北郎少年の冒険(サブタイトル:妙な数日間)・その3

by JUNKMAN


「お母さん、あのね、杏奈おねえちゃんがね、わたしがみつけた玩具をとったのよ。」
「あら、私そんなことしてないわよ。」
「嘘よ!とったよ!わたしの玩具をとりあげたよ、うわあああん!」
「ほらほら優奈、泣くのはやめなさい。杏奈がとったって、どんな玩具をとり上げたっていうの?」
「ひっく、うん、あのね、こびとよ。とっても小っちゃな、指よりも小っちゃなお兄ちゃん。」
「あらあら優奈、そんなこびといるわけないじゃない。」
「そうよね、おかあさん。優奈が嘘ついているのがわかったでしょ?」
「嘘じゃないよお!」

夕食をとりながら、杏奈と優奈の姉妹が中にお母さんを交えて言い争いをしている。どっちもどっちだ。僕は杏奈のブラジャーの内側に閉じこめられ、身動きもできないままその一部始終を聞いていた。

「嘘じゃないよお!杏奈おねえちゃんが、わたしのちびお兄ちゃんをとったんだよお!うわあああん!」
「わけないでしょ。」
「とったんだよお!!」
「2人とも静かになさい!」

聞き慣れない声がきこえた。他にも誰か女の人がいたようだ。

「せっかく今日はみんなで一緒に夕御飯が食べられるんだから、喧嘩なんかしてちゃだめよ。」
「そうよね。聖奈は昨日も夜勤だったし、明日は、どうだったけ?」
「日勤深夜よ。だからゆっくりできるのは今日だけ。」
「ほら。だから2人とも喧嘩をするのはやめなさい。」

お母さんと聖奈さんと呼ばれた人が2人がかりでなだめ、ようやく言い争いはおさまった。聖奈さんは、声の感じからして優奈ちゃんや杏奈の更にお姉さんらしい。ふうん、3人姉妹だったんだ。

*****

夕食が終わると、杏奈は手早く歯を磨いてから、そそくさと自分の部屋に戻った。
かちゃり。
部屋の鍵を閉める音がした。
いよいよか、と思ったら、果たして巨
大な手が現れて、ブラジャーの隙間に挟まれていた僕を掴みだした。
数時間ぶりに見た外界の風景は、視界いっぱいに広がる杏奈の顔だった。

「さあて北郎先輩、」
「な、何をする気だ?」
「私、先輩のこと、気に入ってたんですよ。くく」

杏奈は舌なめずりしながら僕を見つめた。

「だから嬉しくって。」
「僕を家に帰してくれよ。」
「くくく、だあめ。」

僕の言うことなんか聞いてくれないらしい。
口調だけはいつもと変わらずに丁寧なのがよけいに癪に触った。

「僕は帰りたいんだよ。だから家に帰してくれよ!」
「くくく、もったいないですよ先輩。折角いらしていただいたんだから、ゆっくり遊びましょ。そうだ。北郎先輩って、不潔なのはきらいですよね。」
「う、そ、それは、嫌いだけど・・・」
「じゃ、いろんなことを始める前に、取りあえずお風呂に入った方がいいですね。」
「お、お風呂?」
「そう。じゃ、行きますよ。くくくくく」

杏奈は再び僕を胸の隙間に放り込むと、部屋を出てバスルームに向かった。僕は再び杏奈の巨大な胸元の虜になった。ここで暴れてもどうにもならないことはもうわかっている。
バスルームに向かう途中で優奈ちゃんらしき声が聞こえた。

