蒼き侵略者
by JUNKMAN

その邪悪なる者
蒼き衣を纏い
彼処より来りて
世界を蹂躙せん

*****

どさどさどさどさ
下足箱を開けたとたんに溢れ出る手紙の束
杏奈はそれらを開封しようともせず、全部まとめて速攻でゴミ箱に叩き込んだ。
志都美は目を丸くする。

「あ、杏奈ちゃん、いいの?」

「え?」

「そ・・・それって、ラブレターでしょ?」

「かもね」

「じゃあ、読んであげた方がいいんじゃない?」

杏奈の切れ長の目がぴくりと釣り上がった。

「どうしてわたしがこんなくだらない物を読まなきゃならないの?」

「で、でも男子の方は真剣なんでしょ?もしかしたら中にはカッコいい人だっているかもしれないじゃない?もったいな・・・」

「自分から告ることもできずこっそり下足箱に手紙を入れるという行為だけで十分キモいわ!」

「そ、そうかもしれないけど・・・」

確かに男の子がこっそりラブレターなんて情けないとは思う。
でも、同情できる点もなくはない。
だって杏奈ちゃんに面と向かって告ろうものなら、もれなくその場で皆様に人間の尊厳を根底から否定されるレベルの冷徹な罵倒のお言葉付きで瞬殺お断りをくらっちゃうんだもん。わたしは杏奈ちゃんと一緒に行動することが多いから、哀れゲシュタルト崩壊していく男子たちを何人も見てきたわ。
それにしても杏奈ちゃんって、いつもは優しい笑みを絶やさず物静かで控えめで賢く周囲に気配りのできるキャラなのに、男子に対してだけはいきなりドSに豹変するのよねえ・・・

*****

「あーあ」

机に向かって宿題する手をちょっと休めて、志都美は天井を仰いだ。
・・・
・・・
志都美も杏奈も彼氏がいないという点ではかわらない。
でも杏奈は男の子たちから言いよられっぱなし。それをことごとく撃退しているから彼氏がいないのだ。
一方の志都美には誰も声をかけてくれない。
それどころか失礼にも杏奈への仲介を頼んでくる男子すらもいるくらいだ。

「・・・わたし、そんなに魅力がないかなあ?」

自分で言うのもナニだけど、他人に比べて容姿が劣っているとは思わない。
杏奈ちゃんと比べたって
・・・
・・・
まあ、好みの問題かな
確かにわたしは杏奈ちゃんみたいにキレッキレの美少女タイプじゃないけど、でも眼なんかぱっちりしてて誰からも好まれる愛嬌たっぷりのタヌキ顔なんだけどなあ
少なくともわたしの方が杏奈ちゃんよりは話しかけやすいはず
だってちょっと人見知りする杏奈ちゃんとは違って、わたしって誰ともすぐ簡単に打ち解けちゃうし
・・・
それがかえっていけないのかな?
現実として、わたしじゃ気軽すぎて、誰も真剣に告ってなんかくれない
みんな敢えてハードル高そうな杏奈ちゃんに声をかけて、そして木っ端みじんに粉砕されていく
・・・
バカなの?
死ぬの?
マゾなの?
ドエムなの?
ゲームなんか作ってる場合なの?
・・・
わたしに声をかけてくれれば
・・・
OKしちゃうかも
しれないのに
・・・
・・・
志都美は立ち上がると、部屋の隅の姿見に向かって、斜に構えて、つんと胸を張ってみせた

「・・・アピールが足りなのかなあ?」

胸だったら絶対杏奈ちゃんには負けない。
バストは公称88cm。でも、最近また大きくなった。今はきっと90cm・・・いや92cmくらいはあるかも
だからといってそんなに太っているわけでもないのよ
そんなには

・・・
・・・
やっぱり杏奈ちゃんみたいにスレンダーな方が男の子にはもてるのかな?
乳がでかい=下品=バカ
とかって、思われちゃうのかな?
・・・
・・・
そうなの?
ホントにそうなの?
わたしは十分にエッチな身体だと思うんだけど
・・・
志都美は鏡に映る自分の胸を恨めしそうに睨み付けた

「・・・あーあ、どこかにわたしのセクシーなバディに魅了されて迎えに来てくれる王子様とかいないのかしら?」

「・・・はい、ここに」

「!」

思いもかけず誰かが返事をした。
驚いて振り返る。
するとそこにはキラキラの王子様の服装をして王冠を被った細身の男の人が跪いているではないか!

「あ・・・あなたは?」

「お初にお目にかかります。私はこの地球から遠く離れた子猫座シベール星の王子、プリンス・ナボコフであります。」

え?ほんとに王子様?
ほんとにほんとに王子様が迎えに来てくれたの?
・・・
と一瞬胸をときめかせた志都美であったが、跪いた姿勢で顔を上げた王子様を見ると一気に萎えてしまった。
だって服装は羽生結弦クンみたいな王子様風だというのに、鼻の下から頬や顎にかけてむさ苦しいもじゃもじゃの髭をはやし、しかも牛乳瓶の底みたいな度の強いメガネをかけた思いっきりおっさんの風体なのだ。よく見ると髪の生え際にはそれらしきズラ線まで確認できる。確かに細身の長身だけど、それも引き締まったというよりは貧相というべきで、底知れぬ中年の悲哀感が滲み出し・・・

