?」

「ああ、そうだ!」

「くすくす、では、その努力とやらに越えられない壁がないところを、わたしに見せていただけませんか?」

「ん?」

ずしいいいいいいいいいいいいいいん!!!
いきなり巨大女子高生姉がその場に尻をついた

「うわあああああああああ!」

衝撃波で俺は虚空に放り投げられる
ひゅううううううう
どさん

「・・・いたたたたたた」

フローリングに叩きつけられた俺は、文句の一つでも言おうと思って顔をあげ、そして絶句した

「!!!」

目の前に真っ白い壁が立ちはだかっていた
俺の里では見たことがないサイズの巨大な白い絶壁
薄温かく、淫猥な匂いが漂う歪な三角形の大絶壁
・・・
パンツだ
・・・
この巨大女子高生姉は、床に尻をつき、そこで少しのけ反りながらはしたなく大股を広げ、パンツを穿いた股間をあらわに剥き出して、俺の面前にどーだとばかりに突きつけていたのだ!

「・・・どうですか?眺めは気に入っていただけましたか?くすくす」

「ど・・・どういうつもりだ?」

「あなたも、立派な男の人なんですよね?」

巨大女子高生姉はわざとらしく小首を傾げながら横目で俺を見下ろす

「・・・なら、女の子を気持ちよくすることくらい、もちろんできますよね?」

「!」

「『努力をすれば越えられない壁はないっ!』って、さっき大見栄切ったばかりじゃないですか。なら早速努力してくださいよ。努力してわたしを気持ちよくしてみせてくださいよ。もちろんわたしも協力しますよ。ほらほら、パンツですよ。こうやってあなたの真ん前でおっぴろげてあげますよ。もちろん、その中は女の子のいちばん感じちゃうところですよ♡どうですか?いけそうですか?じゃあ、頑張ってくださいね、くすくす」

「な、な、な・・・」

全裸の俺は、大股広げた巨大女子高生の股間に対峙して、わなわなと震えていた
・・・
・・・
でかい
でかすぎる
あの真っ白いパンツだけで、俺を遥かに見おろす絶壁になっている
文字通り「越えられない壁」になっている
この巨大女子高生姉の身体に比較すればほんの小さなパンツだが、でもあのパンツは俺の里の男たち全員を包み込んでおつりがくるサイズがあるのだ
そんな超巨大パンツに向かって、いったい俺に何ができると
・・・
・・・
いや
待て
・・・
別に俺はパンツに何かしなければならないわけではない
俺に与えられた課題は、このパンツを穿いているバカでかい女子高生を気持ちよくさせることだ
・・・
そうだ
あのパンツに何か仕掛ける必要はない
脱がせればよいのだ
いやいや、そんなことできなくても、その下に潜り込めばよいのだ
・・・
よし
・・・
・・・
・・・
俺は覚悟を決めると、気合一発パンツの大絶壁に向かって歩み寄った

