この物語はお笑いです。かなり以前にシリーズ化しようとして挫折したものです。このたびちょ、っとした執筆動機が芽生えてしまいまして、一日で書き直しました。あまり賛同できない方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは一つの意見ということでJUNKMANの立ち位置もご了解ください。ちなみにもちろんこの物語はフィクションであり実在する人物・団体などとは一切関係がございません。繰り返します。この物語はフィクションであり実在する人物・団体などとは一切関係がございません。くれぐれもお間違えないように。

戦え!フジ隊員
by JUNKMAN

「・・・しかし、その、なんだな、」
カレーライスをつつきながらアラシ隊員が呟いた。
「ウルトラマンがいなくなると、やっぱりちょっと不安だな。」
「うん。」
イデ隊員が大きく頷く。
「俺たちは最強の援軍をなくしてしまったわけだ。」
ウルトラマンがゼットンに倒されてから早や2ヶ月。毎週のように(しかもだいたい日曜日の午後7時15分ころ)地球に現れた怪獣や宇宙人たちの来襲もこの間はピタリと止んで、地球はつかの間の平和を享受していた。
「でも、またいずれ怪獣は現れるよ。」
「そうだな。」
「そのときに僕たちは単独で怪獣退治ができるかなあ?」
「日米安保条約をいきなり廃棄して日本が防衛できるか?というような問題だよな。」
「うん、その喩えはよく聞くね。」
「しかもだ。」
アラシは傍らで肩をすくめているハヤタ隊員の後頭部をごりごりと小突いた。
「ウルトラマンがいなくなった後のこいつは全くの役立たずだ。射撃は下手、戦闘機の操縦はセンスなし、かといって新兵器を開発できる頭脳や技術があるわけでもなし・・・」
「そんなこと言っちゃ可哀想でしょ!」
フジ隊員が声を荒げた。
「それは確かにハヤタくんは無能だし、グズでノロマでひ弱で意気地なしの役立たずだわ。でも大切な私たちの仲間じゃないの!」
「フジくん、フォローになってないよ。」
ムラマツキャップが呆れて口を挟んだ。当事者のハヤタは言われっぱなしのまま黙ってもくもくとカレーライスを食べている。
「なんというかなあ、俺たちにも切札がほしいよな。」
アラシ隊員はカレーライスのスプーンをかちゃりとテーブルの上においた。
「ウルトラマンに替わって、ここ一番で投入できる『最後の切り札』がさあ。」
「そうだね。」
イデ隊員も大きく頷く。
「それもできれば巨大ヒト型兵器がいいな。」
「おお、それそれ、それだ。イデ、開発できないか?」
「無理いうなよ。」
イデ隊員は両手を横に広げて首を振る。
「できっこないさ。」
「そうかあ?やってみたら意外とできないか?」
「・・・それは、地球の科学力では到底不可能。」
初めて会話に加わったのは科学特捜隊の頭脳とも良心ともいわれる笛池博士である。豊かな学識に裏付けられた膨大な薀蓄量を誇りつつも常に丁寧な言葉づかいを忘れない紳士だ。念のため付け加えておくと「ふえいけ」と読む。くれぐれも間違えないように。
「不可能・・・ええ、確かに不可能なはずなのですが、嗚呼・・・しかし、しかし・・・あの男なら可能かもしれないのです。」
「あの男?」
隊員たちは一斉に笛池博士を凝視した。笛池博士はその視線を避けるようにうつむいて、食べかけのカレーライスをじっと見つける。
「あの男・・・って、誰のことですか?」
笛池博士は両手で頭を抱え込んだ。
「いや・・・まさか、そんなはずはないのです。どうかみなさん、この件については忘れていただきたいのです・・・」
笛池博士は再び黙りこくった。ここまで喋っておいて「忘れてくれ」はないだろうが、でもこれ以上は追求することも憚られてしまうじっとりした雰囲気が形成されてしまった。
重たくなってしまった空気を振り払って、アラシ隊員が尋ねる。
「じゃフジくん、どうだい?君は確か前に一度巨大化したことがあっただろ?」
「やめて!」
フジ隊員がぷうっと頬を膨らませた。
「あれは悪い異星人に無理やり巨大化させられただけよ。」
「もう一度どうだい?」
「どうだ?って言われたって、巨大になりたくてもなれるものじゃないでしょ。」
「それもそうだな・・・」
そのとき、科学特捜隊本部に一斉放送が流れた。
「緊急連絡、緊急連絡、お台場に怪獣が出現しました。科学特捜隊は至急現地に出動してください!」
ムラマツキャップは残ったカレーライスをあわてて口の中にかき込むと、ごくりと水を飲んでから号令を発した。
「よし、巨大ヒト型兵器について考えるのはひとまず止めておいて、全員、直ちに出動だ!」
「はい!」