「・・・し、失礼ですが、お年は?」

「はい、私は47歳独身彼女いない歴47年、ただいま将来の王妃になってくださるお姫様を絶賛募集中で・・・」

「いや、それはいいけど」

嬉しそうに語り始めたナボコフ王子の話を志都美は中途で強制的に遮った。

「で、その47歳独身彼女いない歴47年の王子様が私に何の用?」

「はい、実は・・・」

「ちょっと待って!」

答えかけたナボコフ王子の話を志都美は再び遮った。

「あらかじめ断っておくけど、わたしはあなたのお姫様じゃ、あ・り・ま・せ・ん、からねっ!勘違いしないでねっ!!!」

「は、はあ・・・」

ナボコフ王子は困った顔をして肩をすくめる

「で、わたしに何の用なの?」

「はい、実はお嬢さんに我がシベール星をお救いいただきたくお願いにまいりました。」

「どういうこと?」

「わがシベール星は、いま存亡の危機に立たされています。あの恐怖の『蒼き侵略者』に、なすすべもなく蹂躙されているのです・・・」

*****

ナボコフ王子の説明は以下のとおりである。
シベール星では賢帝キャロル大王とその息子で執政を務めるナボコフ王子の指導のもと、人民は発達した科学と文明を享受し、平和で幸せな日々を送っていた
そこにある日、時空を超えて恐怖の『蒼き侵略者』が襲ってきたというのだ

「・・・その『蒼き侵略者』って、あなたの星の進んだ科学をもっても撃退不能なの?」

「歯が立ちません。防衛のために立ち上がった何万、何十万もの若者たちが、その前で無残にも命を落としていきました・・・」

「・・・」

「このままではわがシベール星は壊滅です。そこで是非ともお嬢さんのお力を貸していただけないかと・・・」

「ちょっと待って!」

志都美は目を丸くした。

「そんな科学の発達した惑星でも歯が立たないほどの強力な侵略者を相手にして、一介の女子高生であるこのわたしに何ができるというの?無理よ!そもそもそんな危険なことはまっぴらゴメン!」

「いやいやいや、お嬢さんを危険な目に遭わせることはありません。それはないと断言できます。」

「?」

「別にお嬢さんに侵略者と戦っていただこうなどとは思っておりません。ただ我がシベール防衛軍の精神的支柱として兵士たちを鍛え、鼓舞していただきたいのです。」

「はあ?」

なんだか話がよくわからないなあ。
防衛軍が苦戦していて、そこに精神的支柱が欲しい、ってとこまではまあ理解できるわよ。
でもどうしてそれがわたしなの?

「・・・包み隠さず申し上げましょう。」

ナボコフ王子は意を決して眦を上げた。ちょっと勢いよく頭を動かしたのでズラ線がずれてしまったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

「お嬢さんの容姿です。」

「え?」

「更にもっと端的に申し上げればその奇跡のバストです。16歳現役女子高生にしてBWP94-61-85はお見事です。」

「きゅ、94-61-85って、何よその具体的な数字は?わたし、バスト94cmもないわよ!」

「あくまでも私の見立てでございます。が、間違いはないでしょう。失礼。」

ナボコフ王子はポケットから巻き尺を取り出すと、志都美の背後に回って電光石火の早業でスリーサイズを実測した。

「・・・94.2、60.8、84.7・・・ほうら、四捨五入すれば紛うことなく94-61-85。ついでに身長は164cmですから2chあたりでは一番支持率が高いぷにぷにむちむちしただらしなけしからん体型でございますね。」

「ううう、なんだから褒められているのか貶されているのかよくわからないわ。」

ナボコフ王子は巻き尺をポケットに戻すとその場で土下座する。

「私はシベール防衛軍の精神的支柱たるべきマドンナの適任者を探してこの広い宇宙を彷徨い続けてきました。その私の眼にとまったのがお嬢さんです。是非とも惑星シベールの兵士たちを鼓舞してあげてください!」

相変わらずわけがわからない志都美であったが、でもちょっと気分が良くなってきた。
うん、確かにわたしは可愛いわよ。クラスではもちろん学年でも屈指。まあそれは事実だけど、でも宇宙的な視点ではわたしの美貌はそんなレベルではなく、橋本環奈ちゃんもびっくりの1000年に一人級の超絶美少女だったようだわ。やっぱりね。そうか、わたしがモテなかったのは、わたしのアピールが足りなかったのではなく、わたしの魅力に地球の男子がついてこれなかっただけのことだったのだ。それじゃあ仕方ないなあ
・・・
・・・
妄想がぐるぐる回ってつい口元がにやけてしまった。
ナボコフ王子はこの隙を見逃さない。

「お嬢さん、是非ともシベール星にお越しください!」

「え?」

「そのように選ばれた容姿に生まれてしまった者の定め、いや、務めでもございましょう。何卒!」

「ううう、そんなこと言われちゃうとなあ、困っちゃうなあ・・・」

とか口先では言いながら、志都美は満面の笑みでナボコフ王子の申し出を了承してしまった。

*****

次の瞬間、志都美は惑星シベールに到着していた。

「!!!」

なんと既に服装が変わっている。
シルバーメタルのごつごつした鎧(=アーマー)だ。
それだけでも突飛なのに、その露出がハンパない。
もろビキニみたいなセパレートで、腹部も前胸部も大腿も上腕もまるであけっぴろげのフルオープンである。
鎧、という服本来の機能を考えればこの露出はありえないんじゃない?
その上ビキニだから一応乳房は隠してある、はずなのだが、とんでもないマイクロブラで上乳も下乳も遠慮なくはみ出しまくり、もはやハミ乳というのもおこがましく実は乳輪くらいしかまともに隠してないだろう状態だ。
下半身は胸ほどでもないが、これもヒモパンに毛が生えた程度(JUNKMAN注:ヒモパンに毛が生えたらかえって卑猥ですね)。
それでいてブーツや手袋でなぜか下腿や前腕は隠し、妙に厳重な肩パットがついて、頭には耳宛の付いたヘッドギアみたいなものを被る
まるで安っぽいSFファンタジーのヒロインみたい
・・・
???
なにこれ?