「あ、杏奈おねえちゃん、わたしのちびお兄ちゃんを返してえ!」
「うるさいわね。まだそんなことを言ってるの?」

バタン!!
がちゃ。
バスルームのドアが閉まった。

*****

「放せ!放せよ!」

バスタブに浸かった杏奈から視線をそらしながら、僕は大きな声で叫んだ。僕自身も杏奈の手のひらにのせられたままお湯に浸っている。

「いいじゃないですか。どうせさっきまで私のブラの中にいたんじゃないです
か。さあ、こっちを向いて下さいよ。」
「うるさい!」

僕は癇癪をおこして杏奈の手から飛び出した。一面はお湯の海である。

「あらあら、そんなに無理しなくたって・・・」

背中に杏奈の嘲笑する様子が目に浮かぶようである。
ふん!僕は水泳が得意なんだぞ!こんなバスタブくらい、プールだと思えばへっちゃらだい。
と思ったんだけど実際には全然へっちゃらではなかった。
バスタブの縁はつるつるで掴まることができない。だから泳ぎ続けるしかないんだけど、お湯の中で泳ぐってのは意外と体力を消耗するものだったのだ。しかも頭ものぼせてしまう。
心臓がどくんどくんと早鐘のように脈打った。
どのくらい泳いだだろう。
なんだか半日も泳ぎ続けているような気がする。僕は疲れ切ってへとへとになって
・・・このまま溺れちゃうんだろうか?
思考もどんよりと不透明になってきた。
そのとき、ぼんやりと湯気で霞んだ視界の先に岸が見えた。
やった!
僕は最後の力を振り絞ってその岸の斜面に泳ぎ着き、先端の出っ張りにしがみついて息をついた。
ふう、助かった。
この出っ張りが何なのかなんて考えるゆとりはなかったのだ。

「きゃははあ、くすぐったあい!」

急に頭上から割れるような大声が響いて、僕の思考がふいに鮮明になった。

「くくく、先輩、可愛いですよ。自分から私のおっぱいに乗りにくるなんて、やりますねえ。」

・・・え?・・そ、そうだったのか。
ちっくしょう!

「う、うるさい。ちょっと疲れただけだよ!」
「あら、そうですか。くくくくく」

ざばあああああん。ふいに凄い水しぶきが上がって、僕の身体はつかまっている杏奈の乳首と一緒にぐんぐん上昇していった。

「うわああああ、どうしちゃったんだ?」
「いつまでもタブに浸かっていたらのぼせちゃうでしょ。そろそろシャワーでも浴びようかと思って。」

杏奈は僕をおっぱいの上にのせたままシャワースペースに移動した。僕はすべすべした杏奈のおっぱいにへばり付いていた。だいあなのおっぱいほどじゃないけど、それでも小山のような大きさだ。
・・・こいつ、胸はまだ小さいと思ってたのに。
これじゃ取りあえず落ちるような気はしないな。だけど気恥ずかしかったので僕は杏奈に叫びかけた。

「あ、あ、危ないじゃないか!」
「あら、先輩、その方が危なくないと思いますよ。それに可愛いし、くくく。」

杏奈は巨大な人差し指で僕の頭をつんつんと小突いた。

「やめろ!こら!僕を下に降ろせ!」
「いいんですか?私はそのままの方がいいと思いますけど?」
「いいから降ろせ!」

僕が凄い剣幕で怒鳴ったので、杏奈はにやにや笑いながら僕をつまみ上げ、自分の足元においた。
足元から杏奈を見上げる。
大きいなあ・・・
改めて杏奈の大きさに圧倒される。
見上げても見上げても、まだずうっと上に向かって脚が伸びている。恰好のいいお尻が見えて、その上は首が痛いからもう見たくもないや。
ちぇっ、小泉杏奈なんて、ほんとは僕よりずっと背が低いはずなのに・・・。気分が悪いので僕は杏奈の足元から少し離れた位置に立った。

「ほんとにそれでいいんですか?私のいうことを聞いていた方がいいと思いますけど。」
「いいったらいい。これでいいんだ。僕にかまうな!」
「くくく、そうですか。じゃ、私は一人でシャワーを浴びますからね。先輩はそこでお待ちになっていて下さい。くくく」

ばばばばばばばばば
突然、拳大の水滴が大量に降り注いできた。危ないなあ。
僕は両手で頭を抱えてしゃがみ込んだ。

「!」

四方から温水の大津波が僕に襲いかかってきた。
そうか、これだけ大量の水が降ってくれば、排水口に向かう水の流れも激しくなるわけだ。
感心している場合
じゃないぞ。流されたら大変だ。踏ん張っているだけじゃ無理だな。何かにつかまらなくっちゃ。
だけど・・・周りには何もないぞ。つるつるのタイルばっかりだ。シャワースペースの敷居は高すぎて、とても越えて逃げることはできそうもないし。悔しいけど、小泉杏奈の身体に掴まるしかないな。僕は流れに足をとられながら、なんとか杏奈の足元に近づいて、そしてそのそびえ立つ素足にしがみついた。といっても、実際に僕が掴まることができたのは小指の先だったんだけど。