*****

お台場では2本の角を生やした縞模様の巨大な爬虫類型怪獣が、アクアシティお台場を完全にぶち壊し、フジテレビの建物から拝借してきたあの球体型展望台を鼻先に乗せて遊んでいた。染太郎染之助みたいにころころと器用に転がして、落としそうな気配すらない。巨体に似合わず見事なボディバランスである。その足元ではしぶしぶ駆けつけたと思われる自衛隊の面々が交戦中だが、怪獣にはかすり傷一つ負わせることができない。まあ、いつもどおりの光景ではある。
駆けつけた科学特捜隊のメンバーは急いで戦闘配備についた。
「お台場といえば、以前も巨大女が現れたよなあ?」
「おー、懐かしい。リレー小説に出てきた『銀河の光』で巨大化する女幹部の『シェリンダ』だろ?あれは萌えたぜ。」
「続きが読みたいなあ、わくわく」
「こらこら敵は強力な怪獣だ。油断するな!」
「はい!」
隊員たちは怪獣に対して光線銃を発射した。
ピー
バリバリバリ
バリバリバリ
バリバリバリ
バリバリバリ
・・・
・・・
怪獣は痛がるそぶりもみせない。相変わらず球体型展望台を鼻先に乗せて遊んでいる。
「うーん、効かないなあ。」
「ダメだろ。」
アラシ隊員は投げやりだ。
「そもそも俺たち科学特捜隊が単独で怪獣を退治できたことなんてほとんどないんだからさあ。」
「それを言っちゃあ実もふたも無いよ。」
イデ隊員が顔をしかめる。
「だいたい俺たちがギブアップしても、もう助けてくれるウルトラマンはいないんだぜ。」
「万事休すだな。」
「んくくくくくくくくくく」
その場にそぐわない含み笑いの声が響きわたった。
隊員たちが振り向くと、そこには漆黒のシルクハットにフロックコート、アイマスクにカイゼル髭をたくわえた細身の紳士が立っていた。
「誰だ?お前は?」
「んくくくくく、笛地くん、久しぶりだね。」
科学特捜隊員たちは一斉に笛池博士の表情を伺った。なんとこの謎の紳士は笛池博士と顔なじみらしい。
「ふ、笛池博士、あれは誰ですか?」
笛池博士は蒼ざめた表情でつぶやいた。
「・・・ドクター・ユンゾルスキーくん・・・」
「ドクター・ユンゾルスキー?」
「・・・そうなのです・・・笛池と彼とは、かつて国立科学研究所で机を並べて研究した仲。彼はきわめて優秀な科学者だったのでした。笛池も心の中では秘かに彼を尊敬していたくらいなのです。」
「そ、それがどうして・・・」
「国の研究職に対する待遇の悪さに腹を立てて辞めてしまったのです。」
「ああ、それは無理もありませんね。」
隊員たちは一斉に頷いた。
「科学技術あっての日本だというのに、役立たずの文系役人ばっかり優遇するんですからねえ。」
「そうそう、挙句の果てにはパフォーマンス丸出しの仕分けの標的でしょ?」
「かといって民間でも給与が優遇されるわけでもなく」
「ほんと、やってられませんよ。」
「さりげなく理系の愚痴を忍ばせるのはそのくらいにしておくのです。というわけで本題に戻ると、確かにユンゾルスキーくんの不満には共感できるところもあったのでしたが、しかし、それからが悪かったのです。」
笛池博士は視線を落として溜息をついた。
「現在の彼は闇の世界に生きる悪の科学者。自らエ○ザさんのお話を書くばかりではあきたらず、神社モ○キやらu○ローダーやらを次々と繰り出しては地球を恐怖のどん底に・・・」
「ひ、酷い!」
「なんてことを!」
「人間らしい心を失ってしまったのね。」
「それだけではないのです。」
笛池博士は俯いて嘆息をもらす。
「最近はそれに加えて『ゆんぶりっじ』などという凶悪なサイトを公開して日本と海外との橋渡しをしようとまで企てる始末・・・」
「そ、それは!」
一同は息をのんだ。笛池博士は悲しそうに頷く。
「そうです。『世界を征服する』と公言したも同然なのです。」
「極悪非道ね!」
「んくくくくく、笛地くん、丁寧な紹介をどうもありがとう。」
ドクター・ユンゾルスキーはフロックコートを翻しながらにやりと笑うと、ステッキを科学特捜隊に差し向けた。
「確かに私は人間らしい心を失ったマッドサイエンティスト・ドクター・ユンゾルスキーだ。んくくくくく、笛地くん、そして科学特捜隊の諸君、私の作品である怪獣エロキングは気に入ってくれたかね?」
「!」
「あ、あの怪獣は、貴様が差し向けたというのか?」
「もちろんだとも。」
ドクター・ユンゾルスキーは満足そうに頷いた。
「君たちの科学力では手も足も出まい。んくくくくくくくく」
「うむむむむむ・・・」
笛池博士は唇を噛みしめた。ムラマツキャップが耳打ちする。
「笛池博士、もしかしてお昼の時間に言いかけた『あの男』ってのは・・・」
「・・・確かに、ユンゾルスキーくんのことなのです。あの男を敵に回したらいかに科学特捜隊といえども勝利することは困難。」
「んくくくくくくくく」
勝ち誇ったドクター・ユンゾルスキーはステッキを怪獣エロキングに振り向けた。
「行け!怪獣エロキング!こいつらをみんな踏み潰してしまえ!」
怪獣エロキングはこくりと頷くと、科学特捜隊に向き直った。
ずしん、ずしん・・・一歩ずつ近づいてくる。
もうダメだ、絶体絶命!!
「ま、待つのです!」
笛池博士が急に声をあげた。怪訝そうにドクター・ユンゾルスキーが振り返る。
「笛地くん、この期に及んでまだ何か言うことでもあるのかね?」
「まず最初に言っておきたいことは、さっきから君は『池』と『地』の字を取り違えているのです。」
「あれ、そうだったっけ?ごめんごめん」
「ここを間違えるといろいろ誤解を招いてたいへんに迷惑。このお話はあくまでもフィクションであって実在の人物・団体とは一切の関連を持っていないのです。」
「いやあ、悪かった。ではお詫びのしるしに私からも旧友である君に一言忠告しておこう。」
「?」
ドクター・ユンゾルスキーはカイゼル髭を撫でながら笛池博士を指さした。
「君はさっきから会話の中に体言止めが多い!」
「あっ!」
笛池博士がさっと蒼ざめた。
「そのままではまた掲示板で叩かれるよ。」
「・・・さ、さすがはドクター・ユンゾルスキーくん。私の弱点を一発で見抜くとは・・・」
笛池博士はそれでもなお独白の中に体言止めを混ぜながらがっくりとうなだれた。常人には理解しがたい白熱した攻防である。
「さて、お遊びはこのくらいにして、そろそろ私の傑作怪獣エロキングの威力でも味わってもらおうかね。」
ドクター・ユンゾルスキーは高々とステッキを掲げる。怪獣エロキングは指や肩の関節をぽきぽき鳴らせながら用意万端だ。
これはまずい!
笛池博士が再び叫んだ。
「ま、待て、待ってくれたまえ、ドクター・ユンゾルスキーくん!」