*****

「・・・臭い」

それが俺の素直な第一印象だった
パンツの大絶壁である
近寄れば近寄るほど、むせるような臭気が俺を襲う
アンモニアと
メタンと
アルデヒドと
チーズと
ヨーグルトと
生わかめと
アンチョビと
しめサバと
チョリソと
米酢と
レモンと
バナナと
青リンゴを
一つの器に入れて念入りにぐちゃぐちゃとかき混ぜたような耐え切れない悪臭だ
これは酷い
満足に息もつけない
ただちに逃げ出したい
卒倒しそうになりながら、俺はまたしてもむくむくと勃起した
嫌で嫌でたまらないのに、あり得ないほど雄々しく勃起した
・・・
でも、もはや恥じている場合ではない
むしろ好都合だ
俺はこのでか女を感じさせてやらなければならないのだ
ならば俺自身も極限まで淫猥になる
それが勝利への近道だ
俺はみっともなくぎんぎんにペニスを勃起させたまま、悪臭の源である生暖かく真っ白い壁に挑んだ
いや
本当の悪臭の源はあの白い壁ではない
その奥に隠されている洞窟だ
それが俺の真のターゲットなのだ
その前に立ちふさがる白い壁=パンツなど、ただの布きれだ
突き破ってしまえ
・・・
・・・
そう思って
勇んで攻め込んだのだ
・・・
ところが、そのただの布切れが難敵だった
太鼓の皮くらいの厚みしかないはずなのに、頑強に俺の侵入を拒む
突き破ろうとしても破れない
パンチしても俺の拳から血が滲み出るだけだ
全力で体当たりしても撓みすらせず、逆に俺の身体は軽々と弾き飛ばされる
線維の隙間に手を入れて引きちぎろうとしたがびくともしない
ならばいっそのこと噛み切ってやろうかと思ってみたが文字通り歯が立たなかった
・・・
俺は
女子高生のパンツ一枚突き破ることができないのか
・・・
自分の無力さに腹をたて、俺のペニスはますます暴力的にいきり勃った
・・・
・・・
仕方ない
作戦変更だ
俺は降り注ぐ生暖かい悪臭を全身で受け止めながら、三角形の大絶壁を迂回して、巨大な太腿がにゅっと顔を出すその境界線にたどり着いた
ここから中に潜り込もう
意を決してパンツを縁取るゴムに両手をかけた
ぐ!
全力を込めてパンツのゴムを引っ張り上げる
・・・
でも
・・・
持ち上がらない
・・・
・・・
ぱっつんぱっつんの巨大パンツのゴムは、俺が全身の力を込めて引っ張り上げようとしても微動だにしない
それどころか、俺がその下に手を滑り込ますこともできない
かちかちの固さで俺を完全にシャットアウトする
これがゴムか?
これがパンツのゴムなのか?
まるで鉄骨ではないか
鉄骨を素手でまくり上げるなんて、生身の人間にできるはずがないではないか
これが本当にただのパンツのゴムなのか?
・・・
万事休す
またしても打ちのめされ、屈辱にまみれ、俺は射精寸前になった
・・・
・・・
そのとき、尻もちをつきながら両手でスカートの端を摘まみ上げて俺の挑戦を悠然と見物していた巨大女子高生姉が、おもむろに呑気な声をかけてきた

「まだ・・・ですかあ?」

「ぬ・・・」

俺は涙目になって巨大女子高生姉を睨み上げる
俺を見下ろす切れ長の瞳は嘲りに満ちていた

「・・・いつまでわたしのパンツに立ち向かってるんですか?しかも悉く跳ね返されてますよね?もしかして、パンツに歯が立たないんですか?口ほどにもないですね、くすくす。わたし、ちっとも気持ちよくならないんですけど。というか、そもそもあなたがそこにいることすら気づきませんでしたよ♡くすくす」

「ぐぬぬ・・・」

「結局あなたは偉そうなことを言っても女の子のパンツ以下なんです。ほら、だってあなたはパンツより圧倒的に小さいでしょ?そのうえ、弱かったでしょ?ね、パンツにすら見下されてるんですよ♡」

「ぐ・・・」

「でも、このままでは可哀想だから、もう一回だけチャンスを上げましょうか」

そう言い放つと、女子高生姉はまたその場にすっくと立ちあがった
その巨大な姿を首が痛くなるほど見上げている俺の前で、女子高生姉はセーラー服、スカート、ブラ、パンツを次々に脱ぎ、部屋の隅にぽんぽんと放り投げ、あっという間に一糸まとわぬ全裸の姿になった