「止めてくれよお!小泉い!止めてくれよお!流されちゃうよお!!」

僕はそこで必死に叫んだ。でも杏奈は素知らぬ顔をしてシャワーを浴び続けている。
聞こえないんだろうか?
聞こえないふりをしているんだろうか?
どっちにしても聞いてもらわなきゃ。このままではシャワーの激流に流されて死んでしまうよ。

「止めてくれよお!お願いだよ!シャワーを止めてくれよお!」

杏奈は振り向いてくれようともしなかった。
痛い。
大粒の水滴が、真上を向いて叫び続ける僕の顔を容赦なくたたきつける。息をつくこともままならない。
もうだめか。
杏奈の巨大な足の小指を抱え込んでいた僕の両腕が弛緩した。
あっという間に僕の身体は暖かな激流に呑み込まれ、渦を巻きながら排水口に押し流されていった。
必死になって排水口の格子にしがみつく。
格子の隙間は楽々僕を通り抜けさせるほどの間隔だ。少しでも力を緩めたら、真っ暗な排水溝の中に叩き落とされてしまう。だけどここは特に温水の流れが激しいところだから、水位は僕の頭の高さよりもあり、格子にしがみついている限り息を継ぐことはできないんだ。
ごぼごぼごぼ
苦しい。
もう息が続かないよ。
こんどこそだめだ。
僕は観念して目をつむった。
・・・
諦めて僕が両手を放したのと、僕の腰の辺りが急に締め付けられて上空に持ち
上げられたのは同時だった。間一髪、杏奈が僕をつまみ上げてくれたんだ。

「くくく、先輩、下に降りた方が良かったですか?」
「・・・・・」
「お返事がないですねえ。じゃ、やっぱり下の方がいいのかな?」

杏奈はまた僕を足元に降ろそうとした。遥かに見える下界には、なおも激流が渦巻いている。

「や、やめろ!やめてくれ!下に降ろすのはやめてくれよ!」
「くくくくく」

杏奈は僕を目の前に持ち上げた。満面に勝ち誇った笑みが浮かんでいた。

「ほうらね。だから私のいうことを聞いておけば良かったでしょ。くくく」

僕は悔しくて、眼前いっぱいに広がる杏奈の嘲笑から視線をそらした。 

*****

「ええ?まだ何かするのか?もうたくさんだよ。僕はもう疲れちゃったんだよ!」
「何を言ってるんですか先輩。やっと、準備ができたばっかりじゃあないです
か。くくく。まだまだ、夜は長いですよ。」

部屋に戻ってから、僕と杏奈は再び口論を始めていた。
僕はだだっ広い杏奈のベッドの上にぽつんと立たされている。素っ裸のままだ。
バスタオルを胸の辺りに巻いた杏奈は、床に腰を降ろしたままにたにたと笑って僕を見下ろしている。

「このまま寝るのも芸がないじゃないですか。」
「芸がないって、じゃ、何をしようっていうんだ?」
「何をって・・・」

杏奈はにたりと笑った。

「男の子が女の子の部屋に泊まりに来て、することっていえば決まってるじゃあないですか。それに、私、前から先輩のことがちょっと気にいってたんですよ。」

僕はどきりとした。そんな、まさか・・・

「エッチしましょ、エッチ。」

杏奈はベッドの上に腰をかけると、僕を両方の太股の間に置いた。
両側から迫る質感たっぷりな肉壁に圧倒されながら、それでも僕は真正面に見えるものから視線をそらした。

「やめろ!僕はそんなつもりはないぞ!」

そりゃあこの小泉杏奈は学校でも評判の美少女で、その娘とエッチできるなんてみんなに自慢できるほどのことなんだろうけど、でもこの状況ではなあ・・・
だいたいエッチってのは、男の子が女の子に脅されてするものじゃないぞ。
それにこれだけ体格差があるんだから物理的にも不可能さ。