「・・・なんだね笛地くん、いいかげんにうざいよ。」
相変わらずの言い間違いを咎めることもなく、笛池博士は意外な切り口でドクター・ユンゾルスキーに迫った。
「確かにあの爬虫類型の怪獣は強そうなのです。しかし、君のマッド・サイエンティストとしての誇りが、美意識が、それを許すというのですか?」
「?」
苗池博士の意図がいまひとつ掴めない。ドクター・ユンゾルスキーは首を傾げた。
「どういう意味かな?」
「すなわち、なのです・・・」
苗池博士はドクター・ユンゾルスキーを見据えながら言葉を続けた。
「マッド・サイエンティストは世界征服を企てなければなりません。そういう意味で、君の計画は十分に理に適ったことではあるのです。ですが、真のマッド・サイエンティストならば、単に世界を征服するだけではいけないのです。その過程もマッドでアメイジングでファンタスティックでなければなりません。」
「?」
「笛池はもしかしたら君を買いかぶりすぎていたのかもしれないのです。あんな醜い爬虫類型怪獣で世界征服を企てるとは・・・ただただ残念。」
「うむむむむむむ」
虚を突かれた発言だ。ドクター・ユンゾルスキーは明らかにたじろいだ。その姿に厳しいまなざしを向ける笛池博士。もはや攻守は完全に逆転した。咄嗟に思いついてこの作戦を展開したというのならば、笛池博士の智謀まさに神の如しである。
「笛地くん、私はどうすればよいのだ・・・?」
窮地に立ったドクター・ユンゾルスキーは笛池博士に救いを求めた。科学特捜隊はもちろん、怪獣エロキングまでもが事態を把握できずに困り果てている。
その中で、笛池博士は自信たっぷりに頷いた。
「笛池にグッドアイディアがあるのです。」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。」
ムラマツキャップが慌てて笛池博士に駆け寄る。
「何も困ってる敵にアイディアを授けてやる必要はないじゃないですか。」
笛池博士はそんなムラマツキャップに耳を貸そうとしない。
「あの怪獣は一匹だけならば何の変哲もない爬虫類型怪獣でセンスもワンダーもあったものではないのです。」
「ふむふむ」
ドクター・ユンゾルスキーは真剣な表情で頷く。名指しで醜くセンスもワンダーもないと指摘された怪獣エロキングは心なしか不満そうな表情である。
「・・・しかし、その爬虫類型怪獣が、派手なコスチュームに身を包まれた巨大美女と壮絶なバトルを繰り広げたらどうです?」
「おお!」
ドクター・ユンゾルスキーのみならず、周囲の科学特捜隊員たちからも一斉にどよめきの声が起こった。
笛池博士はなおも続ける。
「このお台場周辺のビルというビルを片っ端からぶち壊しながら、爬虫類型怪獣と巨大美女が闘うのです。想像してみてください。いかにもtencyoさんがコラにしそうな題材なのです。」
「わかりやすい喩えだなあ。」
「そんな演出をすればマッド・サイエンティスト冥利に尽きるというものです。世界征服に向けて最高の景気づけになるに違いないのです。」
「・・・」
ドクター・ユンゾルスキーは雷光に打たれたかの表情で一歩、二歩と歩み寄った。
「・・・素晴らしい、素晴らしいよ、笛地くん・・・君はマッド・サイエンティストの鑑だ。わが心の友だ!」
「だから笛池だとさっきから何回もいってるじゃないですか!」
と抗議しながらもドクター・ユンゾルスキーとがっちり手を握り合った笛池博士は、そのままフジ隊員に向き直った。
「というわけでフジくん、君にまた巨大化して闘ってもらうことになったのです。」
「はあ?」
フジ隊員は口あんぐりだ。
「ドクター・ユンゾルスキーくん、巨大化光線銃は持っていますね?」
「もちろんだとも。」
ドクター・ユンゾルスキーは懐から光線銃を取り出すと、フジ隊員に向けて照準を合わせた。
「彼女を撃てばいいんだね?」
「あ、ちょっと待つのです。」
笛池博士はせっかちなドクター・ユンゾルスキーを片手で制した。
「いま巨大化光線を当てたらフジ隊員はいまひとつ地味めな科学特捜隊の制服のまま巨大化してしまうのです。」
「それはそれでマニアが喜ぶのでは?」
「いやいや、折角ですからもっと大向こうを狙うのです。」
笛池博士は持参したアタッシュケースからコスチュームを取り出すと、フジ隊員に手渡した。
「さ、これに着替えるのです。」
「?」
笛池博士の用意したコスチュームは白地で胸に黄色と赤でSの字をあしらったおへそがバッチリ見えちゃうくらいの短いTシャツ、白いグローブ、スカイブルーの超ミニスカート、そして真っ赤なマントとブーツ。
あれ?
・・・この姿は?
そう・・・
「・・・パーマン1号?」
「違う!!!」
珍しく笛池博士が声を荒げた。
「これはスーパーガールことカーラ・ケント嬢のコスチューム。以前Blar氏がなかなかグッドなお話を書いたのに敬意を表してみたかったのです。」
「ああ、でもあれ力作だったのは認めるけど、ちょっと冗漫でしたよね。アクション少ないし。」
「本人がこの文を読めるはずないからって辛辣な批判をするものではないのです。」
「もう、いいかな?」
待ちきれなくなったドクター・ユンゾルスキーが声をかけてきた。
「あ、いいですよ。ドクター・ユンゾルスキーくん、彼女に巨大化光線を当てちゃってください。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!」
フジ隊員が慌てて抗議した。
「あたし、嫌ですよ、巨大化して怪獣と闘うなんて!」
「何をいっているのですか・・・」
笛池博士は冷ややかな視線を向けた。
「そもそも嫌だっていってるくせに、もうコスチュームに着替えちゃったじゃないですか。」
「あ!」
確かにフジ隊員はさっさとあのどんくさいオレンジ色の科学特捜隊制服を脱ぎ捨て、スーパーガール風のちょっとエッチなコスチュームに着替え終わっていた。
「どう考えてもやる気十分ということでしょ?」
「いまさらやめるなんて言わせないぞ。」
「そうだそうだ!」
いつの間にか他の科学特捜隊隊員たちもシュプレヒコールを上げている。何だかもう後へ引けない雰囲気だ。流石にこれではいけないとムラマツキャップがいきり立つ隊員たちを冷静に両手で制する。
そしてフジ隊員の肩にぽんと手を置いた。
「・・・そういうわけだ。フジくん、頑張ってくれたまえ。」
「!」
あんたも止めてくれないのかよ!!、と叫ぶまもなくドクター・ユンゾルスキーがフジ隊員めがけて巨大化光線銃を発射した。
ピカッ
・・・
ずももももももももももももも