「・・・お嬢さん、良くお似合いで」

振り返ると、ナボコフ王子がにこにこ笑いながら頷いている。

「うん、素晴らしい。これならわが軍の兵士たちを鍛えることも十分に可能かと。」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

志都美は気色ばむ。

「こんなに露出が多くて鎧の役になんか立ってるの?」

「・・・わがシベール星の科学力を舐めないでください。」

ナボコフ王子がちっちっちと人差し指を立てる。

「このアーマーを装着した人は完全なシールドで防御されていますから、いかなる物理学的攻撃にも耐えることができます。」

「え?」

「すぐ目の前で核爆弾が炸裂してもまるで無傷ですよ。」

「へえええ」

それは驚いた
じゃあこの鎧を装着した兵士は無敵ってことじゃない。
だというのになんで「蒼き侵略者」の前では歯が立たないの?
???
それも確かに疑問だけど、その前に訊ねておきたいことがある。

「この服装デザインは何よ?どうしてわざわざこんなにエッチな恰好なの?」

「ま、SFファンタジー一般にヒロインは無駄にエッチな恰好をしておるものですが・・・」

「ううう、それを言っちゃ身も蓋も・・・」

「それにお嬢さんの場合にはエッチな服装であることに意味があるのです。」

「え?」

「おっと、こんなことをしている場合ではない。お嬢さん、早速わが軍の兵士たちを鼓舞してあげてください。」

「?」

と首を捻る間もなくナボコフ王子は部屋のカーテンをざああっと開けた。

*****

明るい陽光がいきなり室内に射し込まれる。
ここは王宮か何か高い建物の一室であったらしい。
窓の外に広がった景色は眼下いっぱいに広がる大広場
そしてそこを埋め尽くす兵士たち
その兵士たちが見つめる超特大スクリーンにはナボコフ王子のライブ映像が・・・

「・・・親愛なるシベール星防衛軍の諸君、」

ナボコフ王子が真剣な表情で語り始める。
兵士たちはしわぶき一つ立てない。
極度の緊張感である。
・・・
・・・

「・・・今日は、諸君のために、遥か彼方の惑星チキュウからプリンセス・シヅミ嬢16歳現役女子高生をお連れした。」

16歳現役女子高生
・・・
ざわざわざわ
兵士たちは明らかに動揺していた

「それでは早速紹介しよう、プリンセス・シヅミ嬢16歳現役女子高生だ!」

スクリーンの画面がいきなり志都美の横顔に切り替わる。

と、思ったらなんとナボコフ王子が手持ちのハンディカムで志都美を映しているのだ
なんだか安っぽいなあ
・・・
でも黙っててもしようがないからとりあえず自己紹介しよう

「み、みなさんこんにちは。わたしは東九条志都美です。よろしくお願いします。」

ぺこりと頭を下げる。
再び顔を上げて驚いた。

「!」

ナボコフ王子の姿が消えている。
・・・
いや、いた。
真下にいた。
寝そべって真下からハンディカムで志都美の像を捉えている。
その思いっきりローアングルの画像がスクリーンに映し出され、兵士たちは物もいわずじっとその画像を見つめている。

「何するのよ!エッチ!パンチラ盗撮なんて許せないわ!」

「いや、お嬢さんはスカートを履いてないのでパンチラにはなりませんよ。」

「・・・」

良くわからない理屈で丸め込まれたら、その間にもナボコフ王子は仰向けに寝そべりながら右に左にアングルを変えて見上げ像を撮りまくる
大広場の兵士たちはスクリーンに映る志都美の大迫力画面を見て大興奮!
・・・
・・・
かと思ったら
・・・
なんだか妙に冷静だ
ナボコフ王子の表情に焦りの色が浮かぶ

「・・・見、見上げはこのくらいにしておきましょう」

ナボコフ王子は立ち上がると、今度は志都美の脚から下半身、そして腹部を舐めまわすように接写する
そしていよいよ実測94㎝のバストをかぶりつくような至近距離から激写だ。

「お嬢さん!」

「はい」

「ちょっとそこでジャンプして」

「?」

良くわからないけど言われた通りにその場でぴょんと飛んでみせる
どすん
ぷるるん
志都美の94㎝のバストが着地の衝撃で確かに縦揺れした
もちろんナボコフ王子のカメラはこの決定的瞬間を逃さない
ぷるるん
まずはリアルタイム画像をばっちり中継した後
ぷーるーるーんー
今度はスローでリプレイする
ぷーるーるーんー
ぷーるーるーんー
その後もスローのリプレイを何度も何度も繰り返し余韻を楽しんでいただく至れり尽くせりの大サービスだ
これではスクリーンの前の兵士たちも大盛り上がり
・・・
・・・
かと思ったらそんなことない
なんだかシラーっとしている
中には露骨に欠伸をする者やスマホを弄り始める連中までいる
・・・
ナボコフ王子の焦りは頂点に達した