「そんなあ、先輩、私って、そんなに魅力ありません?」

杏奈は笑いながら、そっぽを向いていた僕を親指と人差し指で摘みあげた。

「じゃ、先輩もその気になるようにサービスしちゃいましょうか。くくく」

ばたばたと抵抗する僕をものともせず、杏奈は僕を股間に近づけた。

「見たことないんでしょ?女の子の大事なと・こ・ろ」
「やめろ!やめろ!そんなもの、見たくもないやあ!」

ほんとは見たくてたまらなかったんだ。
だけど、こんな恥ずかしい状況で力づくで見せられるってのは嫌だ。屈辱だ。僕は両手で目を被った。何も見えなかった
けど、ぷうんと酸っぱくて生ぐさい臭いがした。

「やめろ!やめろ!」
「あらあら、無理しないでくださいよ。私だって恥ずかしいけど、北郎先輩だったらいいって思ったんです。目を開けてくださいよ。見ちゃったら、先輩もやりたくなっちゃうんじゃないかしら、くくく」
「やめろ!やめろ!誰がこんな状況でお前なんかとエッチするもんか!やめろ!やめろおおおお!」
「・・・先輩、まだお立場がわかってらっしゃらないようですね。」

はっとして僕は目を開けた。杏奈は僕を再び彼女の目の高さにぶら下げていた。

「私が決めたんですよ。どうして逆らうんですか?」
「だって、嫌なものは嫌だよ。」

杏奈の目が冷たくなった。
奇妙なことに、ぞくりとするほど綺麗だった。

「・・・優奈にいたぶられて、ちょっとはわきまえたかと思いましたよ。バス・
ルームでも、私のいうことをきいた方が良かったってことがわかったじゃないですか。いいですか、先輩は虫みたいに小っちゃなこびとなんですよ。それは私は北郎先輩の下級生ですけど、今は先輩よりはこんなに大きいんですよ。どうですか?それでも逆らってみますか?・・・くくく、じゃ、私もほんの少しだけ指先に力を入れてみますけど。」

僕を支えていた親指と人差し指の指腹が、僕の上半身を前後からぐいぐいと圧迫してきた。
肋骨が折れそうだ。
呼吸ができない!

「うわああああ、く、苦しい!」
「ほらほらほら、もうだめですか?あれれ、力なんか入れてないんですけどねえ。」
「苦しい!痛い!まいった!まいったよお!!」

僕は苦しさのあまりに両手両足をばたばたと動かした。

「くくく、弱いですねえ。それが今の先輩の実力なんですよ。先輩なんてね、私がその気になれば・・・」

僕を摘んだ指が口元の高さまで降下すると、形の良いピンク色の唇がぽっかりと開いた。縦横ともに、僕が精一杯背伸びしても届かないほど広い。

「あーん」
「うわあ、やめろ!やめてくれ!食べないでくれ!小泉!」
「んふふ、どうしようかな?やっぱり食べちゃおうかな?あーん」
「やめて!お願いだよ!僕が悪かったよお!」
「くくくくく、小さいって、惨めですねえ。」

杏奈はようやく僕を口元から離してくれた。

「はあ、はあ、はあ」

涙が出てきた。

「あらら先輩、泣いちゃったんですか?くくく、情けないですね。いうこと聞いた方がいいってわかりました?」
「・・・わかった。わかったよ・・・。」

杏奈のいうとおりだ。僕はまだ自分の立場をよくわかっていなかったらしい。
頭ではわかっていても、心の奥では認められないでいたんだ。
でも、僕はもう小泉杏奈の先輩なんかじゃない。
ただの小っぽけな玩具だ。
目の前の小泉杏奈は、下級生の可愛い女の子じゃなくて、僕の持ち主なんだ。
巨大なご主人様なんだ。
だって、僕は全然彼女にかなわないんだ。
いうことを聞かないわけにはいかないじゃないか。
認めたくない現実を突きつけられて僕の存在基盤が消失した。

「さて先輩、これはなんでしょう?」

そんな僕に向かって、杏奈は机の引き出しから何かを取り出して見せた。電信柱ほどもあるそれは・・・

「・・・は、歯ブラシだろ?」
「ご名答。でもただの歯ブラシじゃありません。」

そういいながら杏奈は歯ブラシの太い柄の下についているスイッチを入れた。
ぶいいいいん
ブラシの部分が小刻みに振動し始めた。

「電動の歯ブラシなんです。手で磨くより歯垢防止には有効なんですよ。」

杏奈は僕に振動している歯ブラシの先を見せた。
僕にはブラシの毛の一本一本ですら50センチくらいのあるように見える。
太くなった柄の握りの部分は、おそらく電池が入っているんだろうけど、直径が1メートル以上はある。