*****

「きゃあああああ!!」
ぐわっしゃああああああん!
急に背後から上がった叫び声を耳にして振り返った怪獣エロキングは、驚いて鼻先から球体型展望台を取り落としてしまった。
振り返ってみて更に驚いた。
そこには巨大怪獣エロキングの更に2回りも巨大な人間(身長156メートル、体重42000トン推定というところか?)、しかもなぜかスーパーガールのコスチュームに身を包まれた美女が立っているではないか。
「・・・誰だ?お前?」
「わ、私は・・・」
「巨大ヨシナガ教授?」
「違あああああああう!!」
フジ隊員の緊張が一気にほぐれた。
「そんなマニアックなボケに誰が突っ込めるっていうのよ!私は地球を守る科学特捜隊の最終兵器・巨大フジ隊員23歳よ!」
「巨大フジ隊員23歳?」
「そうよ。」
「その最後の『23歳』ってのはどういう意味だ?」
「いいところに気が付いたわね。ちゃんとヒロインが成人である、ってことを明確化させておかないとアグネスからクレームがつくかもしれないのよ!」
「そうか。いろいろと世知辛いんだな。でも『23歳』って、JUNKMANワールド的にはもはや普通のお客様にはお出しできない『熟女』に分類されちゃうんだろ?」
「それは地球上の一般常識とは違うらしいの。あんたも地球を侵略しようとか思ってるんだったらもっと勉強してこなきゃダメよ!」
「・・・はい」
巨大フジ隊員のお説教で怪獣エロキングはしょんぼりと肩を落とした。序盤戦の口ゲンカは明らかに巨大フジ隊員が優勢である。
「・・・で、それはよしとして」
怪獣エロキングは怪訝な表情で首を傾げた。
「巨大フジ隊員ってのは、あの微妙にどんくさいオレンジ色のユニフォームを着てレトロなヘルメットかぶってるはずじゃないのか?」
「知ってるんじゃん!」
さすがはドクター・ユンゾルスキーが送り込んだ地球への刺客。事前調査にもぬかりはない。
「ま、コスチュームのことはどうでもいいや・・・で、お前、何しに出てきたんだ?」
「何しに・・・ですって?」
巨大フジ隊員はぷうっと頬を膨らませた。
「そりゃもちろん、地球の平和を守るためにあんたを倒しにきたのよ。」
「ふう・・・」
怪獣エロキングは呆れて小さくため息をついた。
「・・・どうやって?」
「そりゃ、決まってるでしょ。この巨大な身体でボコボコにしてやるのよ。あんたみたいな怪獣、イチコロよ!」
確かに体格的には巨大フジ隊員の方が勝っている。身長で約2倍。スレンダーな体型ながらこの身長差なら体重だって怪獣エロキングの2倍以上はあるだろう。
でもエロキングはびびる気配もない。
「・・・お前なあ、体格だけで勝てるなら曙は格闘技界無敵の王者で、山本山だって八百長なんかしなくても今頃横綱だぞ。」
「う!痛いところを・・・」
「必殺技は?」
「え?」
今度は巨大フジ隊員がぽかんと口を開けた。思ってもみない質問だった。
「まさか怪獣と戦おうってのに、光線の一つも出せないなんてことはないよなあ?」
「・・・だ、出せない・・・けど。」
巨大フジ隊員は下を向いて赤くなりながら小声で答えた。
怪獣エロキングはまたしてもやれやれという表情で首を振る。
巨大フジ隊員はむっとして逆に問い詰めた。
「あ、あ、あんたはどうなのよ?」
「光線か?もちろん出せるぞ。見てみるか?」
「・・・」
巨大フジ隊員は黙って頷く。怪獣エロキングは余裕綽々である。
「ほらよ」
ぴかっ
2本の角が輝くや、眩い怪光線が発射された。
どかああああああん!!
光線の直撃を受けた船の科学館ビルが木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「!!!」
「・・・ま、ざっとこんな具合だが・・・」
「す、すっごおおおおおおい!!」
怪獣エロキングはにんまりと笑いながら横目で巨大フジ隊員を見た。
「で、あんたはこんな俺様と素手で戦ってみようっていうのかね?」
「あ、あ、あ・・・」
ずずうううううん
巨大フジ隊員はあっさりその場に両手をついた。
「ごめんなさい。降参です。」