*****

俺は目の前の、いや、目の上の光景を見上げて、言葉を失っていた
あの黒髪の女子高生姉が、一糸まとわぬ全裸になって、そこにすっくと立っている
まるでランウェイ上のモデルのように、少し広めに歩幅を取って、片手を腰に当て、鳩胸気味に胸を張り、余裕綽々でその場に立っている
俺はその足元から、すなわち真下から、その圧倒的な裸体を見上げた
・・・
美しい
・・・
うっすらピンク色に上気して光り輝く肌
ゴムまりのような弾力と鋼鉄の力強さが同居する
そしてスレンダーながら着衣時には予想できなかったほど見事な凹凸のめりはり
いわゆる「脱いだら凄い」という状態だ
にゅうっと伸びた脚
きゅっと締まった臀部
ウエストが細い分だけ胸壁からの飛び出しが意表を突く乳房
その先端にある小ぶりの乳頭は生意気そうにつんと尖がって上を向く
露になって初めてわかる奇跡の造形だ
16歳
身体の美のピークに差し掛かりつつもまだ確かな伸びしろを感じさせる
その余裕
その可能性
身体中に張りつめて収めきれない圧倒的な美がオーラとなって神々しく溢れ出していた
美しい
ありえないほど美しい
女神だ
とても俺たちと同じ人間とは思えない
・・・
・・・
なぜ女神なのか?
なぜ俺たちと同じ人間ではないのか?
・・・
それはこの巨大さだ
巨大さが美しさをありえないほどに増幅している
・・・
眩いほどに威光が迸るこの身体
その神々しい身体を、俺は足元から仰ぎ見るしかない
あのにゅうっと伸びた脚も
あのきゅっと締まった臀部も
あの形の整った奇跡の美乳も
そしてもちろんそれらの更に上に君臨するキレッキレの美少女フェイスも
全ては遥かな高みの出来事だ
俺の手の届く範囲ではない
俺のような者は触れることすら叶わない高嶺の花なのだ
見ろ
俺は足元にも及んでいない
だって俺は背伸びしてもあの足趾の爪に届かないじゃないか
彼女は女神だ
雲の上の女神だ
では俺は何だ?
ゴミか?
虫けらか?
それ以下なのか?
・・・
・・・
彼女の圧倒的な大きさがその美を増幅していたように、俺のどうにもならない小ささはその惨めさを情け容赦なく煽り立てていた

「・・・如何ですか?」

急に声をかけられ、俺は我に返った
黒髪の女子高生姉が、例のモデル立ちポーズのまま首だけ真下を向いて俺を注視している
その口元は勝ち誇るようにほころんでいた

「パンツを脱がせることも突き破ることもできなかった無能なあなたのために、わたしの方から全部脱いで差し上げました。現役女子高生が全裸になるって、けっこう勇気が要るんですよ、くすくす」

「・・・」

「当然、責任はとっていただけますよね?わたしを気持ちよくして下さるんでしょ?まずどこから行きますか?唇ですか?乳ですか?それともいきなりいちばんえっち♡なところですか?くすくす。どちらでも結構ですよ。なんなら、わたしの方からご招待いたしますよ、くすくす」

黒髪の巨大女子高生姉は、足元の俺に視線を定めたまま、下品にがに股になって屈みこんだ
もちろん、生唾のみながら見上げる俺の視界には、そのピンク色に輝く秘所がばっくり丸見えになっていた
・・・
だというのに
だというのに
・・・
・・・

「ほらほら、どうしました?」

「・・・」

「どうしたんですか?」

「・・・」

俺のペニスはだらんと萎びていた
・・・
さっきまで、余計なシチュエーションで無駄に勃起しまくっていたのに、いざとなったらぴくりともしない
怖気づいている
・・・
この女子高生姉の言葉は本当だろう
あの唇でも
乳房でも
陰部でも
俺は望むところに挑むことができる
それは男の夢かもしれない
誰もが憧れるあのキレッキレの美少女のカラダに、全身でむしゃぶりつく
その肌触り、温もり、匂いを、全身で味わい受け止める
そして、俺の全精力を振り絞り、この巨大な美少女に性的興奮を与える
・・・
・・・
それが怖かったのだ
だって
できるわけがない
でかい
でかすぎる
俺は象に挑む一匹のアリだ
その巨体に俺が必死になって貼りついたところで、感じさせるなんて無理だ
そもそも、さっき「そこにいることすら気づきませんでしたよ♡」と言い放たれてしまったばかりではないか
こんな戦いを挑んでも、俺の無力さが浮き彫りになるだけだ
だから正直な俺の下半身は尻尾を巻いて逃げ出したのだ
とても乗り越えられるような壁ではない
・・・
・・・