「くくく、それだけじゃなくって、この歯ブラシには他にも便利な使い道があるんです。」

杏奈は歯ブラシの電動スイッチを切ると僕を柄の部分にひょいとのせた。

「うわ!何をするんだ!危ないじゃないか!」
「くくく、まだですよ。危ないかもしれないのはこれからです。良く掴まっていてくださいね。」

そして杏奈はブラシの先を軽くつまむとむと、再び電動スイッチを入れた。
ぶいいいいん

「うわあああああ、あ、あ、あ、あああ!!」

今度は杏奈が掴んでいるブラシ側が支点になって、僕の乗っている柄の方が振動し始めた。

「あああ、危ない!落っちゃうよお!!」
「くく、だから良く掴まっていてくださいって言ったじゃないですか、くくくくく」

そんなこと言われたって、僕の乗っている柄の部分は太くなっていて、両手を広げても抱えきれないくらいなんだ。しがみつくのも大変だよ。

「良く掴まってないと、これからはもっと大変ですよ。くく」

え?これだけじゃないの?

「こ、これからって、これから僕をどうするんだ?」

杏奈は歯ブラシの柄に必死でしがみついている僕を目の高さに持ち上げて悪戯っぽく笑った。

「やだなあ先輩、もうお忘れになっちゃったんですか?さっき『エッチしま
しょ』って言ったばかりじゃあないですか、くくく」
「エ、エッチ・・!」

杏奈の意図がやっと見えてきた。
慄然とした。
杏奈はベッドに腰を下ろして開脚しながら、股の付け根の部分に歯ブラシの柄を近づけた。
僕は慌てて逃げ出す・・・ことはできなかった。
ぶるぶると振動する歯ブラシの柄から振り落とされないよう、しがみついているのがやっとだったのである。

「はあい、じゃあいきますよ先輩。」
「や、やめろおお!やめてくれええ!!」
「くくく、やめません。よおく息を吸っておいて下さいね。」

息をよく吸っておく。
その意味は良くわかった。
僕は怖ろしさのあまりに目を閉じながら、大きく息を吸い込んだ。さっきちょっとだけ嗅いだ、生臭くて、そして妙に酸っぱい臭いだった。
次の瞬間、僕はぬめりとした暖かい洞窟に、頭を先にして突っ込まれていた。
目をつむったままである。
僕が腹這いになってへばりついている歯ブラシの柄は小刻みに振動している。
背中の方にまとわりついている杏奈の粘膜面は、それほど小刻みではないけれど、でもやっぱりぷるぷると震えているように思われた。
その振動のサイクルが微妙に違うので、僕は乗り物酔いになってしまいそうだった。
背中に触れる粘膜の面も、表面こそぬめぬめとしてはいたが、全体としては
決して平坦でなく、むしろ桜桃大の突起が無数に敷き詰められているようだった。

「あふうん。入っちゃったあ。ふうん。先輩、どうですかあ?私の中に入った気分わあ?」

僕の掴まっている電動歯ブラシの柄が、ぶいいいいんという小刻みな振動の他
に、前後に忙しなく動き始めた。
ピストン運動だ。
杏奈が自分の手でしこしこと出し入れしているんだろう。
僕は振り払われないよう、しっかりと柄にしがみついた。
この柄から手を放したら、2度と生きては外に出られないだろうから。

「あはん、はあ、はあ、先輩、感じますかあ?はあん、ああ、ああん」

歯ブラシの柄は、上下左右にも荒々しく揺れ始めた。
相当派手に動かしているんだな。
僕の乗り物酔いもいよいよ酷くなってきた。

「ああ、あはあ、あがああ、いい、いいわあ、せんぱあい、はあ、はあ、ああ苦しい、ああ、いきそう!!」

苦しいのは僕の方だよ!
だってこんな穴の中に突っ込まれて、呼吸ができないんだぞ!
もう息が続かない。
呼吸を止めているのも限界だ。
無駄かもしれない、いや無駄に決まっているんだけど・・・僕は我慢できずに息を吸い込んだ。