「お、お嬢さん、今度は横だ。身体を横にゆすってみてください!」

「お断わりします!!!」

志都美が怒髪天を衝いて拒絶すると、そこにナボコフ王子のお付の者が飛び込んできた

「お、王子様!」

「どうした?」

「あ、現れました・・・『蒼き侵略者』が、都に現れました!」

「・・・」

ナボコフ王子は力なく俯いた

「・・・ま、間に合わなかったか・・・」

*****

急いで駆け付けた惑星シベールの都のど真ん中、立ち並ぶ近代的な高層建築群を見下ろして巨大な侵略者が仁王立ちしていた。
志都美とナボコフ王子は前線から十分に離れた安全な参謀本部でその様子を観察する。
身長1200メートルにも達しようかという大巨人、いや女巨人。
凄い巨体。
もの凄い迫力だ。
その巨大女が口元に不敵な笑みを浮かべながら足元を逃げ惑うシベール星の住人たちを悠々と見下ろしていた。
そのいでたちはネイビーブルーのクラシックナース風エプロンドレスにダークブラウンのレザーブーツ。頭にちょこんと被ったネイビーブルーに白十字のナースキャップから流れ出た黒髪は腰の下あたりまで伸び、両手には灰色のグローブ。と記述するとなんだか見覚えのあるような気もするかもしれないが、意表を突いてまだ胸ぺったんこで等身も低めの幼女風である。

「あ、あれって・・・」

「そうです、彼女がロリザたん♡はあはあ(推定8歳)、別名恐怖の『蒼き侵略者』です。」

「・・・」

なぜか眼鏡の奥の両目をキラキラさせながら答えるナボコフ王子を見て、志都美は眩暈がしてきた。

「・・・この子が『蒼き侵略者』?」

「そうですよ」

ナボコフ王子は力強く頷いた。

「ほら、蒼い服着てるでしょ?それで侵略に来るんだから間違いなく『蒼き侵略者』ですよねえ。」

参謀本部に集うシベール防衛軍兵士たちも一斉に頷く。志都美は小さく首を横に振った。

「・・・つーか、もはやこのお話がお笑いであることは間違いないわけだけど、わざわざ『蒼き侵略者』なんていうシリアスっぽいタイトルをつけたのはそれ系の読者たちを釣ろうとしたわけなのね?」

「釣ろうとしたなんて滅相もない!作品のタイトルを見て想像する内容はあくまでも読者にお任せなので、そこは自己責任ということで・・・」

見苦しく言い訳するナボコフ王子に志都美が更にツッコミを入れる

「そもそも何よその『ロリザたん♡はあはあ(推定8歳)』って!憎い恐怖の侵略者に♡マークつけてはあはあちゃうセンスも大概だけど、あの恰好はまんまエリ・・・」

「おっと!」

いきなりナボコフ王子は志都美を羽交い絞めにしてその口を押えつけた

「(もごもごもご)」

「滅多なことを口にしてはいけませんよ!」

羽交い絞めを解かれた後も志都美は不満そうである。

「・・・でも、服装だけならそっくりそのものじゃないですか!」

「ちっちっち」

ナボコフ王子は人差し指を立てて首を振る。

「似ているとか似ていないとかは関係ありません。そもそもこれは書き物だから見た目は基本的に読者の皆様の脳内補完に依存しているわけで、もしそれが特定の人物に似ているかのように思われるなら、それは読者の責任に・・・」

「また読者の自己責任ですか?それにしてもこれは酷いですよ!潔く煮物だったことにして名前を出した方が・・・」

「いやいや」

あくまでもナボコフ王子は自らの非を認めない。

「具体名を口にした瞬間、作者に無断のパクリになってしまいます。それとなく匂わせるだけなら『オマージュ』ということで全く問題ありません。」

「それとなくどころじゃないでしょ?頭身が違う、っていうけど、でも頂き物コーナーなんか眺めてるといくらでもあんな感じの幼女キャラはいるじゃないですか!」

「細かいことでイライラしていてはいけません。ぶっちゃけ言えばこの世界は妄想の種類も限られていますのでシチュはもちろんキャラだってシェアし合う努力が必要なのですよ!」

「ううう、なんだかもの凄く詭弁っぽいわ」

「そもそもパクったという認識が誤解ですからね!たいへん参考にさせていただいただけですっ!」

作者自身もはや何回目だか覚えていないくらいの使い古した定番開き直りギャグが出たところで、おもむろにロリザたん♡は侵略を始めた。

「・・・おじさあああん、また来たよ♡、今日も一緒に楽しく遊ぼうね♡」

*****

ずしいいいいいいいん
ずしいいいいいいいん
ずしいいいいいいいん
身長1250メートル(推定)、体重25メガトン(推定)の超巨大な身体が重々しく地響きを立てながら迫ってくる
その口元には邪悪な笑みが・・・つーか、よく見てみると単にあどけない笑みを浮かべ、って・・・え?
愛らしくぷっくり膨らんだほっぺたをほんのりピンク色に紅潮させつつ、そのくりくりした円らな瞳は嬉しそうにキラキラ輝く
悪役独特の暗いオーラは皆無!!!
そんなイタイケ系超巨大美少(幼)女の蒼き侵略者に対して、それでは国土を防衛するシベール軍の面々はどうかというと、こちらもなんだか両目をハート形にキラキラさせながらいそいそと配置に付く
???