*****

巨大フジ隊員は自分より二回りくらい小柄な怪獣エロキングに向かって土下座している。怪獣エロキングは勝ち誇ってふんぞり返った。
「よおし、降参するなら、まず手始めにそこでオナニーでもぶちかましてくれないか?」
「ええええ?!」
オ、オナニーって、一人エッチのこと?
フジ隊員は考えた。こんな巨大な身体で、しかも大勢の人々が見守る前で、恥ずかしい行為を強要されるなんて、それは死ぬよりも辛いことだ。
絶対にイヤ。
・・・
でも、待って。
私は科学特捜隊員よ。
地球の平和を守る科学特捜隊員よ。
私が恥ずかしい思いをするだけでこの地球が守られるのならば、それは本望じゃない。
・・・
仕方ないわね・・・
巨大フジ隊員は悲壮な決意を固め、ゆっくりと頷いた。
「・・・わかりました。」
「ん?」
「地球のためなら、どんな恥ずかしいことでもやってみせるわ。」
「ほお・・・おまえ、意外と素直な性格だな。」
「お褒めにあずかりまして光栄です。では、始めます。」
腹を決めた巨大フジ隊員がさっき着たばかりのコスチュームを早速脱ごうとすると・・・
「待て待て」
慌ててエロキングが制した。
「全部脱ぐのは面白くない。それじゃどこにでもあるただの巨大オナニーショーだ。」
「そ・・・そうかしら?そもそも巨大オナニーショーなんて、そんなに見られるものじゃないと思うけど。」
「ちっちっち」
怪獣エロキングは人差し指を立てて否定する。
「その種のHPを見てみろ。女の子は巨大になったら、まず公衆の面前でぐちゅぐちゅとオナニーぶっこくものだ。ほとんど例外はないとすら言えるぞ。」
「へえ、」
「ここは独自性を出すためにもコスプレテイストを前面に打ち出していこう。だからできるだけ着衣のままでさ、ほら、パンツをずりおろすのは仕方ないにしても、上半身は脱いじゃダメだよ。せいぜい胸をはだけるくらいにしておいて、そうそう、ちらりと見えるそんな感じ、いいよいいよ。俺様は髪を振り乱してる方がgoodなんだけど、そこは好みの分かれるところだなあ・・・じゃ、曖昧にして読者の想像に任せることにしようか。うんうん、それでいい。じゃ、座り込んで、脚を投げ出して、そう、視線はこっち、はいはい、そう、いいねいいね、じゃ指を使っておっぱじめようか・・・」
怪獣エロキングは妙な手際のよさでシチュエーションをさくさくとセットした。さすがに天才ドクター・ユンゾルスキーが自信を持って送り込んできたほどの怪獣である。只者ではない。

*****

「キャップ、フジ隊員はのけぞってますよ。」
「うむ。」
「あ、公衆の面前でもろ出しにしちゃいました!」
「もろ出しって、何を?」
「言えません。」
「言えないって、どうして?」
「だって口に出したら細かく描写しなきゃならないでしょ?」
「まあそうだね。」
「そうしたら『タグ付け』しろって言われちゃうじゃないですか。」
「すればいいじゃないか」
「それが嫌なんですよ。『女』『虐』『食』『スカ』『ロリ』なんてJUNKMANワールドではただの味付けなんだから、そんな切り口で作品全体をカテゴライズされちゃうのは苦痛です。」
「そんな大それた問題じゃないだろ?タグがあると苦手な分野を踏まなくていいから読者は便利だ、ってそれだけの話なんじゃないの?」
「かつてはそう思っていたんですよ。それで私も百合とかswとかBLとかが苦手なもので牧浦さんの作品を避けてたんです。」
「ああ、牧浦さんなら知ってるぞ。あの人はホンモノの変態(←褒め言葉)だな。」
「ええ。わたしも先日はじめて読んで感動しました。『変態』というより『倒錯』の世界ですね。アブノーマルであるということの美しさが突き抜けていて、そのジャンルの好き嫌いを超越してうっとりしてしまいました。いまだに百合もswもBLもちっとも好きになれないけど、でもあの世界に耽ることができて本当に良かったと思ってます。知らず知らずのうちにわたし自身が牧浦さんの作品をくだらないタグでカテゴライズしていたんですね。失礼なことをしてしまったと反省してます。」
「なるほどなあ。タグは付ければいい、ってものでもないのか。でもタグが付いていたって、それを読むか読まないかは読者の裁量だよな?」
「そりゃそうなんですけどね。でもタグによるカテゴライズって、露骨に『お好きなズリネタをどうぞ』って揉み手してるみたいで気色悪いじゃないですか。」
「そりゃあ書き手のわがままだな。だってこんなものは実際にただのズリネタなんだから、お客様の便宜に合わせてサービスするのが当然だろ?」
「そう言ってしまえば身も蓋もありませんが、でも本当にそうなんでしょうか?それが当然という暗黙の了解のもとにこの世界が成り立っているとしたらちょっとがっかりです。ここは大人が大人の楽しみを得るための大人の遊び場でしょ?それとも公衆便所ですか?それもユーザーに至れり尽くせりのサービスが義務付けられた公衆便所ですか?」
「おまえ言い回しが過激すぎ。叩かれるぞ。」
「・・・まあ叩かれたときに反論する勇気もありませんので、このお話の中ではタグ付けが考慮される描写に対してはタグ付けが義務であるという前提にしましょう。でもタグでお話全体がカテゴライズされちゃうのは勘弁してほしいので、タグを付けなくてもいいようにタグ付けすべきと言われちゃいそうな描写は極力控えることにします。」
「うむ。それはいい落としどころだな。」
というわけで巨大フジ隊員は恥ずかしさをこらえつつ一所懸命に公開巨大オナニーショーをブチ広げたわけだが、その詳細な描写は読者にお届けできなくなってしまったのである。