「げふ!」

やっぱり新鮮な空気なんか入ってこなかった。
僕の口の中に、生臭くて酸っぱい粘液がどっと流れ込んできた。
慌てて吐き出そうとしたけれど、僕の肺の中には十分な呼出にたりるだけの空気のストックがない。
まずいことに、この時僕の周辺の空間が更にせばまったので、むしろ液圧に負けてねばねばした液が気管に向かって逆流し始めた。

「ごぼごぼごぼごぼ」

苦しい!
こんなところで溺れ死んでしまうのか。
苦しさと情けなさで胸がいっぱいになった。

「ああ、あがあああ、ああ、いい、いい、先輩、凄い、凄い、あ、あああああああ」

朦朧とした僕の意識の片隅に、杏奈の悶える声がうつろに響いた。
ふいに、何かが背中から僕を歯ブラシの柄に思いっきり押しつけた。
それは粘膜のはずなのに、岩のように堅く、力強かった。
挟まれた僕は、腹腔と胸腔をぐりぐりと押されて、口から粘液を吐き出した。

「ぐわああ、き、北郎せんぱああああああい!」

押し潰されそうな強烈な収縮の後、ふいに圧力が止んだ。
・・・
気怠い静寂の後、ゆっくりと歯ブラシの柄が後退し始めた。
ごわごわした暖簾のようなものをくぐる。
涼しい風を背中に感じる。
目を開ける。
大きく息をつく。
・・・空気だ!
僕は、死んではいなかったんだ。
・・・
歯ブラシを胸元に構えながら、杏奈はのけぞって荒い息をついていた。

「はあ、はあ、先輩、良かったわあ、はあ、先輩が中にいるって思うと、はあ、
はあ、何だかとっても気分よくって、はあ、はあ、いつものおなにいとは比べものにならないほどでしたよ、はあ、はあ、北郎先輩って、はあ、最高の玩具ですね、はあ、はあ、くくく」

助かった・・・
確かに僕の命は助かった。
だけどこれは悪夢だ。
悪夢の中の悪夢だ。
いっそ、あのときに死んでいた方が良かった。

*****

地獄のような歯ブラシの柄の上からやっと開放されて、僕はベッドのシーツの上で惚けたように倒れていた。
その間に、杏奈は手早く下着をつけ、歯ブラシを洗い、ネグリジェを羽織ってベッドに戻ってきた。
頭上から杏奈が見下ろしている気配を感じた。
でも、もう僕にはなにもできない。
目をつむってそのままぐったりと横になっている。僕の全身はべとべとで、つーんと酸っぱい変なにおいがしていた。
それも今や僕にはどうでもよくなってしまっていたのだが、杏奈は見逃さなかった。

「くくく、やだわ、先輩ったら、全身私のあそこの臭い。」

杏奈は僕を摘みあげると、わざとらしく鼻先でくんくんと匂いを嗅いだ。

「くっさあい!たまりませんね。くく。どうします?またお風呂に入りますか?」
「・・も、もう、沢山だよ・・・」
「くくく、そうですか、くくく。でもこんな臭いじゃ、恥ずかしくって、外になんか出しておけませんね。」

杏奈はネグリジェの裾をまくると、僕をパンティーの中に放り込んだ。
むわっ。
さっき嫌というほど嗅がされた臭いが充満している。

「やめろよお、出してくれよお!僕をここから出してくれよお!!」
「先輩、静かにして下さい。もう今晩はゆっくり遊んだじゃないですか。寝る時間ですよ。夜更かししすぎたら、明日の朝遅刻しちゃうかもしれないでしょ。」

突然、世界が真横になった。
杏奈が横になったらしい。
ええい、なら這い出すまでだ!と思ったらパンティーの外側から大きな手で押さえつけられてしまった。

「くくく、わかってると思うけど、逃げだそうとなんかしない方がいいですよ。
そこは私の敏感なところだから、這い出そうとすればすぐわかっちゃいます。逃げてるところを見つけたら、踏みつぶしちゃいますからね。くくく、ほんとですよ。だって先輩みたいなおちびなんか、踏み潰すのわけありませんから。そうそう、だあれも気がつくはずありませんしね、くくくくくくくく」


北郎少年の冒険・続く