「うふふふ、おじさん、じゃ、侵略しちゃうよ♡、準備はいい?」

「おっとっと、ロリザたん♡、おいたはいけないですよ!」

シベール軍兵士たちは鼻の下をべろーんと伸ばしながらロリザたん♡に向かって足下から一斉砲火を浴びせかける。
どばばばばばばばばばばばばばば
どばばばばばばばばばばばばばば
どばばばばばばばばばばばばばば
どばばばばばばばばばばばばばば
どばばばばばばばばばばばばばば
まあこの世界では定番の流れではあるが、1000倍級の巨大少(幼)女に対して戦車での攻撃はまるで無意味である
ロリザたん♡は両手を腰に当てながら、足下に展開するアリンコも同然のシベール軍ミニミニ戦車部隊を余裕で見下ろしていた。

「きゃはは♡、かーわいい!ねえねえ、それでわたしに攻撃してるつもりなの?ぜーんぜん効かないよ!ってか、おじさんたち、小さすぎだね。大人のくせにそんなに小さくて恥ずかしくない?」

「ぬぬぬ、子供のくせに生意気なロリザたん♡め!おじさんたちがいまお仕置きしてやるからな!」

いよいよ喜色満面、もとい、激怒したシベール軍大戦車軍団はロリザたん♡に向かって砲撃の雨あられ
どばばばばばばばばばばばばばば
どばばばばばばばばばばばばばば
どばばばばばばばばばばばばばば
どばばばばばばばばばばばばばば
どばばばばばばばばばばばばばば
ロリザたん♡はなお余裕綽々、満面のあどけない笑みだ

「きゃはは♡、無理無理。おじさんたちは小さすぎるんだよ。こびとはこびとらしく大人しくしてないといけないんだよ。」

ロリザたん♡は、右足をすーっと振り上げて、シベール軍大戦車部隊の上空に翳した。

「・・・悔しい?ねえねえ悔しい?おじさんたち強そうな大人が大勢集まってできた無敵のはずの軍隊が、わたしみたいな女の子にまるで歯が立たず、それどころか虫みたいに一足で簡単に踏みつぶされちゃう、って、やっぱ悔しいでしょ?でもね、仕方ないのよ。だって、おじさんたちは本当に虫なんだよ。ってか、虫より小さなこびとなんだよ。自分でも『惨めだなあ』って思うでしょ?うん、ホントに惨めだね♡」

ずしいいいいいいいいいいいいいいいいいん・・・
・・・
・・・
・・・
シベール軍の戦車部隊は振り下ろされたロリザたん♡の巨大な右足の下に葬り去られ、周囲はもうもうと湧き起こる砂煙と共に沈黙に包まれた。

*****

両者に漂う何ともいえないほのぼのうきうきした雰囲気からどーせこれはただのお笑いでしょ?とタカをくくっていたら、予想外にシリアスな展開になって志都美は狼狽した。

「ちょ・・・ちょっと、これ、まずいんじゃない?」

顔面蒼白になって傍らのナボコフ王子の表情を覗き込む。
ところがそのナボコフ王子は平然としたものである。

「まあロリザたん♡はあれだけの巨体ですからね、戦車部隊がいくら頑張ってもダメージを与えることは難しいです。」

「そういう問題じゃなくて!」

志都美は血相を変えた。

「ナボコフさん、見ていなかったんですか?いま大勢の兵隊さんたちがあの巨大な足に踏みつぶされてしまったでしょ?」

「そうですね。ま、ロリザたん♡は超巨大ですから、踏まれたら逃げようはないですな。」

「どうしてそんなに評論家みたく冷静でいられるんですか!あんな巨大な足ですよ!大惨事じゃないですか!何人犠牲者が出たかわからないですよ!」

「いや、それはないでしょ」

「へ?」

相変わらずナボコフ王子はまるで平然としている。
さすがにこれは鈍感とかそういう話ではなく、きっと何か理由があるはずだ。

「あ、あんな巨大な足に踏まれて犠牲者がいないとでも・・・」

「まずいないでしょうね。ほら」

もうもうと立ちこめていた土煙が晴れてきた。
志都美はナボコフ王子から手渡された双眼鏡でロリザたん♡の振り下ろされた足下の辺りを入念に観察する。

「あ・・・あれ?」

なんと、踏みつぶされてペシャンコになった戦車から次々と兵士たちが這い出してきている。
這い出してきた兵士たちは、みなコキコキと首を廻したり屈伸運動したりして余裕の様子だ。
犠牲者が出たどころか、かすり傷一つ負った形跡の者すらいない。
???

「ど、どうして?」

「これですよ」

ナボコフ王子は志都美のアーマーの肩パットをぽんと叩いた。

「わが軍の兵士も全てこのようなアーマーを装着しています。いや、デザインは違いますけどね。で、アーマーをしっかり装着している限りはシールドが機能しているので物理的攻撃に対する防御は完璧。目の前で核爆弾が炸裂しても平気なくらいですから、いくらロリザたん♡が巨大であるとはいえ、踏まれたくらいでは何ともないのです。」