*****

「ああん、あああああん、あああああ・・・」
正直いえばイマイチ乗ってはいなかったものの、地球のために頑張って演技する巨大フジ隊員。「ああん、ああん、ああああああ」
「・・・・・・」
ところが、怪獣エロキングも乗ってこなかった。
「ああん、ああん、ああああああ」
「・・・」
「ああん、ああん、ああああああ」
「・・・そこまで。」
「ああ、あ・・・え?」
汗まみれの巨大フジ隊員は振り返って怪獣エロキングに視線を向けた。
怪獣エロキングは気難しい表情で首を横に振っている。
「ダメだ。萌えん・・・惜しい線まで行ってるんだが、チョット違う。」
「ええ?どうして?」
言うとおりにこんな恥ずかしい行為をおっぱじめているのに・・・
「考えてもみろ。」
怪獣エロキングは苦虫を噛み潰した表情のまま自分を指差した。
「俺様は爬虫類型怪獣だぞ。爬虫類型生物が、ヒューマノイドタイプのオナニー見て萌えるはずないよな?」
「・・・あ」
「おまえだって、トカゲの交尾とか見てムラムラしたりしないだろ?」
「そ、それもそうね・・・」
ちょっと説得力あるかもしれない、けど・・・
「で、でも、人間の中には、猫耳マンセー!とか、尻尾がなきゃイヤ!とかっていう特殊な嗜好を持った人たちだっているわ。」
「そういうビョーキの連中と一緒にするのはやめてくれ。俺様はごくごくノーマルな感性を持った怪獣なのだ。」
一喝されてしまった。申し訳ない。
「じゃ、どうしたらいいの?」
「こんなこともあろうかと思って用意しておいたのだ。」
怪獣エロキングは持参した大きな袋をごそごそとあさって、中からコスチュームを取り出した。。
「これだ、これこれ。これに着替えろ。」
「!」
2本の角つきカチューシャに、鱗も鮮やかな白黒縞模様でコーディネートされたブラ、ミニスカ、手袋、ロングブーツ・・・
「・・・はあ?」
巨大フジ隊員は目がテンになった。
「どうだ、これを着ればおまえも少しは爬虫類らしく見えるかもしれんぞ。」
「な、なんで地球を侵略するのにこんな衣装を持ち歩いてるのよ?」
「あらゆる可能性を想定して準備を怠らない、これが侵略にはきわめて肝要なのだ。」
「そもそもその衣装を入れておいた袋、今までどこに置いてあったの?」
「細かいことを気にするな。さあ、そんなことはいいからすぐに着替えろ。」
「・・・は、はあい・・・」
逆らうわけにはいかない。これも地球のためだ。
巨大フジ隊員はしぶしぶとまず素っ裸になり、続いて怪獣エロキングが用意した爬虫類肌コスチュームに着替えた。本日2度目の公開お色直しショーである。