「!」

不意に上空から巨大な手が降臨する
俺は逃げる間もなく親指と人差し指で捕捉された
そのままぐんぐん上昇する
その間、俺の鳩尾から下は巨大な指腹に挟み込まれて身動きが取れない
でも胸から上は自由だ
だから呼吸はたいして苦しくない
視界も良好だ
その良好な視界いっぱいに2つの切れ長の眼が広がった
俺は黒髪の女子高生姉に2本の指でちょんと摘まみ上げられ、その顔の真ん前に対峙させられたのである
その2つの切れ長の巨大な眼が、俺を見つめながら愉快そうに吊り上った

「・・・くすくす、こんどこそおわかりいただけましたか?あなたが小さくて無力で何の役にも立たない惨めなこびとだ、という現実を」

「・・・」

「まあ身体がこんなに小さいんだから、役立たずなのは当たり前ですよね。でもあなたはそれだけではなかったんですよ。男のくせに裸の女の子を前にして何もできずにすくみ上がっちゃう。役立たずの上に意気地なしだったんです。あれだけ偉そうなことを言った後だから、その情けなさは余計に際立ちますね♡くすくす」

「お、俺を・・・どうするつもりだ?」

俺はわなわなと震えながら訊ねた
女子高生姉はわざとらしく小首を傾げてみせた

「そうですねえ・・・わたしは役立たずで意気地なしのこびとになんか興味はありませんし、でも妹も『もう要らない』って言ってましたし・・・ではもう、うちであなたを飼うことは、できないでしょうかね・・・」

「!」

うちであなたを飼うことは、できない
それはどういうことだ?
殺されるのか?
この罪もない俺が殺されるのか?
そんなのは嫌だ!
理不尽だ!
俺は我を忘れて叫んだ!

「や、やめろ!俺を殺すのはやめろ!俺にも基本的人権はある!生存権がある!自由で幸せな人生を送る権利がある!誰も俺の権利を侵すことはできない!もちろんお前にもだ!俺を殺すのはやめろ!放せ!手を放して俺を自由にするんだ!」

俺は憑かれたように主張した
でも間違ったことは言っていない
これが正論だ
誰にも反論できない正論だ
この女子高生姉はインテリジェンスが高い
だから道理がわかる
俺の言葉に説得されるはずだ
されなければおかしい
俺は固唾をのんで女子高生姉の次の言葉を待った
・・・
・・・
・・・

「・・・うざいですね」

「!!!」

俺は愕然とした
その言葉にではない
その言葉を発する際の、キレ長の瞳の冷たい耀きにである

「ときどきいるんですよ、こういうできそこないが・・・」

巨大女子高生姉は、摘まんだ俺の頭に人差し指をあてがって、子供に諭すかのように言葉を続けた

「・・・あなたのロジックには致命的な欠陥があります。あなたが得意そうに延々と話していた『基本的人権』とは、人間固有の権利です」

「!」

「勘違いしておられませんか?もしかして自分のことを人間だとでも思っていらっしゃるのですか?」

「!!」

「まあ無能だとは思っていましたが、ここまで知性が低いとは予想以上でした。あなたは人間ではありません。こ・び・と、です。だって、こんなに小さいんですよ。さっき床から直接わたしを見上げておわかりになったでしょ?全然大きさが違ったでしょ?棲む世界が違うって、思い知らされたでしょ?あなたたちこびとは人間じゃなくて虫の仲間なんです。まあカブトムシもチョウチョもトンボもカマキリもみんなあなたよりはずっと大きいのですから、虫の中でも序列はかなり下の方でしょうけどね。いずれにしても、虫に基本的人権なんてありません。当たり前じゃないですか、くすくす」