「な、なるほど・・・」

そうかあ
それで兵士は無事で、だからナボコフ王子も平然としていられたわけね
志都美がやっと納得できたころ、戦車部隊を殲滅したロリザたん♡は、今度はうきうきと街を破壊し始めた。
ずしいいいいん
どがああああん
ぐしゃあああん
どすううううん
ばきいいいいん
ずごおおおおん
・・・
・・・
・・・
戦車隊が全滅した今となっては、もうこの巨大ロリザだん♡のおいたを止められる者など誰もいない
都の中心部の高層ビル等が次々とロリザたん♡の超巨大な子供用レザーブーツに踏みつぶされていく
嬉しそうに逃げ惑うシベール星人たちを見下ろして、勝ち誇ったロリザたん♡はあどけなく高笑い
このままでは都が壊滅状態だ
志都美には新たな心配事が生じた

「ナ、ナボコフさん・・・」

「なんでしょう?」

「一般市民の方々にも犠牲は出ないんですよね?」

「もちろんです。『侵略者が出現したときはシールド付きアーマーを身につけて避難する』というのはこの星の防災上の常識です。みなさんばっちり避難訓練とかやってるのでまず問題はないでしょう。」

「ふうう」

志都美は安堵の溜息をついた。
いや、それでもまだ不安は残る。

「じゃ、人的犠牲はないとして、それでもこの被害の大きさはシベール星にとって大打撃ですよね?」

「はい?」

ナボコフ王子はきょとんとして志都美の目を見る。
あれ?
わたし、何か不自然なこと言ったかしら?

「だ、だって、これだけ建物が破壊されちゃってるじゃないですか。復旧するのは時間もお金もかかるし、それに全く同じものを作り直すことなんてそもそも無理です、よ、ね・・・」

言ってるうちに自信がなくなってきた。
ナボコフ王子の目に明らかに馬鹿にした笑いが浮かんできたからだ。

「お嬢さんの母星、えーと、地球でしたっけ?」

「はあ・・・」

「はいはい、その地球ではまだ科学が未発達ですから、ま、お嬢さんが疑問に思われるのも無理はないですね。」

「・・・」

「いまどきシベール星の住人で、自分の住居や財産を3Dデータとしてバックアップしてない人なんていませんから。」

「?」

「クラウド上のバックアップデータをダウンロードして、で、3Dプリンターで打ち出せば破壊された財産なんてあっという間に回復できます。コストはほとんどかかりません。」

「ちょ、ちょっと待って!ということは建物とか、高層ビルなんかも・・・」

「不動産業の方は間違いなくデータをバックアップしていますよ。後はプロジェクタタイプの大型3Dプリンタで打ち出すだけですから、あのメチャメチャになった街並も明日の朝までには完全に元に戻ってるでしょ。」

これは驚いた。
ということはあの巨大ロリザたん♡がいくら暴れても、この星の住人は怪我一つせず、建物や財産の被害もあっという間に回復してしまうということではないか。
なるほど、それなら兵士や住民たちに今一つ危機感が感じられなかったのも納得できる。
そこまで理解したら志都美もちょっと安心して別のツッコミをする余裕が出てきた。

「・・・しかしパクリだかオマージュだか知らないけど、このロリザたん♡は本家本元のエ○ザさんとはまるで違いますね。」

「どういう意味ですか?」

ナボコフ王子は解せない表情で訊ね返す。当然思いっきり同意してもらえるはずだと思っていた志都美は拍子抜けだ。

「だ、だってこの子は巨大だ、ってことは同じだけど、でも乱暴な意地悪娘じゃないですか。」

「それで?」

「それで?って、エ○ザさんといえば優しい笑顔でみんなに癒しを与えてくださる天使のようなお方でしょ?こんな大暴れ小娘とはえらい違いじゃないですか?」

「ふっ」

ナボコフ王子が鼻先でせせら笑った。

「お嬢さんわかってませんねえ・・・エ○ザさんて、意外と短気で乱暴者の変態娘なんですよ。」

「酷い!なんてこというの!」

「ほら、だってエ○ザさんはカッとすると相手がこびとでも平気で決闘を申し込んじゃったりするじゃないですか。」

「あ、でもあれには事情が・・・」

「それから最近なんかこれ見よがしに岬を踏み潰しちゃったりしましたよね。あれは間違いなくテロ行為ですわなあ。」

「そ、そうとはいえないこともないけど・・・でも変態娘ではないでしょ?」

「ほお、それではお嬢さんは街を持ち上げて自分の胸を押し付ける行為が変態ではない、と・・・」

「ううう・・・でもエ○ザさんは周囲の全てに癒しを与える、立派な、お方、だ、から・・・」

言っているうちに志都美本人も自信がなくなってきてしまった。
ナボコフ王子はかさにかかって攻めてくる

「『癒し』を与える、なんて漢字で書くから誤解されるんですよ。」

「?」

「平仮名で書いたらどうなります?」

「『いやし』を与える・・・ってこと?」

「そうそう。ほら『いやし』を与える、と、『いやらしい』を与える、って紙一重でしょ?」

志都美は力強く首を横に振った。
いくらなんでもこの説明には納得できない!
でもナボコフ王子は論破したつもりらしく遠くロリザたん♡を指さした。

「ロリザたん♡も巨体で力押ししてくるだけなら特に問題はないんです。しかし、『いやらしい』を与えてくると手が付けられなくなる・・・」

ナボコフ王子は苦虫を噛み潰した表情で、でも分厚い眼鏡の奥には恐怖と共にどことなく期待の織り混ざったなんとも形容のし難い複雑な輝きが宿っていた。
志都美が頭くるくるになっていると、遠くでロリザたん♡が不敵に嘯いた。