*****

一方、こちらは巨大フジ隊員を足元から見上げる科学特捜隊メンバー。一部自衛隊有志も入り混じって盛り上がりに盛り上がっていた。
「す、すごい光景ですねえ・・・」
「超巨大コスプレショーですか。」
「また新たな分野が開拓されましたね。」
「しかも『巨大爬虫類娘』っていうコンセプトが斬新だなあ。」
「ネコとかウサギとかなら時々ありますからね。」
「この流れで行けばまだまだコスチュームチェンジが期待できるかもしれませんよ。」
「おお、わくわく」
「次は順当に『巨大セーラー服』あたりかな?」
このハヤタ隊員の一言で、盛り上がっていた周囲は一気に引いた。
「・・・『巨大セーラー服』?」
「ありきたりだなあ」
「想像力乏しすぎ」
「それなら窓香ちゃん見てた方がよっぽどマシでしょ。」
ハヤタ隊員は逆ギレした。
「じゃ、じゃあ皆さんはどんなコスプレをお望みなんですか?まさかありきたりなナースとか、スッチーとか、メイドさんとか、巫女さんとかじゃあないでしょうね?」
「俺たち・・・か?」
まずムラマツキャップが口火を切った。
「お、俺は『巨大和服の未亡人』がいいな。ちょっと裾が乱れてたりして。」
「・・・『巨大和服の未亡人』?」
今度はハヤタ隊員がキャップに軽蔑の眼差しを送る。
「それだってありきたりですよ。」
「なら俺は『巨大メガネの学級委員長』希望。」
「『巨大セーラー服』とどこが違うんですか?」
「普通に全然違うだろ。」
「そうかな?」
「『巨大お嬢様』!」
「ずっと前にやりました。」
「『巨大王女さま』!」
「それももうやった!!!」
「じゃ、『巨大ポッキー娘』!」
「それのどこが萌える?」
「ガッキーなら萌えるだろ」
「ふうう、忽那汐里でくるかと思ってはらはらしたぜ。」
「そう来るなら俺は『巨大剛力彩芽』!」
「かんべんしてくれ。もーひたすらかんべんしてくれ」
「『巨大前田敦子』!」
「だからかんべんしてくれつってんだろ!!」
「俺は『巨大熊井ちゃん』!」
「熊井ちゃんははじめから巨大」
「ふ、笛池は『巨大小池栄子』なのです。」
「JUNKMAN的にでかい乳は却下」
「気を取り直して『巨大篠田真理子に上から目線でお説教をくらう』!」
「お、シチュエーションが加わったね。」
「『巨大鈴木香音の体重がもっと増える』!」
「ハロプロオタにしか通じないから」
「『巨大芦田愛菜でアグネスが激怒する』!」
「『巨大吉田さおり選手の眼から出るビームに捕捉される』!」
「『巨大峯岸みなみにバリカンで坊主頭にされる』!」
「『巨大武井咲でまた視聴率が下がる』!」
「・・・こ、これ、いつまで続くんですか?」
フェチとは突き詰めればテーラーメイドの世界である。この手の話し合いに決してコンセンサスが得られないことは致し方ないことなのであろう。それにしても上記の妄想の中に皆様の実用に足るものが一つでもございましたらJUNKMANはこの上なく幸せであります、南無南無。

*****

「ああん、あああああん、あああああ・・・」
足元で科学特捜隊の面々が不毛な論争を繰り広げている中、巨大フジ隊員は頑張ってオナニーを続けていた。
流石に爬虫類コスプレが奏功したのか、今度ばかりは怪獣エロキングも大興奮である。
「ああん、ああん、ああああああ」
「お、いいぞ、いいぞ、なかなかいい感じ」
「ああん、ああん、ああああああ」
「ううう、こうしてはおれん」
怪獣エロキングは股間のチャックを開けて怒張した立派な逸物をとりだした。
「ああん、ああん、ああああああ」
「はあ、はあ、はあ、はあ」
「ああん、ああん、ああああああ」
「はあ、はあ、はあ、はあ」
「ああん、ああん、ああああああ」
「・・・そこまで」
「ああ、あ・・・え?」
今度こそいい線いってると思っていた巨大フジ隊員は慌てて怪獣エロキングに向き直る。
怪獣エロキングは眼球を上転させながら右手で必死にしこしこと自分のモノをしごいていた。
・・・
こいつじゃない
・・・
いま「そこまで」とダメだししたのはこいつじゃない
では、誰がここでわたしのオナニーを止めさせたのだろう?
「・・・私だ」
「私もなのです」
巨大フジ隊員の足元に2人の男が立ちはだかった。
ドクター・ユンゾルスキーと笛池博士である。
「ダメだ、全然だめだ。」
「まるでなっていないのです。」
巨大フジ隊員は口を尖らせて反論する。
「ダメも何も注文通りに衆人環視のもとで巨大オナニーショーをやって、しかも恥ずかしくもレアな爬虫類コスプレでマニアの方にまで配慮しているっていうのに・・・」
「それがダメだといっているのだ!」
ドクター・ユンゾルスキーは一喝した。
「君は一番大切なここの読者の立場を考えていない。」
「へ?」
「いいかね、こんな場末のフェチの巣窟に集まるような偏った嗜好を持つ読者の心に爬虫類コスプレなんて響くと思うかね?」
「!」
「こいつらの評価基準はただ一つ。女の子が巨大か?それだけだ。」
「だったら大丈夫よ。実際に巨大になってオナニーしてるんだから。」
「甘い!!!」
こんどは日頃冷静な笛池博士が一喝である。
「フジくん、君がどれだけ巨大でも、周囲との比較がなければ巨大感が伝わらないのです。」
なるほど。それは納得だ。
「じゃあ、どうすればいいの?このゆりかもめとか挿入すればいいの?」
巨大フジ隊員は近くの高架からゆりかもめの車体を掴みあげる。おお、これはなかなかのGTS構図ではないか。
ところがドクター・ユンゾルスキーは満足しない。
「う・・・うむ、それは悪くないアイディアだ。ただ・・・インパクトはないな。」
「笛池に腹案があります。」
満を持して笛池博士がアイディアを披露する。
「その隣にいる怪獣エロキングを挿入してみては如何?」
「ええ?!」
巨大フジ隊員と怪獣エロキングの声がハモった。
「こんな大きな怪獣、流石に入りませんよ!」
「いくら俺様でもあんなところに入れってのは無理っす!」
「・・・このままでは確かに無理でしょう。しかし私たちにはこれがある。」
笛池博士は隣のドクター・ユンゾルスキーを指さす。その手にはきらりと光る巨大化光線銃が・・・
「巨大フジ隊員には超巨大フジ隊員になってもらおう。それですべては解決だ。」
ピカッ
・・・・
ずももももももももももももももももも