「・・・」

「あなたは小さくて、役立たずで、意気地なしの、3拍子揃った惨めなこびとです。おっと、その上ど変態さんでしたね。ごめんなさい。失念しておりました。まあ、それだけだったら愉快な玩具として妹に飼ってもらえていたかもしれないのですが、残念ながらあなたはそれに加えて勘違いのできそこないでした。あーあ、残念ですね。それじゃうざいからとても飼ってあげる気にはなれません」

切れ長の瞳の輝きが一層冷たく凄味を増す
俺は恐怖の余り指に摘ままれた姿勢のまま失禁した

「・・・妹にはまたペットショップで新しいこびとを買ってあげることにします。ええ、ご心配なく。安いのでわたしのお小遣いでも買えますから。今度は素直で可愛いこびとを選んで購入しますね・・・そうだ、こんどのお休みに田舎に行って野生のこびとを捕まえてくるのもいいですね。妹はまだこびと狩りしたことがないそうなので、きっと喜ぶと思いますよ♡」

急に俺は下半身に違和感を覚えた
失禁したからではない
巨大女子高生姉が、俺を摘まんでいる指先に、少しずつ、少しずつ、力を加え始めたのだ

「・・・いずれにしてもあなたは用済みです」

「ううう!」

「お疲れさまでした」

「ううう!!!」

切れ長の眼の片方が閉じる
ウインクだ
それと同時に、俺の下半身への圧迫が一気に増強した
・・・
・・・
・・・
ぷち

*****

一瞬で、俺の上腹部から下はぐしゃりと潰れてしまった
あの女子高生姉が、親指と人差し指の指先で、俺の横隔膜から下をぷちっと潰してしまったのだ
断裂した腹部大動脈からどくどくと真っ赤な動脈血が溢れ出す
その先の肉塊は、既に俺とは別のものになってしまったのだ
・・・
・・・
意図してのことかどうかはわからないが、そんな状況でも俺の頭部と胸部は無傷だった
だから激烈な痛みの中、遠のいていく意識の中、俺には思考するわずかな時間が残されていた
俺は考えた
このままでは俺は死んでしまう
なんの努力の甲斐もなく、なんら報われることもなく、俺は死んでしまう
違う
これは違う
こんなことがあっていいはずがない
俺は人間だ
虫じゃない
断じて人間だ
あの大きな種族と同じ人間なのだ
だというのに
俺が小さいというだけで
俺が小さく生まれたというだけで
巨大な人間たちに好きなように扱われている
年端もいかない娘が、分別もつかない娘が、俺より遥かに巨大に生まれたというだけで、俺を使い捨ての玩具にする
そんなのは間違いだ
本当はもっと価値があるはずの俺が、身体が小さいというだけで、巨大な体躯を少女に潰され、そこで一生を終えるのは理不尽だ
・・・
・・・
・・・
そうだ
これも夢なんだ
今度は悪い夢なんだ
本当の現実では、俺は生きる権利を持っているはずだ
努力する機会が与えられているはずだ
だって、人間ならば誰にでも同様の機会が与えられていなければおかしいじゃないか
そう
これは夢だ
夢から醒めたら俺の前にはまた必ずチャンスがあるはずだ
俺はそのチャンスをものにする
努力するぞ
努力して
報われて
そして素晴らしい人生をゲットするのだ!
・・・
そう心に決めながら
俺は力尽き
・・・
そっと目を閉じた
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・

*****

・・・
・・・
・・・
それっきりだった
・・・
・・・
・・・
それっきり、もう俺が目覚めることはなかった
なぜならば、これは夢ではなかったからだ
これこそが現実そのものであったからだった

努力は報われる・終