「ふん、おじさんたちはどチビのくせになかなかしぶといわね。でもこれには耐えられるかなあ?」

*****

みんなが遠巻きに見守る中、不敵な笑みを浮かべたロリザたん♡はクラシックナース服をするりと脱ぎ捨て、そしてパンツとブラ(←もともと機能していないが)すらも脱いですっぽんぽんの裸ん坊になってしまった。
一糸まとわぬ超巨大美幼女。
おっと、一糸まとわぬは言い過ぎだ。パンツもブラも脱ぎ捨てて下半身は大事なところまでモロ出しだがナース帽はしっかり被っているしグローブやブーツも嵌めたまま。あくまでも脱いだのは服だけ、というマニアの方々のこだわりをしっかり受け止めたスタイルである。8歳推定にして空気を読む能力は抜群だ。ちなみにこの8歳はあくまでも推定であって実際は20歳を超えているかもしれないのでこの文章は児童ポルノには該当いたしません。そのあたりゆめゆめお間違えないようよろしくお願いします。

「ほうら、どう?わたしのエッチなところがまる見えだよ。ほらほら、これが見たいんでしょ?」

ロリザたん♡はがに股になって大集結したシベール軍兵士たちの上空に自分のまだ陰毛も生えてこない超巨大幼女(推定)ま○こをくっぱーと大開帳してみせた。

「ほらほらおじさん、我慢しなくていいんだよ。じーっくり見ていいんだよ。これが女の子のえっちなところだよ。触りたければ触ってもいいよ。臭いもくんくん嗅いでいいよ。入りたかったら入ってもいいんだよ。でっかいからおじさんたちなら何人でも入れるよ。だから遠慮しないで、まずは大きく目を開けてじーっくり見てごらん♡」

その足元、というか正確には股間の真下のシベール軍は大パニックに陥っていた。

「み、みんな目を瞑れ!」

「危険だ!絶対に目を開けるな!」

「絶対に覗き上げてはいかんぞ!」

「・・・ダ、ダメだ・・・」

「?」

「・・・どうしてもダメだ。我慢できない。」

「お、おい、待て」

「止めるな!俺はどうしてもロリザたん♡のまだマン毛も生え始めていないえっちで恥ずかしいところを至近距離からこの目で見たいんだっ!!!」

「やめろ!」

「やめるんだ!」

「いいややめない、お、俺は・・・あ・・・あ、あああ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐわあああああああああああああ!!!」

ぽーん
誘惑に勝てずロリザたん♡の股間を覗き上げてしまった兵士は、絶叫と共に小さな爆発音を発した。

*****

なんだかシリアスな展開のようにも思えるのだが、志都美にはさっぱりその緊迫感が伝わってこない。

「あ、あのう・・・」

「何でしょう?」

「なんだかみなさん必死で戦っていらっしゃるように見えるんですが・・・」

「それはもちろん命がけです。」

「?」

「・・・解せませんか?」

「ええ、どうして女の子のえっちなところを覗き込まないようにするためにあそこまで必死になって頑張らなければならないのですか?」

ナボコフ王子は冷静な表情で志都美に向き直った。

「・・・シベール軍兵士があの超巨大なロリザたん♡と戦っても命を落とさないのは、全てアーマーのシールドが守ってくれているからです。」

「そのようですね。」

「ですがその完璧なシールドも、アーマーの装着が外れてしまえば機能しなくなる。」

「・・・どういう意味ですか?」

ナボコフ王子は中腰になったロリザたん♡の股間の真下で悪戦苦闘するシベール軍兵士たちを指さした。

「双眼鏡でよーく観察してみてください。」

言われて志都美は一人のシベール軍兵士に注目した。
どうやら彼は周囲の説得にも耳を貸さず、ぱっちりと目を開けてぎらぎらした眼差しで上空を凝視していた。
瞬き一つしない。
それどころか両目がハート形に輝いている。
その先には未成熟(推定)な超巨大おま○こが視界いっぱいに広がっているのだろう。
あ、口元がだらしなくほころんで、たらりと涎が落ちた。
くんかくんかくんか
匂いまで胸いっぱい嗅いでいる
全身の感覚を研ぎ澄まして少女(推定)のえっちで幸せな世界に浸りきっているのだ
・・・
・・・
そのとき、あの謎の小さな爆発音がした。
ぽーん

「!」

兵士のアーマーの下半身部分が破裂したのだ。
この小さな破損は命取りだ。
もはやシールドが十分に機能しない。
この兵士は次にロリザたん♡に踏まれてしまうと、もはや何の抵抗もできずに潰れるしかないのだ。

「ど、どういうことですか?」

「・・・お嬢さんは男の人の身体の仕組みをよくご存じないようですね。」

ナボコフ王子は頭を抱え込む。

「男とは、えっちな刺激を受けるとちんちんが膨らんでしまうものなのです。」

「・・・」

「そしてその膨張がある一線を超えると、内側からの圧力に耐えきれなくなってアーマーの下半身部分が破裂する。その瞬間、シールドは無効になってしまうのです。」

「・・・」

「もちろんロリザたん♡もそれは十分に承知している。だから自分の魅力を120%アピールしながらああやってわが軍の兵士たちをお下品に誘惑し、そして文字通りその自爆を誘っているのです・・・」