*****

「いやあ、今日のカレーも結構スパイシーだな。」
「でも肉が少ないですね。」
「ハヤタ、お前の肉をちょっとよこせ。」
「あ!アラシさん、やめてくださいよ!」
「いいだろ、お前はジャガイモだけ食ってろ!」
「そんなあ・・・」
「・・・」
「あ、こんどはニンジンも取った!」
「うるさい!ジャガイモはまだ残ってるからいいじゃないか!」
「かんべんしてくださいよお・・・」
「へへ、嫌なこったい」
「・・・何なのこれは!!!」
ついにブチ切れたフジ隊員がスプーンをテーブルに叩きつけた。
「あの緊迫した状況からいきなり何の説明もなくこのほのぼのランチタイムシーンって、いったいどういうこと?しかも二段巨大化でギガGTSが出現、って、まさにマニアお待ちかねの展開になったところじゃないの!」
「まあまあフジくん、落ち着きたまえ。」
ムラマツキャップがカレーライスを頬張りながらいきり立つフジ隊員をなだめる。
「あれ以上の描写はできなかったんだよ。だって怪獣をバイブに使う、っていうプロットなんだからさ、女性器の描写を入れないわけにはいかないだろ?そんな展開になったらまたタグ付けが必要になるからね。」
「女性器描写のどこが問題なの?ここは大人が大人の楽しみを得るための大人の遊び場でしょ?そもそも見たことないの?実はみんな童貞?あるいはホモ?」
「こらこらフジくん、いくらなんでも読者を批判しちゃいかんよ。」
「どこが批判よ?童貞の何が悪いの?筋金入りのサイズフェチなら生身の異性よりバーチャル空間での妄想でしょ?童貞上等でしょ?」
フジ隊員をなだめることは諦めて、ムラマツキャップは笛池博士に話題を振った。
「で、あの怪獣エロキングは、結局どうなったのですか?」
「・・・笛池が説明するより、彼に直接説明してもらった方がよいかと。」
笛池博士は隣でカレーライスをモリモリ食べている細身の男を促した。男は頬張っていたカレーライスを水で流し込むと立ち上がって説明を始めた。
「無敵の怪獣エロキングでしたが、さすがにバイブ扱いには耐えられませんでした。その最期の状況が諸般の事情で十分に描写できなかったことは誠に遺憾です。しかしながら、今までカプセル怪獣というコンセプトはありましたが、バイブ怪獣は斬新でした。今後の新規怪獣開発計画に活かしていこうと、ええ・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・みなさん黙りこくってしまいましたが・・・何か間違ったことを言いましたかね?バイブ怪獣なんて珍しくない、と言われれば、確かに前例も複数思い当たるような気もしますな、バイブウルトラマンも含め・・・」
「そういう問題じゃないよ」
イデ隊員が口を挟む。
「どうしてあんたがここにいるんだ?ドクター・ユンゾルスキー・・・」
「まあまあ、細かなことはどうでもいいじゃありませんか。」
笛池博士が隊員たちをたしなめる。
「どうせそこまでの話なんですし、なによりも結論を出してもらうには彼の口から言ってもらうのが最も妥当でしょう。ということでドクター・ユンゾルスキーくん、お願いします。」
「コホン」
ドクター・ユンゾルスキーは一つ咳払いしてから本日の結論を述べはじめた。
「そもそもタグ付けというのは作者から読者へのサービスであって義務ではありません。そのサービスを付与するかどうかは全て作者の裁量。で、JUNKMANはそのサービスを付与するつもりがありません。面倒くさいし、どうせ正確には無理だし、何よりもそんな切り口で作品全体をカテゴライズされるのは不正確であって失礼であって苦痛です。もちろんこれはJUNKMANの考え方であって、他の作者がタグ付けのサービスを行うことを止めはしないし批判するつもりもありません。その方がある意味読者に優しいであろうことも同意します。でも同様にJUNKMANのスタイルも認めてほしい。JUNKMANの書き物は、読んでいただければわかりますが、ズリネタとしての実用性は乏しいですし、そもそもそれを目指して書かれたものではありません。作品の中の味付けとしてサイズフェチ、およびそこから派生する『女』『虐』『食』『スカ』『ロリ』を散りばめています。これは寿司ネタの裏に添えたワサビです。寿司をつまめば時に思いのほかワサビがきついこともある。大人はそのたびに泣き言なんていわないよね?子供だったらサビ抜きのお寿司のリストも必要だろうけれど、大人にそんなもの見せるのは無粋だよね?こんなふうに、JUNKMANは、この世界の読者が大人であるという前提のもとに、読者を信頼して、ある意味読者に依存して、作品を提供しています。それが偉そうだ、だとか、甘い、とかいうことならば、JUNKMANのスタイルがこの世界になじまないということですから、JUNKMANは今までの書き物を全て取り下げて引退します。」
科学特捜隊員たちは一斉に頭を抱え込んだ。
「・・・また敵を作りそうな発言しましたね。」
「こんな問題で突っ張りすぎ。」
「批判されると思いますよ。」
「良いのです。」
笛池博士は涼しい顔だ。
「これはJUNKMANではなくドクター・ユンゾルスキーくんの言葉なのですから。」
最後の最後まで卑怯にも逃げ道を用意しながら、念のためもう一度強調しておけばこの物語はフィクションであり実在する人物・団体などとは一切関係がなく、それになんとなく語感が近そうな人物の了承や同意すら全くいただいておりません。悪しからず。

戦え!フジ隊員・終