「・・・」

なんとリアクションしていいかわからない志都美が黙りこくっていると、ロリザたん♡は追い打ちをかけてきた。

「んふふ、こんどはおじさんたちに、このもろ出しおっぱいを見せてあげるよ!」

ざわざわざわ
シベール軍兵士たちが動揺する。

「もろ出しおっぱい?」

「いや、普通に胸のうえに乳首が直接ちょこんと乗っかっているだけだろ?」

「そんなぺたんこのどちっぱいなのに、でも巨大なんだぜ。」

「とうことは、ともすれば夢のちっぱい登りもお願いできちゃうかもってことか?」

「うわああ、が、我慢できん。」

「俺もだ。」

「危険だ!耐えろ!!耐えるんだ!!!」

「いや、我慢できん!」

「我慢できない!!」

「我慢できないよおおお!!!」

ぽーん
ぽーん
ぽーん
ぽーん
兵士たちの下半身のアーマーが次々と破損する
これではもはやロリザたん♡の攻撃には耐えられない
にやり
その様子をがに股の姿勢で見下ろしながら、ロリザ♡たんは満足そうに邪悪な笑みを浮かべるのだった。

*****

戦い済んで日は暮れた。
・・・
・・・
アーマーの破損したシベール軍兵士など全く無力である。
なんの抵抗もできないまま、ロリザたん♡の巨大な子供用ブーツの下で次々と踏みにじられてしまった。
兵士の誰もが満ち足りた笑みを浮かべながら哀れブーツの靴底の染みとなっていった。
力の差は歴然だった。
・・・
・・・
その力の差を思う存分に見せつけると、ロリザたん♡は高らかに笑いながら意気揚々と姿を消した。

*****

志都美は敗軍の将であるナボコフ王子と共に王宮に戻っていた

「・・・今日は、残念でしたね・・・」

言いたいことは山ほどあるけど、でも防衛戦に敗れて打ちひしがれているナボコフ王子をいま責める気にはなれない

「はい、残念です・・・」

ナボコフ王子は肩を落として俯いた

「こんな時に訊くのはナニなんですけど・・・」

「はい」

「ナボコフさんは、わたしに何を期待していたんですか?」

「・・・」

ナボコフ王子は俯いたままぽつりぽつりと語り始めた。

「・・・この星の防衛軍兵士たちが、みなロリザたん♡にはあはあしてしまうからいけなかったんですよ。」

「・・・」

「もっと成熟した女性のカラダにもはあはあできるようになれば、このピンチはクリアできるかな?と・・・」

「・・・」

「で、まずは取っ掛かりとしてネット辺りで人気のあるぷにぷに体型の女子高生をスカウトして兵士たちにその魅力をアピールし、大人の身体の良さを認識させつつ徐々に難易度を上げ、最終的には彼らを熟女マニアにまで仕立て上げればロリザたん♡にもはあはあしない最強軍団が形成できるかと・・・」

「それで、まず第一弾としてわたしに白羽の矢が立ったのですね?」

「そういうことです。」

はああ、やっぱりそういうことか。
この話はウソではないだろう。
今までの展開も、ナボコフ王子の言動も、みなこのストーリーで矛盾しない。
そもそもこのナボコフ王子という男は、冴えない中年男ではあるが、誠実な人柄が滲み出てウソをつくような人物には見えない。
だからといって将来の王妃様候補になるのはまっぴらゴメンだけど
・・・
・・・

「・・・お役に立てなくて、ごめんなさい」

志都美はぺこりと頭を下げた。
ナボコフ王子は慌てて首を振る。

「何をおっしゃいますか!お嬢さんには何の落度もない。こんな騒ぎに巻き込んでしまって申し訳なかったと思っておりま・・・」

「ナボコフさん」

「はい」

「最後にもう一つお訊ねしても良いですか?」

「なんでしょう?」

志都美はエッチなコスチュームに包まれた自分の身体を指差した。

「ナボコフさんご自身は、わたしのこのボディ、やはり魅力があると思っておられますか?」

「いえ、全然」

ナボコフ王子は即答した。

「だってバストが94cmもあるじゃないですか。『乳がでかい=下品=バカ』でしょ?」

「・・・」

「そりゃお嬢さん自身は素敵な方だと思いますよ。ええ、とても気だてが良くて、元気で、お可愛らしい。それだけに、その乳は何ともお可哀想というかお気の毒で・・・」

「帰ります」

「へ?」

「今すぐわたしを地球に帰してくださいっ!!!」

*****

・・・
・・・
・・・

「・・・は!」

目が醒めたら、勉強机に突っ伏していた。
宿題はまだ全然終わっていない。
・・・
何だったんだろう?今までのこの妙にリアルな夢は・・・
・・・
・・・
・・・

「!」

思い立って引き出しから巻き尺を取り出してみる
バスト
ウェスト
ヒップ
・・・

「・・・94.2、60.8、84.7・・・」

小数点以下第一位まであの夢の通り
・・・
え?
じゃ、夢じゃなかったの?
わたし、本当にシベール星に行ってきたの?
・・・
・・・
・・・
・・・
わからない
わからないわ
・・・
でも悩んでいても仕方ないから、今は残った宿題をやろう。
志都美は気を取り直して勉強机に向かった。
・・・
カリカリカリ
カリカリカリ
カリカリカリ
・・・
・・・

「ふううう」

手を休めてまた天井を見上げる
どうしても気になることがあってなかなか勉強に身が入らない
本当かな?
本当のことなのかな?

「・・・『乳がでかい=下品=バカ』って、ホントにみんなそんな風に思ってるの?」

蒼き侵略者・終